厚生労働省老健局老人保健課が公表している「令和3年度介護事業経営概況調査結果」によると、令和3年度決算分の訪問看護ステーションの人件費率の全国平均は73.9%であることがわかっています。
事業費のうち73.9%をスタッフの給与費に充てなければならないとなると、その他の費用をできる限り削減することなしには、赤字になる可能性がとても高いといえます。
たとえば、採用にも大きな費用を充てることも難しいですが、少ない費用で採用した結果、すぐに離職されたとなると元も子もありません。そこで今回は、訪問看護を提供する事業所が立てるべき採用戦略について考えていきたいと思います。
「訪問看護ステーション」における採用活動のコツ
まずは、訪問看護ステーションが立てるべき採用戦略をみていきます。
利用料無料の求人媒体・求人方法を活用する
冒頭で述べた通り、訪問看護ステーションの人件費率の平均は73.9%にも上ります。そのため、コストの削減について考えることはとても大切です。
コストを大きく減らす方法はいくつかありますが、そのなかでも簡単に取り組めるのが、採用活動にかかるお金をできるだけ切り詰めることです。
求人サイト
無調で活用できる求人媒体・求人方法の代表格はハローワークですが、最近では「Indeed」「げんきワーク」「求人Free」「就活会議」など、無料プランが用意されているサイトから完全無料のサイトまでさまざまなサイトがあります。
採用支援ツール
また、「engage」や「Airワーク採用管理」などの無料で採用ページを作成できるツールを利用する企業も増えています。文章を書くのが苦手ではないなら、「note」などの無料でブログ記事を作成できるツールを利用するのも一手です。
SNS:「X」「LinkedIn」など
求人掲載機能があるSNSとしては、LinkedInやFacebookが知られています。ただし、これらのSNSは看護師の求職者の利用率が高いかというとそうではありません。特にFacebookはヘビーユーザーの年齢層がかなり上がってしまっています。
そのため、採用活動にもっとも高い効果が期待できるSNSはXであると考えられます。ただし、フォロワーがほとんどいないアカウントで発信したところで、多くの人の目に触れる可能性はほとんどありません。
Xを活用することで採用活動を軌道に乗せたいとの考えがあるなら、日ごろから自社の仕事内容や訪問看護に対する思いをこまめにポストするなどして、アカウントを“育てて”おくことが大切です。
労働条件に関するアピールポイントを考える
あまたある訪問看護ステーションのなかから自社を選んでもらうためにも、競合との差別化をしっかり考えることはとても大切です。差別化を考えるべきポイントは、主に「労働条件」と「福利厚生」の2つ。このうち、「労働条件」にはどんなことを記す必要があるかというと、以下のような内容になります。
【仕事内容】
- オンコールの有無
- 過去の残業時間の実績・平均値
- 1日の訪問件数、1日の業務の流れ
- スタッフからのメッセージ
【給与・賞与】
- 給与(基本給、手当の内訳)
- 賞与の支給回数、計算根拠
- 賞与の支給額の実績
- 給与の伸び率がわかるような計算例
【勤務時間・曜日】
- 勤務・休日の曜日(シフト勤務・土日休みなど)
- 年間労働日数、年間休日数
- 夏休みや年末年始などの休日の予定
- 有休消化率の実績
- 産休や育休取得の実績
【その他】
- 未経験OKかどうか(研修内容も)
上記は、すべて求職者が知りたいことですが、「オンコール対応が無い」「給与が平均より高い」「有給消化率が高い」などに当てはまる場合は大きなアピールポイントとなるので、その部分を目立つように表記したいところです。
もちろん、これらの条件を満たしていないという事業所も多いでしょう。その場合は、実際に働いている看護師のメッセージを前面に出すなどして、事業所の雰囲気や働きやすさを伝えるのがおすすめです。また、訪問件数を増やせばそのぶん稼ぐことができるなら、その点を強調してもいいでしょう。
さらに、未経験歓迎の場合は、研修制度がしっかりと整っていることをアピールしていきましょう。
福利厚生に関するアピールポイントを考える
「福利厚生」には主に以下のようなことを記します。
【福利厚生】
- 加入する社会保険
- 設けている福利厚生制度の詳細
- 副業の可否
- その他、事業所独自の取り組み
福利厚生が充実している場合、そのこと自体が大きなアピールポイントになります。また、最近では、副業がOKかどうかを応募の基準としている人も一定数いるので、OKの場合は求人票にもしっかり記していきましょう。
その他、事業所独自の取り組みとして、メンタルヘルス対策などに力を入れている場合、その点もアピールしていきたいところです。
「みなし指定訪問看護ステーション」における採用活動のコツ
「みなし指定訪問看護ステーション」において看護師を採用する場合、基本的には、みなし指定訪問看護を提供している病院またはクリニックでの勤務もこなしてもらうことになります。
そのため、「訪問看護師募集」ではなく、「訪問看護にも対応できる看護師募集」ということになるため、「医療機関で働きながらも地域医療に貢献していきたい」というターゲットに刺さるようなフレーズを使って、自院で働くメリットをアピールしていくことがおすすめです。
みなし指定訪問看護ステーションから訪問看護ステーションに変更はできる?
最後に、「みなし指定訪問看護ステーション」の求人に対して、地域医療への関心が高い人からたくさん応募があった場合など、専業で働いてもらうために訪問看護ステーション化することはできるのかを解説していきます。
結論からいうと変更は可能です。といっても、そのために病院やクリニックから形態を変えてしまうというわけではありません。
ではどうするかというと、訪問看護ステーションとして独立させるために、まず法人を設立して、そのうえで訪問看護ステーションを立ち上げればよいのです。
これを実践した暁には、医療法人が設置主体であり、医師との連携がよりスムーズであることなどを大いにアピールすることもできるので、ぜひ検討してみては?
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年8月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
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