
2022年の診療報酬改定において「地域支援体制加算」が見直されたことで、これまで地域支援体制加算を算定できなかった薬局も取得を目指しやすくなっています。そこで今回は、地域支援体制加算の算定要件を詳しく解説していきます。
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地域支援体制加算とは?
地域支援体制加算とは、地域医療に貢献している薬局を評価するために設けられた加算です。
以前は、薬局の体制整備を評価する加算として「基準調剤加算」が設けられていましたが、2018年の調剤報酬改定によって基準調剤加算が廃止されたことに伴い、地域支援体制加算が新たに設けられることとなりました。
地域支援体制加算は基準調剤加算とは異なり、地域医療への貢献実績を重視する加算となっています。たとえば、かかりつけの薬剤師が適切な薬学的管理や服薬指導をおこなっているか、在宅薬剤管理の実績があるか、休日や夜間の対応実績があるか、などが評価項目として設けられています。
地域支援体制加算が新設された理由は、地域包括ケアシステムの推進 が不可欠だったこと
地域支援体制加算が新設された背景には、2014年度以降、地域包括ケアシステムの構築が進められてきたことがあります。2025年問題に対応するためにも、国として地域包括ケアシステムを推進することが不可欠であるため、地域医療に貢献している薬局は明確に評価していこうとの考えです。
地域支援体制加算には4つの算定区分がある
地域支援体制加算は、調剤基本料の区分によって「地域支援体制加算1」「地域支援体制加算2」「地域支援体制加算3」「地域支援体制加算4」の4つの算定区分に分類されています。
地域支援体制加算1および地域支援体制加算2は、「調剤基本料1」を算定する薬局が加算できます。
地域支援体制加算3および地域支援体制加算4は、処方箋集中率が85%以上の薬局や大型チェーン薬局をはじめ、「調剤基本料1」以外を算定する薬局が加算できます。
また、算定区分ごとに満たすべき要件が異なります。続いて、それぞれの区分ごとの算定要件をみていきましょう。
地域支援体制加算1の算定要件
施設基準
次のいずれにも該当する保険薬局であること
イ. 調剤基本料1を算定している保険薬局であること
ロ. 地域医療への貢献に係る十分な体制が整備されていること
ハ. 地域医療への貢献に係る十分な実績を有していること
「ロ 地域医療への貢献に係る十分な体制の整備」「ハ 地域医療への貢献に係る十分な実績」については、次の11の施設基準を満たしているかどうかで判断されます。
1. 地域医療に貢献する体制を有することを示す実績
2. 患者ごとに適切な薬学的管理をおこない、かつ、服薬指導をおこなっている
3. 患者の求めに応じて、投薬に係る薬剤に関する情報を提供している
4. 一定時間以上の開局
5. 十分な数の医療品の備蓄、周知
6. 薬学的管理・指導の体制整備、在宅に係る体制の情報提供
7. 24時間調剤、在宅対応体制の整備
8. 在宅療養を担う医療機関、訪問看護ステーションとの連携体制
9. 保健医療・福祉サービス担当者との連携体制
10. 医療安全に資する取組実績の報告
11. 集中率85%超の薬局は、後発品の調剤割合50%以上
上記のうち「1. 地域医療に貢献する体制を有することを示す実績」は、次の項目のうち、a~cのすべてと、dまたはeを満たすことが要件とされています。
a. 麻薬小売業者の免許を受けている
b. 在宅薬剤管理の実績が直近1年間で24回以上ある
c. かかりつけ薬剤師指導料に係る届出をおこなっている
d. 服薬情報等提供料の実績が直近1年間で12回以上である
e. 直近1年間において、薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度などの研修認定を取得した保険薬剤師が地域の多職種と連携する会議に1回以上出席している
点数
39点
地域支援体制加算2の算定要件
施設基準
次のいずれにも該当する保険薬局であること
「地域支援体制加算1」同様、11のすべての施設基準と、a~cのすべて、dまたはeを満たしたうえで、次の9項目のうち3項目以上を満たしている必要があります。
一 夜間・休日等の対応実績が年間400回以上
二 麻薬の調剤実績が年間10回以上
三 重複投薬・相互作用防止加算等の実績が年間40回以上
四 かかりつけ薬剤師指導料等の実績が40回以上
五 外来服薬支援料の実績が年間12回以上
六 服用薬剤調整支援料の実績が年間1回以上
七 単一建物診療患者が1人の在宅薬剤管理の実績が年間24回以上
八 服薬情報等提供料の実績が60回以上
九 薬剤師認定制度認証機関が認証している研修認定制度などの研修認定を取得した保険薬剤師が地域の多職種と連携する会議に年間5回以上出席
点数
47点
地域支援体制加算3の算定要件
施設基準
「地域支援体制加算1」「地域支援体制加算2」同様、11のすべての施設基準を満たす必要があります。そのうち、「1. 地域医療に貢献する体制を有することを示す実績」に関しては、麻薬小売業者の免許を受けているうえで、「地域支援体制加算2」の算定要件として列記した一から九の実績要件のうち、四および七を含む3項目以上を満たすことが求められます。
