復職とは?休職・産休からの職場復帰で、クリニックが決めておく手順と書類

スタッフから「来月から復帰したい」と言われたとき、
何をもって復帰を認めるかが決まっているでしょうか。

主治医の診断書が1枚あれば足りるのか。時短から始めるのか。
決まっていないと、その場の判断になります。
判断がぶれると、本人にも他のスタッフにも説明できません。

この記事では、復職の定義を整理したうえで、
少人数のクリニックで現実的に回せる手順と書類をまとめます。

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目次
  1. 「復職」とは何を指すか
  2. 産休・育休からの復職 — 期日が決まっている
  3. 私傷病休職からの復職 — 「治ったか」を誰が判断するか
    1. 50人未満のクリニックはどうするか
  4. 復職の手順 — 5ステップ
  5. 就業規則に書いておく4項目
  6. リハビリ出勤(試し出勤)を入れるか
  7. 少人数のクリニックで現実的にできること
  8. よくある質問
  9. まとめ
  10. 参考

「復職」とは何を指すか

復職とは、休職・休業していた労働者が、元の職務に戻ることを指します。
法律上の統一された定義はなく、休業の種類ごとに根拠が違います。

休業の種類 根拠 復帰時期の決まり方
産前産後休業 労働基準法65条 産後8週間は就業禁止(6週経過後、本人請求+医師が支障ないと認めた業務は可)
育児休業 育児・介護休業法 申出た終了予定日。1か月前までの申出で繰上げ可
私傷病休職 就業規則の定め(法律上の義務ではない) 就業規則の復職要件による
介護休業 育児・介護休業法 申出た終了予定日
労災による休業 労働基準法19条 療養期間+30日は解雇制限

🔴 私傷病休職だけが、法律ではなく自院の就業規則で決まります。
ここが曖昧なままだと、復職の可否を判断する根拠がありません。

産休・育休からの復職 — 期日が決まっている

産休・育休は復帰時期が制度で決まっているので、判断ではなく段取りの話になります。

復帰前にやること

  1. 復帰日の確認(育休は1か月前までの申出で繰上げ可能)
  2. 社会保険料免除の終了手続き(産前産後休業終了届・育児休業等終了届)
  3. 育児休業等終了時報酬月額変更届の検討
    (時短勤務で報酬が下がったとき、通常の随時改定を待たずに標準報酬月額を改定できる)
  4. 養育期間標準報酬月額特例申出書の案内
    (3歳未満の子を養育する期間、年金額の計算上は従前の標準報酬月額とみなす制度)
  5. 短時間勤務制度・所定外労働の制限の申出受付

⚠️ 3と4は本人が申し出ないと適用されません。
特に4は、時短で報酬が下がっても将来の年金が減らないための制度で、
知らずに使っていない人が多い制度です。復帰面談の場で案内しておくと親切です。

クリニック側で決めておくこと

  • 短時間勤務のパターン(何時から何時までを何通り用意するか)
  • 夜間・休日の対応をどう扱うか
  • 復帰直後の担当業務(受付のみ、処置は段階的に、など)

私傷病休職からの復職 — 「治ったか」を誰が判断するか

こちらが本題です。判断が必要になるのは、次の問いです。

「従前の職務を通常の程度に行える健康状態に戻ったか」

これが復職の基本的な判断基準です。実務では、次の3者の情報を突き合わせます。

情報源 分かること 限界
主治医の診断書 医学的な回復の程度 職場の業務内容を知らない。本人の希望が反映されやすい
産業医の意見 業務に照らした就業可否 50人未満のクリニックには選任義務がない
本人との面談 生活リズム、通勤の可否、意欲 主観的

🔴 診断書1枚で決めないのが原則です。
「就労可能」と書かれた診断書は、日常生活が送れるという意味であることが多く、
夜勤を含むシフトに戻れるという意味とは限りません。

主治医に意見を求めるときは、業務内容を具体的に書いて渡します。
「立位での処置が1回30分」「電子カルテ入力が1日4時間」「土曜午前の勤務がある」
といった記載があると、答えが変わります。

50人未満のクリニックはどうするか

産業医の選任義務は常時50人以上の事業場です。
多くのクリニックは対象外ですが、代わりに次が使えます。

  • 地域産業保健センター(労働者数50人未満の事業場向け。無料で医師の意見を聞ける)
  • 都道府県の産業保健総合支援センター
  • 自院の医師が本人の主治医でない場合、院内で意見を出す(利益相反に注意)

