「電子カルテの入力が遅い」「カルテ業務に時間がかかりすぎて診察が回らない」と悩む医師は案外多いものです。なかには「診察に集中したいから」とはなから入力はクラークに任せている医師もいますし、それも一つの選択ではあります。
しかし、自分で入力せざるを得ない環境において、これまで電子カルテの入力効率化を考えたことがないなら、まずは一度、基本的なタイピングの見直しやシステムの活用にトライしてみるのはどうでしょう。「毎日診察に追われていて練習の時間なんて取れない」と思うかもしれませんが、スキマ時間にすぐ実践できる効率化メソッドも多数存在します。本記事では、記録時間を大幅に削減するための具体的な方法を解説します。
電子カルテの入力を練習したほうがいい理由
電子カルテの入力練習を「やらなくてもなんとかなっている」「診察以外の時間はできるだけ休みたい」「とにかく面倒」「いまさらやる気がしない」などと避けている医師はいませんか? 確かに、練習をしなくても“これまで通り”の診察を続けることは可能ではあります。
しかし、主に次に挙げる理由のため、電子カルテの入力を練習することには大きなメリットがあるといえます。
- 医師自身のストレスが減る
- 1日に診察可能な患者数が増える
- 残業を減らせる
- 患者に余計なストレスを与えずに済む
- 成功体験となる
詳しくは次の通りです。
医師自身のストレスが減る
電子カルテの入力が遅い、あるいは苦手という自覚がある人は、大なり小なり入力にストレスを感じているはずです。「ストレスを感じるけど業務上仕方ない」と思っているかもしれませんが、そのストレス、実は練習次第で限りなくゼロに近づけることができます。
1日に診察可能な患者数が増える
電子カルテ入力のスピードが上がれば、一人ひとりの診療を今よりスムーズに完了できます。一人当たり7分かかっていたところ6分にまで短縮できたとすると、1時間に約9人診療していたところを約10人にまで増やせるということになります。
残業を減らせる
診察受付終了間際に受付を済ませた患者も、スムーズに診療できれば、診察時間内にその日の診察が終わる可能性が高くなります。
患者に余計なストレスを与えずに済む
医師の電子カルテ入力スピードにイライラしている患者は意外と多いです。特に、パソコンを使い慣れている患者は、医師の手元や画面を見ながら「なんでもっと速く打てるように練習しないのか」と感じがちです。入力に手間取って患部をしっかり診てくれない、患者と向き合って話を聞いてくれないとなるとなおさらです。
成功体験となる
多くの大人は、「既にライフワークを得ているのにいまさら成功体験なんて要らない」と考えます。しかし、「できなくても仕方ない」と思っていたことができるようになると、「今からでも新しいことができるようになるのか」と気づかされ、さらに新しいことにチャレンジしようという意欲が生まれます。
電子カルテの入力に時間がかかる原因
入力練習への意欲がだいぶ高まってきたところで、「自分はなぜ電子カルテの入力に時間がかかっているのか?」を確認しましょう。
電子カルテの入力に時間がかかる主な原因としては、次に挙げる問題が考えられます。あるいは、これらの複数に該当するという人もいるでしょう。
- タイピング速度の問題
- 医療用語変換・検索でのつまずき
- システム操作に慣れていない
- テンプレートや定型文を活用していない
- 音声入力を利用していない
- 完璧主義で記録が長い
- パソコンの反応やネットワークが遅い
詳しくはこういうことです。
タイピング速度の問題
電子カルテは基本的にパソコンで操作するため、キーボード入力の速さが業務効率に直結します。そのため、たとえば診察内容を200~300文字程度で入力する場合、ブラインドタッチできる医師と、キーボードを見ながら入力する医師とでは、数倍の速度差が生じます。
特に、次のような医師はタイピング速度の問題を抱えている傾向にあります。
- 紙カルテ時代が長かったベテラン医師
- 人差し指だけで入力する「一本打ち」の医師
- パソコン操作に苦手意識がある医師
医療用語の変換・検索でのつまずき
医療現場では、一般的な日本語変換では対応されにくい専門用語が多く使われています。日本語表記の用語に関しては、たとえば「心房細動」や「糖尿病性腎症」などの用語にしても、途中まで打った時点で変換候補が表示されるのが一般的ですが、「COPD」と打つためには、英数半角表記に切り替えなければならない場合があります。
