転職活動を成功させる第一歩が、魅力的な履歴書および職務経歴書作りです。「履歴書や職務経歴書なんて書くことが決まっているんだから、あがいたって無駄」と思う人もいるかもしれません。しかし実際のところ、面談の前段階においての、求職者の人柄や熱意の判断材料は履歴書と職務経歴書しかないので、募集先はこれらの応募書類にしっかり目を通していますし、実際に応募書類から読み取れることは多いものです。では、少しでも魅力的な応募書類に仕上げるには、どんな点を工夫すればいいのでしょうか? 詳しく解説していきます。
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履歴書・職務経歴書作成時にこだわりたい「志望動機」「自己PR」
履歴書および職務経歴書を作成するにあたってこだわりたいポイントは、「志望動機」と「自己PR」の2つです。というより、それ以外の欄はすべて、学歴にしても職歴にしても「正解」が決まっているので、何を書けばいいか迷う必要はなく、工夫することもできません。
一方、志望動機や自己PRは、適当なことを書いて埋めることもできますが、書く内容によって相手の興味を引くこともできます。たとえば、同じ年に同じ学校を卒業して、同じ病院で働いていたふたりの看護師のうちどちらか一方が転職先に採用されるとしたら、最初の判断材料がこの2つになるわけですから、こだわるに越したことはありません。一昔前の、手書きの応募書類がよしとされていた時代であれば、文字が丁寧であるかどうかも選考結果を左右していましたが、パソコンでの作成で問題ないとされる現在は、もう一方の応募者とまず差をつけられるポイントが、志望動機と自己PRの2つ)ということになるのです。
ちなみに、一般的に、志望動機は履歴書、自己PRは職務経歴書に記します。
志望動機は「志望動機欄」に記入して、自己PRは、職務経歴書の職務経歴欄の下に、これまでに身に着けた知識・技術・経験、資格に続けて記入します。
志望動機を書くときの5つのポイントは?
まずは、志望動機を書く際に気を付けるべき5つのポイントを説明します。
①転職を希望している理由を「ポジティブに」説明する
②応募先の医療機関の情報を本文に盛り込む
③長く働きたいと思っていることをアピールする
④文字数は200~300文字程度におさめる
⑤面接時に口頭でも志望動機を伝えられるよう準備しておく
転職を希望している理由を「ポジティブに」説明する
転職を希望しているということは、現状の職場に不満があるか、もしくは、なんらかの理由で今まで通りの働き方ができないということでしょう。いずれの場合も、理由をストレートに伝えるだけでは、「不満を感じるとすぐに転職する傾向にある人なのかもしれない」「採用してもすぐまた働けなくなるかもしれない」と思われる可能性が非常に高いです。
それを避けるために、転職を希望している理由を「ポジティブに」説明することはとても大切です。たとえば、仕事内容に不満があったとして、「これまでの経験を活かして新しい環境で成長したいと考えています」など、ポジティブな言葉に言い換えることはできます。
応募先の医療機関の情報を本文に盛り込む
「なぜその医療機関で働きたいと思ったか」を記すことは必須ですが、「条件がよかったから」では、「自院に魅力を感じてくれているわけではないのだな」と思われてしまいます。一方、志望先の理念や方針にしっかり目を通し、「こういうところに惹かれました」を盛り込んでおけば、「自院についてきちんと調べてくれたのだな」と好印象を持たれやすいです。
長く働きたいと思っていることをアピールする
働いてくれる人を募集している側は基本的にどこも、「できるだけ長く働いてほしい」と思っています。なぜかというと、すぐに辞められて、また採用活動を繰り返さなければならないとなると、時間的にも金銭的にも負担がかかるからです。そのため、長く働きたいと思っていることをアピールすると、採用側に選ばれやすくなります。
逆に言うと、無意識であっても、志望先を「看護師としての目標を達成するための通過点」ととらえた表現を使うと敬遠されます。たとえば、将来の大きな目標を掲げ、「そのためにいろんな現場で経験を積みたい」などと記すと、「ひとつの経験の場ととらえているということは、短期間で辞められるのでは?」と思われる可能性があります。
文字数は200~300文字程度におさめる
志望動機の適切な文字数は200~300文字といわれています。必要な要素をすべて盛り込もうとするとどうしても長くなりがちですが、長過ぎると、読む側にとっては負担となります。しかも、履歴書の志望動機欄はそこまで大きいわけではないので、枠内に長文を入れ込もうとすると必然的に文字が小さくなります。採用側が老眼の可能性を考えると、目を通してもらえない場合もあるでしょう。
