
どんな職業に就いていても、「疲れた」と思う瞬間はあるものです。看護師として働いていても、「疲れた」と思う瞬間はたびたび訪れます。「疲れた。でももっとがんばりたい」というポジティブな「疲れた」であるなら、ストレスケアや体調管理にも積極的になれるものですが、「疲れた。もう辞めたい」というネガティブな「疲れた」のときには、意識的に自らの心身と向き合うことが必要かもしれません。具体的な原因と対処法として考えられることを解説していきます。
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人が疲れを感じるメカニズムとは?
まずは、どういうときに人は「疲れた」と感じるのかをみていきましょう。
疲労・抗疲労の研究や原因究明をはじめとするさまざまな活動をおこなっている『日本疲労学会』は、「疲労」を「過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態」と定義しています。
では、なぜ過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって独特の不快感が生じるかというと、身体に負荷がかかるほど、脳内で生体機能のコントロールを担っている自律神経の中枢に負荷がかかるためとされています。また、活性酸素による酸化ストレスによって、神経細胞が破壊されることも疲労の原因とされていますが、睡眠不足や加齢、偏った栄養、紫外線などは、酸化ストレスをもたらしやすいことでも知られています。
逆をいうと、「心身に過度な負担をかけない」「しっかり睡眠をとる」「栄養バランスのよい食事に気を付ける」「加齢の影響を受けにくいよう、生活習慣を整える」「きちんと紫外線対策をおこなう」などを意識することで、疲れを感じにくくなるということです。
参照:公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「疲労とは?疲労の原因と回復方法」
看護師が疲れを感じる原因として考えられることは?
続いては、看護師が「疲れた」と感じる原因として考えられることをみていきます。
過重労働
看護師の仕事はハードです。仕事中は基本的に立ちっぱなしで、働き方や診療科によっては、患者が歩く際に肩を貸したり、ベッドから起き上がるのを手伝ったりすることもあるため、肉体にかかる負担もかなりのものです。また、残業が多い職場であれば、肉体労働であるにも関わらず身体を十分に休める時間がとれないことから、「疲れた」と感じることが多くなるでしょう。
生活リズムが不規則
無床のクリニックで夜勤対応がなければ、生活リズムが不規則になることはありませんが、有床の病院勤務の場合や、訪問看護に携わっていてオンコール対応がある場合などは、生活リズムが乱れがちです。『公益社団法人日本看護協会』が公表している「2021年看護職員実態調査」では、看護師の夜勤状況は以下の表の通りとなっています。2交代制や2交代制、変則3交代制のほか、当直制なども働き方もありますが、いずれの場合も、生活リズムが乱れにくいのは事実です。また、夜勤専従という働き方なら生活リズムが不規則にならないと考えるかもしれませんが、この働き方の場合、休みの日に家族や友だちと予定を合わせるためにはいつもと違う時間に行動することになるので、やはり生活リズムが乱れてしまう可能性があるといえます。
≪看護師の夜勤状況≫
件数 | 割合 | |
職場に夜勤はない | 734 | 14.6% |
職場に夜勤はあるが現在は日勤のみで働いている | 779 | 15.5% |
3交代制 | 526 | 10.5% |
変則3交代制 | 101 | 2.0% |
2交代制(16時間以上の夜勤) | 1,479 | 29.5% |
2交代制(16時間未満の夜勤) | 604 | 12.0% |
夜勤専従 | 45 | 0.9% |
当直制(当直室などで仮眠しながら緊急時に備える働き方) | 78 | 1.6% |
管理夜勤・当直 | 204 | 4.1% |
オンコール | 240 | 4.8% |
その他の夜勤体制 | 140 | 2.8% |
無回答・不明 | 89 | 1.8% |
