
開業したのに患者が来ない・増えないとなると、クリニックを運営していくことが難しくなります。勤務医時代には集患について考える必要がないため、開業して初めて、「どうして患者が来ないのだろう?」「どうすれば集患・増患を実現できるのだろう?」と頭を悩ませる医師もいるかもしれません。そこで今回は、クリニックに患者が来ない原因として考えられることや、今すぐ実践したい集患・増患対策をお伝えしていきます。
クリニックに患者が来ない場合の主な原因とは?
まずは、クリニックに患者が来ない・増えない場合、どんな原因が考えられるのかみていきましょう。クリニックに患者が来ない原因は、「自院に課題がある場合」「他院に患者が流れている場合」の大きく2パターンにわけられます。さらに前者に関しては、マーケティング戦略のフレームワークである4Pに当てはめて大きく4つに分類できます。
なお、4Pの4つの要素は以下の通りです。
具体的には以下のような要素が考えられます。
【Product】
【Price】
【Place】
【Promotion】
それぞれ詳しくみていきましょう。
自院の【Product】に課題がある場合
診療時間が患者のニーズに合っていない
昼休みを利用して診察を受けたい会社員の来院が見込めるオフィス街のクリニックが、12時~13時を昼休みに充てているとしたら、それによって潜在患者を獲得し損ねることになりかねません。また、皮膚科などであれば、定時で上がって処方箋を受け取りたいと考える人も多いことから、診療終了時間は遅めに設定するのが得策だといえるでしょう。
反対に、ファミリー層が多く住むエリアに立地する小児科などは、夜遅くに来院する患者は少ないと考えられるため、遅い時間まで開けておくことは非効率であるといえます。
医師のスキルと知識が不十分
これは当たり前の話ですが、一度診察してもらった結果、医師のスキルや知識に疑問を感じたら、次回以降も同じ医師に診てもらおうとは思わないものです。
しかも、最近は医療機関を訪れる前に症状などをもとに、どんな疾患の可能性が高いかを調べてから来院する人が多いので、ネット情報以上に説得力がある診察でなければ納得できない患者も増えています。なかには、「XX(病名)じゃないかと思うんです」と自ら分析して来院する人もいるので、その可能性がないならないで、根拠などをしっかり説明できるだけの知識が求められる場合もあります。
スタッフ教育が不十分、スタッフと医師が険悪である
医師の腕は十分であっても、受付や看護師の態度が悪い場合や、教育が行き届いていない場合は、クリニックに対してよくない印象を持たれる可能性が高いといえます。また、特定の誰かの態度や仕事ぶりに問題がないものの、スタッフ同士、または医師とスタッフとの仲が悪い場合などは、院内のギスギスした空気感が患者にも伝わり、「この場に居たくないな」と思われることもあるでしょう。
患者とのコミュニケーションがなっていない
医療技術が高くても、コミュニケーション力に問題があれば、患者の足が遠のいてしまいます。たとえば、前述した通り、最近はインターネットの情報をもとに自分の病状について分析してくる患者が増えていますが、それに対して「その見立ては間違っています」と一蹴したり鼻で笑ったりすることもよくありません。
待ち時間が長い
待ち時間が長い医療機関は、どれだけ医師の腕がよくても、「もう二度と利用したくない」と思われる可能性が高いです。予約システムなどがなかった時代ならまだしも、医療機関側の工夫次第で極力短縮することはできるはずなのに対策をとっていない時点で、患者からよくない印象を抱かれて当然です。
(美容皮膚科・美容外科など)トレンドを取り入れていない
美容皮膚科や美容外科の患者は、基本的に感度が高く、最先端の治療を試したいと考える人が多いので、一昔前に流行った医療機器しかそろっていないクリニックなどは選ばれにくいといえるでしょう。もちろん、最先端の機器を導入していないぶん単価を抑えるなど、工夫できることはたくさんありますが、いずれにしても、美容関連のクリニックに関しては、「どうすれば患者から選んでもらいやすいか」を他の診療科以上に熱心に考えることなしには集患・増患が期待できないでしょう。
自院の【Price】に課題がある場合
自由診療メニューが高い
自由診療メニューの価格は、保険診療と異なり、各医療機関が自由に決めることができます。そのため、できるだけ高く設定したいと考えるクリニックも多いかもしれませんが、同じメニューを提供している他のクリニックと比べて大幅に高い場合、患者から選ばれづらくなるでしょう。また、最先端のメニューであるため、他に提供しているクリニックが近隣にないとしても、あまりに高額だと、手が出ない患者が多いと考えられます。