また、薬剤名や検査名、手術名は長い名称が多いため、正しい変換候補を探すだけでも時間がかかることがあります。
こうした問題を解消するためには、医療辞書登録や単語登録の活用が役立ちます。
システム操作に慣れていない
電子カルテは、単なる文章入力ソフトではなく、多彩な機能を有しています。たとえば、診療記録入力、オーダー入力、検査結果確認、処方入力、紹介状作成、画像参照などを同時におこなうことができます。
これらの機能は、うまく使いこなすことができれば有用ですが、システム操作に慣れておらず、「メニューを探してしまう」「誤操作を繰り返す」「無駄な画面遷移を挟んでしまう」「どこをクリックすればよいかわからず立ち止まってしまう」といった状況に陥ると大きなロスが生じます。
テンプレートや定型文を活用していない
入力が早い医師は、SOAPテンプレート、インフォームドコンセント文書、よく使う説明文などを登録して活用しています。一方、毎回ゼロから文章を書くとなると、入力時間は大幅に増加します。
音声入力を利用していない
近年は、音声認識技術が向上しているため、診察内容、所見、サマリーを音声入力する医師も増えています。音声入力を利用すると、キーボード入力の時間を大幅に削減できるだけでなく、画面を見ずに済み、診察に集中できることから、患者満足度が向上します。
完璧主義で記録が長い
カルテの記載スタイルは医師によって異なります。必要事項のみ簡潔に書く医師もいれば、詳細に経過を残す医師もいます。訴訟リスクや情報共有を意識して必要以上に長文になるのは、悪いことではありませんが、診察を待っている患者が多くいる場合などは、簡潔にまとめることを優先したいところです。
パソコンの反応やネットワークが遅い
環境の問題によって電子カルテの入力スピードが落ちているケースは、意外と多いです。電子カルテのサーバーが重たい、パソコンの性能が低い、ネットワークが混雑しているなどの場合、画面表示待ち、保存待ち、オーダー反映待ちなどの状態になりがちです。
「以前と比べてなんとなく遅い」程度だと、環境が悪くなってきていることに気づかない可能性がありますが、気づいた時点でできるだけ早く、パソコンやシステムの入れ替えを検討することが大切です。
なお、自院の電子カルテの反応が遅いのかどうか自分で判断できない場合、電子カルテのベンダーに相談してみるのもいいかもしれません。
タイピングスキルを上げる練習方法
続いては、上記に挙げた原因のうち、「タイピングスピードが遅い」を改善するための練習方法を解説していきます。
無料のタイピング練習サイトを使う
タイピングスキルを上げるためにまず試すべきは、無料のタイピング練習サイトの活用です。この方法は、お金をかける必要がなく、今すぐ始められることが大きなメリットです。
代表的な練習サイトには次のようなものがあります。
e-typing
月間で延べ120万人以上が利用している、国内でもっとも利用されているタイピング練習サイトです。タイピングテーマの一つに「医療介護」が設けられているため、専門用語のタイピングを繰り返しながら習得することができます。たとえば、「医療機器」「人間ドック用語」などのカテゴリーを選ぶことができます。
そのほか、「百人一首」「方言」「トラベル」などのカテゴリーもあるため、趣味と紐づけて楽しみながら練習することも可能です。
レベル判定機能もついているため、どのくらい上達したかを定期的に確認するとモチベーションをキープしやすいでしょう。
myTyping
好きな歌手の歌をタイプする「歌詞タイピング」、ビジネスメールによく使われる短文をタイプする「ビジネスメールタイピング」、古典落語の名作「寿限無タイピング」などのユニークなタイピングテーマを使って練習することができます。ユーザー登録(無料)すれば成績表などの機能も使い放題なので、練習がさらに楽しくなります。
医療用語特有の入力パターンに慣れる
医療用語は、一般的な用語・文章とは異なり、漢字・カタカナ・英字・数字が混在しているため、通常のタイミング練習のみでは十分に速く打てるようにはならないことがあります。では、医療用語特有のパターンに慣れるためにはどうすればいいかというと、次のような方法が効果的です。
よく使う病名・症状を繰り返し入力する
実際の診療で頻繁に使う用語を繰り返し打つことで、指が自然に覚えます。たとえば、高血圧、糖尿病、心房細動、慢性心不全、脳梗塞など、診療科ごとによく使う用語をリスト化して、毎日5~10分練習するといいでしょう。
