
レセプト点検は、患者負担分以外の診療報酬を保険者に請求する上で欠かせない業務です。もし、レセプト点検でミスが生じた場合は、診療報酬の受け取りが遅れてしまったり、返戻再請求などの余計な作業が増えてしまったりと、医療機関の経営に直結します。
そのため、レセプト点検には正確さが求められ、開業医や勤務医・スタッフの負担になる要因となります。また、勤務医時代よりも開業医になってからの方がレセプト点検にかかる責任が大きくなり、面倒ですよね。
レセプト点検をレセプトチェックソフトで効率化できれば、開業医や勤務医・スタッフの負担も減り、他の業務に人的資源を投下できます。
この記事では、そんな悩みをお持ちの方に向けて、レセプトチェックソフトで何ができるのかやおすすめのレセプトチェックソフト3選をご紹介します。
レセプト点検って何をするの?
ソフトを紹介する前に、まずは、レセプト点検とはどのような業務であるのかを説明します。
レセプト点検とは、診療報酬明細書(レセプト)を点検する業務です。
医療機関で実施する「診療」「投薬」「手術」などの医療行為にはそれぞれに点数がつけられているため、医療機関はそれを集計する必要があります。集計した点数を元に作成した診療報酬明細書で、自己負担分は患者に、それ以外のぶんは保険組合などに請求します。
これらの請求内容に間違いがないかどうかを点検することを「レセプト点検」といい、点検方法としては、目視による点検のほか、レセプトチェックソフトなどを使う方法があります。
レセプト点検の具体的な点検内容
続いては、レセプト点検の具体的な点検内容を説明します。
保険点数表の算定ルールと合っているかをチェック
レセプト点検においてまず確認すべきは、「保険点数表の算定ルールと合っているかどうか」です。保険点数表は2年ごとに改定されるため、最新のものではない保険点数表と照らし合わせたらミスが発生する場合があります。
医療行為と病名がマッチしているかどうかをチェック
加えて、医療行為と病名がマッチしているかどうかも大切なチェックポイントです。これをチェックすることによって、診療内容や処方薬の間違いが見付かることもあります。間違いがなかったとしても、チェックのタイミングで改めて患者情報を確認することは大切です。
レセプト点検は誰にでもできる?
レセプト点検は、必ずしも資格がなければできないというわけではありません。しかし、単月のチェックのみならず、複数付きの突合やひとりの患者に関する突行点検が必要なこともあるなど、とても複雑なため、未経験のスタッフに任せることは可能な限り避けるべきです。開業時に経験豊富なスタッフを採用することができず、ひとまずは経験の浅いスタッフに任せるしかないにしても、働きながら必要なスキルを磨いてもらうことは必須となります。
しかし、その方法ではレセプト点検の精度が落ちるため、レセプトチェックソフトの導入を検討したほうがいいというわけです。
目視で点検する場合、あると役立つ資格
ちなみに、どのような資格を持っているスタッフであれば、高い精度でレセプトをチェックできるかというと、以下のような資格保持者ということになります。
診療報酬請求事務能力認定試験
診療報酬請求事務に従事する人の資質向上を図ることを目的に実施されている全国一斉統一試験です。医科と歯科にわかれて、それぞれ学科試験と実技試験が行われます。
参照: 公益財団法人 日本医療保険事務協会「診療報酬請求事務能力認定試験」
医療事務認定実務者(R)試験
診療所での外来症例を想定した診療報酬明細書作成問題を通して、医療事務の実務における基本習熟度を客観的に判断する試験です。
参照: 全国医療福祉教育協会「医療事務認定実務者(R)試験とは?」
医療事務技能審査試験(メディカルクラーク(R))
医療事務業務に従事する人の知識と技能を審査および証明して、医療事務職の職業能力の向上および社会的経済的地位の向上に資することを目的としている試験です。
参照: 一般財団法人日本医療教育財団 医療事務技能審査試験(メディカルクラーク(R))
医科医療事務管理士(R)技能認定試験
日本初の「医療事務の資格」として医療機関に認知されている資格です。合格するためには、カルテの内容をきちんと理解して正確に治療費を計算する知識とスキルだけでなく、患者に対する接遇力なども必要です。
参照: JSMA技能認定振興協会「医科医療事務管理士(R)」技能認定試験
レセプトチェックソフトでできること
続いては、レセプトチェックソフトを使えばどんなことができるのかを説明していきます。
