
少子高齢化が進み、医師不足が叫ばれていることもあり、医師は好条件での転職が叶いやすいと考えられます。しかし、実際に転職してみた結果、「この転職は失敗だった」と思う可能性もゼロではありません。では、なぜ転職前に条件などを確認しているにも関わらず、残念な結果となることがあるのでしょうか? 詳しくみていきましょう。
医師の転職の実態は?
医師の転職の失敗/成功について考える前に、まず、医師の転職の実態を確認しましょう。
一般企業においては、転職を重ねることはあまりよいこととはされていませんし、実際にある程度の年齢になると、よほどの実績や特別な資格がなければ、採用されにくくなる傾向にあります。
しかし、医師の場合、ある程度年齢を重ねていても、転職回数が多くても、どこにも採用されないということはありません。なぜかというと、前述の通り、日本は医師不足が著しいため、多くの医療機関が働いてくれる医師を求めているためです。
しかも、厚生労働省が公表している「令和4(2022)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、令和4(2022)年における、病院に従事する医師の平均年齢は45.4歳、診療所に従事する医師の平均年齢は60.4歳と高いことから、一般企業の労働者と比べて、年齢を重ねていることが転職において不利になりにくいと考えられます。
参照:厚生労働省「令和4(2022)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
ただし、大学病院勤務の場合、役職がつけば給与面で優遇されるようになることや、最新の研究に携われる機会を得やすいことなどから、転職を考える医師は少ない傾向にあります。
一方、民間病院に勤務する医師は、待遇や給与などは病院によって異なることもあり、より待遇のいい病院への転職や、開業に向けて経験を積むための転職を重ねる医師が多い傾向にあります。
医師が転職したいと思う理由
続けて、医師が転職したいと思う理由についてもう少し詳しくみていきましょう。医師が転職を考える代表的な理由としては以下が考えられます。
それぞれ詳しくみていきましょう。
年収を上げたい
年収を上げるために転職を希望する医師はとても多いと考えられます。年収を上げる方法としては、「副業する」「役職に就く」「資産運用する」などの選択肢も考えられますが、労働時間は変えず、リスクもとらずに年収アップしたいとなると、より条件のいい医療機関に勤務することが得策だと考えられるためでしょう。
ワークライフバランスをとりたい
「激務でプライベートの時間が持てない」「当直やオンコールの頻度が高い」など、労働条件の悪さに悩まされている場合、ワークライフバランスを重視した働き方にシフトしたいと考えるようになることもあるでしょう。
スキルアップしたい
複数の医療機関や複数の診療科を経験することで、スキルアップしたいと考える医師もとても多いです。将来的に開業したいと考えているなら、さまざまな医療機関で仕事の流れなどを確認することも役に立ちます。また、資格取得のために特定の医療機関や診療科で研鑽を積みたいというケースも考えられます。
人間関係に悩まされている
職場の人間関係に嫌気が差して、しがらみのない職場に移りたいと考えるケースも多いです。大病院の場合、派閥争いに巻き込まれてうんざりということもあり得るでしょう。
家庭の事情
家族の転勤に伴う引っ越し、出産や育児、介護などのために、働くエリアや働く時間を変えることを余儀なくされることも考えられます。
勤務先の倒産
医療機関の休廃業・解散は、2023年度で700件を超えています。勤務先がこのうちの1件にカウントされた場合、転職を避けて通ることはできません。
医師が転職に失敗したと感じるパターンとは?
続いては、医師が「転職に失敗した」と感じるパターンをみていきましょう。医師が「転職に失敗した」と感じる代表的なパターンとしては、以下が考えられます。
それぞれ詳しくみていきましょう。
年収が下がった
「ワークライフバランスを重視したい」「人間関係が悪い今の職場から一刻も早く抜け出したい」などの理由で、年収は二の次で転職した結果、「これだけ年収が下がると気持ちに余裕が持てない……」とわかって後悔することがあるかもしれません。それを承知のうえで転職先を選んでいたとしても、実際に大幅に金額ダウンすると落ち込むことが考えられます。
激務で働き続けるのが辛い
反対に、「忙しくてもいいからもっと稼ぎたい」と年収アップを目指して転職した場合、過労によって心身が疲弊してくる可能性があります。また、転勤によって通勤時間が伸びたことで、睡眠時間が減った結果、辛くなることなどもあり得ます。
仕事内容が自分に向いていない、やりがいが感じられない
「いろんな診療科を経験したい」と未経験の診療科を希望した結果、「やはり自分には向いていない」と痛感する可能性はゼロではありません。また、転職によって患者のターゲット層などが変わったことで、「もっと手術数が多い医療機関のほうがやりがいを感じられた……」などのストレスが生じるケースもあるかもしれません。
人間関係が悪いなどの問題がある職場だった
労働環境の現実は外からは把握しづらいため、中に入ってみてから失望することがあるでしょう。
医師が転職に失敗する原因は?
