看護師を目指している人にとっても、今現在看護師として働いている人にとっても、看護師の平均年収は気になるものです。また、年収を上げる方法があるのかどうかを知りたい人も多いでしょう。そこで今回は、看護師の年収の実情および年収UPの方法をみていきます。
看護師の平均年収は約508万円(手取りにして400万円前後)
厚生労働省が公表している「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、看護師の平均年収は508万1,700円です。計算方法としては、「決まって支給する現金給与額(基本給+各種手当)(=35万2,100円)」、「年間賞与その他特別給与額(=85万6,500円)」をもとに、「35万2,100円×12カ月+85万6,500円」としています。
ただし、ここから所得税や社会保険証が引かれますが、手取り額の目安は総支給額の7割~8割程度とされているため、実際の手取り額としては400万円前後であると考えられます。
ちなみに、「決まって支給する現金給与額」のうち「各種手当」とは、通勤手当や家族手当などを意味します。
なお、同統計の対象者の平均年齢は41.9歳、勤続年数は9.8年です。
参照:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種」
※「表番号1」の「閲覧用EXCEL」の30行参照
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看護師の年収は経験年数によってどう推移する?
続いては、基本給と賞与(ボーナス)が経験年数によってどう変わっていくのかをみていきましょう。「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、経験年数別の基本給および賞与の平均額は以下の通りです。
経験年数 | 基本給 | 賞与(ボーナス) |
0年 | 26万600円 | 13万1,800円 |
1~4年 | 28万1,600円 | 69万2,400円 |
5~9年 | 30万300円 | 77万1,600円 |
10~14年 | 31万3,900円 | 86万1,200円 |
15年以上 | 34万8,600円 | 103万6,200円 |
基本給の金額は、経験年数によってそこまで大きく変わることはありませんが、年収UPを目指すなら、できるだけブランクをつくることなく経験年数を重ねていきたいところです。一方、賞与の額は経験年数を重ねることで大きく変わっていくので、モチベーションにつながりやすいといえるでしょう。
参照:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種」
※「表番号10」の「閲覧用EXCEL」の270行参照
看護師の年収においては、「手当」が占める割合は大きい
前半に記した通り、看護師の平均年収は「(基本給+各種手当)×12カ月分+ボーナス」の計算式によって導き出していますが、看護師は、上記計算式に組み込まれている、決まって支給される「各種手当(通勤手当や家族手当など)」とは別に、「所定外給与」と呼ばれる手当が相当額支給される傾向にあります。なぜかというと、特に病院や有床のクリニック勤務の場合、夜勤や時間外勤務を避けられないケースが多いためです。
手当は、法律によって定められているものと、各勤務先が任意で支給するものの大きく2種類にわけられますが、深夜や休日などに勤務した場合の手当(=所定外給与)は前者に該当するため、必ず支払われることになります。
法律によって支払いが定められている手当(=所定外給与)
所定労働時間外に勤務をおこなったことに対する手当は、「所定外給与」と呼ばれ、法律によって支払いおよび割増賃金率が定められています。
【法定割増賃金率】
区分 | 法定割増賃金率 | |
時間外勤務給 | 1か月45時間まで | 25% |
1か月45時間を超えて60時間未満および年360時間を超過 | 25%を上回る割増賃金率 (努力義務) |
|
60時間を超過(常時使用する労働者が100人以下の中小事業所については、現在、猶予中) | 50%以上 | |
休日勤務割増給 | 35%以上 | |
深夜勤務割増給 | 25%以上(22時~5時の勤務) | |
時間外勤務+深夜勤務 | 50%以上(25%+25%) | |
休日労働+深夜労働 | 60%以上(35%+25%) |
時間外勤務給:超過勤務手当、時間外手当、残業手当など
法定労働時間(原則1週40時間、1日8時間)を超えて就労した場合、給与の25%増しの給与を支払うことが労働基準法によって定められています。
計算方法は以下の通りです。
1時間当たりの給与(基本給+諸手当(住宅手当、家族手当、通勤手当を除く)÷所定労働時間)×1.25(1日8時間または1週40時間を超える場合)×残業時間数
休日勤務割増給:休日手当など
法律で定められた休日である「法定休日」に就労する場合、給与の35%増しの給与を支払うことが労働基準法によって定められています。
計算方法は以下の通りです。
1時間当たりの給与(基本給+諸手当(住宅手当、家族手当、通勤手当を除く)÷所定労働時間)×1.35×休日勤務時間数
深夜勤務給:深夜手当、夜勤手当など
午後10時から午前5時までに就労する場合、給与の25%増しの給与を支払うことが労働基準法によって定められています。残業などが深夜にまでおよんだ場合は、通常の割増に深夜割増が加算されます。
計算方法は以下の通りです。
1時間当たりの給与(基本給+諸手当(住宅手当、家族手当、通勤手当を除く)÷所定労働時間)×0.25×深夜勤務時間数
各勤務先が任意で支給する手当
各勤務先が任意で支給する手当としては、たとえば以下のようなものがあります。
通勤手当
通勤にかかる費用に対する手当です。公共交通機関の乗車料金、車のガソリン代などが該当します。1か月あたり10万円までの通勤手当は非課税となり、所得税および住民税がかかりません。マイカー通勤の場合、距離に応じて非課税限度額が定められています。
家族手当
家族を扶養している人に支給される手当です。生活費を補う目的で支給されます。
役職手当
管理職や役付者に支給される手当です。役割や職責の大きさに応じた金額が支払われます。
資格手当
特定の資格がある看護師に対して支払われる手当です。たとえば、日本看護協会認定の資格としては、認定看護師、専門看護師、認定看護管理者があります。
また、特定の診療科で役立つ資格もさまざまに考えられます。たとえば、精神科系の資格としては、後任心理士、臨床心理士、認知症ケア専門士などが挙げられます。
そのほか、医療機関によっては、手話通訳や語学の資格を有している看護師に対して手当を支給するケースもあります。
交代勤務手当
夜勤手当とは別に、昼夜の労働時間が頻繁に変わるケースなどに対して支給されることがあります。
また、そのほか、病院・クリニックによっては、住宅手当、危険手当、特殊業務手当、手術室勤務手当、オンコール手当、拘束手当、地域手当などを用意していることもあります。
看護師が年収を上げる方法は?
