患者の不安を和らげる声かけとは? 患者は看護師が何をしてくれたら安心できる?

医療機関で診療や治療、検査を受ける患者は、熱や痛みで肉体的にしんどいこともあれば、病状や今後のことが心配で精神的に参っていることもあります。それに対して主に医師ができること・すべきことは、少しでも早く痛みや辛い気持ちから解放されるよう、処置や処方をおこなうことですが、看護師にできること・すべきことは、医師をサポートしながら、患者の気持ちに寄り添うことです。具体的にどんなふうに接したらいいのかを考えていきましょう。

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目次
  1. 看護の目的とは?
  2. 患者はどんなときにどんな言葉をかけてほしいと思っている?
    1. 検査や手術の前
    2. 入院が必要なことや、症状が重たいことを告げられた後
    3. 処置や手術が終わった後
    4. ケガや病気、または手術後の痛みや苦しさがあるとき
    5. 寂しいとき、孤独を感じているとき
  3. 看護師が患者へ声かけする際に気を付けたいポイント
    1. 声をかけた相手の反応を観察する
    2. 一人ひとりに合った言葉遣いや話すスピードを考える
    3. 患者が思いを口にしやすいよう誘導する
  4. 患者が看護師にしてもらったらうれしい、声かけ以外のこととは?
    1. タッチング(手を握ったり患部をさすったりする)
    2. 傾聴
    3. 洗髪、清拭(せいしき)
    4. 笑顔であいさつ
  5. 「声かけしても反応がない」「声かけしたらキレられた」などの場合、声かけを辞めるのではなく、患者の行動の理由を考えることが大切

看護の目的とは?

不安な思い、辛い思いをしている患者に対して看護師ができることを考えるためにも、まずは「看護の目的」を確認しましょう。

『公益社団法人日本看護協会』は、2021年に公表した「看護職の倫理綱領」の前文において、「看護は健康の保持増進、疾病の予防、健康の快復、苦痛の緩和をおこない、生涯を通して最期まで、その人らしく人生をまっとうできるよう、その人に持つ力に働きながら支援することを目的としている」と明言しています。

参照:公益社団法人日本看護協会「看護職の倫理綱領」

つまり、看護師がすべきことは、①患者の健康増進 ②疾病の予防 ③健康の快復 ④苦痛の緩和のサポートということになりますが、このうち、今回のテーマである「患者の不安を和らげる声かけ」が直接関与しているのは「苦痛の緩和」ということになります。ただし、相手の肉体的・精神的苦痛を和らげるにあたっては、「患者に心身の健康を取り戻してもらうこと」や、「これから先、心身の不調で悩むことのないよう、未病予防に取り組む大切さを伝えること」もしっかり考えていく必要がある場合があります。

患者はどんなときにどんな言葉をかけてほしいと思っている?

続いては、患者の心に深く寄り添い、適切な声かけができるよう、患者はどんなときにどんな言葉をかけてほしいと思っているのかを考えていきます。

患者が、看護師から言葉をかけてもらいたいと思っているタイミングとしては、主に以下のようなタイミングが考えられます。

・検査や手術の前
・処置や手術が終わった後
・入院が必要なことや、症状が重たいことを告げられた後
・ケガや病気、または手術後の痛みや苦しさがあるとき
・寂しいとき、孤独を感じているとき

詳しくみていきましょう。

検査や手術の前

心身になんらかの異変を感じて診察を受けにきた結果、詳しい検査や手術が必要だと伝えられると、「検査の結果、重篤な疾患が見付かったらどうしよう」「手術は100%成功するのだろうか?」などの不安に駆られることがあります。そんなとき、看護師から「しっかり治していきましょうね」などの声をかけてもらうと、「検査も手術も、健康を取り戻すために必要なものなんだよな」と理解してもらいやすくなります。なお、患者から不安な気持ちが伝わってくる場合は、「手術すれば治るから大丈夫ですよ」などと無責任に断言するのではなく、「不安ですよね。一緒にがんばりましょう」など、患者の気持ちにしっかりと寄り添うことが大切です 。

