
看護師の転職面接において、高確率で投げかけられる質問のひとつが、「あなたの長所・短所を教えてください」です。
この質問に対する回答は、予め用意していなくても答えられないということはありませんが、準備をしていなければ、無難で印象の残らない回答になるか、他の質問に対する答えとの間に矛盾が生じる可能性があります。
そこで今回は、転職で失敗しない「長所・短所」の伝え方を、例文付きで解説していきます。
看護師の採用面接で「長所・短所」を聞く理由とは?
看護師の採用面接において、採用担当者が「長所・短所」を聞く主な理由は次の通りです。
- 組織や配属部署との相性を知るため
- 誠実に看護に取り組めるかをみるため
- 人間関係のトラブルのリスクを減らすため
- 自分を客観視する力があるかどうかを見極めるため
- 伸びしろをはかるため
それぞれ詳しくみていきましょう。
組織や配属部署との相性を知るため
長所は、組織や配属部署の求める人物像と合致するかの判断材料になります。たとえば、急性期病棟であれば、行動力や判断力が強みであると相性がいいといえます。
短所は、「チームに影響を及ぼす可能性がある弱点であるかどうか」という観点からチェックされます。
誠実に看護に取り組めるかをみるため
看護の仕事は人の命に直結する仕事であるため、誠実に業務に取り組む姿勢がとても大切です。
誠実さをアピールするためにもっとも大切なことは、自分を偽ることなく、自分という人間がどういう人間であるのかを相手に伝えることです。
特に、自分の短所について隠さず話して、改善の意思を示すことは、「誠実である」との評価につながりやすいでしょう。
また、責任をもって業務に取り組んでいることや、患者やその家族に寄り添って仕事することを大切にしていることも、誠実であるとの評価につながるはずです。
人間関係のトラブルのリスクを減らすため
自分の長所、短所を偽ったり、自分を過大評価したりしていることが透けてみえてしまうと、採用担当者から「一緒に働くスタッフに対しても不誠実な人間なのでは」「自分に自信がありすぎて周囲の意見に耳を貸せないのでは」と思われて当然です。
その結果、「人間関係を乱す可能性が高い」と判断されて採用を見送られる可能性もあります。
自分を客観視する力があるかどうかを見極めるため
看護の現場では、自分の得意・不得意を把握していなければ、ミスや人間関係のトラブルを引き起こしてしまいます。
そのため、自分の性格や働き方の傾向を客観的に理解できていることが非常に大切です。短所に関しても、自分自身で客観視することができていれば、ミスやトラブルを引き起こさないように事前に対策をとることができます。
伸びしろをはかるため
短所を客観視していて、改善の意欲があると認められた場合、たとえば経験年数が浅く、即戦力にはなれないと判断されたとしても、「これだけ改善意欲があれば、今後大きく成長する可能性が高いだろう」ととらえてもらえます。
看護師の採用面接で「長所・短所」を聞かれるタイミングは?
看護師の採用面接で「長所・短所」を聞かれるタイミングは、次の3パターンがもっとも多いと考えられます。
自己紹介の後
自己紹介や経歴確認の後はオーソドックスなタイミングです。「ご経歴はたいだいわかりましたが、性格面についても教えてください。長所と短所を挙げていただけますか?」などと振られるパターンです。
志望動機確認の後
急性期や在宅医療、精神科など、適性の影響が大きい職場や診療科の場合、「志望動機はわかりましたが、それを裏付ける性格的な強みは?」などの文脈で質問されることがあります。
終盤のまとめのフェーズ
経歴やエピソードからみえた人物像と、本人の自己評価が一致しているかを照合する目的で、「最後に、長所と短所を一言でお願いします」などと質問されるのがこのケースです。
自分の「長所・短所」を分析する方法は?