続いては、なぜ上記で説明したような結果となり、「失敗した」と後悔してしまうのかを分析していきましょう。
医師が転職に失敗する原因はいくつか考えられますが、代表的な原因としては以下が挙げられます。
それぞれ詳しくみていきましょう。
焦って転職した
「今の職場から一刻も早く離れたい」「今の職場でなければどこでもいい」と急いで転職すると、結果的に今以上に相性の悪い職場に転職してしまう可能性があり得ます。
転職先の情報収集不足
転職先の情報をしっかり収集できていなければ、転職後に「こんなに待遇が悪いだなんて知らなかった」「オンコールや当直対応が想像以上に多い」とがっかりしてしまうことが考えられます。それを防ぐためにも、たとえば年収重視で転職するにしても、年収以外の条件もしっかりチェックすべきです。
キャリアプランを鮮明に描けていない
「年収を上げたい」「ワークライフバランスを重視したい」などの労働条件だけでなく、転職を重ねることでどんなふうにキャリアを構築していきたいのかを考えることはとても大切です。キャリアプランを鮮明に描けていなければ、仕事のやりがいも年収も、上がったり下がったりして着実にキャリアを築いていきづらいでしょう。
医師が転職を成功させるために押さえておきたいポイントとは
医師が転職を成功させるためには、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。具体的には以下をクリアすることが大切です。
それぞれ詳しくみていきましょう。
転職の目的、キャリアプラン、ライフプランをしっかり考える
第一に、転職の目的を考えることが大切です。「転職によって何を実現させたいのか」に意識を向けると、そのために譲れないポイントなどもみえてきます。また、転職は基本的に、働き方や生き方を見直して、今より満足度の高い毎日へとアップデートさせるためにおこなうものです。医師として成し遂げたい大きな目標があるなら、転職はキャリアアップのチャンスですし、「仕事第一で半生を生きてきたけど、これからは家族との時間を大事にしたい」との理由で転職するなら、その実現のためにどんな転職がふさわしいのかを考えることが不可欠です。
転職計画を立てる
先に述べた通り、「とにかく今の職場から離れたい」などの理由で焦って転職すると、転職したことを後悔する可能性が高くなります。焦る気持ちはわかりますが、転職先でまた、「この職場からも離れたい」と同じことを繰り返すようなことになっては元も子もありません。それを防ぐためにも、「半年後に、今より年収が20%以上高い職場に転職する」などの目標を掲げて、その実現のために着実に行動することをおすすめします。
転職先の情報を十分収集する
転職志望先が提示している労働条件は求人票などに記されていますが、その条件だけを確認して転職を決めてしまうのは浅はかです。医療機関の内情は、実際に働いてみないとわからない部分があるのは確かですが、インターネットで検索すると、各医療機関で勤務した経験のある医療従事者の口コミなどがヒットすることもありますし、患者の口コミからみえてくる部分もあるでしょう。また、同業者のなかにも、志望先の内情に詳しい人がいる可能性があるので直接きいてみるのもいいですし、転職エージェントなどを利用している場合は、エージェントの担当者に質問すると有益な情報を教えてくれることもあるかもしれません。
「失敗してもまた次がある」と安易に考えすぎるのはおすすめできない
転職を成功させるために十分な対策をとらず、「もし失敗してもまた転職活動すればいいから大丈夫」と軽く考える人もいるかもしれません。確かに、失敗してしまった場合は、我慢して働き続けるか再び転職するかのいずれかになるので、迷わず後者を選択できることはよいことではあります。しかし、闇雲に転職を繰り返していると、「キャリアを構築しづらい」「退職金が少なくなる」などのデメリットがあるので注意が必要です。退職金に関しては、そもそも規定がない医療機関もありますが、用意されている場合、在籍年数によって金額が決定するので、最終的に微々たる金額しかもらえなかったということにならないよう、計画的に転職するよう心掛けてくださいね。
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この記事は、2025年2月時点の情報を元に作成しています。