続いては、看護師が年収を上げる方法をみていきましょう。
夜勤を増やす
前述の通り、所定外給与に関しては割増賃金率が法律によって決められています。そのため、対象となる時間帯にたくさん働けば、同じだけの時間を日中働くより高い給与がもらえるということになります。
看護師の勤務形態は、クリニックなどの「日勤のみ」の勤務先以外は、「2交代制」または「3交代制」がほとんどです。そのほか、ロング日勤や早番、遅番などもありますが、年収を上げることを考えると、2交代制の夜勤、もしくは3交代制の準夜勤、深夜勤にたくさん入ることが有効です。
ちなみに、交代制の場合の基本的な勤務時間は以下の通りです。
【2交代制の労働時間】
勤務形態 | 時間 | 労働時間 |
日勤 | 8:00~17:00 | 8時間(休憩1時間) |
夜勤 | 16:30~9:00 | 16時間(休憩2時間程度) |
【3交代制の労働時間】
勤務形態 | 時間 | 労働時間 |
日勤 | 8:00~17:00 | 8時間(休憩1時間) |
準夜勤 | 16:30~1:00 | 8時間(休憩1時間) |
深夜勤 | 0:30~9:00 | 8時間(休憩1時間) |
また、日本看護協会が公表している「2023年病院看護実態調査」の結果によると、2交代制の夜勤、3交代制の準夜勤、3交代制の深夜勤の3つの働き方の、夜勤1回あたりの平均夜勤手当は以下の通りです。
勤務形態 | 1回あたりの手当 |
2交代制 | 11,368円 |
3交代制 準夜勤 | 4,234円 |
3交代制 深夜勤 | 5,199円 |
また、2交代制、3交代制の場合、それぞれ月に何回程度夜勤に入っているかというと、同調査によると、2交代制の平均は4.9回、3交代制の平均は7.5回という結果です。
これをもとに計算すると、2交代制の場合、11,368円×4.9回=約55,703円の夜勤手当を稼げることになります。一方、3交代制の場合をより高く稼げる深夜勤で計算すると、5,199円×7.5回=約38,992円とういことになります。
資格を取得する
次に考えられる方法は、資格を取得することです。ただし、前述の通り、資格手当の支給は法律によって定められてはいないので、資格を取得することによって年収UPを狙うのなら、資格手当を支給している勤務先を選ぶことが不可欠です。また、資格を取得するためにはそれなりに投資が必要なので、資格取得の動機が、やりがいなどではなく年収UPのみであるなら、投資した金額をどのくらいの期間で回収できるかなどを事前にシミュレーションしたほうがよさそうです。
昇給を目指す
役職手当も、法律によって定められている手当ではありませんが、役職手当に関しては、ほとんどの医療機関が支給していると考えられます。ただし、出産や子育てなどでブランクがあると、そのぶん昇進が遅くなることなどもあり、短期間で年収UPを実現する方法であるとはいえません。
転職する
今の職場より高い給料を保障してくれる職場に転職するのも、年収を上げる方法のひとつです。ただし、給与が上がるぶん仕事がハードになる可能性も高いので、勤務条件については事前によく確認することをおすすめします。また、条件がよい場合は競争率が高くなることも考えられるので、たくさんの応募者のなかから選ばれるためにも、先方の目に留まりやすい履歴書を作成して、なおかつ面接対策にも力を入れることが大切です。
副業・複業をはじめる
「看護師としての年収」にこだわらず、シンプルに年収を上げていきたいということなら、スキマ時間に副業・複業をはじめることを検討してもいいかもしれません。たとえば、医療系ライターとして単発で記事を書く仕事などであれば、どのくらいの量なら無理なくこなせるかを考えながら、引き受ける量を調整していくこともできるかもしれません。
看護師の年収は50代がピーク
看護師の年収は、一般的な定年である60歳を迎える直前の、50代がピークとされています。定年を迎えた後も、パートなどとして働く看護師は多いですが、パートでの契約となると年収はダウンしますし、そもそも肉体年齢が上がると夜勤などに対応することは難しくなります。そのため、年収UPのために行動を起こすなら、少しでも早めに動くに越したことはありません。10年後、20年後にどんな生活を送っていたいかを想像してみて、早めの行動を決断してくださいね。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年7月時点の情報を元に作成しています。