2024年度の診療報酬改定は、医療、介護、障害福祉サービスの3つが同時に改定される「トリプル改定」となります。診療報酬は2年に1度、介護報酬および障害福祉サービス等報酬は3年に1度改定がおこなわれていることから、3つが同時に改定となるのは6年に1度となります。そのため、注目度が高い改定といわれていますが、具体的にどんなことが変わるのでしょうか? 早速みていきましょう。
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トリプル改定とは?
「トリプル改定」とは、冒頭で述べた通り、医療、介護、障害福祉サービスの3つの報酬が同時に改定されることです。それぞれの報酬の説明は以下の通りです。
2024年度の診療報酬改定はいつ?
診療報酬改定は、例年、4月1日から施工となっていますが、2024年度の診療報酬改定に関しては6月1日からの施工となる予定です。
なぜかというと、通常のスケジュールでは2月初旬に答申がおこなわれ、3月初旬に告示、4月に施行、5月に初回請求とされていましたが、このスケジュールであると、改定期間が実質2~3か月と短いことから、電子カルテやレセコンのベンダーも医療機関も改定作業に十分な時間を持つことができなかったためです。
そこで、中医協総会が議論をおこなった結果、2024年度の診療報酬改定より、薬価改定については4月1日、薬価以外の改定については6月1日に施行することが事務局より提案されて、了承されています。
トリプル改定のポイントは?
続いては、中央社会保険医療協議会(=中医協)で協議されている、2024年度の診療報酬改定のポイントから、重要なポイントをピックアップして解説していきます。なお、中医協の協議については下記資料にまとめられているため、ここから概要を読み解いていきます。
参照:厚生労働省「第580回 中央社会保険医療協議会 総会(公聴会)資料」(令和6年1月19日)
医師の働き方改革へ対応と人材確保の両立
2024年4月より、医師の働き方改革の新制度が施行されることに伴い、医師の労働時間短縮および健康確保のための措置が整備されていく見込みです。
しかし一方で、高齢化により医療需要が増加している状況に多王するために、医療分野における人材を確保することも必要です。十分な数の医療従事者を確保することによって、医師が健康的に働き続けられる環境を整えつつも、医療の質と安全性をキープできることになります。
医療DX・介護DXの推進
政府は、ICT活用に向けて医療DXおよび介護DXをさらに推進していく方針です。オンライン資格確認等システムの拡充や電子処方箋のシステム導入によって、電子カルテ情報のみならず介護情報や健診・予防接種等の自治体が保有している情報などのスムーズな共有を目指しています。ICTをうまく使うことは、先に述べた人材確保の課題解決に役立つだけでなく、地域包括ケアシステムの構築にもつながっていきます。
地域包括ケアシステムの深化(医療機関の機能分化など)、介護サービスとの連携
地域包括ケアシステムの構築を実現するためにおこなわれているさまざまな取り組みのなかでも、医療機関の機能分化は特に重要です。また、基幹病院、クリニック、介護施設などの各医療機関が連携を図ることも大変重要です。
栄養管理やリハビリの推進
高齢化社会において医療費が今以上増大することを防ぐためにも、栄養管理やリハビリを推進することで、ADL(日常生活動作)の低下などを未然に防ぐことがとても大切です。また、生活習慣病の未病予防にも力を入れることが大切です。
かかりつけ医機能の評価
かかりつけ医機能を持つ診療所を評価する「機能強化加算」の要件は、2022年の診療報酬改定でも見直されましたが、前述した医療機関の機能分化やADL低下の未然防止を実現するためにも、引き続ききちんと評価していくことが必要だと考えられます。
在宅医療・訪問看護の対応施設数増加および質の担保
ADL低下の未然防止と併せて考えたいのが、在宅医療や訪問看護の強化です。「最期まで住み慣れた自宅で暮らしたい」というニーズに応えるためには、在宅医療や訪問看護を提供する医療機関を増やしつつも、質の高い医療を提供できるよう体制とを整える必要があります。
口腔機能管理の推進
高齢化社会においては歯科が果たす役割も重要となってきます。口腔健康と心身の健康は大変深く関係しえちるため、病気の予防や治療の計画をしっかりと立てる歯科医が求められます。
かかりつけ薬剤師・薬局の促進
かかりつけ医、かかりつけ歯科医同様、かかりつけ薬剤師・薬局も重要な役割を果たすことになります。また、かかりつけ薬局としての役割を果たす薬局だけでなく、地域の薬局同士が連携することで、地域全体の医療連携を円滑にしていくことも重要とされています。
感染症対策(新興感染症等への対応)
新型コロナウイルスをきっかけに、次なる感染症機器にもスピーディかつ的確に対応するための基盤が整理されています。現在は、「新興感染症発生・蔓延時における医療」「新興感染症以外の感染症に対する医療」「薬剤耐性対策」の3点を軸に議論が進んでおり、治療薬の備蓄や薬局の体制評価、オンライン診療の活用、サーベイランスの強化についても具体的な対策が練られている状況です。
医療計画
数年にわたって続いたコロナ禍や、2024年元日の能登半島地震などをみても、救急医療や、災害時やへき地での医療提供についての見直しが必要であることは明らかです。また、周産期や小児医療についての医療計画も必要とされており、最新の知見や技術を落とし込みながら、適切な報酬体系を構築していく方針となっています。
参照:令和6年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(案)
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2024年度の診療報酬改定に向けて各クリニックが準備すべきことは?
2024年度の診療報酬改定を見据えて、各クリニックが準備すべきことは多いです。たとえば、働き方改革に対応してもこれまで通りの医療を提供するためには、ICTを積極的に導入していくことが不可欠ですし、地域住民の健康を守るためには、エリア内の医療機関との連携体制を強化することが不可欠です。また、在宅医療や訪問看護を導入しない場合でも、導入している医療機関とどのように連携していくかを考えて実践していく必要がありますし、薬局や歯科との連携についても考えていく必要があります。具体的な対応策について、自院でよいアイディアが出ない場合は、開業ナビをはじめとする医療関連の記事に目を通すなどして、各クリニックでできること、やるべきことを考えてみてくださいね。
また、現時点での中医協の協議内容については冒頭に紹介しましたが、新点数および新施設基準などを決定した答申は2月上旬に公表される予定なので、公表された際には改めて内容をよく確認しましょう!
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年3月時点の情報を元に作成しています。