計 | 5,019 | 100.0% |
参照:公益社団法人 日本看護協会「2021年看護職員実態調査」
収入が仕事量に見合わず、精神的にしんどい
過重労働や不規則な生活リズムが原因で心身ともにしんどい思いをしているのに、それ相応の給与をもらえないとなると、精神的疲労は溜まる一方です。特に、現状の給料では生活がギリギリであるという場合、一度仕事を休んで転職先をじっくり考えるということもできないため、さらに気持ちが辛くなる可能性があります。
スキルや知識を常に磨き続けなければならない
看護師としてのスキルや知識が不足していると、時間内に仕事を終わらせることができず残業続きとなったり、先輩ナースや医師から叱られて気持ちが落ち込んだりすることが多くなりがち。その結果として、「疲れた」と感じることがあるかもしれません。
また、仕事に必要なスキルや知識が身についていたとしても、医療は常に進歩し続けるものなので、働いている限り、新しいことを学び続けなければなりません。そのため、知識やスキルの吸収に対するモチベーションが低下すると、にわかに「もう疲れたな……」と感じることもあるでしょう。
人間関係がうまくいっていない
医療の仕事はチームでおこなうものです。そのため、職場内の人間と良好な関係が築けていなければ仕事しにくいうえ、業務に集中できず、ミスやインシデントの可能性も高くなり、精神的な疲労が溜まっていきやすいといえます。
たとえば、上司や先輩からのモラハラやパワハラが続いている状態だと、精神的疲労が蓄積されやすくなります。ハラスメントに負けず、相手に対して毅然とした態度をとりつづけられたにしても、それ相応のエネルギーを消耗するため、思わず「疲れた」と呟いてしまうこともあるかもしれません。
ミスやインシデントを起こさないように常に気を張っている
人間関係がうまくいっていたとしても、ミスやインシデントを起こしてしまう可能性はゼロというわけではありません。しかし、医療の仕事は患者の命に関わる仕事であるため、ミスやインシデントを起こさないよう注意することが基本中の基本です。そのため、常に気を張って仕事することで、「疲れた」と感じやすくなるといえます。
ペイシェントハラスメントに悩まされている
患者からのハラスメントもまた、看護師を疲れさせる大きな要因です。一度や二度のクレームならまだしも、かかりつけ患者がハラスメントをおこなっているなどの場合、ストレスの大きな原因となりえます。
家庭との両立が難しい
働きやすい環境や条件が整っていても、個々の家庭の事情によっては、「疲れた」と感じやすくなります。特に、子どもがまだ小さく、朝晩の送り迎えやお弁当作りも休めない場合や、家族の介護で帰宅後も心身ともに休まらない場合などは、疲れが蓄積しやすいでしょう。
勤務年数や経験と関係する「疲れる」理由は?
続いては、看護師が「疲れた」と感じる原因のうち、勤務年数や看護師経験と関係している原因をみていきます。
新人看護師・若手看護師が「疲れた」と 感じる理由として考えられることは?
新人や若手のうちは、プレッシャーから疲れを感じやすくて当然です。慣れない業務が多く、常に「失敗したらどうしよう」という不安を抱えているものですし、実際にミスを起こしそうになった場合、先輩や上司から叱られることもあるでしょう。さらに、知識やスキルの吸収スピードは人それぞれであるため、仕事を覚えるのが早い同期と比べられて気持ちが落ち込み、疲れが抜けにくくなることもあるでしょう。
そしてもうひとつの大きな原因は、思い描いていた看護師像と実際との違いを知ったことで、「こんなに大変だとは思わなかった」「自分には向いていないことがわかった」という、“イメージのギャップ”です。
参照:新人看護職員の早期離職理由―心理的プロセスの検討―2.3「就職後1年以内に退職を決断した看護師の退職に至るまでの心理変化の一考察」
こうした理由もあり、新人看護師の離職率は非常に高く、公益社団法人日本看護協会が実施した「2022年病院看護実態調査」では、新人看護職員の離職率は10.3%にものぼることがわかっています。
参照:公益社団法人日本看護協会「2022年病院看護実態調査」結果
中堅看護師が「疲れた」と感じる理由は?