とはいえ、診療科ごとによく使う用語をリスト化することは大変面倒です。
そのため、次の方法を活用することをおすすめします。
- ①chatGPTに作らせる
「内科でよく使う病名を100個リストアップして」「循環器内科で頻出の病名・検査名・薬剤名を一覧にして」「電子カルテ練習用に医療用語300個作って」などと依頼すればすぐ作ってくれます。出てきたリストをExcelやメモ帳に貼り付ければ、そのまま練習教材になります。
- ②診療ガイドラインの目次を利用する
各学会のガイドラインには主要疾患が網羅されています。
たとえば、日本循環器学会、日本糖尿病学会、日本呼吸器学会などのガイドライン目次を見るだけで、頻出疾患リストがほぼ完成します。
- ③DPC病名ランキングを利用する
病院でよく扱う疾患なら、DPC統計や患者数ランキングを見る方法があります。たとえば頻出疾患は、肺炎、心不全、脳梗塞、糖尿病、高血圧症、大腿骨頸部骨折、COPD、尿路感染症などです。
急性期病院で使う用語の練習に向いています。
カタカナ医学用語に慣れる
電子カルテでは、カタカナ語の入力が意外と時間を取ります。
たとえば、サルコペニア、アナフィラキシー、リハビリテーション、バイタルサインなどが挙げられます。ただし、一般には使われることの少ない医療用語であっても、カタカナは基本的に予測変換で表示されるため、カタカナ入力に関しては実はさほどしっかりマスターする必要はありません。
英字略語を素早く入力する
医療現場では略語が非常に多く使われます。
先にもピックアップしたCOPDのほかに、CKD、ECG、MRI、HbA1c、BNP、CTなど、英語表記は基本的に一文字ずつ打たなければならないため、英語入力と日本語入力の切り替えに慣れることが重要です。
実際のカルテを模写する
自分が過去に作成した記録やサンプルカルテ、SOAP形式の記録例などをそのまま打ち直す練習は、もっとも実務に近い練習方法です。
ブラインドタッチを身につける
ブラインドタッチが身につけば、医療用語に限らず、どんな単語、文章でもスムーズに打つことができます。ブラインドタッチができるようになれば、患者との会話を続けながら打つこともできるので、患者満足度も向上します。
ブラインドタッチをマスターするためには、"ながらタイピング"の練習が有効です。なぜかというと、パソコンだけに集中していると無意識にキーボードを見てしまうからです。
具体的には、プライベートでパソコンを触っている時間に、たとえば、"テレビを見ながら、出演者が喋ったことをそのまま打ち込んでみる"などをなんとなく繰り返していると自然とスキルが身についてきます。
ただし、現状、人差し指だけでタイプする「一本打ち」の場合、”打ち方の修正”から始めることが不可欠です。この場合は、右手と左手の基本の指の配置である「チームポジション」を覚えることからスタートすることが必須です。
「チームポジション」とは、左右の各指を、担当するキーの位置(ホームポジション)に正しく置くことです。
担当するキーは次の通りです。
【チームポジションの基本】
左手:小指→A、薬指→S、中指→D、人差し指→F
右手:人差し指→J、中指→K、薬指→L、小指→;
両手の親指:スペースキー pc-k.co.jp+1
目印は FキーとJキーの突起(ポッチ)です。これを目印に指を置くことで、キーボードを見なくても正しい位置に戻れます。
【練習のポイント】
- 1 ホームポジションの定着:F・Jの突起を確認して、全指を配置→手を離す→再配置を繰り返す
- 2 正しい指で打つ:自己流ではなく、各指の担当キーを守る
- 3 正確性優先:最初は速さより正確性を重視して、ミスが減ってきたら速度を上げる
- 4 毎日短時間:1日10~15分でも継続すると効果的
ショートカットキーを活用してマウスの持ち替えを減らす
タイピングスピードが上がっても、文字入力のたびにキーボードとマウスを行き来していては、大きなタイムロスが生じます。この「持ち替え」の時間を削減するために有効なのが、ショートカットキーの活用です。
まずは、どのパソコンでも共通して使える基本的なショートカットキーを指に覚えさせましょう。
- コピー:Ctrl + C
- 貼り付け(ペースト):Ctrl + V
- 切り取り(カット):Ctrl + X
- 操作を一つ戻す:Ctrl + Z
- 上書き保存:Ctrl + S