自院の【Place】に課題がある場合
立地が悪い
立地のよさは、開業して患者を獲得していくための大前提として押さえるべきポイントといえます。「駅から徒歩15分以上かかる」「主要道路に面していない」「近くに駐車場がない」などのマイナス要素がある場合、よほどのプラス要素がないと集患・増患は難しいといえます。
そのため、開業前であるなら、立地が肝であることを念頭に置いたうえで物件探しをスタートすることが大切です。しかし、いい立地であればあるほど、業界問わず狙っている人は多いので競争率は高くなります。もしくは、集患に有利な条件がそろい過ぎている場合、金額的に高くて手を出せない可能性があります。
そのため、プラスの要素を複数兼ね備えた立地で開業するハードルは高いですが、時間をかけて物件を探したり、有能な不動産屋との巡り合いによっていい物件を紹介してもらえたりということはあり得るので、できるだけ早めに物件探しを開始することや、頼りになる不動産会社を探す努力を惜しまないことなどを心がけましょう。
また、【Place】をサービス提供経路ととらえるなら、オンライン診療や訪問医療を導入することによって、立地の悪さが問題とならなくなるといえます。
自院の【Promotion】に課題がある場合
十分に宣伝できていない
どんなにいい医療を提供していたとしても、そのことを広く周知できていなければ、集患・増患は見込めません。ホームページを用意することはもちろん、より多くの人の目に届くよう、SNSなども駆使して自院についての情報を発信していくことが大切です。ただし、自院がターゲットとする患者層によっては、インターネットでの宣伝より、エリア内でのポスティングのほうが宣伝効果が高いことも考えられます。
また、たとえば在宅医療を専門に提供していきたいのであれば、地域包括支援センターなどとのつながりを強化することによって、自院が提供する医療を必要とする利用者とつながれる確率が高まります。
定期健診などを含めて、次回の予約を取れていない
患者の来院時に次回の予約を取ってもらっていないと、再来院してもらえる確率がぐっと下がります。もちろん、再診の必要がほぼないと考えられる場合は無理に予約を入れてもらう必要はありませんが、完治していることを確認することで患者に安心してもらえる場合もあります。
また、歯医者などであれば、治療が終わった日に、半年後などに定期健診の予約を入れて帰ってもらうことがおすすめです。そのほか、生活習慣病などの未病予防に力を入れているクリニックであれば、患者に定期健診を促すことが、患者との信頼関係を築くことにつながります。
また、次回の予約が1週間以上先になる場合は患者が予定を忘れてしまうことも考えられるので、クリニックでLINE公式アカウントを運用して、次回来院日の3日前や前日にLINEのメッセージでリマインドすることが望ましいといえます。
口コミ対策をしていない
Googleマップなどに悪い口コミがたくさん入ると、それが原因で患者が減る可能性が高いです。それを避けるためにも、口コミ対策に力を入れることはとても大切です。たとえば、万が一ネガティブなことを書かれた場合、それが真実であるなら、返信コメントで自院に非があったことを謝ると同時に、改善の意思を示すと、誠意ある返信を見た人から好感を持ってもらいやすくなります。
一方、口コミの内容が真実でない場合は、その旨をきっぱりと記すか、もしくはGoogleへの削除要請を検討することが大切です。
同時に、いい口コミが増えるよう、会計時に患者にGoogleマップのQRコードを渡して、口コミをお願いするなどの努力を重ねることも大切です。
他院に患者が流れている場合
競合の人気が高すぎる
駅からの距離や車での来院のしやすさが合格点であっても、エリア内に同じ診療科の人気クリニックがあると、患者がそちらに流れてしまう可能性は高いです。それを防ぐためにも、「競合にはないうちの強みはなんだろう?」ということをよく考え、差別化を図っていくことが大切です。仮に、医師の経歴や実績に関して勝てるところがなかったとしても、たとえば、患者との丁寧なコミュニケーション、オンライン診療の対応時間、訪問診療の導入など、「エリア内で自院にしかない要素・自院が一番を目指せる要素」を考えて、実践していくことは可能です。
【開業医必見】患者が来ない増えないクリニックの集患・増患対策とは?
