
看護師の仕事は、人の命に直結する場合があるものですし、勤め先によっては夜勤に対応しなければならないなど、一般的な会社勤めでは味わうことのない辛さや大変さを実感するシーンも多いでしょう。
この記事では、現役看護師が具体的にどんなことを「大変」だと感じているのか、そしてその大変さを乗り越えるためにどんな対策を講じているのかといったことについて、リアルな声を交えながら解説していきます。
看護師が「大変」だと感じる代表的なこと
まずは、『株式会社Donuts』が独自に実施したアンケート調査の結果から、看護師が「大変」だと感じることを紹介していきます。調査の結果、看護師が「大変」だと感じている代表的な要素は、次の通りです。
- 人間関係
- 夜勤・不規則勤務による体力的負担
- 患者の急変・命に関わる判断のプレッシャー
- 勉強の継続
- 患者及び患者の家族への対応
- 自身の体調・メンタル管理
なぜ「大変」なのかについて、実際の声をもとに確認していきましょう。
人間関係
「昨日と今日で言うことが違うお局がいて、同じ対応をしても、日によって“こうしてくれないと困る”といわれるため、まじめに対応していたら適応障害を発症してしまいました」(アクアリウムさん・40代前半・女性)
「嫌いな人のことはとことん無視する先輩看護師がいましたが、そうなるとその先輩看護師が受け持っている患者に何かあっても、無視された側は他の先輩看護師に報告もできないので、いつも患者が犠牲になってしまっています」(momoさん・30代後半・女性)
「医師の機嫌をとるのがとにかく大変でした。たとえば、電話の相手がなかなか切ってくれなかったと説明しても、長電話するなと怒られたことなどもあります」(さちさん・50代後半・女性)
「男性看護師も増えてきたとはいえ、まだまだ“女性の職場”であるため、女性特有の嫌味や陰口に苦労します」(イロドリさん・40代後半・女性)
「傲慢な医者やお局ナースとの仕事で精神力がすり減ることは避けられない場合も多いので、セルフコントロールすることが一番大切だと感じています」(波さん・30代後半・女性)
「理不尽なことを言ってくる先輩看護師と関わらなければならないこともありましたが、“自分は後輩にはこういうことは言わないようにしよう”と学ばせてくれたことに感謝するようマインドセットし続けました」(ろったんさん・30代前半・女性)
先輩ナースや医師の顔色を伺わなければならないことを負担に感じているという意見は、このほかにも多数ありました。また、女性の比率が多い職場では、異性の目がないことから、言動や態度がきつくなる女性が多いようです。
夜勤・不規則勤務による体力的負担
「夜勤担当時に急患が出たり、患者が急変したりすると仮眠をほとんどとれないため体力的にきついです。また、看護師ではない友だちに“何もなければずっと寝ているだけでしょ”と言われることもストレスです。急患や急変がなくても、夜勤はやることがたくさんです」(みさちょさん・30代前半・女性)
夜勤を含む不規則勤務に対応しなければならないだけでも、体力的に負担が大きいのに、患者の急変などがあれば仮眠もとれなくなることから、大きな疲労感を覚える人は多いようです。
また、不規則な生活が続くと、睡眠障害が出てくるという人も多いはず。さらに、回答者のように、夜勤の辛さを周りが理解してくれないことに対してストレスを感じているケースもあるでしょう。
患者の急変・命に関わる判断のプレッシャー
「看護師の人数が少ない夜勤帯の急変対応はとても大変です。患者さんの呼吸がとまっていることに気づき、すぐにドクターを呼び、他の部署の看護師にも応援を頼みましたが、そのまま息を引き取られたことがあります。日勤帯だったら、もっと人もいて助かったかもしれないと思うと胸が苦しくなります」(のぞみさん・30代前半・男性)
「急変対応は一番大変だと感じます。特に新人のころは、心臓マッサージをされながら運ばれてきた患者さんを前に、どうしていいか立ち尽くしてしまいました」(ろったんさん・30代前半・女性)
「老健で働いていると、夜間や休日は医師が不在なので、利用者の急変時対応や判断が大変だと感じます。特に、症状をうまく伝えられない方だと、判断がとても難しいです」(kakoさん・30代後半・女性)
