クリニックや病院で働く看護師は、残業にも対応しなければならない場合があります。では、訪問看護に従事している看護師は残業を余儀なくされることはあるのでしょうか? また、あるとしたらその理由は? 残業しなければならない事態は防ぐことができるの? 早速みていきましょう。
訪問看護師の平均的な1日のスケジュールは?
まずは、訪問看護師の平均的な1日のスケジュールをみていきます。
訪問看護師は、午前8時半または午前9時から働き始めて、1日4~5件の訪問を担当するのが一般的です。ただし、次の訪問先までの移動に時間がかかる場合、訪問軒数はそれ以下になることもありますし、その逆の場合はもっと多くなることもあります。
1件当たりの訪問時間は60分前後のことが多く、移動時間や、各訪問先を訪問後に訪問看護ステーションに戻って看護記録を作成する時間などを含めると、7.5時間~8時間程度の勤務時間となります。
以下は、1日のスケジュール例です。
訪問看護ステーションに出勤して、その日のスケジュールを確認します
午前中は、1~2軒ほどのお宅を訪問します
訪問看護ステーションの休憩室または訪問先近くの飲食店などで昼休憩をとります
午後は、2~3軒のお宅を訪問します
最後の訪問先でのケアを終えたら、訪問看護ステーションに戻って訪問看護記録を付けて、主治医やケアマネージャーなどに患者の状況を報告します。必要に応じてそのほかのスタッフにも情報を共有します
残業がなければ、定時で退勤となります
訪問看護における残業の実態は?
続いては、実際のところ、上記のようなスケジュールで1日の仕事を終えることができるのかを解説します。
訪問看護師として働くうえでは、残業を経験することも多いかもしれません。なぜかというと、訪問看護師として働く人を対象に実施されたアンケートで、「残業することがある」と答えている人が多いからです。
訪問看護の労働時間の実態について公表されている最新のデータは、少々古いですが、2014年に実施された「訪問看護実態調査報告書」となります。これによると、2014年5月の1か月間に「超過勤務をした」とするフルタイムの訪問看護師は実に81.9%にものぼります。また、どのくらいの時間を超過しているかというと、6時間以下=32.9%、6時間1分~12時間=22.8%、12時間1分~24時間=20.3%、24時間1分~36時間=9.0%、36時間1分以上=9.1%との回答です。
参照:公益社団法人日本看護協会医療政策部「2014年訪問看護実態調査 報告書」
訪問看護における残業の内容は?
超過勤務となった場合の主な業務内容としては、「記録・報告書の作成」が 69.2%でもっとも割合が高く、続いて、「緊急の訪問」(41.4%)、「他職種・他機関との連絡調整」(39.8%)となっています。
参照:公益社団法人日本看護協会医療政策部「2014年訪問看護実態調査 報告書」
なぜ、これらの業務を時間内に終わらせられない場合があるかというと、訪問看護自体は訪問時間が決まっているため、時間内に終わらせることができますが、訪問件数が多い場合や移動時間が長い場合、看護記録を作成して関係各所に連絡を入れたり、主治医に報告したりする時間を捻出できず、それらの作業が後回しになってしまうためで す。
また、タブレット端末を貸与されていて、かつ電車で移動している場合などはスキマ時間に看護記録をつけることができますが、次の訪問先に向かうため、すぐに車を運転しなければならない場合や、訪問看護ステーションに戻ってパソコンで記録をつけなければならない場合、スキマ時間をうまく活用することができません。ほかに、手書きで看護記録をつける場合も時間がかかり ます。
緊急の訪問に関しては、クリニックや病院に勤める看護師と同じく、患者の容態が急変することなどがあり得るため、やむを得ないといえるでしょう。
訪問看護で時間内に仕事を終わらせるためのコツは?
続いては、訪問看護で時間内に仕事を終わらせるためのコツをみていきます。
スケジュールをしっかり管理する
まず重要なのがスケジュール管理です。利用者を訪問する時間を看護師が決めることはできませんが、基本的には、移動時間を含めて効率的に訪問できるルートが設定されています。そのため、当日の訪問先や移動時間、それぞれの訪問先での看護内容をきちんと把握すれば、どこにスキマ時間が生まれるかなども予測できます。
また、それぞれの訪問先でどのような流れでケアをおこなうのかをおおまかに決めておけば、現場で慌てることなく行動できるため、気持ちにも時間にも余裕が持てます。
単純明快な看護記録の作成を心がける
だらだらした長い文章で構成された看護記録は、作成に時間がかかるだけでなく、主治医や外部の事業所の人間にとっては、読むのに時間がかかるうえ、要点がわかりにくいもの。そのため、要点を押さえたわかりやすい看護記録を作成することはとても大切です。
では、どうすれば要点を押さえたわかりやすい看護記録を作成できるかというと、まずは、管理者や先輩看護士からアドバイスを受けることが大切です。どのような内容を看護記録に残しておくことが大事で、どんな看護記録だと関係各所にとっても読みやすいものであるのかをしっかり教えてもらいましょう。
主治医や関係各所への連絡は後回しにしない
利用者の状態の変化など、主治医や外部の事業所に共有しておくべきことがある場合、訪問先を出たらすぐに電話やメールで連絡することが理想です。なぜなら、「すべての訪問先を回った後で、まとめて連絡しよう」と後回しにした結果、報告すべきことが溜まってしまい、残業しないとその日のうちに関係者すべてに連絡できなくなってしまう場合があるからです。
また、情報共有先がファックスでのやりとりを求めている場合は、訪問看護ステーションに戻ったあとにすぐに送信できるよう、報告する内容をスマホに打ち込んでおいたり、あるいは紙に手書きしておいたりすると時間短縮になります。
パソコンのスキルを磨く
プライベートではパソコンはほとんど使わず、スマホメインだという人は、タイピングが遅いために看護記録作成に時間がかかることがあります。また、エクセルへの入力なども、慣れていないうちは大幅に時間がかかるでしょう。そのため、パソコンが苦手なために残業しなければならなくなりがちだという場合は、まずはエクセルの基本などを学ぶことが大切です。
働きやすい訪問看護ステーションを選ぶことも大切
訪問看護の仕事は看護師がひとりでおこなうことが多いため、基本的には、上記のコツを踏まえて、スムーズに仕事を終わらせられるよう心がけることで残業を減らすことができます。しかし、訪問看護ステーションによっては、1日の訪問軒数が多い場合などもあるので、まずは事業所に働く条件などを確認することが大切です。もちろん、訪問軒数が多ければそのぶん給与が高くなる場合が多いので、高収入を狙いたい人にとってはそのほうが理想的かもしれません。自分にとってはどんな働き方が理想であるのかをよく考えることで、自分にぴったりな訪問看護ステーションを選ぶことができるといいですね!
特徴
対象規模
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診療科目
この記事は、2024年5月時点の情報を元に作成しています。