点数
17点
地域支援体制加算4の算定要件
施設基準
「地域支援体制加算1」「地域支援体制加算2」「地域支援加算体制3」同様、11のすべての施設基準を満たす必要があります。「1. 地域医療に貢献する体制を有することを示す実績」に関しては、「地域支援体制加算2」の算定要件として列記した一から九の実績要件のうち、8項目以上を満たすことが求められます。
参考:厚生労働省「個別改訂項目について」PDF457枚目(p.448)~より一部抜粋
点数39点
地域支援体制加算1~4すべてに求められる要件
前述の要件以外に、地域支援加算体制1~4すべてに求められる要件もあります。内容は以下の通りです。
100%
11
A1:B22
内容
カウント: 44
スクリーン リーダーのサポートを有効にする
スクリーン リーダーのサポートを有効にするには、Ctrl+Alt+Z を押します。キーボード ショートカットの詳細については、Ctrl+スラッシュ を押します。
内容 | 詳細 |
1,200品目以上の医薬品を備蓄 | 保険調剤に係る1,200品目以上の医薬品を備蓄していること |
24時間調剤・在宅業務対応体制の整備 | 患者の求めに応じて、24時間調剤および在宅業務に対応できる体制を整備していること。なお、当該保険薬局のみで対応できない場合、近隣の保険薬局との連携も可 |
緊急時連絡先の明示・掲示 | 初回処方箋受付時などに、緊急時の連絡先となる担当者の電話番号、緊急時の注意事項、曜日や時間ごとの担当者の連絡先等を文書で交付すること。また、自局や連携薬局に連絡先電話番号等を掲示すること |
24時間調剤・在宅業務対応体制の周知 | 地方公共団体や保険医療機関、福祉関係者等に対して、24時間調剤および在宅業務対応体制の周知を自局、あるいは薬剤師会等を通じておこなっていること |
薬学的管理・記録・指導 | 患者ごとに薬剤服用歴の記録を作成して、必要な薬学的管理をおこなっていること。また、調剤の都度必要事項を記入して、薬歴に基づいて薬剤の服用・保管などに関する必要な指導をおこなっていること |
一定時間以上の開局 | 平日は1日8時間以上、土曜日、日曜日のいずれかは一定時間以上開局し、週に45時間以上開局していること |
管理薬剤師の資格要件 | 当該保険薬局の管理薬剤師は、以下の要件をすべて満たすこと ・保険薬剤師として5年以上の薬局勤務経験がある ・当該保険薬局に週32時間以上勤務している ・当該保険薬局に継続して1年以上在籍している |
在宅患者訪問薬剤管理指導の届出、研修、対応体制の周知 | 地方厚生局に在宅患者訪問薬剤管理指導の届出を行おこなっていること。また、保険薬剤師に研修等を受けさせて、在宅患者への薬学的管理指導が可能な体制を整備していること。また、在宅患者訪問薬剤管理指導をおこなっている旨を文書で交付、あるいは掲示して周知していること |
定期的な研修計画の作成と研修の実施 | 調剤従事者等の資質向上を目的として、研修計画を作成、計画に基づいて研修を実施していること。薬学管理指導や医薬品の安全、医療保険等に関する外部の学術研修を定期的に受けさせていること
保険薬剤師に対して、学会への定期的な参加・発表や学術論文の投稿などをおこなわせていることが望ましい |
PMDAメディナビによる情報収集 | 医薬品医療機器情報配信サービス(PMDAメディナビ)に登録して、医薬品緊急安全性情報や安全性速報、医薬品・医療機器等安全性情報などの最新情報を収集して、保険薬剤師に周知していること |
調剤された医薬品の情報提供体制の整備 | 当該保険薬局で調剤された医薬品に係るものについて、以下の情報を患者に随時提供できる体制にあること ・一般名 ・剤形 ・規格 ・内服薬にあっては製剤の特徴(普通製剤、腸溶性製剤、徐放性製剤) ・緊急安全性情報、安全性速報 ・医薬品・医療機器等安全性情報 ・医薬品・医療機器等の回収情報 |
患者のプライバシーへの配慮や高齢者への配慮 | パーテーション等など仕切られたカウンターを有するなど、患者のプライバシーに配慮した体制をとっていること。また、高齢者への配慮や丁寧な服薬指導の観点から、必要に応じて患者が椅子に座った状態で服薬指導などを受けられることが望ましい |
OTC医薬品の販売 | 一般用医薬品(OTC)を販売していること。また、OTC医薬品の販売においては、購入者の薬歴に基づいて製品の情報提供をおこない、必要に応じて医療機関へのアクセスの確保をおこなっていること |
健康情報の拠点 | 地域住民の生活習慣の改善、疾病の予防に資する取組として、生活習慣全般(栄養・食生活、身体活動・運動、休養、こころの健康づくり、飲酒、喫煙など)の相談に対応して、健康情報の拠点としての役割を果たすこと |
健康相談等に対応していることの周知 | 健康相談や健康教室をおこなっている旨を当該薬局に掲示して、周知していること |
医療材料および衛生材料の供給体制の整備 | 医療材料や衛生材料を供給できる体制を整備していること |