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復職の手順 — 5ステップ

① 本人からの復職申出(書面)
口頭だけにしない。申出日と希望復帰日を残します。

② 主治医の診断書の提出
就業規則で「会社所定の様式による」と定めておくと、必要な情報が揃います。

③ 情報の突き合わせ
必要に応じて、本人の同意を得たうえで主治医へ照会します。
同意なしに主治医へ問い合わせることはできません。

④ 復職判定と、条件の決定
- 復帰日
- 就業上の措置(時短、業務制限、残業・夜勤の免除、期間)
- 措置の見直し時期(例:2週間ごと、3か月で通常勤務へ)

⑤ 復職後のフォロー
措置の期限が来たら再評価します。「気づいたら1年たっていた」を避けます。

就業規則に書いておく4項目

私傷病休職の復職でトラブルになるのは、規程が薄いときです。最低限、次を書きます。

  1. 復職の要件(「従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復したと会社が認めたとき」)
  2. 提出書類(会社所定の様式の診断書、主治医への照会に対する同意書)
  3. 会社が指定する医師の受診を求められること、およびその費用負担
  4. 復職後、一定期間内に同一または類似の事由で再休職した場合の扱い
    (休職期間を通算するか、リセットするか)

⚠️ 4は特に効きます。通算の定めがないと、
短期間の復職と再休職を繰り返すたびに休職期間がリセットされます。

リハビリ出勤(試し出勤)を入れるか

いきなりフルタイムに戻さず、短時間から慣らす仕組みです。導入するなら、
それが「労働」なのかどうかを先に決めます。

  • 労働として扱う … 賃金が発生し、労災の対象。復職後の扱いになる
  • 復職前のリハビリとして扱う … 賃金を支払わない。業務を行わせてはいけない

🔴 いちばん危ないのは、復職前の位置づけのまま実務をさせることです。
実態が労働なら賃金の支払い義務が生じます。
どちらにするかを規程で決め、本人にも書面で伝えます。

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少人数のクリニックで現実的にできること

すべてを整えるのは無理でも、次の3つだけは効果が大きい。

  1. 就業規則に復職要件と提出書類を書く(1回やれば終わる)
  2. 復職面談のチェックリストを1枚作る(毎回同じ順番で聞ける)
  3. 就業上の措置に必ず期限を付ける(見直しを忘れない)

「どれも要らない」ケースもあります。
常勤2〜3人で、休職制度そのものを設けていないなら、
先に決めるべきは復職手順ではなく、休職制度を持つかどうかです。
法律上の義務はないため、持たない選択もあり得ます。

よくある質問

Q. 診断書の費用は誰が負担しますか。
法律上の定めはありません。就業規則で明記しておくのが確実です。
会社が指定する医師の受診を求める場合は、会社負担が一般的です。

Q. 復職を認めないことはできますか。
就業規則の復職要件を満たさないと判断すれば可能ですが、
判断の根拠(医学的意見と業務内容の照合)を残していないと争いになります。
休職期間満了による退職扱いは、特に慎重な手順が必要です。

Q. 産休・育休から復職する人の有給休暇はどうなりますか。
産前産後休業・育児休業の期間は、年次有給休暇の出勤率算定において
出勤したものとみなされます(労働基準法39条10項)。
「休んでいたから付与日数が減る」ということはありません。

まとめ

復職は、休業の種類で決まり方が違います。

  • 産休・育休 … 期日が制度で決まっている。手続き(社会保険料免除の終了、
    終了時報酬月額変更届、養育期間の特例)を漏らさないことが本体
  • 私傷病休職 … 判断が必要。就業規則の復職要件が唯一の根拠になる

私傷病休職で押さえる原則は1つです。
🔴 主治医の診断書だけで決めない。業務内容を書いて意見を求める。

まず就業規則を開いて、復職要件と提出書類が書かれているかを確認してください。
書かれていなければ、そこが最初の一手です。

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参考

  • 労働基準法 第65条(産前産後)、第39条第10項(年次有給休暇の出勤率)
  • 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
  • 厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
  • 日本年金機構「産前産後休業終了時報酬月額変更届」「育児休業等終了時報酬月額変更届」
  • 日本年金機構「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」
  • 厚生労働省「地域産業保健センター(50人未満の事業場向け支援)」
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