過去のカルテや紹介状のテキストを引用する際、マウスで右クリックして「コピー」を選ぶのではなく、「Ctrl + C」「Ctrl + V」を使うだけで、入力のリズムを崩さずに作業を続けることができます。これだけでも、1日の診療を通してみると相当な時短につながります。
単語登録・IME辞書のカスタマイズで入力を速くする
続いては、「電子カルテの入力に時間がかかる原因」のうち、 「医療用語の変換・検索でのつまずき」でも触れた、医療辞書登録や単語登録について解説していきます。
よく使う医療用語・処方名を単語登録する方法
まずは、よく使う医療用語・処方名を単語登録する方法について説明します。
IME(日本語入力)の単語登録
電子カルテのテンプレート・定型文機能に登録する前に、まず、パソコンの日本語入力(IME)に単語登録します。この手順を踏んでおけば、電子カルテを乗り換えたときにも、登録内容が活きているため重宝します。
【Windows(Microsoft IME)の場合の登録方法】
- 1 タスクバーの「あ」または「A」を右クリック
- 2「単語の追加」を選択
- 3「読み」と「単語」を入力
- 4「登録」をクリック
(例)
読み:しんぼう/単語:心房細動
読み:ごえん/誤嚥性肺炎
つまり、「読み」は前半のみなどでもOKです。
これを登録しておけば、電子カルテだけでなく、紹介状やメール作成でも利用できます。
電子カルテの定型文登録
導入されている電子カルテでのみ反映されればOKということであれば、IMEへの単語登録は省いて、電子カルテの定型文登録だけおこなっても構いません。
電子カルテの定型文登録は、たとえば「へんかなし」と打てば、「バイタルサイン安定」「全身状態に著変なし」などが自動入力されるようにするものです。
登録しておくと便利な定型文例は次の通りです。
- 外来
「症状増悪時は早めの受診を指示した」
- 病棟
「全身状態安定」
「引き続き経過観察とする」
- 退院前
「退院後の生活指導を実施した
もちろん、これらの定型文は自院で使うことはないということなら、登録する必要はありません。
処方セット登録
多くの電子カルテには、「処方セット機能」があります。
たとえば、次のようなセットで登録すると便利です。
【高血圧セット】
- アムロジピン5mg
- 1日1回朝食後
【胃薬セット】
- タケキャブ20mg
- 1日1回朝食後
これによって、毎回、薬剤名を検索する手間を省けます。
オーダーセット登録
オーダーセットは、救急や病棟でよく利用されます。たとえば次のようにセットしておくと、ワンクリックですべて入力されます。
【肺炎入院セット】
- 採血
- 胸部X線
- 心電図
- 酸素投与
- 点滴
自動文章テンプレート登録
SOAP入力でよく使われます。
たとえば、
「かぜ」の入力で
S:発熱・咳嗽あり
O:バイタルサイン安定
A:上気道炎
P:対症療法とした
と展開されるよう登録しておけば、テンプレートと異なる部分だけ上書きすることも可能です。
≪まず登録すべきもの≫
入力効率を上げるなら、優先順位は次の通りです。
- 1 よく使う病名(20~50個)
- 2 よく使う薬剤名(20~50個)
- 3 SOAP定型文
- 4 説明・同意取得文
- 5 処方セット
- 6 オーダーセット
特に、「病名」「薬剤名」「SOAP定型文」の3つを整備しておけば、電子カルテ入力時間を大幅に短縮できます。
診療科別おすすめ登録単語リスト例
カルテに入力することのある単語をすべて登録するには膨大な時間がかかるため、まずは、よく使う単語を登録しておくことが先決です。診療科別に登録しておくことがおすすめの単語は次の通りです。
一般内科
| 読み | 登録語 |
|---|---|
| こうけつ | 高血圧症 |
| とうにょう | 糖尿病 |
| ししつ | 脂質異常症 |
| こうにょう | 高尿酸血症 |
| かんぼう | 感冒 |
| はいえん | 肺炎 |
| にょうろ | 尿路感染症 |
| ごえん | 誤嚥性肺炎 |
| だっすい | 脱水症 |
| はつねつ | 発熱 |
循環器内科
| 読み | 登録語 |
|---|---|
| しんふぜん | 心不全 |
| しんぼう | 心房細動 |
| きょうしん | 狭心症 |
| しんきん | 心筋梗塞 |
| どうき | 動悸 |
| ふせいみゃく | 不整脈 |
| きょうつう | 胸痛 |
| しんでん | 心電図 |
| えこー | 心エコー |
| BNP | BNP |
呼吸器内科
