ストレスチェック義務化はいつから?50人未満のクリニックも対象に。準備スケジュールと院長が見てはいけない範囲

ストレスチェックは、2015年から労働安全衛生法で事業者に実施が義務付けられている。
ただし、労働者数50人未満の事業場は「当分の間、努力義務」とされてきた。

この扱いが変わる。
2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務化され、2028年(令和10年)4月1日から施行されることが厚生労働省から示されている。

無床診療所の多くは、職員数が50人に届かない。
つまり、これまで努力義務だったほぼ全てのクリニックが、2028年4月から義務の対象になる。

一方で、ストレスチェックは健康診断と違い、院長が職員一人ひとりの結果を見てはいけない制度だ。
院長が医師であっても、自院の職員の実施者にはなれない。
この記事では、義務化で何が変わるのか、クリニックに合った実施体制、院長が見てよい情報と見てはいけない情報、施行までの準備スケジュールを整理する。

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目次
  1. ストレスチェック義務化で何が変わるのか
    1. 「事業場」の数え方
  2. ストレスチェックの対象になる職員
  3. 院長が見てよい情報、見てはいけない情報
    1. 法令とマニュアルで決まっていること
    2. 院長が扱う情報の範囲
  4. 実施体制の選び方
    1. クリニックの条件ごとの選び方
    2. 委託先を選ぶときの確認点
  5. 施行までの準備スケジュール
    1. 社内ルールに入れる項目
  6. 実施の流れと記録の保存
    1. 保存する記録
  7. 準備のチェックリスト
  8. よくある質問
    1. 50人未満のクリニックも労働基準監督署に報告が必要か
    2. 院長が医師なので、自分で実施者になってもよいか
    3. 職員が受けたくないと言った場合はどうするか
  9. まとめ
  10. 参考

ストレスチェック義務化で何が変わるのか

まず、50人以上の事業場と50人未満の事業場で、2028年4月以降の義務がどうなるかを整理する。

項目 50人以上の事業場 50人未満の事業場(2028年4月〜)
ストレスチェックの実施 義務 義務(これまでは努力義務)
高ストレス者の申出による医師の面接指導 義務 義務
面接指導結果に基づく医師の意見聴取と就業上の措置 義務 義務
集団分析・職場環境改善 努力義務 努力義務
労働基準監督署への実施結果の報告 義務 不要

厚生労働省は、50人未満の事業場向けに「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月)と、その概要版のスタートガイドを公表している。
小規模事業場の実情に合わせた実施体制と方法が示されているので、準備はこのマニュアルに沿って進めるのが近道だ。

「事業場」の数え方

事業場は、原則として同じ場所にあるものを一つの事業場と考える。
同じ医療法人でも、場所が離れた分院は別の事業場になる。
法人全体では50人以上でも、各クリニックが50人未満なら、それぞれが50人未満の事業場として扱われる。

また、労働基準監督署への報告が必要かどうかを判断する「常時使用している労働者」には、継続して雇用し常態として使っていれば、短時間のパートやアルバイトも含まれる。
すでに50人以上の事業場は、これまでどおり報告まで含めた対応が必要だ。

ストレスチェックの対象になる職員

ストレスチェックの対象者は「常時使用する労働者」で、一般定期健康診断の対象者と同じ考え方になる。
次の2つをどちらも満たす人が対象だ。

  1. 期間の定めのない労働契約で雇われている人(契約期間が1年以上の人、更新により1年以上使用される予定の人、1年以上引き続き使用されている人を含む)
  2. 1週間の労働時間が、同じ業務に従事する通常の労働者の4分の3以上である人

4分の3未満でも、1の要件を満たし、労働時間がおおむね2分の1以上の人には、実施することが望まれるとされている。
派遣労働者のストレスチェックは、派遣元に実施義務がある。

なお、健康診断と違い、職員には受検の義務はない。
ただし、制度を効果的にするため、できるだけ全員が受けることが望まれている。

院長が見てよい情報、見てはいけない情報

クリニックでストレスチェックを実施するときに一番注意したいのが、個人情報の扱いだ。
院長は医師であり、健康診断の結果は日常的に扱っている。
しかしストレスチェックでは、事業者である院長の立場が優先される。

法令とマニュアルで決まっていること

  • ストレスチェックを行った医師などは、本人の同意なく、個人の結果を事業者に提供してはならない(労働安全衛生法第66条の10第2項)
  • 本人の同意は、書面または電磁的記録で取らなければならない(労働安全衛生規則第52条の13)
  • 解雇、昇進、異動について直接の権限を持つ監督的地位にある人は、ストレスチェックの実施の事務に従事してはならない(同規則第52条の10第2項)
  • 厚生労働省のストレスチェック制度関係の疑義応答では、病院長は一般的に人事権を持っているため、ストレスチェックの実施者にはなれないとされている
  • 面接指導を担当した医師は、就業上の措置に必要な最小限の情報に限って事業者に提供し、診断名、検査値、具体的な訴えの内容などは提供してはいけない。事業者も求めてはいけない
  • 集団分析は、集計の単位が10人を下回る場合、個人が特定されるおそれがあるため、原則として結果の提供を受けてはいけない
  • 受検しないこと、結果、面接指導の申出を理由に、不利益な取扱いをしてはならない

