労災の様式7号とは|様式5号との違いと医療機関が書く欄

労災の様式第7号は、労災指定医療機関ではない医療機関で受診した患者が、窓口で立て替えた費用をあとから請求するための書式です。

根拠は労働者災害補償保険法第13条にあります。療養補償給付は本来「療養の給付」、つまり現物給付です。ただし同条第3項が「療養の給付をすることが困難な場合その他厚生労働省令で定める場合には、療養の給付に代えて療養の費用を支給することができる」と定めており、この費用の支給を請求する書式が様式第7号です。

クリニックが関わるのは、この用紙のうち「医師又は歯科医師等の証明」欄と、裏面の療養の内訳です。

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目次
  1. 様式第7号と様式第5号は何が違うのか
  2. 枝番(1)から(5)までの使い分け
  3. 通勤災害で使う様式の番号
  4. 誰がどの欄を証明するのか
  5. 医療機関が書く(イ)から(ニ)で押さえること
    1. (イ)期間と診療実日数
    2. (ロ)傷病の部位及び傷病名
    3. (ハ)経過の概要と転帰
    4. (ニ)療養の内訳及び金額
  6. 窓口でいくら受け取るか
  7. 労災に健康保険を使えない理由
  8. 提出先と提出の流れ
  9. クリニックがよく迷う場面
    1. 自院が労災指定でないと分かったとき、患者に何と言うか
    2. 事業主が証明を拒む場合
    3. 用紙を持たずに来院したとき
    4. 第三者行為災害のとき
  10. よくある質問
    1. 様式第7号は毎月出すのですか。
    2. 労災の点数は健康保険と同じですか。
    3. 様式第7号と様式第8号は同時に出せますか。
    4. 労災指定を受けるにはどうすればよいですか。
    5. 診療実日数と療養の期間を同じにしてもよいですか。
  11. まとめ
  12. 参考

様式第7号と様式第5号は何が違うのか

読者が最初につまずくのはここです。書類の目的は同じ(医療費の給付)で、分かれ目は受診先が労災指定医療機関かどうかです。

様式第5号 様式第7号
使う条件 受診先が労災指定医療機関 受診先が労災指定を受けていない医療機関
給付の形 療養の給付(現物給付) 療養の費用(現金給付)
患者の窓口負担 なし いったん全額を支払う
用紙を出す先 受診した医療機関の窓口 患者本人が労働基準監督署へ
費用を請求する人 医療機関 患者本人

つまり様式第7号が登場するのは、自院が労災指定を受けていないときです。自院の指定の有無は労災保険指定医療機関検索で確認できます。

指定を受けているのに様式第7号を渡してしまうと、患者に不要な立替が発生します。逆に指定を受けていないのに様式第5号を受け取ってしまうと、労働基準監督署へ請求できず差し戻しになります。

枝番(1)から(5)までの使い分け

様式第7号には5種類の用紙があり、誰から療養を受けたかで使い分けます。番号を間違えると受理されません。

枝番 使う場面
様式第7号(1) 病院・診療所で診療を受けたとき
様式第7号(2) 薬局で薬剤の支給を受けたとき
様式第7号(3) 柔道整復師の手当を受けたとき
様式第7号(4) はり師・きゅう師、あん摩マッサージ指圧師の手当を受けたとき
様式第7号(5) 訪問看護事業者の訪問看護を受けたとき

クリニックが証明するのは(1)だけです。ただし院外処方を出した場合、患者は薬局分の(2)を別に用意します。「用紙は1枚で足りる」と案内すると、薬剤費の請求が漏れます。

正式名称は「療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の費用請求書」です。用紙の左肩に「業務災害用・複数業務要因災害用」と印字されています。

通勤災害で使う様式の番号

通勤中のけがでは、様式第7号を使いません。業務災害と通勤災害で様式が対になっています。

業務災害・複数業務要因災害 通勤災害
労災指定医療機関で受診 様式第5号 様式第16号の3
指定以外で受診(費用請求) 様式第7号 様式第16号の5
受診先を変えた(転医) 様式第6号 様式第16号の4
休業補償 様式第8号 様式第16号の6

受付で「仕事中のけがですか、それとも通勤の途中ですか」を確認してから用紙を案内すると、この取り違えは起きません。

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誰がどの欄を証明するのか

様式第7号(1)は1枚を3者で分担します。それぞれが証明する範囲は用紙に明記されており、重なりません。

記入する人 範囲
請求人(被災した労働者) 氏名・生年月日・住所、振込先口座、(ホ)看護料、(ヘ)移送費、(ト)上記以外の療養費、(チ)療養の給付を受けなかった理由、⑳療養に要した費用の額
事業主 ⑦負傷又は発病年月日、裏面(ヌ)負傷又は発病の時刻、裏面(ヲ)災害の原因及び発生状況
医療機関(診療担当者) (イ)から(ニ)まで(期間・診療実日数、傷病の部位及び傷病名、経過の概要、療養の内訳及び金額)

用紙の証明文がそのまま境界線です。事業主欄には「⑦並びに裏面の(ヌ)及び(ヲ)に記載したとおりであることを証明します」、医師欄には「(イ)から(ニ)までに記載したとおりであることを証明します」と印字されています。

