クリニックの安全配慮義務とは?院長が負う3つの中身と、違反したときに問われる責任

スタッフが針刺し事故を起こした。腰を痛めて休職した。人間関係のもつれで退職者が出た。
こうしたとき、院長は「どこまで責任を負うのか」がはっきりしないまま対応に追われることになります。

その線を引いているのが安全配慮義務です。労働契約を結んだ時点で自動的に発生する義務で、
就業規則に書いていなくても、雇用契約書に一文も無くても発生します。

この記事では、条文上の根拠、クリニックで実際に問題になる場面、
そして「どこまでやれば義務を果たしたことになるのか」の判断材料を整理します。

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目次
  1. 安全配慮義務の根拠は労働契約法第5条
  2. 院長が負う配慮の中身は3つに分けて考える
    1. 1. 物的環境の整備
    2. 2. 人的な管理体制
    3. 3. 健康管理
  3. クリニックで実際に問題になりやすい5つの場面
    1. 針刺し・切創
    2. 腰痛
    3. 長時間労働と過重負荷
    4. ハラスメント
    5. メンタル不調
  4. 違反したときに問われるのは損害賠償責任
  5. どこまでやれば果たしたことになるのか
  6. よくある質問
  7. まとめ
  8. 参考

安全配慮義務の根拠は労働契約法第5条

安全配慮義務は、労働契約法第5条に次のように定められています。

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、
必要な配慮をするものとする。
(労働契約法第5条)

条文が短いぶん、「必要な配慮」の中身は書かれていません。
実務では、労働安全衛生法とその関係省令(労働安全衛生規則など)が定める具体的な措置が、
「最低限これはやっておくべきこと」の目安になります。

重要なのは雇用形態を問わないという点です。
常勤の看護師でも、週2日のパート医療事務でも、有期契約でも、労働契約がある限り同じように発生します。
派遣スタッフを受け入れている場合は、派遣元だけでなく受入側のクリニックにも配慮義務が及びます。

院長が負う配慮の中身は3つに分けて考える

条文の「必要な配慮」は、実務では次の3つに分解すると管理しやすくなります。

1. 物的環境の整備

働く場所と道具を安全な状態に保つことです。クリニックでは次のようなものが該当します。

  • 針刺し・切創を防ぐ安全器材と、使用済み針の廃棄容器の設置
  • 消毒薬・検査試薬など危険性のある薬品の保管方法
  • 移動・移乗の際の腰痛対策(介助用具、レイアウト)
  • X線室の管理区域と防護具
  • 転倒しやすい床・段差・照明

2. 人的な管理体制

人の配置と教育です。物があっても、使い方が共有されていなければ事故は起きます。

  • 新人が単独で処置に入る前の教育
  • 夜間・休日の緊急時に誰へ連絡するかの明文化
  • ハラスメントの相談窓口(従業員数にかかわらず措置義務があります)
  • 業務量に対して人数が足りているか

3. 健康管理

働く人の状態を把握し、悪化する前に手を打つことです。

  • 雇入時健康診断と定期健康診断の実施
  • 医療機関特有の特殊健康診断(電離放射線業務など)
  • 長時間労働者への対応
  • 感染症の曝露後対応(B型肝炎ワクチンの接種方針を含む)

クリニックで実際に問題になりやすい5つの場面

針刺し・切創

医療機関ならではの典型例です。事故そのものを完全に防ぐことは困難ですが、
安全器材を導入していたか、曝露後の対応手順が決まっていたか、
その手順がスタッフに周知されていたか
が問われます。
「起きたこと」より「起きる前に何を用意していたか」で判断が分かれます。

腰痛

看護・介護の現場で最も多い業務上疾病のひとつです。
移乗介助が発生するクリニックでは、介助方法の教育と用具の有無が焦点になります。

長時間労働と過重負荷

労働時間の記録が残っていないケースが少なくありません。
記録が無いこと自体が不利に働きます。
「把握していなかった」は配慮していなかったことの裏返しと受け取られるためです。

ハラスメント

パワーハラスメント防止の措置義務は、2022年4月から中小企業を含む全事業主に課されています。
クリニックの規模でも例外にはなりません。
相談窓口の設置と、相談者に不利益な扱いをしない旨の周知が最低ラインです。