続いては本題。患者が来ない・増えないクリニックが今すぐやるべき集患・増患対策について解説していきます。なお、医師のスキル・知識の研鑽やスタッフ教育などももちろん大切ですが、今回は、「今すぐやれること」のみをピックアップしてお伝えします。
というわけで、患者が来ない・増えないクリニックが“今すぐ”やるべき集患・増患対策は以下の通りです。
それぞれ詳しく解説していきます。
ホームページの作成またはリニューアル
ホームページがないクリニックはほとんどないといっても過言ではありません。しかし、新規開業ではなく、開業医として長年クリニックを運営しているクリニックのなかには、ホームページを作成していないままのところもあるかもしれません。「これまでもなんとかやってこられたから必要ない」というクリニックは、そもそも集患・増患がうまくいっていないことに悩んでいないはず。もし、現状を変えたいという思いがあるなら、まずはホームページ作成に着手すべきです。
また、開業時にホームページを立ち上げたまま、掲載内容を更新していないなら、この機会にリニューアルを検討することがおすすめです。
とはいえ、「ITに疎く、自院では作成が難しい」「ホームページ制作会社に依頼する金銭的余裕がない」というケースもあるかもしれません。しかし最近では、「ココナラ」をはじめとするオンラインスキルマーケットで「自分で更新できるホームページを2万円で請け負います」などの出品者もたくさんいるので、大金をかけることなく、理想のホームページを作成できる可能性が高いといえます。
また、もしも自分で更新できるところまで設定してもらっても、WordPressなどで更新する自信がない場合は、ホームページには基本情報のみを載せると同時に各種SNSのリンクを貼ってもらい、最新情報はSNSから発信していくという選択肢もあります。
また、ホームページ制作を外部に依頼する場合には、MEO対策およびSEO対策もおこなってくれる業者や個人事業主を選ぶことが大切です。MEO対策、SEO対策についてはこのあと解説します。
MEO対策
MEO対策の「MEO」とは、”Map Engine Optimization”の略。地域名を含んだキーワードで検索した際、自院が検索結果上位に表示されるためにおこなう施策です。
たとえば、東京都新宿区で皮膚科クリニックを運営しているなら、「新宿 皮膚科」のキーワードで検索をかけた際、自院が上位に表示されるようMEO対策をとっておくと、患者の目に留まりやすくなるため、集患・増患が期待できます。
SEO対策
SEO対策の「SEO」は”Search Engine Optimization”の略で、日本語にすると「検索エンジン最適化」となります。つまり、検索エンジンの評価アルゴリズムが、自院のサイトを検索結果上位として拾ってくれるようにすることで、自然検索の流入の量や質を改善して、集患・増患につなげる施策です。
SEOおよびMEOの精度を上げるためには、ホームページがある程度充実している必要があります。なぜなら、ホームページに掲載している文章に、検索されやすいキーワードをしっかりと盛り込む必要があるためです。そのため、SEO対策、MEO対策を考えると、先に解説した「ホームページには基本情報のみを載せる」という選択肢をとる場合、基本情報のなかに必要なキーワードを多く盛り込むと同時に、検索順位が下がってきた場合には制作会社に見直しをお願いするなどできるとベストです。
SNSの有効活用
SNSは、スマホユーザーの多くが毎日開くものです。そのため、定期的に情報を発信することで、患者および潜在患者の目につく可能性が高まります。
SNSとひとことにいっても、Xのような文章投稿型もあれば、Instagramのような写真投稿型、TikTokのような動画投稿型もあるので、それぞれの特徴に合わせた形での発信を心がけることが大切です。
たとえば、新しい機器を導入した際や、院内のアットホームな雰囲気を伝えたい際には、写真をしっかりと見てもらえるInstagramがおすすめです。患者の年齢層が高いなら、Facebookでも積極的に情報を発信したいところです。
予約システムの導入
SNSのなかでも、既存客の再来院につなげやすいのがLINEです。なぜかというと、公式ラインアカウントを作ってweb予約システムを構築すれば、患者がより気軽に予約できるようになるためです。もちろん、潜在患者も公式ラインアカウントを友だち追加することは可能です。そのため、ホームページに公式ラインアカウントのQRコードを貼っておいて、友だち追加を促すのがおすすめです。
自院でLINEを運用することが難しく、まずは予約システムのみを導入したいということであれば、予約特化型のシステムに絞って選ぶといいでしょう。もしくは、電子カルテの機能のひとつとして、予約システム機能を有しているものもあります。
口コミ対策
口コミ対策に関しては、先に説明した通り、患者にGoogleマップのQRコードを渡して口コミをお願いするなどが有効ですが、QRコードを用意する前の段階として、まずGoogleビジネスプロフィールのプロフィール欄を充実させることが大切です。クリニックの基本情報が正確であるかどうかをチェックして、投稿機能を活用して最新情報を発信しましょう。クリニックの雰囲気がサイト来訪者に伝わるよう、写真を活用することも大事です。
また、そもそもGoogleビジネスプロフィールのオーナーになっていない場合、オーナー確認の手続きからスタートする必要があります。
患者が来ない・増えないクリニックにおすすめの支援会社はある?