面接時に口頭でも志望動機を伝えられるよう準備しておく
志望動機は、履歴書に書いていても、面接で再度聞かれることが多いです。その際、履歴書に書いた文章をまるっとそのまま暗記して答えると、先方からは「ただ単に暗記しているだけで、本心をしゃべっているようには思えない」と思われてしまいます。ネガティブな言い回しを避けることなどを意識しながら、書いた文章を何度か声に出して読むことで、自然なしゃべり言葉として相手に伝えられるようにしておきましょう。
看護師の転職における、パターン別の志望動機例文
続いては、転職理由や転職先などのパターン別に志望動機の例文を紹介していきます。
職場への不満やトラブルが原因の場合、「さらに成長できる環境」を求めての転職であることをアピールする
「看護師として3年働いてきたなかで、看護師としてのスキルをさらに高めて、成長していきたいとの思いが徐々に強くなっていきました。しかし、自分のスキルがどの程度であるのかを客観的な目線を持って判断することは簡単ではありません。そのため、貴院のスタッフ評価制度には大きな魅力を感じました。また、教育制度に関しても充実していることから、適切な指導を受けながら、着実に成長していける職場であることを確信しています。高いモチベーションを維持して働くことで、地域のみなさんにも貢献できたらと考えています」(243文字)
前の職場への不満やトラブルに辟易としていたとしても、転職希望先を前の職場と比較して持ち上げるような表現はご法度。シンプルに、転職希望先のいいと思ったところを伝えるメッセージにすることを心がけましょう。ただし、面接の際には、「その点に関して前の職場では満足していなかったのですか?」と問われる可能性があるので、前の職場に対する批判とならない答え方を考えておきましょう。
出産や育児などのブランクを経て転職する場合、出産・育児の経験を看護に活かしたいことをアピールする
「以前は、○○科に勤務しておりましたが、出産および育児のために4年ほど休職していました。そのため、復職にあたって、ともに働くみなさんにご迷惑をおかけすることのないよう、現在は書籍などで学び直しをしているところです。復職後は、出産や育児を通して学んだことも活かしながら、患者さまの心に寄り添う看護を心がけていきたいと考えているため、【患者さんの話に真摯に耳を傾けるあたたかい医療を心がけています】という貴院の方針に共感を覚えました」(213文字)
ブランクのある看護師を雇う側は、「数年ぶりでも問題なく業務につけるだろうか」と懸念することがありますが、「休職期間に得た学びを今後の看護に活かしていきたい」という前向きな気持ちと伝えることで、好感を抱かれやすくなります。
クリニックから病院へ転職する場合、さまざまな症例の患者に対応できるようになりたいことを伝える
「〇〇科クリニックで看護師としての経験を積んできましたが、患者様の疾患が限定的であることから、より幅広い疾患に対応できる知識と技術を身に着けたいとの思いが強くなっていきました。その点、貴院はさまざまな症例の患者様を受け入れているため、看護師として研鑽を積むことができると確信しています。もちろん、そのぶん厳しい業務になることも覚悟のうえです。また、地域密着型のクリニックで働いてきた経験もしっかり活かして、患者様の心に寄り添った看護を実践していけたらと考えております」(232文字)
クリニックから病院へ転職を希望している場合、実際のところ、「小規模な職場ならではの人間関係にうんざり」「もっと稼ぎたい」などの志望理由の場合も多いでしょう。しかしもちろん、それをそのまま伝えるのはよくありません。では、何と書けばいいかというと、たとえば「さまざまな症例に対応できる」なら志望動機として理にかなっているので、大いに活用するといいでしょう。
病院からクリニックへ転職する場合、患者一人ひとりとじっくり関わりたいことを伝える
「5年間の病院勤務を通して、幅広い看護技術を習得できた経験は私にとって大きな財産となりました。その一方で、一人ひとりの患者様とより深く、じっくりと関わっていきたいという思いが強くなりました。そしてその実現のためには、地域に根差した診療に取り組んでいる診療所に勤務することが一番だという考えに至りました。そんな折、貴院の求人およびホームページを拝見して、患者様のことを第一に考えた数々の取り組みに強く惹かれました。同時に、私がこれまで培ってきた経験を活かして、貴院とともに成長していきたいと考えるようになった次第です」(256文字)
規模の大きな病院から小規模なクリニックへの転職を希望する場合は、地域医療に貢献したい旨を前面に押し出すのが得策です。また、そのクリニックおよび地域の特色についても調べたうえで、どんな点に魅力を感じているのかも盛り込んでいきたいところです。
自己PRに盛り込むべき3つの要素とは?
