働き方の多様化に注目が集まるようになった昨今、副業に興味を持つ看護師も増えています。
そこで今回は、クリニックの院長や経営者の皆様に向けて、
- 実際に副業している看護師は、どんな理由で副業をはじめたのか?
- どのくらいの割合の医療機関が副業を許可しているか?
- 許可するにあたって気を付けるべきことはあるのか?
などについて解説していきます。
副業を許可している医療機関の割合は?
まずは、副業や兼業を許可している医療機関の割合をみていきましょう。
日本看護協会が公表している「2023年病院看護実態調査報告書」によると、正規雇用看護職員の副業・兼業の許可に関する規定がある病院は44.3%です。
【正規雇用看護職員の副業・兼業に関する規定の整備状況】
副業・兼業の許可に関する規定がある | 44.3% |
副業・兼業を全面的に禁止する規定がある | 35.8% |
副業・兼業に関する規定はない | 19.4% |
無回答・不明 | 0.5% |
副業を許可している医療機関が、許可にあたって設けているルールは?
また、副業・兼業の許可に関する規定があると回答した病院に、その内容について尋ねたところ、「副業・兼業の届出があること」「当院での業務に支障がないこと」がいずれも8割を超えました。
「当院の機密事項が漏洩しないこと」「当院の名誉や信用を損なう行為、信頼関係を破壊する行為がないこと」は6割を超えています。
【副業・兼業の許可にあたって規定している内容】
副業・兼業の届出があること | 88.8% |
当院での業務に支障がないこと | 84.7% |
当院の機密事項が漏洩しないこと | 62.4% |
当院の名誉や信用を損なう行為、信頼関係を破壊する行為がないこと | 62.0% |
競業により、当院の利益を害することがないこと | 42.7% |
その他 | 9.5% |
特にない | 1.0% |
無回答・不明 | 1.1% |
副業を許可するにあたっての判断材料は?
続いて、副業・兼業を許可する際の判断材料としては、「副業・兼業先の事業内容」とする回答がもっとも多い結果となっています。
【副業・兼業を許可する際の判断材料】
副業・兼業先の事業内容 | 79.5% |
担当する業務内容 | 67.5% |
副業・兼業の延べ労働時間数 | 59.1% |
その他 | 7.7% |
特にない | 9.2% |
無回答・不明 | 2.3% |
看護師が副業したい理由は?
続いては、看護師が副業したい理由をみていきます。
『株式会社Donuts』が独自に実施したアンケートによると、看護師が副業したいと考える主な理由は以下の通りです。
- 収入を増やしたい
- スキマ時間を有効活用したい
- スキルを磨きたい
- 知識や経験を習得したい
- 本業以外の人脈を築きたい
- 新しいことを経験したい
それぞれの回答を分析していきます。
収入を増やしたい
もっとも多かったのが「収入を増やしたい」です。収入を増やしたい理由としては、「本業の収入だけでは足りない」「本業の収入だけでは貯蓄が増えず、将来への不安を払しょくできない」などが考えられます。
なかには、「子どもに不自由させたくない。シングルマザーだから自分が稼ぐしかない」と回答した人もいました。また、昨今では、単純に「もっと美容やファッションにもお金をかけたいから、看護師として稼ぎながら副業でもさらに稼ぎたい」という女性が増えています。
スキマ時間を有効活用したい
「スキマ時間を有効活用したい」の回答もかなりの数でした。基本的には、「スキマ時間を有効活用して稼ぎたい」ということなので、目的としては「収入を増やしたい」とほぼ同じであるといえます。
回答者が経験したことのある副業としては、医療系ライターやポイ活など、移動中や自宅でもできるものが多いことから、効率よく稼ぎたいと考える看護師が多いことがわかります。
スキルを磨きたい
「スキルを磨きたい」と回答した看護師が経験した副業を見ると、「医療系ライター」「イベントナース」など、本業で身に着いた知識を活かして新たなチャレンジをしたいことがわかります。
また、「医療サイトの漫画原案」などのユニークな回答もありましたが、終身雇用が当たり前ではなくなった今の時代、自分の可能性を開拓し続けたいという看護師も増えているのかもしれません。
知識や経験を習得したい
単発でデイサービスの看護師を務めるなどして、知識や経験を増やしている看護師は多いようです。
また、コロナワクチン接種会場のアルバイトの経験があるとの回答も多く、普段できない経験をしたことで、医療機関における業務の流れの作り方などについても勉強させられたとの声も。
本業以外の人脈を築きたい
「本業以外の人脈を築きたい」と回答した人のなかには、スポーツジムのスタッフなど、医療とはまったく異なる業種のアルバイトをして息抜きをしている人もいました。
好きなことを活かしたい
「好きなことを活かしたい」の回答者のなかには、「医療の仕事も好きだけど、人に何かを伝えるのも好き」と、noteやBrainの有料販売で、看護師としての体験をネタにして稼いでいる人もいました。
自院の看護師から「副業したい」と言われたらどうすればいい?