「人の命を預かっている緊張感が常にあるため、精神的に疲弊します」(きよぽんさん・50代前半・女性)
看護師の仕事は基本的に人の命に関わる仕事なので、それだけでも、ある程度のプレッシャーがあって当然です。
さらに、医師が不在の時間帯、看護師が少ない時間帯の勤務の場合はプレッシャーが大きくなりますし、「自分のせいで患者を救えなかったらどうしよう」という恐怖を感じることもあるでしょう。
勉強の継続
「日々、進化する医療知識や福祉に関する知識をアップデートしないとケアに活かせない。たとえば、外来特有のことでいうと、レセプトや難病制度についても知っておかないと患者指導できない」(アクアリウムさん・40代前半・女性)
医療は日々進化するものであるため、知識を磨き続けることはとても大切です。しかも、働き方によっては最新の知識を有しているかどうかで、給与などの待遇が変わってきます。たとえば、患者からの指名によってインセンティブがつく美容皮膚科などがその一例です。
また、専門看護師や認定看護師などの資格取得を目指す場合、人並み以上に勉強することが不可欠となります。
患者および患者の家族への対応
「認知症、せん妄の患者と接することは大変です。特に、不潔行為や粗暴行為がある場合は疲弊します」(まさひろさん・30代後半・男性)
「認知症や高次脳機能障害患者から暴言暴力を受けることは辛いです。患者さんが悪いのではなく、病気が悪いんだとわかっていても、こちらも一人の人間なので傷つきます」(まーちゃんさん・30代後半・男性)
上記回答の通り、認知症やせん妄などの症状を有している患者への対応は特に大変ですが、同様に、訪問看護の利用者からの暴言などに悩む看護師も多いとされています。また、一般的な外来であっても、患者からのクレームに対応しなければならないことがあります。
自身の体調・メンタル管理
「年齢を重ねるにつれて、身体介助の負担を強く感じるようになりました。ボディメカニクスという身体の使い方を意識してはいますが、何度も腰を痛めました 」(清水めぐみさん・50代後半・女性)
夜勤を含む不規則勤務による肉体的疲労のほか、加齢で体力が衰えてきたことが原因で身体やメンタルを崩してしまう看護師も多いようです。
また、今回のアンケートの結果以外にも、一般的に、次のようなことを「大変」だと感じる看護師は多いとされています。
- 給与の額が労働量や責任の重さと見合わない
- 医療ミスへの恐怖と常に隣り合わせ
- 雑務・事務作業が多い
- 人手不足で休めない・業務量が多い
- 医師や上司などからのセクハラ・パワハラ
- 男性看護師が少ないことから、力仕事は常に自分に任される
経験年数・ライフステージによる「大変」なことの変化
看護師が「大変」だと感じることは、経験年数やライフステージによっても変わってきます。
新人(1~3年目)にとっての大変なこと
新人のころは、知識・経験不足で思うようにできないことも多いため、「自分は看護師には向いていないかもしれない」「いつも怒られてばかりで辛い」と感じる人もたくさんいます。また、そうした悩みが原因で「辞めたい」という気持ちが大きくなり、離職する人も実際に多いです。
しかし、入職して1~3年目であれば、うまくできないことがあっても当然です。そのため、できないことを「大変」だと感じたとしても、その都度、成長の機会だととらえて、知識や技術を自分のものにしていくよう心がけましょう。
中堅(5~10年目)の看護師にとっての大変なこと
入職して5年目以降になると、後輩の指導を任されるようになります。それだけ、看護師としての周囲からも技量が認められているということですが、反面、「自分の仕事もこなしながら、後輩を指導する時間も捻出しなければならない」という大変さが出てきます。
なかには、自分の仕事で手一杯のところに、後輩から質問されたことで、思わずイラッとしてしまうという人も。そのように、役割が増えたことで自分を律することができなくなってしまうと、後輩から敬遠される、いわゆる“お局ナース”への道まっしぐらの可能性が高くなるので注意が必要です。
