退院証明書は、退院する患者に交付し、次に入院する医療機関へ渡してもらうための書類である。
診断書や診療情報提供書と混同されやすいが、目的がまったく違う。病状を伝える書類ではなく、入院日数を数えるための書類である。
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なぜこの書類が必要なのか
入院料には、入院期間が長くなるほど点数が下がる構造と、同一傷病で長期間入院した場合に一部が選定療養になる仕組みがある。
この「入院期間」は、1つの医療機関の中だけで数えるものではない。同一傷病で他院へ移った場合、日数は通算される。
そのため、医療機関は患者の入院に際して過去3か月以内の入院の有無を確認することが求められている。同一傷病による入院であれば、前の医療機関の入院期間・算定していた入院基本料等・傷病名を、前医療機関または保険者に照会して確認する。
🔴 この確認を毎回照会でやると業務が回らない。そこで、退院する側があらかじめ書面にして患者へ渡しておく。それが退院証明書である。
記載する項目
厚生労働省が様式を示している。中心となるのは次の5つである。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 入院年月日・退院年月日 | 通算の起算点になる。ここがずれると全部ずれる |
| 傷病名 | 同一傷病かどうかの判定に使う。通算されるのは同一傷病の場合 |
| 算定していた入院基本料等 | 次の医療機関が期間区分を引き継ぐための情報 |
| 入院期間中の入院基本料等の算定期間 | 何日ぶんをどの区分で算定したか |
| 選定療養に該当するか否か | 長期入院に係る選定療養の判定 |
⚠️ 傷病名を「疑い」のまま書かない。同一傷病かどうかの判定に使う欄なので、確定した病名を記載する。
交付するタイミングと渡し方
退院時に患者または家族へ交付する。多くの医療機関では、退院の説明時に退院手続きの書類一式へ同封している。
患者へ伝えるべきことは1つだけである。
「3か月以内に別の病院へ入院されるときは、この紙を出してください」
用途を説明しないと捨てられる。「保険の請求に使う紙」だと誤解して保険会社へ送ってしまう患者もいる。診断書ではない旨を添えると混乱が減る。
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受け取る側の実務
入院を受け入れる医療機関の側では、次の順で処理する。
- 入院時に過去3か月以内の入院の有無を聞く(問診票に欄を設けておくと漏れない)
- 「あり」なら退院証明書の提出を求める
- 同一傷病か判定する。別傷病であれば通算しない
- 同一傷病なら、前医療機関の算定期間を引き継いで入院日の起算日を決める
- 患者が退院証明書を持っていない場合は、前医療機関または保険者へ照会する
🔴 持っていないから確認しなくてよい、にはならない。確認義務は受け入れる側にある。書類が無ければ照会に切り替える。
混同されやすい書類との違い
| 書類 | 目的 | 渡す相手 |
|---|---|---|
| 退院証明書 | 入院日数の通算・算定区分の引き継ぎ | 次に入院する医療機関 |
| 診療情報提供書(紹介状) | 病状・経過・治療内容の引き継ぎ | 次の担当医 |
| 退院時サマリー | 院内の診療記録としての要約 | 院内(診療録の一部) |
| 入院証明書・診断書 | 保険金請求や職場提出のための証明 | 保険会社・勤務先 |
患者が「退院証明書がほしい」と言ってきたとき、実際に必要なのは保険金請求用の入院証明書であることが多い。用途を先に聞くと、書類の作り直しが減る。
クリニックで起きやすい取りこぼし
- 入院設備のないクリニックでも、受け取る場面はある。在宅や外来へ引き継ぐとき、期間の情報が判断材料になる
- 有床診療所は交付する側になる。退院手続きの様式に組み込んでおかないと、その都度作ることになる
- 問診票に「過去3か月以内の入院」の欄が無いと、確認そのものが発生しない。様式を見直す価値がある
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よくある質問
Q. 別の傷病で入院した場合も通算するか
A. しない。通算されるのは同一傷病による入院の場合である。
Q. 患者が退院証明書を紛失したら
A. 前の医療機関に再交付を依頼するか、受け入れ側が前医療機関・保険者へ照会する。
Q. 文書料は取れるか
A. 退院時に交付するものであり、患者の求めに応じて発行する証明書とは性質が異なる。取り扱いは各医療機関で確認すること。
まとめ
- 退院証明書は入院日数を通算するための書類であり、病状を伝える書類ではない
- 医療機関には過去3か月以内の入院を確認する義務があり、この書類がその確認を成立させている
- 記載の中心は入院日・退院日・傷病名・算定していた入院基本料等・選定療養の該当有無
- 患者に用途を一言添えて渡す。説明が無いと捨てられるか、保険会社へ送られる
参考
- 厚生労働省「退院証明書」様式
- 保険医療機関及び保険医療養担当規則
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法」第2部 入院料等 通則
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