「長所・短所をどう伝えるべきか」という以前に、「自分の長所・短所がわからない」と悩んでいる場合、次のように分析してみるといいでしょう。
- 過去の評価や指導からヒントを得る
- 失敗経験や困難の乗り越え方を振り返る
- 友人・同僚に聞いてみる
過去の評価や指導からヒントを得る
勤務評価表のコメント欄を確認したり、上司やプリセプターの言葉を振り返ったりすることで、長所・短所のヒントが見つかる場合があります。
勤務評価表にしろ、上司やプリセプターの言葉にしろ、「あなたはこういうところがすばらしいけど、こういうところは改善したほうがいい」などの言葉で、長所・短所の両方に触れてくれている場合が多いはずです。
失敗経験や困難の乗り越え方を振り返る
過去の失敗経験の原因を探って、何が問題だったのか、自分に足りないものは何だったのかに目を向けると、自分にどんな短所があり、それを補うために自分がどんな対策を講じているのかを客観視できます。
また、困難を乗り越えることができた経験があるなら、その際、自分のどんな強みが武器になったのかを考えて、それを“長所”として言語化するといいでしょう。
たとえば、うまくいかない時期が長く続いたものの、諦めずに課題と向き合い続けた結果、壁を乗り越えることができたなら、根気強さ・粘り強さが長所の一つであると考えられます。
友人・同僚に聞いてみる
自分にとっては当たり前のこと、みんなと同じであると思えることでも、他人からみるとそうではない場合があります。
そのため、友人や同僚に「私の長所・短所はどんなところだと思う?」と聞いてみることは大いに有効であるといえます。
客観的な意見に耳を傾けることで初めて、「自分のこういうところは強みだったのか!」と気づくこともあります。
面接における看護師の「長所・短所」のベストな伝え方|3つのポイント
上記のいずれのタイミングで聞かれた場合もスムーズに答えられるよう、長所と短所のベストな伝え方を理解して、しっかりと準備しておくことが大切です。具体的には、次に挙げるポイントをおさえておくことが大切です。
ポイント① 嘘はNG!ただし、“見せ方”を工夫する
まず、もっとも大切なのは「嘘をつかない」ということです。ただし、たとえば「瞬時に判断してスピーディに行動することが苦手」だという自覚があったとしましょう。
それをそのまま短所として伝えると、まず間違いなくマイナスのイメージを持たれてしまいます。そうならないために大事なのが「言い換え」です。
たとえば「迅速な判断と行動が得意ではないため、想定外のことがあったときに余裕を持って動けるよう、日ごろから早め早めに行動するようにしています」など、自身が取り入れている改善策などとセットで回答するといいでしょう。
また、長所に関しては、過去の実績やエピソードを交えて伝えることで、より魅力的な一面だととらえてもらいやすいです。
ポイント② 応募先の業務内容にリンクさせる
訪問看護ステーションの面接なら、状況判断力を強調してアピールするなど、応募先の業務内容にリンクした回答を用意しておくことも大切です。
応募先の施設や事業所の理念や診療方針をチェックして、その内容と紐づけた回答を用意できればなおよしです。
ポイント③ 抽象的な言葉は具体化する
長所・短所の回答に限ったことではありませんが、面接で自分のことを相手に伝えるためには、抽象的な言葉はできるだけ使わず、具体化することが大切です。
たとえば、
- 「私は明るい性格です」ではなく、「私は、どんな患者さんとも壁を作らずに接することが得意ですし、コミュニケーションを通して患者さんに笑顔になってもらえることがとてもうれしいです」
- 「私の短所は飽きっぽいところです」ではなく、「ルーティンワークより、変化がある現場でのほうが力を発揮できます」
といった具合です。
看護師の「長所」回答例|転職先に響く・採用につながる伝え方
続いては、看護師の採用面接における「長所」の回答例を紹介していきます。
長所を聞かれたら、長所そのものに加えて、その長所をどのように仕事に活かすことができているのかを言葉にすることが大切です。たとえば、次のように回答します。
(例1)「判断力」が長所の場合
「私は、患者さんが急に容態変化した場合も、落ち着いた対応で、スピーディに必要な行動を取ることができます。前職では救急搬送の受け入れ対応も多く、状況を見極めながら医師や他職種と連携してきました」
(例2)「協調性」が長所の場合