また、入職5~10年目に「大変」だと感じやすいもうひとつの要素が、「キャリアの構築」です。入職から1~3年目は、看護師の仕事、もしくは職場がイヤで離職してしまう人が多いのに対して、5年目以降は、よりよいキャリアを築くために転職する人が増えてきます。
そのため、周囲が次々と理想の転職を叶えていくなか、「理想のキャリアを築いていくことって大変……」と頭を抱えてしまう人もいるかもしれません。
30代の看護師にとっての大変なこと
20代後半頃から、結婚・出産を経験する人が増えてきますが、30代に突入すると、家庭と仕事の両立が大変だと感じる人の数はさらに増えてきます。
20代で出産していれば、体力的にも余裕があるぶん、産後の復帰の負担も少ない場合がありますが、30代以降での出産となると、看護師のように体力が必要な職種だと特に、復職時に体力的に「大変」だと感じやすいでしょう。
40代~50代の看護師にとっての大変なこと
40代以降になると、本格的に体力の衰えを感じる人が増えてくるため、夜勤を含む不規則勤務が身にこたえるようになるでしょう。
また、40代以降は年齢的にも役職に就いている人が多くなりますが、管理職ならではの責任の重さを「大変」だと感じる人もいるでしょう。
家庭と仕事の両立に関することでいうと、40代に突入すると、親の介護と仕事との両立に悩む人の割合が増えてきます。
看護師の大変さを和らげる工夫・セルフケア
看護師の「大変」を和らげるためにできることとしては、次のような工夫やセルフケアが挙げられます。
- 睡眠・食生活・運動などでの健康管理
- 業務の優先順位づけ・タイムマネジメント
- 勉強の習慣化(SNS・動画・勉強会の活用)
- 同僚や看護協会など相談できる場の活用
それぞれ詳しくみていきましょう。
睡眠・食生活・運動などでの健康管理
第一に、心身が健康であれば、仕事や、仕事と家庭の両立に対して、「大変」だと感じることが少なくなります。では、健康を保つための秘訣はというと、睡眠、食生活、運動の習慣などを見直すことが基本となります。
たとえば思うように睡眠がとれていないなら、食事のタイミングを調整したり、寝具をよいものに替えたり、ベッドに入る前にストレッチしたりの工夫が望ましいです。
食事に関しては、脂っこいものが好きだとしても、胃腸に負担をかけないものを積極的に摂取するよう心掛けたり、アルコールの量を減らしたりするのも一手です。運動に関しては、時間的に余裕がある休日だけでも、近所を散歩するなどして身体を動かす習慣をつけてみるのはどうでしょうか?
また、身体の凝りをほぐすことで健康を目指したいなら、サウナや健康ランドなどを利用するという手もありますし、リフレッシュを兼ねて定期的に整体を利用するのもいいでしょう。
業務の優先順位づけ・タイムマネジメント
体調管理の時間を捻出できない、勉強する時間がとれないといったことが原因で、仕事にしわ寄せがいって大変だと感じているなら、業務の優先順位を考えて、効率よく仕事をこなしていくことを検討してみましょう。
また、タイムマネジメントを意識して一日のスケジュールを立てることによって、仕事と家庭の両立に関するストレスは少なからず緩和されます。育児や介護に追われている現状であれば、家族で役割分担を見直すことも含めて、タイムマネジメントの精度を上げていきましょう。
勉強の習慣化(SNS・動画・勉強会の活用)
勉強を続けることが「大変」だと感じる大きな理由は、習慣化されていないためです。何事もそうですが、「時間があるときにやろう」と思っていると、重い腰はいつまでも上がりません。一方、毎日決められた時間になれば机に向かうことにしていれば、最初のうちは「大変」でも、慣れるにつれて、机に向かうことが当たり前になるため、大変さを感じません。
習慣化するときのコツは、最初から長時間勉強しようとしないことです。1日5分なら、長く続けられる可能性がぐっと上がります。「たった5分なんて意味ないのでは?」と思うかもしれませんが、1週間続ければ30分以上勉強したことになります。しかも、ダラダラと1時間勉強するより、「5分だけ」と割り切っているほうが高い集中力をキープできるため、勉強したことが記憶に残りやすいといえます。