ホームページ制作やSEO対策、MEO対策、SNSアカウントの運用などに苦手意識があり、すべて一括して任せたいと考えるなら、制作会社を利用することがおすすめですが、各社に得意な分野などがあるので、制作会社の利用を検討しているなら、自院のニーズにうまくマッチしているところを選ぶことが大切です。
いくつかおすすめをピックアップして紹介します。
内部SEO・外部SEO対策の成功実績多数の「株式会社リーセンド」
「問い合わせ数増加につながる、集患ツールとして運用できるホームページ制作」を多数請け負っている制作会社です。内部SEO対策・外部SEO対策ともに多くの成功実績を有しています。また、テンプレートを一切使用することなく、完全オリジナルデザインで制作してくれるため、“競合と似たホームページになるのは避けたい”というクリニックにもおすすめです。
女性患者が多い美容外科・美容皮膚科・産婦人科などのクリニックにおすすめの「ヘルスケアWeb」
経験豊富な女性クリエイティブチームが、ホームページユーザーの目線を考えながら、集患・増患に強いホームページを仕上げてくれます。法規制によって制限される医療広告ガイドラインもきちんと把握しているため、安心して制作を任せることができます。
集患対策、スマホ対応付で初期費用0円、月額5,000円~のリーズナブルな価格設定が魅力の「Wevery!」
着実に集患・増患の結果は出したいものの、できるだけ安くホームページを作成したいという願望を叶えてくれるのが「Wevery!」です。最短30分でベースを完成してもらった後は、自院で内容の修正や追加をおこなうことも可能。もちろん、誰でも簡単に作業できるよう設定してくれるので安心です。
そのほか、下記記事でもおすすめの制作会社を紹介しているのでぜひ参考にしてみてください。
参照:クリニックや病院におすすめのホームページ制作会社27選
集患・増患に関するよくある疑問と回答
続いては、集患・増患に関するよくある疑問と、その回答を述べていきます。
Q:集患・増患できれば開業医は儲かる?
A:集患・増患したい思いはあるものの、「患者が増えたら増えたぶんだけ儲かるの?」と考える医師もいるかもしれません。確かに、患者数が大幅に増えたとしたら、診察や会計作業をこなすためにスタッフを増員しなければならない場合など、「支出も多くなるのでは?」という疑問は沸くでしょう。しかし、たとえば患者数が3倍になったとして、それに対応するためにスタッフを1人増やした場合で考えてみると、スタッフ1か月分の給与を差し引いても、以前より多く稼げているということになるのが一般的でしょう。「では患者数が2倍だったら?」と考えるかもしれませんが、そもそも現状で患者数の少なさに悩んでいるなら、2倍に増えてもまわせなくなるということはないでしょう。
Q:そもそも開業医ってどのくらい稼げるものなの?
A:厚生労働省が公表している「第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告―令和5年実施―」によると、開業医の平均年収は約2,600万円です。
つまり、現状、2,600万円を大幅に下回っている場合は、まだまだ稼げる余地があるととらえることができるので、まずは先に説明した対策にすべて手をつけてみましょう。
参照:厚生労働省「第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告―令和5年実施―」
患者が来ない・増えないクリニックの開業医が運営方針を見直すべき理由
患者が来ない・増えないクリニックの多くは、「集患・増患がうまくいかないのはなぜだろう?」と悩んでいるのではないでしょうか? また、これまでにも少なからず、集患・増患を成功させるためには何をすればいいだろうかと考え、対策をとってきたはずです。しかし現実問題それではうまくいっていないのであれば、一からやり方を変える必要があります。特に、先に紹介した対策は効果が出やすいので、まずはこの記事で紹介した対策をすべて実践してみることから再スタートしてみてくださいね。
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この記事は、2024年12月時点の情報を元に作成しています。