続いて、自己PRに盛り込むべき3つの要素を説明します。
自己PRは、次の3つの要素に、①②③の順番で触れていくことでうまくまとめることができます。
①自分の長所や強みをしっかり伝える
②自分の長所や強みを活かすことができたエピソードに触れる
③転職先で、自分の長所や強みをどう活かしたいかを述べる
また、前職場が「クリニカルラダー」などの評価制度を導入していて、客観的に評価された数値を示すことができる場合は、①の後に「クリニカルラダーでもこういう評価をいただいています」などと盛り込むことができます。※クリニカルラダーについては後述します。
自己PRの文字数は、志望動機と同程度が妥当だと考えていいでしょう。では、具体的にどのようなことを書けばいいのかを説明します。
自分の長所や強みをしっかり伝える
自己PRにおいて大切なことは、「最初に結論を持ってくること」です。つまり、自分がPRできること=自分の長所や強みを冒頭に持ってきます。
たとえば、「コミュニケーション力の高さには自信があります」「体力には自信があります」など、自分で自分の長所や強みだと自覚していて、なおかつそれに結び付くエピソードを挙げられる長所や強みを伝えます。
自分の長所や強みを活かしたエピソードに触れる
冒頭で挙げた長所や強みに関連するエピソードを1つ、または複数拾い上げます。たとえば、コミュニケーションスキルの高さをアピールするのであれば、看護師を含めたスタッフ全員のなかでムードメーカー的存在として職場の雰囲気作りに貢献していることや、患者との信頼関係構築を大切にしていることなどを、具体例を挙げながら示すといいでしょう。
転職先で、自分の長所や強みをどう活かしたいかを述べる
これまでの経験や、経験から得た強みなどを活かして、転職志望先にどう貢献していきたいと考えているのかをまとめます。たとえば、体力や行動力を強みとしていて、転職志望先が訪問看護にも力を入れていこうとしている状況なら、オンコールにも積極的に対応したいと考えていることなどを伝えるのもいいでしょう。
客観的評価の指標となる「クリニカルラダー」とは?
クリニカルラダーとは、臨床の場で必要な看護師の能力を段階的に示したシステムです。1980年代にアメリカで導入が始まり、日本では2016年に「日本看護協会」によって公表されて以降、導入する医療機関が増えつつあります。また、日本看護協会が公表したクリニカルラダーではなく、クリニックオリジナルの評価制度を導入している医療機関も多いですが、オリジナルの評価制度によって評価された結果に関しても同様に、転職先へのアピール材料として活用することができます。
自己PRのNG事項とは?