もしくは、毎日続けるのはハードルが高いなら、「月に1、2回、セミナーや勉強会に参加する」などと決めるのもいいでしょう。
また、本や教科書を使わず、SNSや動画を使って楽しく勉強するのもいいアイディアですし、一人での勉強だと続かないなら、同僚やネット上の仲間と一緒に勉強するのも一手です。
同僚や看護協会など相談できる場の活用
人間関係、または患者やその家族への対応などに悩んでいるなら、信頼できる人に相談することで、心が軽くなることが考えられます。友だちや同僚を見渡して、相談できそうな相手がいないのであれば、看護協会の相談窓口などを利用することも検討してみましょう。
「それでも無理」と感じたときの選択肢
上記のような工夫・セルフケアを続けてみても、大変さが変わらず、心が重たくなってしまった場合、次のような選択肢も検討しましょう。
- 部署異動で環境を変える
- 日勤のみ・パートなど働き方を見直す
- 美容皮膚科・企業看護師・健診センターなど新しいキャリアの道
- 専門看護師・認定看護師などキャリアアップを目指す
- 思い切って転職
それぞれ詳しくみていきましょう。
部署異動で環境を変える
病院勤務の場合、部署異動で環境を変えることはもっとも手っ取り早い方法だと考えられます。転職活動の必要もないため、「仕事が見つからなかったらどうしよう」という不安に駆られることもないので、ダメもとの場合でも、まずは希望を出してみることをおすすめします。
ただし、「ダメもと」と書いた通り、部署異動の希望は必ずしも通るとは限りません。
日勤のみ・パートなど働き方を見直す
「不規則勤務が身体にこたえる」「煩わしい人間関係にできるだけ悩まされたくない」などの場合、働き方を見直してみるのも一手です。「日勤のみ」という働き方がない場合も、メンタルの不調を訴えれば、職場が相談に応じてくれる可能性があります。もしくは、パートやアルバイトなど、雇用契約を変えてもらうことを検討する方法もあります。
ただし、選択した働き方によっては、給与がダウンすることはデメリットであるといえます。
美容皮膚科・企業看護師・健診センターなど新しいキャリアの道
病院勤務で、命と向き合うプレッシャーや、患者やその家族とのコミュニケーションがうまくいかないことに悩まされているなら、病院以外の働き方を考えてみるのがいいでしょう。
専門看護師・認定看護師などキャリアアップを目指す
今の働き方に不満があって、やりがいが感じられない場合や、給与に不満がある場合、専門看護師や認定看護師などの資格を取得するなどして、キャリアアップを目指すことがおすすめです。
ただし、資格取得にはそれなりに時間がかかりますし、必要な単位を取得するための学費も貯めておかなければなりません。
思い切って転職
病院で働くことや看護師の仕事自体は好きではあるものの、今の環境が辛いということであれば、転職が最良の選択肢であると考えられます。そのため、「大変だ」という思いが強く、しかもその原因を断ち切ったり、大変さを緩和したりすることができないと判断した時点で、理想の職場を探し始めることが賢明だといえます。
ただし、退職願を出すタイミングなどをきちんと守っていなければ、離職を認めてもらえなかったり、円満退社できなかったりする可能性があるため、転職にあたってのルールはきちんと守るようにしましょう。
乗り越えられる「大変」とそうでない「大変」を見極めよう
「大変なこと」は誰もが1つや2つはあるものですが、何を乗り越えられて何を乗り越えられないかは人によって異なります。また、一人ひとり、働いている環境も異なるため、同じ種類の「大変」であっても辛さは同じではありません。
そのため、自分にとっては何が大変で、その大変さにどう向き合っていきたいのか、もしくはそこから離れたいのかを考えて、ベストな選択をしていけるといいですね。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2025年9月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
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