「患者が増えて手が回らなくなった」「学会出席のためにどうしても診療できない日がある」などの理由で、非常勤医師を雇いたいと考えている医師、既に雇っている医師は多いでしょう。
これから非常勤医師を雇いたいと考えている医師にとっての課題のひとつが、「給与をいくらに設定したらいいのか?」ということです。
そのためにも気になるのが給与相場ですが、非常勤医師の給与相場は実際のところどのくらいなのでしょうか?まずは、「非常勤医」の定義、クリニックにおける主な役割・業務内容について見ていきましょう。
非常勤医師の定義について
医師をアルバイト(=非常勤)として雇いたいといっても、勤務時間数が一定時間を超える場合は、常勤とみなされることもあります。で
は、常勤と非常勤はどのように区別されているかというと、厚生労働省は、「原則として病院で定めた医師の勤務時間のすべてを勤務する者」と定めています。さらに、「病院で定められた1週間の勤務時間が32時間未満である場合は、32時間以上勤務している医師を常勤医師、その他の医師は非常勤医師である」とも記しています。
ただし、実際のところは、医療機関ごとに異なる基準で常勤・非常勤を区別しているため、この原則に当てはまらない場合もあり得ます。
参照: 医療法第25条第1項の規定に基づく立ち入り検査要綱の一部改正について[別紙](PDF96枚目)より一部抜粋
非常勤医師の主な働き方
非常勤医師の働き方は大きく2パターンにわけられます。
ひとつは、決まった曜日や決まった時間に出勤する「定期非常勤」という働き方です。定期非常勤で働いてくれる医師を採用するケースはいくつか考えられますが、「常勤医師がみつからない」「常勤医師の休職中に期間限定で診療を頼みたい」などの理由で探すケースが多いようです。
もうひとつの働き方は「スポット」です。こちらは、呼び方の通り、「この日一日だけ頼みたい」「この期間だけ頼みたい」といった場合に、該当日時にスポットで働いてもらう方法です。常勤医師が体調不良で休まざるを得ない場合や、もしくはインフルエンザや花粉症のシーズンで人手が足りなくなる場合などが考えられるでしょう。
これらの前提をもとに、非常勤医の時給相場について見ていきましょう。
非常勤医師の時給相場は?
厚生労働省が公表している「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、非常勤医師の1時間当たりの所定内給与額は1万1,231円です。男女別にみると、男性は1万1,754円、(やや金額が低くなってくるものの)女性は1万68円と、医師のアルバイトの時給はかなり高いことがわかります。 ※男女計・男女別ともに他に1万円を超えている職種は医師の他にありませんでした。
ちなみに、1時間当たりの所定内給与額2位は歯科医師で、男女計が4,705円、男性のみは5,317円、女性のみは3,877円と公表されています。
参照: 厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」における「短時間労働者の職種(小分類)別1時間当たり所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業別)」エクセルファイルより一部抜粋
非常勤医師の時給相場は地域によって異なる?
非常勤医師の時給相場は地域によって差があります。具体的にどのくらいの差があるのかは、働き手の募集媒体や募集時期によって異なってきます。
たとえば、医師のアルバイト情報サイト「Dr. アルなび」に2023年10月時点に掲載されていた日勤アルバイト求人情報をもとに算出された時給額は、南関東エリアが1万1,374円であるのに対して九州・沖縄エリアは9,855円と、1,500円以上の差があります。
同じ時期の募集であっても、募集媒体が異なれば数字が異なってくるので、あくまで参考程度にとらえていればよいことですが、アルバイトを探す側からしたら「少しでも条件がいい募集先がいい」と思うのは当然ですので、募集を出す際には平均と比べて安すぎない金額であることを意識することは大切です。
非常勤医師の時給相場は診療科によって異なる?
非常勤医師の時給相場は診療科によっても異なります。
同じく「Dr. アルなび」を参照して比較したところ、トップ3、ワースト3は以下の通りです。
【非常勤医師の時給相場トップ3】
- 麻酔科=13,283円
- 耳鼻咽喉科=12,025円
- 救急・ICU=11,688円
【非常勤医師の時給相場ワースト3】
- 美容外科=9,667円
- 緩和ケア科=10,000円
- リハビリテーション科=10,075円
麻酔科の医師は、独立後、フリーランスとして働く人も多いですが、他の診療科と比べてかなり時給が高いので、フリーランスや非常勤という働き方が合っているといえるでしょう。雇うほうとしても、常勤で務めてほしいというケースは少ないはずなので、雇う場合には、高額な時給に見合った腕のいい医師を探すことを心がけるといいでしょう。
耳鼻咽喉科は、花粉症シーズンなどには人手が不足しがちなので、自ずと時給が高くなることが考えられます。また、救急・ICUに関しては、重責がかかる可能性があることも時給の高さに関係しているでしょう。
美容外科や緩和ケア科、リハビリテーション科は、トップ3と比べると精神的負担なども少なく、比較的楽な気持ちで働いてもらいやすいかもしれません。
ただし、応募する側からすると少しでも時給が高いほうがいいのはもちろん、時給以外に、「働きやすい環境であるかどうか」などもチェックされているので、雇う側もよりよい人材を確保するためにも、アピールするポイントについてよく考える必要があるでしょう。
非常勤医師を採用する際は就業規則をきちんと作成しよう
非常勤医師を採用する際は、非常勤医師用の就業規則を作成しておくことが大切です。雇用期間や更新の有無をはじめとした雇用契約についても、採用前にきちんと明示しておくことで安心して働いてもらえますし、万が一トラブルがあった場合にも、雇用契約に不備がなければ大事に至ることがありません。
就業規則や雇用契約の内容をどのように決めていけばいいかわからない場合は、社労士をはじめとする専門家に相談するのが一番! もしも周りに頼れる専門家がいない場合はクリニック開業ナビで紹介することもできるので、どうぞ気軽にご相談くださいね。
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この記事は、2023年12月時点の情報を元に作成しています。