現状、副業に関してのルールをきちんと設けていないクリニック、副業を許可するかどうかをこれから考えようと思っているクリニックは、早い段階で、看護師から副業したいとの申し出があった場合の対応について考えておいたほうがいいかもしれません。
食品も電気代も水道代も値上がりしたことで、「このままでは生活が苦しい」と副業を考える人が増える可能性が高いためです。
では、看護師から「副業したい」との申し出があったときにすぐにOKを出すのが正解かというと、そういうわけではありません。なぜなら、副業に睡眠時間や体力を奪われて、本業である自院の仕事に影響が出る場合があるためです。
また、先に述べた、他院が「副業・兼業の許可にあたって規定している内容」にも入っていた通り、自院の機密事項が外に漏れたり、自院の名誉や信用を損なう行為がなされたりする可能性も否めません。
そのため、許可するならするできちんとルールを定めることが大切ですし、許可しない場合は、「そう言われても今の給料では生活ができない」などの看護師の声にどう応えるかを考える必要があります。
副業を許可する場合
では、副業を許可する場合はどんなルールを取り決めたらいいのか?についてですが、
- 届出を出すこと
- 自院の業務に支障がないことを約束してもらうこと
- 自院の機密事項を漏洩しないこと
- 自院の名誉や信用を損ねる行為や信頼関係を破壊する行為をしないと約束すること
などは必須事項といえるでしょう。
併せて、「届出を出さずに副業していて、そのことがバレた場合」や「自院の業務に支障をきたした場合」などの罰則も取り決めておくのが賢明です。具体的には、まず副業は辞めてもらい、場合によっては減給を考えたほうがいいこともあるかもしれません。
副業を許可しない場合
副業を許可したくないものの、離婚したなどの事情があって「今の給料では生活できない」などと説明された場合、
- 給与を上げる
- 働く時間を増やしてもらって、そのぶん給与を上げる
の選択肢が考えられます。給与を上げることなく、「我慢して働き続けてほしい」と伝えても、本当に生活に困っている場合は、「それなら辞めるしかありません」と転職される可能性が高いでしょう。
ただし、そもそも副業を禁止していて、看護師もそれをわかったうえで入職している場合は、入職後に「副業したい」と申し出てくる看護師のほうに問題があると言えます。とはいえ、人生いつどこでなにがあるかわからないので、「急に今以上に稼がないといけなくなった」というパターンもあるもの。
ひとまずは相手の事情に耳を傾けてあげたいところです。
「働き方の多様化」について一度じっくり考えてみることも大切
副業の許可/禁止に限らず、経営者が、従業員の働き方について考えなければならないことはたくさんあります。
特に昨今は働き方が多様化しているので、これまでの常識にとらわれず、人によって理想の働き方はさまざまであることを理解することが大変重要です。
自院のスタッフから働き方に関して相談があるたびにすべて突っぱねていては、求職者から選ばれにくくなるので、まずは相手の立場に立って考えることを大切にするといいかもしれません。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年7月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
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