レセプトチェックソフトとは、医療機関が作成したレセプト(診療報酬明細書)の点検を行うソフトウェアのことで、レセプトチェックの手間を大幅に減らせるものです。
実際に病院で導入したところ、職員一人が点検するレセプト件数は大幅に減り、保険請求にかかる残業時間を削減できたという声もあがっています。
ただし、「レセプト点検」とひとえに言っても、その点検内容や業務内容は多岐にわたります。医療機関によっても異なるでしょう。
自院の経営改善に役立つかどうかを判断いただくために、まずはレセプトチェックソフトで何ができるのかをご紹介します。
レセプトの様式の不備の確認
レセプトの様式自体に不備がある状態で保険者に請求すると、診療内容を審査する前に返戻されてしまい、二度手間となります。レセプトチェックソフトでは、このような様式の不備を点検し、修正を促してくれる機能があります。
様式上の不備の点検は単純作業となるため、点検を疎かにしてしまい、見落としが発生しかねません。これを機械に任せることで、点検ミスがなくなりレセプトの精度が上がるだけでなく、医療スタッフの負担が軽減されます。
病名の有無の確認
レセプト点検において最も主要な点検といえるのが、算定された診療行為と医薬品に対応した病名が存在するかの確認です。こちらもレセプトチェックソフトで可能です。
点検では、専門的な知識を有した医師に見てもらう必要があります。これを機械に任せることで、医師の負担が減るだけでなく、点検していた時間にかかるコストを削減でき、その分、他の業務を行えます。
算定項目の確認
点検には、診療行為どうしの禁忌チェック、医科と調剤の突合チェック、過去分との縦覧チェックなどの複雑なものも存在します。中には、医療機関独自で点検項目を設けている場合もあります。レセプトチェックソフトでは、それらのカスタム条件を登録できます。
複雑な点検条件が絡み合うと、点検ミスも発生しやすいです。これを機械に任せることで、点検ミスがなくなるだけでなく、複雑な条件を照らし合わせるのに要していた時間が削減できます。これによって、勤務医や医療スタッフの残業時間も見直せるでしょう。
レセプト点検ソフトを選ぶ際の5つのポイント
レセプト点検ソフトでできる点検内容は、製品ごとに大きな差はありません。
とはいえ、画面の見やすさや操作性、機能などで、製品ごとの違いが表れます。
実際にレセプト点検ソフトを選ぶ上で見ておきたいポイントを、5つ解説します。
帳票の読み込みに対応しているか
保険者に請求して査定または返戻された場合、返ってきた増減点連絡書や返戻内訳書CSVファイル等の読み込みに対応しているかどうかは、重要なポイントの1つです。
厚生労働省から返却された保険請求に係る結果ファイルを読み込み、一元管理することで、業務の効率化が期待できます。また、再審査請求する際にも、同一ソフト内で結果を確認し、修正後の点検までを完結させられるというメリットがあります。
査定・返戻結果が画面上確認しやすいか
帳票の読み込みに対応していた場合は、査定・返戻結果が画面上で確認しやすいかに注目してください。具体的には、次のような機能が備わっていると望ましいです。
レセプトと増減点連絡書・返戻内訳書CSVが紐付く
レセプト上のどこが査定・返戻されたかが色付け表示される
縦覧・突合の情報も表示される
査定率や返戻率がグラフで表示される
これによって、効率的に査定・返戻結果が確認でき、レセプト点検⇒査定返戻の分析・対策⇒翌月の点検をルーティン化することで、より精度の高いレセプトチェックが実現します。
必要機能が備わっているか
レセプト点検の項目は、医療機関の規模によって必要有無が変わってきます。DPC制度に参加している医療機関でしたら、DPCレセプトに対する診断群分類の点検が必要です。逆に、クリニックでは、そのような点検は不要となります。
このように、自院の規模に合った点検機能が備わっているのかという観点で選びましょう。反対に、不要な機能が備わっているせいで値段が高く設定されている場合は、より自院の必要機能に絞られている製品を選択するのがよいでしょう。
画面操作がしやすいか
レセプトチェックソフトがいくら便利な機能を備えていても、それを使いこなせなければ意味がありません。操作性が悪く、使えるスタッフが限られてしまうとかえって統制が取りづらく、管理が大変でしょう。操作誤りも発生しかねません。
そのため、画面の操作がしやすいかという基準で選ぶことも必要です。ボタンの数が少なかったり、メニュー項目から内容が推測できたり、操作ガイドが表示されたりしているかを確認しましょう。