自己PRには、盛り込むべきではないこともあります。具体的には下記の4つです。
①具体的なエピソードがなく、証明できないこと
②真実ではないこと
③ネガティブな表現
④自分で考えて行動していないととられる表現
具体的なエピソードがなく、証明できないこと
前述の通り、強みや長所を述べたあとは、それを証明することが必須です。単に、「私はコミュニケーション力が高いです。コミュニケーション力の高さを貴院でも活かして仕事していきたいです」だけだと、本当にコミュニケーション力が高いのかがわからないうえ、自分を客観視できていないととらえられかねません。
真実ではないこと
本当だけど証明できないことだけでなく、本当ではないことももちろんNGです。嘘の自己PRについて面接時に突っ込まれると、必ずぼろが出るものです。仮に先方が嘘を信じて採用されたとしても、働き始めてから嘘だとバレるとがっかりされたり、場合によっては訴えられたりすることもあるかもしれません。
ネガティブな表現
謙虚な性格で、自己PRが一番苦手という人は一定数います。しかし、苦手だからといって自己PR欄を空欄にすることはNGですし、「PRできることはありませんが、そのぶん、なんでもがんばります」なども絶対にダメ。どうしてもずばり言い切ることができないなら、せめて、「自慢できる取り柄がない分、何事に対しても人一倍努力することを心がけてきたので、努力し続けることだけは誰にも負けません」などと言い換えるようにしましょう。
自分で考えて行動していないととられる表現
「誰とも対立することなく、うまくやっていくことができます」などの表現は、本人としては協調性をアピールしたつもりであっても、「周りに合わせているだけで自発的に行動できないだけでは?」ととらえられる可能性が高いので、避けた方が無難です。
看護師の転職における、パターン別の自己PR例文
続いては、看護師の転職における自己PRの例文をパターン別に紹介していきます。
行動力をアピールする場合
「私の強みは、常によりよい看護について考え、理想を形にするために行動できることです。前職は、内科クリニックに5年間勤めていましたが、その間には、“インフルエンザの予防接種がはじまるタイミングをできるだけ早く知りたい”という患者の声をきっかけに、XやInstagramで随時お知らせを発信することを提案して、自らクリニックのアカウントを作成・運営させていただきました。貴院では、訪問看護にも携わっていきたいと考えていますが、患者様のご自宅では基本的にひとりで接することになるので、そこで気づいたことをスピーディーに共有できるよう、コミュニケーションツール選びなどに関しても思いついたことをどんどんシェアしていきたいです」(299文字)
アイディアを思いついたり、患者のニーズに気づいたりした際、どうすればそれを実現できるのかを考えて行動できることは大きな売りになりやすいといえます。「言われたことだけやってくれたらそれでいい」というクリニックもなかにはあるかもしれませんが、そうしたクリニックはそもそも、このタイプの人には合わないでしょう。
傾聴力をアピールする場合
「私が看護を提供するうえでもっとも大切にしていることは、患者様の言葉に真摯に耳を傾け、患者様の心に寄り添い続けることです。前職で多くのガン患者様と接してきたなかで、患者のみなさんがどれだけ不安な気持ちを抱えているのかを知ることができました。なかには、“あなたがいつも親身になって寄り添ってくれるから、気持ちが軽くなります”とお礼の言葉をくださる患者様もいらっしゃいますが、寧ろ私のほうが、多くの大切なことを学ばせていただき感謝の気持ちでいっぱいです。貴院でも、前職での学びを大切に、一人ひとりの患者様の心にしっかりと寄り添い、不安な気持ちを少しでも和らげてあげられるような看護を心がけていきたいです」(298文字)
地域密着型のクリニック、または子どもや高齢の患者が多いクリニックでは、傾聴力の高い看護師は歓迎されやすいでしょう。また、クリニックのホームページで、院長自身が傾聴することを大切にしているとしたためている場合は、それに対して共感の姿勢を示すこともおすすめです。
向上心をアピールする場合
「私は、向上心を持って仕事することを大切にしています。医療は常に進歩しているものなので、昨日までと同じやり方を続けているのでは、患者様にベストな看護を提供することができないと思うからです。そのため、前職の職場でも、先輩看護士や院長にも積極的に質問させていただきながら学びを深めてきましたし、休日には、新しい知識を習得できるチャンスを逃さないよう、セミナーやオンライン講習に参加してきました。また、その過程で、貴院が導入されている免疫療法に興味を抱いた次第ですが、これからも、看護師としてその治療にどう貢献できるかを深く考えて実践していきたいと思っています」(276文字)
志望動機、自己PRの作成に大事な2つのポイント
志望動機、自己PRの両方の作成に大切なポイントは2つあります。まず1つめは、自分を客観的に見つめ直すこと。自分は看護師としてどんなふうに働いていきたいのか、そのためにいま必要なことは何なのか、自分の強みはどこにあり、どう活かすことができるのかを、じっくりと時間をかけて考えることが大切です。そして2つめは、転職志望先についてよく調べることです。どんな方針の医療機関なのか、どんな患者をターゲットとして、どんな医療を提供しているのかを知ることなしには、そこで働きたいと思った志望動機も、そこにどう貢献できるかという自己PRもまとめることができません。この2つはどちらも転職活動するうえで欠かせないことなので、転職志望先がまだみつかっていないけど転職したいと考えているなら、まずは1つめの「自分を客観的に見つめ直すこと」から始めてみてもいいかもしれませんよ!
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この記事は、2024年7月時点の情報を元に作成しています。