院長が扱う情報の範囲

院長が知ることになる情報 院長が原則として知ってはいけない情報
面接指導の申出があったこと 個人のストレスチェック結果(本人の同意がない場合)
面接指導の実施に必要な勤務状況などの情報 誰が高ストレスと判定されたか(申出がない場合)
面接指導の結果に基づく医師の意見(就業上の措置に必要な範囲) 面接指導での診断名、検査値、具体的な訴えの内容
個人が特定されない形の集団分析結果 10人未満の単位での集団分析結果

面接指導そのものについては、医師であれば実施者の制限はない。
院長が自院の職員の面接指導を行うことも法令上は問題ないとされている。
ただし、院長が面接指導をすると職員が申出をためらうおそれがあり、その場合は制度の趣旨に合わないとされている。
現実的には、面接指導も外部の医師に依頼する方が職員は安心して申し出られる。

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実施体制の選び方

小規模事業場向けマニュアルでは、50人未満の事業場は、職員のプライバシー保護の観点から、原則として外部機関への委託が推奨されている。

外部委託した場合の役割分担は次のようになる。

役割 担う人 主な仕事
実施責任者 事業者(院長・理事長) 導入方針の表明、体制の整備
実務担当者 クリニック内で指名(事務長など) 実施計画、委託先との連絡調整、実施の管理
実施者 委託先の医師、保健師など 調査票の選定、高ストレス者の選定基準の決定、面接指導の要否の判断
実施事務従事者 委託先の職員 調査票の配布・回収、データ入力、個人結果の保存

外部委託なら、個人の結果は委託先で完結し、クリニック内では扱わない。
そのため、実務担当者には人事権を持つ人を指名することもできる。

クリニックの条件ごとの選び方

  • 一般的な無床クリニック(職員数人〜数十人):外部委託が基本になる。職員同士の距離が近く、院内で結果を扱うと誰の結果か推測されやすい
  • 医療法人の本部に、人事権を持たない医師や保健師などの専門職と、別の事務担当がいる場合:自院での実施も制度上は可能だが、マニュアルでは、実施者と実施事務従事者の選任、守秘義務の周知、結果通知の方法など、極めて慎重な運用が求められるとしている。体制が作れないなら外部委託を選ぶ
  • 常時使用する労働者がいない場合:対象者がいないため、実施の義務も生じない
  • すでに50人以上の事業場:50人未満への拡大による新たな準備は生じない。これまでどおり報告まで含めて実施する

委託先を選ぶときの確認点

マニュアルでは、外部機関から「サービス内容事前説明書」を作成・説明してもらい、提案内容を比べて選ぶよう勧めている。
クリニックが確認したいのは次の点だ。

  • ストレスチェックと集団分析を委託する範囲
  • 医師の面接指導をどこに依頼するか(委託先のオプション、地域産業保健センター、産業保健に対応する医療機関など)
  • 料金体系(標準サービスとオプションの区別、面接指導の料金が回数ごとか一括か)
  • 個人結果の記録の保存を委託内容に含めているか
  • 調査票の項目と、紙かウェブかの回答方法

地域産業保健センターは、50人未満の事業場を対象に、高ストレス者に対する医師の面接指導などを無料で提供している。
面接指導の費用は事業者が負担するもので、保険診療として扱うことはできない点も押さえておきたい。

施行までの準備スケジュール

施行日の2028年4月1日から逆算すると、準備期間は1年半ほどある。
ただ、委託先の選定や職員への説明には時間がかかるので、2027年度の早い時期に体制を固めておくと余裕を持てる。
次の表は、2026年9月時点から始める場合の目安である。

時期 やること
2026年10月〜2027年3月 厚生労働省のマニュアルとスタートガイドを読む。対象になる職員を洗い出す。院長として導入方針を決める
2027年4月1日(関連) 集団分析を特定の個人を識別できない方法で行うことを明文化した省令改正の施行
2027年4月〜6月 職員の意見を聴く機会を設ける。実施時期、回答方法、情報の扱いについて意見を集める
2027年7月〜9月 委託先候補から事前説明を受けて比較し、契約する。面接指導の依頼先を決める
2027年10月〜12月 社内ルール(規程)を作り、職員に周知する。実務担当者を指名する
2028年1月〜3月 委託先と実施時期、調査票の配布方法、結果通知の流れを最終確認する
2028年4月1日 義務化の施行。以後、1年以内ごとに1回、定期に実施する