| 読み | 登録語 |
|---|---|
| COPD | COPD |
| ぜんそく | 気管支喘息 |
| こきゅう | 呼吸不全 |
| かくたん | 喀痰 |
| けっかく | 結核 |
| きょうぶCT | 胸部CT |
| ていさんそ | 低酸素血症 |
| はいがん | 肺癌 |
| かんしきょう | 気管支鏡 |
| さんそ | 酸素投与 |
消化器内科
| 読み | 登録語 |
|---|---|
| GERD | 逆流性食道炎 |
| いかめら | 上部消化管内視鏡検査 |
| だいちょう | 下部消化管内視鏡検査 |
| いかいよう | 胃潰瘍 |
| たんせき | 胆石症 |
| たんのう | 胆嚢炎 |
| すいえん | 膵炎 |
| かんこうへん | 肝硬変 |
| かんえん | 肝炎 |
| べんぴ | 便秘症 |
整形外科
| 読み | 登録語 |
|---|---|
| こつそ | 骨粗鬆症 |
| へんけいひざ | 変形性膝関節症 |
| ようつい | 腰椎椎間板ヘルニア |
| だいたい | 大腿骨頸部骨折 |
| とうつう | 疼痛 |
| リハビリ | リハビリテーション |
| かじゅう | 荷重訓練 |
| ROM | 関節可動域 |
| ほこう | 歩行訓練 |
| しゅじゅつ | 手術加療 |
精神科
| 読み | 登録語 |
|---|---|
| うつ | うつ病 |
| とうごう | 統合失調症 |
| そううつ | 双極症 |
| にんち | 認知症 |
| せんもう | せん妄 |
| ふみん | 不眠症 |
| こうせいしん | 抗精神病薬 |
| こうふあん | 抗不安薬 |
| こううつ | 抗うつ薬 |
| デイケア | 精神科デイケア |
テンプレート・定型文の活用
続いては、「電子カルテの入力に時間がかかる原因」のうち、「テンプレートや定型文を活用していない」を見直していきましょう。
電子カルテ別のテンプレート機能例
テンプレート設定画面は電子カルテごとに異なりますが、基本的には「テンプレート」「定型文」「文例登録」の機能を使います。
たとえば、NEC MegaOakシリーズは、次のような手順でテンプレ―トを使います。
例:NEC MegaOakシリーズ
「定型文書」「ダイナミックテンプレート機能」を活用します。テンプレート内に選択肢や検査値の自動引用を組み込めるため、SOAPや診療記録を効率化できます。
(一般的な流れ)
- 1 診察記事入力画面を開く
- 2 テンプレート管理を選択
- 3 新規テンプレート作成
- 4 SOAPや診療科別のひな形を登録
- 5 保存して呼び出す
テンプレートを使った入力時間削減の実例
実際の現場では、テンプレートの効果は非常に大きいです。
例1:外来カルテ
【テンプレートなしの場合】
- 病歴記載
- 身体所見記載
- 評価記載
- 方針記載
→すべて毎回ゼロから入力。入力に約2~3分が必要
【テンプレートありの場合】
- テンプレートデータを呼び出し
- 数か所修正
→ 約30秒~1分で入力完了。
効果:50~80%程度短縮
例2:病棟回診記録
【テンプレートなしの場合】
- 全身状態安定
- 発熱なし
- 食事摂取良好
→毎回すべて入力。1患者あたり約1~2分
【テンプレートありの場合】
- 全身状態安定
- 発熱なし
- 食事摂取良好
→まとめて呼び出して必要箇所だけ変更。約10~30秒
例3:紹介状・診断書
【テンプレートなしの場合】
1枚につき約10~20分
【テンプレートあり+自動引用の場合】
1枚につき約3~10分
なお、電子カルテによっては検査結果や病名を自動引用できるため、さらに短縮できます。MegaOakのダイナミックテンプレートは検査結果の自動引用や入力内容の展開に対応しています。
≪単語登録・定型文登録などと併用でさらに時短が叶う≫
特に、慢性疾患外来(高血圧・糖尿病・脂質異常症)や病棟の定期回診では、テンプレート化の効果が大きく出やすいとされています。
なお、テンプレートは便利な機能ですが、単独で使うより、他の機能も併用したほうが大きな時短となるのでできるのでおすすめです。
- 単語登録のみ → 10~20%時短
- 定型文登録 → 30~50%時短
- テンプレート+処方セット → 50%以上時短
となるケースも珍しくありません。
音声入力・AI文字起こしツールとの併用
続いては、「電子カルテの入力に時間がかかる原因」のうち、「音声入力を利用していない」を見直していきましょう。
