MS法人と医療法人の運営に関して違法とされていることとは?

クリニックの法人化に際して、MS法人も設立する場合、もしくは医療法人設立後にMS法人も設立する場合、目先の利益にとらわれすぎて違法を犯すことがないよう注意することが大切です。具体的にどんなことが違法とされているのかを解説していきます。

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目次
  1. MS法人とは?
  2. MS法人の社員が「業務委託」で医療法人に出向いて仕事する場合、該当社員に対して医療法人から業務命令を出せない
  3. 医療法人からMS法人へ転職した社員は、離職後1年間は医療機関に派遣させてはならない
  4. 「偽装請負」と判断されたらどうなる?
  5. MS法人の従業員が医療法人に出向する際の注意点
    1. MS法人と医療法人の間で必要事項を書面にしたためる
    2. 服装や勤務態度の規制もMS法人が決める
    3. トラブルがあった場合の責任関係についても定めておく
  6. 医療法人からMS法人への従業員の転籍に関する注意点

MS法人とは?

MS法人とは、「法令上の医療機関でなくてもできること」かつ「医療機関運営に関わること」をおこなう法人です。そのため、医療機関と密に関わることなしには機能せず、医療行為を担当する医療機関の「非医療行為」のみを切り出しておこなうために設立されます。

たとえば、MS法人で所有した建物を医療機関に貸したり、MS法人で取得した医療機器を医療法人にリースしたりといった関係性になります。また、医療機関でおこなった治療の保険請求業務をMS法人でおこなうこともありがちです。

MS法人およびMS法人と医療法人の関係性について、詳しくは以下記事をご参照ください
参照:MS法人とは? 設立のメリットは?

前述の通り、MS法人と医療機関は非常に密接な関係にあり、お互いがお互いに利益をもたらす存在であるということです。それゆえ、法に触れないように注意することが大切です。具体的にどんなことに注意すればいいのかみていきましょう。

MS法人の社員が「業務委託」で医療法人に出向いて仕事する場合、該当社員に対して医療法人から業務命令を出せない

派遣会社に登録している労働者が、派遣会社からの斡旋によって派遣先企業で働くことになった場合、労働者は派遣先企業の業務指示に従って働くことになります。

一方、MS法人の社員が医療法人に出向いて受付業務などに従事する場合、該当社員に対して医療法人から業務命令を出すことができません。なぜかというと、MS法人の社員が医療法人に出向いて仕事することは「労働者派遣」ではなく、「業務委託」になるためです。そのため、医療法人がMS法人の労働者に対して業務命令を出すと、「偽装請負」ととられる可能性があるので十分注意することが必要です。

「偽装請負」とは、実態としては労働者派遣であるにも関わらず、請負契約のように偽装することを意味します 。請負契約においては、業務請負主の社員に対して、委託側が業務指示をおこなったり、契約外の業務を委託したりすることが禁止されています。
参照:厚生労働省「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」について

医療法人からMS法人へ転職した社員は、離職後1年間は医療機関に派遣させてはならない

前述の通り、MS法人が医療機関の業務を「業務委託」として請け負った場合、労働者を派遣することはできません。

しかし、MS法人は「人材派遣業務」をおこなうことができるので、最初から「労働者派遣」という形をとっていれば契約上は問題もありません。

ただし、人材派遣業務をおこなうにあたっても注意すべきことがあります。それはどんなことかというと、医療法人に在籍していた従業員が、MS法人に転職した場合、そこから1年間は医療法人で派遣労働者として働いてはいけないということです。なぜかというと、不当なリストラ手段として利用される恐れがあるためです。

逆にいうと、この抜け道として、前述のように「請負」の形態をとる方法があるということになります。

参照:厚生労働省「離職後1年以内の労働者派遣の禁止について」

「偽装請負」と判断されたらどうなる?

偽装請負であると判断された場合、「労働者派遣法(正式名は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の保護等に関する法律」)」「職業安定法」「労働基準法」のいずれかまたは複数の違反となり、罰則が科されることがあります。たとえば、このうち労働者派遣法第5条第1項に反すると判断された場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。

参照:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

参照:職業安定法

参照:労働基準法

MS法人の従業員が医療法人に出向する際の注意点

「偽装請負」ととらえられないためにも、MS法人、医療法人できちんと連絡を取り合いながら仕事を進めていくことが大切です。たとえば、以下のような工夫をすると、偽装請負と判断される可能性が低くなるでしょう。

MS法人と医療法人の間で必要事項を書面にしたためる

MS法人が受託する業務の内容や業務の手順、就業時間、就業場所、トラブル発生時の対応方法などについて、MS法人、医療法人双方の合意をとったうえで書面にしたためておくといいでしょう。

服装や勤務態度の規制もMS法人が決める

勤務先での服装や勤務態度についての規制も、MS法人で決めることが望ましいといえます。ただし、衛生管理上などの合理的理由がある場合を除きます。

トラブルがあった場合の責任関係についても定めておく

MS法人が医療法人から受託した業務処理によって、医療法人および第三者に損害を与えた場合の責任関係についても、予め定めておくことが望ましいといえます。

医療法人からMS法人への従業員の転籍に関する注意点

医療法人からMS法人への従業員の転籍(転職)に関しての注意点もあります。

何に注意すべきかというと、転籍が拒否されるケースが考えられることを考慮する必要があるということです。もし、白羽の矢を立てた善人が拒否したら、MS法人が設立されたものの、そこで働く人がいないまま、管理コストがかかってしまうということも考えられます 。

このケースは法に触れるということはありませんが、MS法人設立の失敗となり、大きな負債を被る可能性もあるので、十分に注意することが必要ですよ!

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