在宅療養支援に係る診療所、病院、訪問看護ステーションとの連携 | 患者からの同意が得られた場合、訪問薬剤管理指導の結果や医療関係職種による患者に対する療養上の留意点などの情報を、関係する医療機関や職種に文書(電子媒体を含む)により随時提供していること |
地域の介護支援専門員との連携 | 地域の介護支援専門員(ケアマネージャー)や社会福祉士など、他の保健医療サービスや福祉サービスとの連携調整を担当する者と連携すること。また、患者の服薬情報に関する相談の受付など、地域包括支援センターと連携をおこなうこと |
プレアボイド事例の報告 | 薬局機能情報提供制度において、「プレアボイド事例の把握・収集に関する取り組みの有無」を「有」として直近1年以内に都道府県に報告していること。なお、「有」として報告できるのは次のいずれかに該当する場合である
・日本病院薬剤師会においておこなわれているプレアボイド事例の把握・収集に関する取り組みに参加して、事例を提供 ・報告の前年1年間(1月~12月)に、薬局で発見したヒヤリ・ハット事例を報告 |
副作用報告に係る手順書と報告体制の整備 | 副作用報告に係る手順書を作成して、報告体制を整備していること |
処方箋集中率が85%超の場合、後発医薬品のシェアが50%以上 | 処方箋集中率が85%を超える薬局において、後発医薬品の数量シェアが50%以上となること(施設基準届出自の直近3ヶ月の実績) |
地域支援体制加算を算定するためには2種類の届出が必要
地域支援体制加算を算定するためには、事前に厚生局に届出を提出する必要があります。
「地域支援加算体制1~4の共通書類」のほかに、地域支援体制加算1または2の届出をおこなうための書類、地域支援体制加算3または5の届出をおこなうための書類のいずれかが必要です。
「地域支援体制加算1~4の共通書類」には4種類の添付書類をつけることが必要なので、添付漏れのないよう、届出を提出する際にはしっかり確認しましょう。
地域支援体制加算に関してよくあるQ&A
地域支援体制加算に関してのよくある質問に対して、厚生労働省保険局は以下のように回答しています。
Q. 地域支援体制加算の届出をおこなっている調剤基本料1を算定する保険薬局において、地域支援体制加算2の新規届出をおこなう場合、地域支援体制加算1の実績を満たすことを改めて示す必要があるのか?
A. 地域支援体制加算1の実績を満たすことを改めて示す必要があります
Q. 地域支援体制加算2、4および4の実績要件については、①薬剤調製料の時間外等加算および夜間・休日など加算の算定回数の合計が 400 回以上であること ②薬剤調製料の麻薬を調剤した場合に加算される点数の算定回数が10 回以上であること ③調剤管理料の重複投薬・相互作用等防止加算の算定回数および在宅患者重複投薬・相互作用など防止管理料の合計が 40 回以上であること と定められているが、令和4年3月までの実績について、薬剤調製料を調剤料、調剤管理料を薬剤服用歴管理指導料と読み替えることでよいか?
A. 令和4年3月までの実績について、薬剤調製料を調剤料、調剤管理料を薬剤服用歴管理指導料と読み替えることで構いません
Q. 地域支援体制加算の実績要件のうち、「在宅患者訪問薬剤管理指導料等の算定回数」および「在宅患者訪問薬剤管理指導料等の単一建物診療患者が1人の場合の算定回数」について、新型コロナウイルス感染症特例による在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1の算定実績も含めることができるのか?
A. 地域支援体制加算の施設基準に関して、「COV 自宅」または「COV 宿泊」による対応において、薬剤師が訪問して対面による服薬指導その他の必要な薬学的管理指導を実施した場合(在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1(=500 点)を算定する場合)、在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者であれば、在宅患者への対応の実績として回数に加えることができます
参照:厚生労働省保険局「疑義解釈資料の送付について(その1)」PDF 142枚目~より一部抜粋
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地域支援加算体制新設の背景を忘れず、地域医療への貢献を第一に考えよう
地域支援体制加算を得るための要件は多岐にわたるため、要件をクリアしているかどうかを一つひとつ確認していくのにも時間がかかります。しかし、地域支援体制加算が新設された背景に2025年問題があることを考えてもわかるとおり、各薬局には今以上に地域に貢献していくことが求められています。一人ひとりが安心して暮らせる街の実現のためにも、医療機関や自治体とも提携しながら、地域住民の健康をしっかりサポートしていくことを第一に考えれば要件をクリアしやすくなるはずなので、まずは地域医療への貢献を第一に考えられるといいですね。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年1月時点の情報を元に作成しています。