大学病院の医師は、勤務先の種類別で見ると本給がもっとも低い層に入る。国立大学の助教の年間給与は700万円台で、医師全体の平均(約1,512万円)の半分ほどにとどまる。
この記事では、なぜそうなるのか、そして何と引き換えになっているのかを整理する。
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医師全体の平均と比べると差が大きい
医師全体の平均年収はおよそ1,512万円(令和7年賃金構造基本統計調査から算出)。一般病院の医師は給料+賞与で国立約1,290万円・公立約1,551万円・医療法人約1,577万円である(第25回医療経済実態調査)。
大学病院の常勤医師は、国立大学では「病院医師」ではなく大学教員(助教・講師・准教授・教授)として給与を受け取る。そのため本給は教員の給与表で決まる。
この差は、能力や労働時間の差ではない。給与の設計思想が違うためである。
職位別の年間給与:助教700万円台、教授1,200万円前後
国立大学法人は毎年「役職員の報酬・給与等について」で、教員の職位別の平均年間給与を公表している。令和7年度の4大学を並べる。
| 大学 | 教授 | 准教授 | 講師 | 助教 |
|---|---|---|---|---|
| 東京大学 | 1,282万円 | 1,021万円 | 936万円 | 796万円 |
| 京都大学 | 1,180万円 | 943万円 | 877万円 | 748万円 |
| 大阪大学 | 1,187万円 | 976万円 | 915万円 | 776万円 |
| 東北大学 | 1,208万円 | 942万円 | 868万円 | 747万円 |
出典:文部科学省掲載 各国立大学法人「役職員の報酬・給与等について」(令和7年度)。月給制の常勤教員の全学平均で、医学部に限った数字ではない。年俸制・任期付の教員は含まず、京都大学・東北大学は時間外手当・通勤手当等を除いた額である。時間外手当を含む病院勤務医の数字とは前提が揃っていない点に注意する。
読み方のポイントは3つある。
- 教授になっても、医療法人の病院の勤務医平均(約1,577万円)に届かない
- 講師と助教の差は100〜150万円ほど。職位が1つ上がっても外勤1日分の積み上げに及ばないことがある
- 大学の医員・研修医に当たる非常勤・任期付の層は、この表に入っていない。年間給与は数百万円台にとどまる
講師になる年齢の目安は大学病院講師の年齢は何歳くらい?で整理している。
本給が低いのは「外勤が前提」だから
大学病院の給与は、外勤(アルバイト)に出ることを織り込んで組まれている。
- 多くの医局で、週1日程度の外勤日が慣行として確保されている
- 外勤先の日当が本給を補う
- 結果として、本給だけを他院と比較しても実態を表さない
外勤日当は診療科と内容で幅が大きい。週1回の外勤でも、年間では本給の差を埋める規模になりうる。
つまり大学病院の年収は「本給+外勤」で見ないと意味がない。転職サイトの求人票に出るのは本給部分だけなので、そこだけを見ると極端に低く映る。
何と引き換えになっているか
低い本給と引き換えに得ているものが3つある。
① 症例と設備
高難度症例・希少疾患・先進医療機器に触れられる。市中病院では経験できない症例数が集まるのは大学病院の構造的な強みである。
② 学位と専門医、そして肩書
学位取得、専門医・指導医の要件を満たしやすい。関連病院への人事という形で、キャリアの選択肢が広がる面もある。
③ 研究と教育の実績
論文・学会発表の実績は、大学に残る場合はもちろん、開業時の集患や、専門性の対外的な説明にも効いてくる。
問題は、この3つの価値が受け取れる期間には限りがあることである。症例も学位も、ある時期を過ぎると追加で得られるものが減っていく。にもかかわらず本給は上がらない。この非対称が「見合っていない」という感覚の正体である。
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年齢が上がるほど不満が強くなる理由
若手のうちは、低い本給を「教育の対価」として説明できる。しかし年次が上がると事情が変わる。
- 生活コストが上がる(住宅・教育費)
- 症例からの学びが逓減する
- 外勤に出られる曜日が、役職で減ることがある
- 一方で本給の上がり幅は小さい
「外勤で補う」という仕組みは、外勤に出られる立場でいる限りしか機能しない。役職が付いて院内業務が増えると、収入が上がるどころか下がる場合がある。
出るか残るかの判断軸
大学病院を離れるかどうかは、年収の額そのものではなく、これから得られるものの残量で判断したほうが誤らない。
判断材料になるのは次の4点である。
- これから増える症例経験は、あと何年ぶんあるか
- 学位・専門医・指導医の取得は完了しているか
- 外勤に出られる曜日は、今後増えるか減るか
- 関連病院への人事で、行きたいポストに届く見込みがあるか
このうち3つ以上が「頭打ち」なら、残るコストのほうが得るものを上回っていると考えてよい。
開業を選択肢に入れる場合も同じである。大学で得た専門性と紹介ネットワークは開業後の資産になるが、それは在籍を延ばすほど増えるものではない。
まとめ
- 国立大学の教員の年間給与は助教700万円台・教授1,200万円前後(令和7年度)。勤務先別で最も低い層
- 低いのは本給が外勤前提で組まれているため。年収は「本給+外勤」で見る
- 引き換えに得るのは症例・学位・人事の選択肢の3つ
- この3つは逓減するのに本給は上がらない——これが不満の構造
- 出るか残るかは、得られるものの残量で判断する
年収の数字を他院と並べるより、あと何年でその環境から得るものが尽きるかを見積もるほうが、判断の精度は上がる。
参考
- 文部科学省掲載 東京大学・京都大学・大阪大学・東北大学「役職員の報酬・給与等について」(令和7年度)
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」
- 中央社会保険医療協議会「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」(令和7年11月)
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2026年8月時点の情報を元に作成しています。