サポート体制は充実しているか
レセプトチェックソフトを使用していると、マニュアルだけではどうしても理解できない部分が出てくるかと思います。推測だけで進めて、点検誤りが発生する事態は避けたいです。
そのため、製造業者のサポート体制が充実しているかどうかも、製品を選ぶ上で重要な要素になってきます。具体的には、メールや電話による問い合わせ対応を行っているか、サポート期間が決まっているか、24時間体制でサポートしてくれるかなどです。
また、製造業者に医療事務とシステムの両方を理解してくれる担当者がいるかどうかも大切です。それにより問い合わせ対応がスムーズに完結しますので、業務効率化に繋がります。
おすすめのレセプト点検ソフト3選
レセプト点検ソフトは、複数の会社から製品が出されています。ここでは、おすすめのソフトを厳選して3種類ご紹介します。
レセプト博士NEO
製品情報
製造会社 | NTTデータアイ |
販売価格 | 要問い合わせ |
査定返戻管理 | ◯ |
縦覧チェック | ◯ |
突合チェック | ◯ |
補助機能 | △ |
画面操作 | ◯ |
レセプト博士は、医療機関の特徴に合わせて4つの商品ラインナップから選ぶことができます。画面操作が簡単なので、レセプト点検を実施するスタッフを増員する際や、担当の異動で引き継ぎを行う際などに、スムーズに対応できます。
また、医療機関独自のチェックを設定することもできるため、医療機関のニーズに合わせたソフトのカスタマイズが可能です。
製品の特徴
簡単な操作で高性能なチェックが実現できる
過去の査定返戻管理機能により、レセプトチェックの精度が高まる
医療機関の規模に合わせた商品バリエーション
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べてらん君コラボPlus
製造会社 | 富士フイルムヘルスケアシステムズ株式会社 |
販売価格 | 要問い合わせ |
査定返戻管理 | ◯ |
縦覧チェック | ◯ |
突合チェック | ◯ |
補助機能 | ◯ |
画面操作 | △ |
べてらん君コラボPlusの主な特徴は、外来レセプト1000枚を1、2分で完了するという脅威のスピードです。12ヶ月分の履歴データも点検できるため、目視による時間を大幅に削減できます。
また、1日単位からの分割チェックが可能なため、点検を日次や週次で分けて、計画的な月の運用をサポートします。チェック結果は完全レセプト形式なので、勤務医や医療スタッフもスムーズに確認可能です。
製品の特徴
院外処方チェック、背反チェック、診療行為回数チェックなどにも対応
レセプト1万件を8分で処理する圧倒的な点検スピード
スマートチェック機能により、退勤後の自動チェックも可能
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Mighty Checker EX
製造会社 | 株式会社エーアイエス |
販売価格 | 要問い合わせ |
査定返戻管理 | ◯ |
縦覧チェック | ◯ |
突合チェック | ◯ |
補助機能 | ◯ |
画面操作 | △ |
Mighty Checker EXは、マルチレセプト機能が搭載されているため、点検時のレセプトと過去のレセプトを同時に表示します。縦覧点検を人手でやろうとすると、過去のレセプトを探して、交互に見比べるという手間がかかります。Mighty Checker EXではそれが不要です。
また、レセプトのエラー箇所をクリックすると、詳細な保険ルールが表示されます。これによって、なぜエラーになったのかをその場で確認し、理解することで、再発防止に繋がります。
製品の特徴
エラー表示の患者ごとに付箋やステータスを入力できる
増減点・返戻の集計結果の分析をクリックのみで簡単操作が可能
入院・外来・過去レセを同時表示できるマルチレセプト機能が搭載
資料請求はこちらから
まとめ
レセプトチェックソフトを導入することで、レセプト点検の質の向上や効率化が実現でき、開業医や勤務医・スタッフの負担が減少します。その結果、余ったリソースを他の業務に割くことが可能となり、職場環境や経営の改善が見込まれるのです。
この記事でご紹介したソフトレセプトチェックソフトの導入を、ぜひご検討ください。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2023年11月時点の情報を元に作成しています。