入院が必要なことや、症状が重たいことを告げられた後

「たいしたことないけど念のため薬をもらっておこう」程度の気持ちで受診した結果、入院が必要なことや、症状が思わしくないことを告げられると、気落ちしてしまう患者は多いものです。また、急な入院となると、どのように手筈を整えればいいのかがわからず動揺しがち。そんなとき、看護師が傍に寄り添って必要な手続きなどを説明すると同時に、患者の疑問や不安にやさしく答えてあげると、少しずつ落ち着きを取り戻してもらえます。また、「入院にあたって不安な点はありますか?」「わからないことはありますか?」など、患者が気になることを質問しやすいよう促してあげることも大切です 。

処置や手術が終わった後

執刀もしくは施術、処置などをおこなった医師は、患者が目覚めるときまでは待っていないことがあります。大腸内視鏡検査などはその代表例で、患者が目覚めるのを見届ける必要はないため、医師は次の検査に向かうため、患者が目覚めたときに「お目覚めですか?」「どこか痛いところはありませんか?」などの声をかけるのは看護師の役目です。また、日帰りで済む範囲の美容外科や眼科の手術の後なども、看護師のやさしい声かけに、「無事に終わったんだ……」 とほっとする患者が多いでしょう。

ケガや病気、または手術後の痛みや苦しさがあるとき

入院中、痛みや苦しさに耐えきれずナースコールを押すとき、患者は、看護師にやさしく介抱してほしいと感じていると同時に、「この痛みをなんとかしてほしい」「この苦しさを和らげてほしい」と切望しているケースがほとんどです。そのため、このパターンに関しては、声かけで患者の気持ちを落ち着かせたうえで、医師にスピーディに連絡を取り、痛み止めの点滴を打っていいのかなどの指示を仰ぎます。場合によっては、医師がくるまで傍に付き添って、患者を励まし続ける必要があると考えられます。

寂しいとき、孤独を感じているとき

家族や大切なペットと離れて入院している患者は、寂しさや孤独を感じています。入院患者の面会が全面的に禁止となったコロナ禍には、Wi-Fiが使えない病院の入院患者が、家族や友だちと気軽に連絡を取り合うこともできないことから、大きな孤独感を抱えてメンタルを崩すことが多くなったことが問題となりましたが、コロナ禍でなくとも、そもそも入院中の患者は孤独を感じがちです。しかし、患者側から看護師に対して「寂しい」などと訴えることはできません。訴えたからといってなにもしてもらえないと思うのが普通でしょう。そのため、看護師のほうから積極的かつ頻繁に声かけしてもらえると、大きな安心感を得ることができるものです。小児科病棟に入院中の小さな子どもなどであればなおさら、看護師からの積極的な声かけを必要としています。

看護師が患者へ声かけする際に気を付けたいポイント

続いては、看護師が患者に声かけする際に気を付けたい以下のポイントについて解説していきます。

・声をかけた相手の反応を観察する
・一人ひとりに合った言葉遣いや話すスピードを考える
・患者が思いを口にしやすいよう誘導する

具体的にみていきましょう。

声をかけた相手の反応を観察する

もっとも大切なポイントは、声をかけた相手の反応をきちんと観察できているかにあります。単に声をかけるだけでなら誰にでもできます。そうではなく、看護の一環としての声かけであることを意識して、声かけを通して、相手の状態や気分、痛みの程度などを読み取る努力を欠かしてはいけません。

なお、患者が声かけを求めている主なタイミングとしては、前述の通り、検査や手術の前、処置や手術が終わった後、痛みを抱えているときなどになるため、声かけは受け持ち看護師または傍にいる看護師がおこなうのが基本となりますが、入院病棟で寂しそうな様子の患者を見かけたときなどは、自分の受け持ち患者ではなくとも積極的に声をかけて反応を観察したいところです。また、必要に応じて、受け持ち看護師や医師に、患者の様子を報告するようにしましょう。

一人ひとりに合った言葉遣いや話すスピードを考える

患者とのコミュニケーションにおいては、敬語を使うのが基本です。相手と自分との関係性や距離感なども考慮しながら、丁寧にコミュニケーションをとります。ただし、子どもの入院患者などの場合は敬語である必要はありません。子どもから安心してもらえるよう、身近な存在に感じてもらえるような話し方を意識しましょう。また、患者がきちんと聴き取れているかを確認しながら、相手にとって適切なスピードで話すことも大切です。