施行前に一度実施してみるかどうかは任意だ。
努力義務の期間中に試しておくと、職員の反応や委託先の対応を確認でき、施行後の初回を落ち着いて迎えられる。

社内ルールに入れる項目

マニュアルに載っているモデル例では、社内ルールに次の項目を定めている。

  1. 実施体制(外部委託すること、実務担当者、面接指導の依頼先)
  2. 実施方法(年1回、対象者、回答方法、結果は本人に直接通知、高ストレス者の面接指導の申出方法)
  3. 記録の保存(集団分析結果、面接指導結果の保存期間)
  4. 情報管理(個人結果は本人の同意なく事業者が知ることはないこと)
  5. 情報の開示と苦情の窓口
  6. 不利益な取扱いの防止

実施の流れと記録の保存

義務化後の1年間の流れは次のとおりだ。

  1. 委託先から職員に調査票を配布し、回答してもらう
  2. 委託先の実施者から、職員本人に個人結果を直接通知する
  3. 高ストレスで面接指導が必要な職員には、実施者から申出を勧める
  4. 職員から申出があれば、事業者は遅滞なく医師の面接指導を行う
  5. 面接指導を行った医師から、就業上の措置について意見を聴く(遅くとも1か月以内)
  6. 医師の意見を踏まえ、必要な就業上の措置を行う
  7. 委託先に集団分析をしてもらい、職場環境の改善に取り組む(努力義務)

保存する記録

記録 保存する人 期間
面接指導結果の記録 事業者 5年間(義務)
本人の同意を得て提供を受けた個人結果の記録 事業者 5年間(義務)
同意のない個人結果 委託先の実施者または実施事務従事者 委託先で保存させることが望まれる
集団分析結果 事業者 5年間の保存が望まれる

面接指導結果の記録には、実施年月日、職員の氏名、面接指導を行った医師の氏名、勤務の状況、心理的な負担の状況、その他の心身の状況、医師の意見を記載する。

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準備のチェックリスト

  • 自院が50人未満の事業場か、分院ごとに確認した
  • 常時使用する労働者に当たる職員を洗い出した
  • 院長として導入方針を決め、職員に伝えた
  • 実施体制と実施方法について職員の意見を聴いた
  • 外部委託の委託先を比較し、契約した
  • 面接指導の依頼先(委託先、地域産業保健センターなど)を決めた
  • 実務担当者を指名した
  • 社内ルールを作り、周知した
  • 院長が個人結果を受け取らない流れになっているか確認した
  • 面接指導結果の記録を5年間保存する場所を決めた
  • 受検や申出を理由に不利益な取扱いをしないことを明記した

よくある質問

50人未満のクリニックも労働基準監督署に報告が必要か

必要ない。
実施結果の報告は、常時50人以上の労働者を使用する事業者に義務付けられたもので、マニュアルでも50人未満の事業場は不要とされている。
ただし、実施と記録の保存は義務になる。

院長が医師なので、自分で実施者になってもよいか

なれない。
厚生労働省の疑義応答では、病院長は一般的に人事権を持っているためストレスチェックの実施者になれず、人事権を持たない他の医師や保健師などから選ぶことになるとされている。
クリニックの院長も、職員の採用や配置の権限を持つ以上、同じ考え方になる。

職員が受けたくないと言った場合はどうするか

職員には受検の義務がないため、強制はできない。
受けないことを理由に不利益な取扱いをすることも禁じられている。
制度の目的がメンタルヘルス不調の未然防止であること、個人の結果が院長に伝わらないことを説明し、安心して受けられる環境をつくるのが基本になる。

まとめ

2025年の労働安全衛生法改正により、これまで努力義務だった50人未満の事業場にも、2028年4月1日からストレスチェックの実施が義務化される。
ほぼ全てのクリニックが新たに対象になるが、労働基準監督署への報告は50人未満の事業場では不要だ。

準備で押さえたいのは、次の3点である。

  • 原則として外部機関に委託し、個人の結果をクリニック内で扱わない体制にする
  • 院長は人事権を持つため実施者になれず、本人の同意なく個人の結果を受け取れない
  • 2027年度中に職員の意見聴取、委託先の選定、社内ルールの周知まで終えておく

厚生労働省の小規模事業場向けマニュアルには、社内ルールのモデル例や委託先を比べるためのチェックポイントが載っている。
都道府県の産業保健総合支援センターでは制度導入の相談も無料で受けられるので、早めに活用しておきたい。

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参考

  • 厚生労働省「労働者数50人未満の小規模事業者の方」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70761.html
  • 厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月) https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001678866.pdf
  • 厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」スタートガイド https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001678875.pdf
  • 厚生労働省「ストレスチェックの「集団分析」を適切に実施しましょう」(労働安全衛生規則の一部を改正する省令のリーフレット) https://www.mhlw.go.jp/content/001725894.pdf
  • 厚生労働省「ストレスチェック制度関係Q&A」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150507-2.pdf
  • 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)(法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057
  • 労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)(法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032
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内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、、循環器科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、肛門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、気管食道科、放射線科、麻酔科、心療内科、アレルギー科、リウマチ科、リハビリテーション科、、、、