看護師経験が3年目を迎えたあたりから、後輩の指導や責任ある仕事を任せられることが増えます。仕事へのモチベーションが高い人であれば、やりがいを感じつつも、プレッシャーやストレスを感じやすくなるかもしれません。仕事へのモチベーションが低い人であれば、単純に、「これまで以上に大変な仕事を任されてしんどい」と感じることがあるかもしれません。また、場合によっては、ベテラン看護師と後輩看護師の仲介役となることもあり得るので、いずれの言い分にも耳を貸すことに疲れを感じることもあるでしょう。
ベテラン看護師が「疲れた」と感じる原因は?
ベテランになると、基本的には「わからないことがあったときに教えてくれる人」「頼れる存在」がいないため、より責任重大となります。同時に、新人看護師や中堅看護師にとって「頼れる先輩」でなければならないというプレッシャーも大きいです。そのことから、きびきび働く姿を見せようとした結果、後輩から「怖い」という印象をもたれて気持ちが落ち込み、疲れてしまうこともあるかもしれません。
また、誰しも年齢を重ねると体力が衰えてくることから、新人時代や中堅時代と同じように働くことが体力的に難しくなってくるため、肉体の疲れも感じやすいでしょう。
診療科や病棟と関係する「疲れる」理由は?
続いては、看護師が「疲れた」と感じる原因のうち、特定の診療科や病棟で働いていることが関係している原因をみていきます。
精神科勤務の看護師が「疲れた」と感じる理由は?
精神科病棟に入院している患者のなかには、ネガティブな発言を繰り返したり、相手が傷つく言葉を発してきたりする患者もいるため、その影響で気持ちが落ち込み、精神的に疲れてしまうことがあります。また、排泄物をきちんと処理できない患者がいる場合などもあることから、日々、汚物処理などをおこなわなければならないことも、精神に大きな打撃を与える可能性があります。
急性期病棟勤務の看護師が「疲れた」と感じる理由は?
急変対応の頻度が高い急性期病棟では、素早い判断や迅速な対応が求められるため、人によってはプレッシャーを感じやすいでしょう。また、患者が命の危険に晒されているケースなどもあることから、上司や先輩も逐一丁寧に説明している余裕はないため、慣れないうちは、ついていくのに必死になって疲れが溜まってしまうかもしれません。
緩和ケア病棟勤務の看護師が「疲れた」と感じる理由は?
終末期の患者が多い緩和ケア病棟では、必然的に、看取りに携わる頻度も上がります。看護を担当してきた患者が亡くなること自体が精神に大きな打撃を与えるだけでなく、患者の家族が悲しむ姿を目の当たりにすることを「辛い」と感じて、知らずと精神的疲労が蓄積されることもあるでしょう。
大学病院勤務の看護師が「疲れた」と感じる理由は?
高度な医療を提供する大学病院では、看護師一人ひとりも常に知識やスキルを研鑽し続けることが求められます。そのため、勤務時間外に勉強会や研修に時間をとられることが多く、プライベートの時間を削らなければならないこともあります。また、急変対応が多い傾向にあることからも、ワークライフバランスを保ちにくく、心身ともに疲れを感じやすいといえるでしょう。
小規模クリニックの看護師が「疲れた」と感じる理由は?
スタッフ数が少ない小規模クリニックは、人間関係が良好に保てていればストレスフリーで働ける可能性が高いですが、人間関係がこじれている場合は、人数が少ないぶん、他に逃げ場がないことから精神的疲労を感じやすいでしょう。
看護師が「疲れた」と感じたときの対処法は?