患者が思いを口にしやすいよう誘導する

「大丈夫ですか?」などとYESかNOで答えられる質問を投げかけられたら、口下手な患者は「YES/NO」でしか答えにくくなってしまいます。もしくは、大丈夫ではなくても「はい」と答えてしまう人もいるでしょう。「なにか心配なことはありますか?」「どこが痛いですか?」など、患者の言葉で答えられる質問を投げかけたほうが、患者の気持ちを聞かせてもらいやすいといえます。

患者が看護師にしてもらったらうれしい、声かけ以外のこととは?

痛みや苦しみ、不安な気持ちで押しつぶされそうな患者は、やさしい声かけ以外にもしてもらえるとうれしいことがあります。具体的には以下のようなことが考えられます。

・タッチング(手を握ったり患部をさすったりする)
・傾聴
・洗髪、清拭(せいしき)
・笑顔であいさつ

タッチング(手を握ったり患部をさすったりする)

不安なとき、辛いときほど、人は誰かの手のぬくもりに安心させられるものです。「検査を受けている最中、看護師が手を握ってくれて不安な気持ちが和らいだ」「点滴が効くまでの間、看護師が患部をさすってくれたから痛みに耐えられた」などの声は多いもの 。陣痛で苦しんだ際、背中をさすり続けてくれた看護師には感謝してもしきれないという人も多いのではないでしょうか。

傾聴

「手術がうまくいかなかったらどうしよう」「いつになったら退院できるんだろう?」」などの不安な気持ちをひとりで抱えていると、精神的にどんどん辛くなっていくものです。そんなとき、話を聴いてくれる看護師がいたら、患者はそれだけでも気持ちが軽くなったことを実感できます。多くの場合、「話を聴いて自分なりの意見を言ってほしい」などとは思っていません。ほとんどの患者は、ただ、話を聴いてほしいと思っています。「そうですね」「わかり ます」「お辛いですね」などの相槌を打ちながら相手の気持ちに寄り添うことがもっとも大切です。

洗髪、清拭(せいしき)

医師の指示を受けて洗髪、清拭(せいしき/入浴できない患者の身体を拭くこと)をおこなうのではなく、患者が不快感を覚えていて辛そうだと察して、自主的に医師に許可を取って洗髪、清拭してくれることで、「ありがたい」「癒された」と感じる患者は多いようです。 そもそも、「退院するまでは髪を洗うことはできないだろうな……」と思い込んでいて自分からは打診できない患者が多いので、そこを察してもらえると気持ちも晴れやかになるようです。

笑顔であいさつ

看護師が自分のために時間をとってゆっくり話をしてくれることは、患者にとってもちろんうれしいことですが、すれ違うたびに笑顔であいさつをしてくれるだけでも「癒された」と感じる人は多いでしょう。反対に、看護師が険しい顔をしていたら、「もしかして自分の病状はよくないのかもしれない」「私が入院していることはよく思われていないのかもしれない」などと患者を不安な気持ちにさせてしまいます。

「声かけしても反応がない」「声かけしたらキレられた」などの場合、声かけを辞めるのではなく、患者の行動の理由を考えることが大切

看護師から声かけしてもらえると、多くの患者は、安心したりうれしさを感じたりします。しかしなかには、声かけしてもまったく反応しない患者や、「うるさい!」とキレてくる患者もいます。そうした態度をとられたら、「もう声かけしたくない」と感じて当然です。しかし、前述の通り、声かけは看護の一環であり、声をかけた相手がどのような反応を示したかを観察することはとても大事なことです。さらに、「どうしてそのような態度をとったのか?」を考えることもとても大切。たとえば、反応しない理由としては、「誰とも会話したくないほど気分が塞いでいる」「身体が痛くて声を出すのも辛い」などが考えられますし、「うるさい!」と怒鳴ってきた理由としては、「その看護師の日ごろの態度が悪くて嫌われている」「声が身体に響くほど痛みが強いから静かにしてほしい」などが考えられます。いずれにしても病院側で適切に対応していく必要があるので、原因を考えると同時に、先輩や医師への報告も忘れずにおこなってくださいね。

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提供形態

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