「私は、同僚や他職種と積極的にコミュニケーションをとり、チーム全体の雰囲気を良好に保つことが得意ですし、お互いに積極的に協力し合える関係性を築いておくことが、よりよい看護の提供にもつながると考えています。
以前の職場では、業務改善のためのミーティングで積極的に意見を出して、チーム全体の作業効率向上につなげました」
(例3)「観察力」が長所の場合
「患者さんのわずかな表情や体調変化にも気づける観察力があると自負しています。日々の観察記録から、異常の早期発見につなげた経験もあります」
(例4)「コミュニケーション力」が長所の場合
「患者さんやご家族の不安を和らげるために、相手の言葉だけでなく表情や態度から気持ちを汲み取り、安心感を与える対応を心がけています」
(例5)「粘り強さ・継続力」が長所の場合
「困難な状況でも諦めず、改善策を考えながら最後まで取り組む粘り強さには自信があります。新人指導においては、成長スピードが遅めなスタッフにも根気よく関わり、スキルアップを支援することができました」
看護師の「短所」回答例|失敗しない伝え方と改善アピール
続いては「短所」の回答例です。
短所を回答する際は、「自分にはXXな短所があるため、対応策・改善策としてXXを心がけています」の形で伝えることが大切です。たとえば、次のように回答します。
(例1)業務に時間がかかりがちな場合
「業務内容に間違いがないかを慎重に確認するあまり、時間がかかることがあります。それによって周囲に迷惑をかけることがないよう、重要度を判断して、優先順位をつけて動くよう心掛けています」
(例2)人に頼るのが苦手な場合
「業務中に困ったことがあった際、なんとか自分で解決しようとして、助けを求めるタイミングが遅れることがありました。最近は、チームで動くことの大切さを意識して、早めに相談するようにしています」
(例3)完璧主義の場合
「業務に完璧さを求めすぎて、自分に負荷をかけてしまうことがあるので、完璧さよりも安全・効率を優先して、周囲と役割を分担するよう意識しています」
(例4)判断力が低いと感じる場合
「複数の業務が同時に発生すると、優先順位の判断に迷うことがあります。そのため、先輩の対応方法を学び、緊急度・重要度で整理する習慣をつけることを意識しています」
(例5)緊張しやすい場合
「緊張しやすいことが短所で、初対面の患者さんやご家族の前で緊張してしまうことがあります。そのため、自己紹介や雑談を取り入れて距離を縮める工夫をしています」
こんな伝え方はNG!看護師面接で避けたい表現
面接において長所・短所を伝える際には、次のような表現を避けることを意識することも大切です。
短所のみを伝える
これは前述の通りですが、短所を伝えるにあたっては、その短所を改善しようという意識を持っていることを併せて伝えることが非常に重要です。
「私はこういうことが苦手です」で終わってしまうと、成長意欲のない、無責任な人だと判断されてしまいます。
自分をよく見せようとする
自分をよく見せようとして、長所・短所をいいようにとらえて取り繕うと必ずボロが出ます。
面接においては、経歴書がチェックされていますし、長所・短所以外についても聞かれているため、自分を取り繕ったことで整合性がとれなくなってしまいます。
他責思考が垣間見える言い回し
長所・短所以外のことを聞かれた際に関しても言えることですが、「自分はがんばっていたのに、周りがこうだったから辞めました」などと発言すると、トラブルやイヤなことがあったときにすぐ人のせいにする性格なのだな、と判断されて当然です。
まとめ|「長所・短所」は正直+戦略的に伝えよう
長所・短所を聞かれたときの答えとして、長所・短所そのものに関して、「このようなことを答えるべき」ということはありませんが、「長所・短所を通していかに自分を伝えるか」はしっかりと考えておくことが大切です。
採用担当者は、「その人が自分をどのように客観視していて、どのように日々の業務に向き合っているのか」をみています。
無理に“看護師として完璧であること”を取り繕う必要などはないので、自分のことを相手にきちんと知ってもらえるよう、十分な時間をかけて回答を準備するようにしてくださいね。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2025年8月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
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