電子カルテの音声入力方法はいくつかありますが、代表的なものは次の4つです。
方法① パソコン・タブレットの標準音声入力を使う
もっとも手軽で費用がかからない方法です。
Windowsの場合、
「Windowsキー + H」を押すと音声入力が起動します。その状態で、カルテ入力欄を開いて話すと文字が入力されます。
【メリット】
- 無料
- 設定が簡単
- どの電子カルテでも利用可能
【デメリット】
- 医療用語の変換精度は専用ソフトに劣る
- 雑音に弱い
方法② スマホ・タブレットの音声入力を使う
iPhoneやiPadなら、マイクボタンを押して話すだけです。
最近の音声認識はかなり精度が高く、「糖尿病」「高血圧症」「誤嚥性肺炎」などの一般的な医療用語は認識できることが増えています。
方法③ Googlechromeのプラグインを使用する
クリアスをはじめ、ブラウザで使用する電子カルテの場合、ブラウザをGooglechromeにすることで音声入力のプライグインを利用できます。「Voice In」というプラグインは無料で利用可能です。改行や句読点を登録することが必要である点は難点ですが、音声入力の精度は高いです。
参照:Voice In - 音声からテキストへのディクテーション
方法④ 医療専用音声入力システムを使う
病院やクリニックで本格的に導入する場合、第一の選択肢はこれです。
【医療用音声入力システムの代表例】
病院・診療所 電子カルテ向け「AmiVoice(R)Ex7」
イントネーションやアクセントに左右されない高い認識率で、誰もが簡単にすばやく電子カルテの所見を作成できます。音声入力は専用のハンドマイクでおこなうため、キーボードの位置に縛られることがないため、肩凝りなどの肉体的ストレスから解放されます。マイク本体に、修正/挿入/削除のコマンド操作機能も装備。
iOS版音声入力キーボードアプリ「AmiVoice SBx Medical」
NTTドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)が展開している、iPhone/iPadなどでの電子カルテや介護記録入力に適したアプリです。数字と組み合わせて使用する表現や、頻繁に使用する単位(mg、mlなど)が最初からソフトキーに割り当てられています。また、音声入力だけでなく、キー入力でも文字入力の手間と時間を削減できます。
現役精神科医が開発した「VoiceToDoc」
現役の精神科医が、診療現場でのニーズをもとに開発したアプリケーションです。実際の現場での「カルテ作成時間を短縮したい」「患者との対話により集中したい」を叶えるために、多彩な機能を搭載しています。iPhone、iPad、Mac、Windowsなどマルチデバイス対応、オンデバイスAIと外部APIを使い分け可能、診療科や目的に応じて要約のスタイルを細かく設定可能。
カルテ作成時間を最大80%削減する「Luminous(ルミナス)」
診察中の会話書き起こしから、要約、SOAP作成までを支援することによって、カルテ作成時間を最大80%削減する医療現場向けアプリケーションです。トライアル期間中は、音声処理時間300分まで無償のため、まずは実際の診療フローに合わせて使い心地を確かめてみるのもおすすめです。
診察内容を音声入力で電子カルテに即送信「メルプVOICE」
音声入力した診察内容をリアルタイムで文字に変換。変換された文字は、後から修正することも可能です。変換されたテキストは、院内のネットワークにしかつながっていない電子カルテにも、ワンクリックで送信することができます。「メルプWEB問診」を導入している医療機関は、月額費用がディスカウントされます。なお、初期費用は無料です。
音声入力などの入力補助ツールを使う際の注意点
音声入力やAIカルテ作成ツールは非常に便利ですが、医療現場では「入力スピードアップ」よりも「記録の正確性と個人情報保護」が重要です。
これを踏まえて、入力補助ツールを使う際には次の点に注意することが大切です。
- 誤変換・認識ミスがないかを必ず確認する
- 個人情報・クラウド利用のルールを確認する
- 周囲の雑音に注意する
- テンプレートの修正漏れを防ぐ
- AI要約を鵜呑みにしない
- 院内規程や患者説明を確認する
- ネットワーク障害時の代替手段を確保する
- 処方・オーダー入力では特に慎重に扱う
誤変換・認識ミスがないかを必ず確認する