続いては、看護師が「疲れた」と感じたときの対処法をみていきましょう。
十分に心身を休める。場合によっては一度休職する
まずは心身を十分に休めることが大切です。とはいえ、人手不足の職場などではなかなか休ませてもらえないこともあるかもしれません。その場合、健康診断やストレスチェックの結果などを職場にみてもらうことで、「倒れる前に対策をとりたい」と交渉することなども検討しましょう。疲労度合いが数値化されていない場合は、疲れが抜けないことなどを自己申告するほかありませんが、それでも休ませてもらえない場合、休職を検討するのも一手です。
院長や上司に相談する
「このままでは身体が持たないから、勤務スケジュールを見直してほしい」と院長や上司に相談することも大切です。「他のスタッフも私と同じように休みがなくても文句を言っていないから言い辛い」などと躊躇してしまう人もいるかもしれませんが、同僚と自分を比べる必要などありません。もともとの体力も、家庭での役割も人それぞれなのですから、自分と同じ時間働いている人が、自分と同じだけ疲れているとは限りません。自分が疲れていることがわかっているなら、そのためにどうすればいいかだけを考えればいいのです。
異動を希望する
現在の部署の仕事量や人間関係が原因で疲れているなら、異動を申し出るのも一手です。仮に今すぐの異動が難しいということであっても、たとえば「来月に辞める人がいるからそのタイミングでなら」などと提案してもらえた場合、それまでがんばろうと思うこともできるでしょう。
転職を検討する
異動を聞き入れてもらえず、今の部署で今と同じ条件で働き続けるほかないといわれたら、転職を検討してはいかがでしょうか? 大病院での忙しさに疲れているなら、地域密着型の小規模なクリニックへの転職、小規模なクリニックならではの限られた人間のみと関わる環境に疲れているなら、さまざまな職種と関わることができる大病院への転職を視野に入れてみましょう。
看護師を辞める
看護師として働くことそのものに疲れを感じているなら、まったく異なるジャンルの仕事にチャレンジするのも一手です。もしくは、看護師の仕事を活かせる、医療系ライターなどの仕事を探してみるのもいいでしょう。
家族や友人に、疲れていて辛いことを聴いてもらう
誰かに愚痴を聴いてもらうことでストレスを発散できるなら、終業後や休日にお酒や食事を楽しみながら、思う存分愚痴ってみてはいかがでしょうか? ストレスが原因で心が疲れている場合、案外、これだけでも疲れが大きく軽減されることがあるものです。
研修会に参加するなどしてスキルを磨く
自分のスキル不足・知識不足が原因で、仕事をこなすことが大変で疲れているなら、終業後や休日を利用して勉強するのが一番です。看護系の研修会に参加したり、オンライン学習に取り組んだりと、できることはたくさんあります。
プライベートの時間や趣味を存分に楽しむ
オンオフの切替がうまくいかず疲れが溜まっているなら、退社後は仕事のことは一切考えず、プライベートの時間を楽しむようにすると、気持ちが晴れて、疲れが溜まりにくくなるものです。
寝具を新調する
肉体的な疲れに悩んでいる場合や、しっかり眠れないことから頭が良く働かなかったり、くよくよと思い悩んだりしがちなら、寝具を見直してみるのも一手です。大谷翔平選手が眠りにこだわっていることがたびたびテレビなどで取り上げられるようになったことで、睡眠の質をあげることが、仕事のパフォーマンスを最大化することに直結すると知った人も多いはず。これはアスリートに限らず誰にとってもいえることなので、試してみる価値は大アリです。大谷選手が愛用している寝具も検索すればヒットするので 、気になる人は店舗で寝試し してみてもいいかもしれません。
アロマやストレッチ、瞑想などを取り入れてみる
いい寝具に切り替えるタイミングで、アロマやストレッチ、瞑想なども取り入れれば、さらに上質な睡眠をとりやすくなります。シャワー派の人は、浴槽に浸かる習慣をつけて、入浴剤を楽しむなどしても、心身をリフレッシュしやすくなるでしょう。
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「疲れた」と感じたときには、まずは自分を見つめる時間を持とう
ここまで説明してきた通り、看護師が「疲れた」と感じる理由および対処法はいくつか考えられますが、考えられる原因を一つひとつ確認しても、自分がどれに該当するかがすぐにはわからないという場合もあるでしょう。なぜかというと、疲労やストレスは、自分でも気づかないうちに蓄積されていることが多いからです。そのため、「なんだか疲れた気がする」と感じた時点で、自分を客観視して原因を分析することがとても大切。「忙しいから」と後回しにしていたら、あるとき急に、緊張の糸がプツンと切れて、「仕事を辞める」以外の選択肢を選べなくなってしまう可能性もあるので、そうなる前に、自分を見つめる時間を持つことを大切にしてくださいね。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年5月時点の情報を元に作成しています。