メンタル不調

体調不良の申し出があったのに配置転換も受診勧奨もしなかった、という経過は
配慮義務違反として問題になりやすい形です。
逆に、申し出を受けて業務調整や産業医面談につないだ記録が残っていれば、
その部分については配慮した実績になります。

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違反したときに問われるのは損害賠償責任

安全配慮義務そのものに罰則はありません。問われるのは民事上の責任です。

責任の種類 根拠 内容
債務不履行責任 民法第415条 契約上の義務を果たさなかったことによる損害賠償
使用者責任 民法第715条 従業員同士のトラブルなど、雇っている側としての責任
労災保険給付 労働者災害補償保険法 治療費・休業補償。ただし慰謝料は含まれない

見落とされやすいのが3行目です。
労災が認定されても、それで賠償責任が消えるわけではありません。
労災保険は治療費と休業補償をカバーしますが、慰謝料や逸失利益の一部は対象外で、
その差額は別途請求されうるものとして残ります。
「労災で処理したから終わり」ではない、という点は押さえておく必要があります。

なお、労働安全衛生法上の義務(健康診断の未実施など)には、
別途、法定の罰則が定められているものがあります。

どこまでやれば果たしたことになるのか

完全に線が引けるものではありませんが、実務では次の3つが揃っているかが判断材料になります。

  1. 予見できたか — その危険は事前に想定できるものだったか
  2. 回避する手段があったか — 現実的にとれる対策が存在したか
  3. その手段をとっていたか — とっていたことを示す記録があるか

3つ目が抜けやすいところです。
朝礼で口頭注意していても、記録が無ければ「やっていなかった」ことと区別がつきません。
教育の実施記録、健診の受診記録、労働時間の記録、ヒヤリハットの報告記録――
日常業務の中で自動的に残る形にしておくことが、いちばん確実な備えになります。

電子カルテや勤怠システムで記録が自動的に残る運用にしておけば、
「記録のために別の作業をする」必要がなくなり、
現場の負担を増やさずに証跡だけが積み上がります。

よくある質問

Q. パート・アルバイトにも安全配慮義務は発生しますか。

発生します。労働契約法第5条は雇用形態を区別していません。
週1日の勤務でも、労働契約がある限り同じです。

Q. 委託業者のスタッフはどうなりますか。

直接の雇用契約がないため労働契約法第5条は当てはまりませんが、
自院の施設内で作業してもらう以上、施設管理者としての責任は残ります。
清掃・保守などで院内に立ち入る業者には、危険箇所の情報を共有しておくのが実務上の安全策です。

Q. スタッフ本人が対策を守らなかった場合も院長の責任になりますか。

本人の落ち度は損害額の算定で考慮されます(過失相殺)。
ただし、守らせる体制をつくることも配慮義務の一部とされるため、
「本人が守らなかった」だけで責任がなくなるわけではありません。
教育と注意喚起の記録があるかどうかで結論が変わります。

Q. 就業規則に「安全配慮義務は負わない」と書けますか。

書いても効力はありません。法律上の義務なので、当事者の合意で外すことはできません。

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まとめ

  • 安全配慮義務は労働契約法第5条に基づき、契約を結んだ時点で自動的に発生する
  • 中身は「物的環境」「人的な管理体制」「健康管理」の3つに分けて点検すると漏れにくい
  • 違反したときに問われるのは損害賠償責任で、労災認定とは別枠
  • 判断材料は「予見できたか・回避できたか・実際にやっていたか」の3点で、
    3つ目を支えるのは日常業務の中で自然に残る記録

まず手を付けるなら、労働時間の記録と健康診断の受診記録です。
どちらも実施していないと配慮の実績を示す手段が無く、
かつ、記録さえ残っていればそのまま証跡になります。

参考

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対象規模

無床クリニック向け 在宅向け

オプション機能

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提供形態

サービス クラウド SaaS 分離型

診療科目

内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、、循環器科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、肛門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、気管食道科、放射線科、麻酔科、心療内科、アレルギー科、リウマチ科、リハビリテーション科、、、、