地域医療構想は、これまで「病院の病床をどう再編するか」の話でした。
病床機能報告、4区分、2025年の必要病床数。診療所の院長にとっては遠い議論だったはずです。
その前提が変わりました。
2026年度から始まる新しい地域医療構想は、病床だけでなく外来・在宅・介護連携・人材確保まで
対象に含みます。診療所も当事者になります。
この記事では、何がどう変わったのか、そしてクリニック経営に関係する論点を3つに絞って整理します。
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何が変わったのか——対象が「病床」から「提供体制全体」へ
現行の地域医療構想は、2025年時点の必要病床数を推計し、
高度急性期・急性期・回復期・慢性期の4機能に病床を寄せていく枠組みでした。
新しい構想は、目標年次を2040年頃に置き直したうえで、対象範囲を広げています。
| 現行の地域医療構想 | 新たな地域医療構想 | |
|---|---|---|
| 目標年次 | 2025年 | 2040年頃 |
| 主な対象 | 病床機能 | 病床+外来+在宅+介護連携+人材 |
| 対象施設 | 主に病院 | 病院・診療所・介護施設を含む提供体制全体 |
背景にあるのは人口構造の変化です。
高齢者人口はまだ増えますが、増え方の中身が変わります。
85歳以上が増え、同時に現役世代(=医療の担い手)が減るという局面に入ります。
85歳以上の患者は、単一の疾患ではなく医療と介護の複合ニーズを抱えます。
入院で治して帰す、という発想だけでは支えられません。
だから外来・在宅・介護までを一体で見る枠組みに切り替えた、という整理です。
検討のスケジュール
厚生労働省は2026年7月に策定ガイドラインを公表しました。
各都道府県は改正医療法に基づき、2028年度までに新たな地域医療構想を策定します。
大まかな進み方は次のとおりです。
- 2026〜2027年度:医療需要と提供体制の現状をデータで分析し、構想区域を点検・見直す
- 2028年度まで:医療機関ごとの機能や病床数、在宅医療体制を地域で協議し、構想としてまとめる
つまり、いま進んでいるのは「協議の材料を作る段階」です。
この期間に出てくるデータが、その後10年以上の地域の医療提供体制の前提になります。
クリニックに関係する3つの論点
論点1:在宅医療の担い手として数えられる
新しい構想では、在宅医療の需要も推計の対象になります。
2040年に向けて在宅患者が増える地域では、誰がそれを担うのかが問われます。
ここで数えられるのは、実際に在宅を提供している診療所です。
在宅療養支援診療所の届出をしているか、訪問診療の実績があるかといった情報が、
地域の協議のなかで参照される可能性があります。
在宅を始めるかどうかは経営判断ですが、
地域の需要推計と自院の位置づけを知らないまま判断するのは不利です。
都道府県が公表する構想区域ごとのデータには目を通しておく価値があります。
論点2:かかりつけ医機能の報告制度と接続している
2025年度から、かかりつけ医機能報告制度が始まっています。
慢性疾患の継続的な管理、休日夜間の対応、在宅医療の提供、介護との連携。
これらの機能を持っているかを、医療機関が都道府県に報告する仕組みです。
新たな地域医療構想は、この報告で集まる情報を前提として組み立てられています。
報告した内容が、地域の提供体制の見取り図に反映されるという関係です。
報告は事務作業として面倒ですが、
自院がどの機能を担っていると地域から認識されるかを決めるものでもあります。
実態より少なく報告すれば、その分だけ地域の計画から外れます。
論点3:外来医療計画と、開業の場所の話
外来医療については、すでに外来医療計画のなかで
外来医師多数区域という考え方が導入されています。
医師の多い地域で新規開業する場合、地域で不足する医療機能(在宅、初期救急、公衆衛生など)を
担うことについて届出を求められる、という仕組みです。
新たな地域医療構想は、この外来医療の議論も取り込む方向で設計されています。
開業の立地を選ぶとき、その区域が多数区域かどうかを確認するのは、いまや標準的な確認事項です。
「開業を規制される」という表現で語られることがありますが、
現時点の制度は届出と協議を求めるもので、開業そのものを禁じるものではありません。
ただし今後の制度改正の方向は注視しておく必要があります。
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いま何をしておくべきか
構想の策定は2028年度までなので、明日困る話ではありません。
そのうえで、いまのうちにやっておくと差が出るのは次の3つです。
1. 自院の構想区域の資料を1度読む
都道府県のサイトに、構想区域ごとの人口推計と医療需要のデータが載ります。
自院の商圏が今後どう変わるかが、そのまま書かれています。
2. かかりつけ医機能報告の内容を実態に合わせる
過小に報告していないか。担っている機能を書き落としていないか。
3. 在宅・介護連携の実績を数字で持っておく
訪問診療の件数、連携している居宅介護支援事業所や訪問看護ステーションの数。
協議の場で自院の役割を説明するときに、数字があるかどうかで説得力が変わります。
よくある質問
Q. 診療所も何か届け出る必要がありますか。
新たな地域医療構想そのものは都道府県が策定するもので、診療所に直接の策定義務はありません。
関係するのは、かかりつけ医機能報告や外来医療計画に基づく届出などの既存の仕組みです。
Q. 病床を持っていない無床診療所には関係ありませんか。
外来・在宅・介護連携が対象に含まれたことで、無床診療所も対象範囲に入りました。
とくに在宅医療の需要推計は、無床診療所の役割に直結します。
Q. 2025年までの地域医療構想はどうなりますか。
現行の構想は、期限を延長したうえで取組を継続する扱いになっています。
新しい構想は、それを引き継いで2040年頃を見据える形で組み立てられます。
まとめ
新たな地域医療構想は、対象が病床から医療提供体制全体へ広がりました。
外来・在宅・介護連携が入ったことで、診療所も当事者になります。
策定は2028年度まで。いまは協議の材料となるデータが作られている期間です。
自院の構想区域の推計データを読み、かかりつけ医機能報告を実態に合わせ、
在宅・介護連携の実績を数字で持っておく。この3つが、いまできる準備です。
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参考
- 厚生労働省「2040年に向けた地域医療構想」
- 厚生労働省「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」
- 医療法(地域医療構想、外来医療計画、かかりつけ医機能報告制度)
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