音声認識の精度は向上していますが、100%ではなく、誤変換が起こる可能性があります。
特に注意が必要なのは、病名、薬剤名、用量、アレルギー情報、検査結果です。これらの入力に間違いがないかどうか、音声入力後は必ず目視確認をおこないましょう。
個人情報・クラウド利用のルールを確認する
音声入力ツールによっては、音声データ、テキストデータをクラウド上で処理します。
そのため、医療機関の情報セキュリティ方針、個人情報保護規程、ベンダーとの契約内容を確認する必要があります。
特に、個人向けの無料アプリを業務利用する場合は、院内ルールに反することがあるので注意が必要です。
周囲の雑音に注意する
診察室やナースステーションでは、他患者の会話、スタッフ同士の会話、電話の応対などを誤って拾うことがあります。結果として、誤入力、個人情報の混入につながることがあります。
それを防ぐために、できれば、指向性マイク、ヘッドセットマイクの利用が望ましいです。
テンプレートの修正漏れを防ぐ
音声入力とテンプレートを併用すると便利ですが、テンプレートを上書きし忘れると発熱ありの患者なのに、テンプレートの「発熱なし」がそのまま残ることがあります。
そのため、テンプレート利用時は、バイタル、主訴、検査結果、評価などをきちんと上書きできているか確認することが非常に大切です。
AI要約を鵜呑みにしない
最近のAIツールは、会話の文字起こし、SOAP生成、要約まで自動でおこないます。しかしそこに頼り切ることは大変危険です。なぜならAIは、「話していない内容を補う」「ニュアンスを変えて要約する」「重要事項を省略する」などの可能性があるためです。
そのため、「最終的なカルテ内容の責任は記録者(医師・看護師等)にある」という前提で活用して、実際に最終確認を怠らないことが非常に大切です。
院内規約や患者説明を確認する
(勤務医の場合)勤務先の施設によっては、録音の可否、AI利用の可否、患者への説明方法が定められています。そのため、入力補助ツールを導入したい場合、導入前に規約などを確認しておくことが重要です。
ネットワーク障害時の代替手段を確保する
クラウド型音声認識では、インターネット障害やサービス障害が発生すると利用できなくなることがあります。
そのため、キーボード入力、定型文入力などの代替手段も維持しておくと安心です。
処方・オーダー入力では特に慎重に扱う
音声入力は、診療録作成やサマリー作成、照会文作成、長文の経過記録などに向いています。
一方、注射オーダー、検査オーダー、用量設定など、数値や薬剤名を扱う場面においては、誤認識による医療事故リスクがあるため、手入力やダブルチェックが重要です。
ここまでをまとめると、音声入力は「カルテ作成の補助」としては非常に有効であるものの、医療記録の内容確認と最終責任は医療従事者側にあることを前提に運用することが大切だということになります。
入力業務そのものを手放す「医療クラーク」の活用
ここまで医師自身が入力効率を上げるためのメソッドを解説してきましたが、究極の時短方法は「入力業務そのものを手放す」ことです。
患者数が多いクリニックや病院では、医師事務作業補助者(医療クラーク)を配置し、カルテの代行入力を任せるケースが増えています。医師が診察しながら口頭で所見を述べ、それをクラークがリアルタイムで電子カルテに入力していくというスタイルです。
これにより、医師は患者の顔を見て診察することに100%集中でき、入力の手間から完全に解放されます。システム的な効率化に限界を感じた場合は、タスクシフトによる根本的な業務改善を検討してみるのも一つの有効な選択肢です。
「入力が速い医師に共通する習慣」を見習おう
電子カルテの入力に苦手意識がある医師がいる一方で、オーダーセットや処方セット、テンプレートの活用はもちろん、ブラインドタッチにも問題がなく、入力が極めてスピーディな医師もたくさんいます。しかし、誰しもはじめから速く入力することができたわけではなく、練習や工夫を重ねた結果、スピードアップしています。具体的にどのような練習や工夫が有効であるかは先に解説した通りですが、身の回りに電子カルテの入力が速い医師がいる場合、使い方のコツやポイント、習慣を聞いて見習うのもおすすめです。また、ベテランの事務スタッフや医療クラークなどにアドバイスを求めてみるのもいいかもしれませんね。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