(チ)療養の給付を受けなかった理由は患者本人が書く欄です。ここに「受診した医療機関が労災指定ではなかったため」と書かれることで、様式第5号ではなく様式第7号を使う理由が成立します。医療機関が代わりに埋める欄ではありませんが、患者が空欄のまま出すと照会の原因になるため、渡す時点で一言添えると確実です。

なお派遣労働者の場合は、派遣元事業主の証明に加えて、裏面の派遣先事業主証明欄が必要になります。

医療機関が書く(イ)から(ニ)で押さえること

(イ)期間と診療実日数

療養を行った期間と、実際に受診した日数を分けて書きます。診療実日数は期間の暦日数ではありません。外来なら受診した日数、入院なら入院日数です。

(ロ)傷病の部位及び傷病名

労働基準監督署が見るのは、災害と傷病がつながっているかです。

  • 部位は左右まで書く(「右第2指」のように)
  • 既往症がある場合は、今回の災害による増悪であることが読み取れる記載にする
  • 災害発生日と初診日が離れているときは、裏面の(ヲ)欄に理由を詳細に記入するよう患者に伝える

(ハ)経過の概要と転帰

経過の概要を記載したうえで、転帰を「治癒(症状固定)・継続中・転医・中止・死亡」から選びます。治癒は日常語の「治った」ではなく、症状固定を含む概念である点に注意します。

(ニ)療養の内訳及び金額

ここが様式第8号(休業補償)と決定的に違うところです。様式第7号では、医療機関が裏面に診療内容と点数・金額を記入します。初診・再診、指導、投薬、注射、処置、手術、画像診断、入院基本料などの区分が用意されており、小計と合計金額まで書きます。

実質的にレセプトを1枚の様式に落とし込む作業になるため、通常のレセプト作成と同じだけの手間がかかると見込んでおくのが現実的です。

窓口でいくら受け取るか

間違えやすいのが金額の計算方法です。労災の診療費は健康保険の診療報酬点数表に従って算定しますが、単価と一部の項目が健康保険と異なります

厚生労働省の労災診療費算定マニュアルは、「療養の費用を支給する場合(非指定医療機関に受診した場合)の支給限度額の算定についても、下記の取扱いに準じて行います」と明記しています。つまり指定を受けていない医療機関でも、金額の物差しは労災の算定基準です。

主な違いは次の3点です。

項目 労災での扱い
診療単価 1点12円(課税医療機関)。国・公共法人・一定の公益法人等は11円50銭
初診料 3,850円(点数ではなく金額で算定。単価を掛けない)
再診料 1,430円(一般病床200床未満の医療機関など)

健康保険と同じ1点10円で計算して受け取ると、その差額はあとから戻りません。支給されるのは実際に支払った額が上限のため、低く計算した分は自院の取りこぼしになります。

逆に算定基準を超える額を受け取ると、超過分は支給されず患者の自己負担が残ります。窓口で受け取る額は、労災の算定基準どおりに計算するのが、どちらの取りこぼしも防ぐ唯一の方法です。

療養の給付請求書取扱料2,200円は算定できません。これは様式第5号・様式第16号の3を取り扱った場合の加算で、様式第7号(1)から(5)および様式第16号の5では算定できないとマニュアルの注で明示されています。「労災の書類を書いたから取扱料が取れる」は成立しません。

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労災に健康保険を使えない理由

業務災害・通勤災害による傷病に健康保険は使えません。健康保険法第55条が、同一の疾病・負傷について労働者災害補償保険法により相当する給付を受けることができる場合には、健康保険の給付を「行わない」と定めているためです。

誤って健康保険で処理すると、次の手続きが発生します。

  1. 保険者へ、健康保険で受けた給付分を返還する
  2. 医療機関で労災扱いへ切り替える
  3. 改めて労災の請求を行う

患者が自己判断で保険証やマイナ保険証を出してくることは珍しくありません。受付で「お仕事中、またはご出勤の途中のけがですか」と一言確認するだけで、この手戻りは防げます。

提出先と提出の流れ

提出先は事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長です。医療機関の所在地でも、患者の住所地でもありません。用紙に記入する労働保険番号が事業場に紐づくためです。

流れは次のようになります。

  1. 患者が窓口で全額(10割)を支払う
  2. 医療機関が領収書と診療費の明細を交付する
  3. 患者が様式第7号(1)を入手し、請求人欄を記入する
  4. 事業主が⑦・(ヌ)・(ヲ)を証明する
  5. 医療機関が(イ)から(ニ)までを証明する(裏面の内訳を含む)
  6. 患者が領収書を添えて労働基準監督署へ提出する
  7. 支給決定後、患者の指定口座へ振り込まれる

領収書は請求の裏づけです。用紙の(ト)欄には「内訳別紙請求書又は領収書 ○枚のとおり」と書く欄があり、添付枚数を記載します。再発行の依頼が来ることを前提に、労災分の領収書控えは通常より長く保管しておくと安全です。

請求権の時効は2年です。労働者災害補償保険法第42条により療養補償給付を受ける権利は2年で消滅し、療養の費用については費用を支出した日ごとに請求権が発生し、その翌日から起算します。月をまたいで通院が続く場合、古い月の分から時効が進む点は患者に伝えておく価値があります。

クリニックがよく迷う場面

自院が労災指定でないと分かったとき、患者に何と言うか

事実だけを先に伝えます。「当院は労災指定を受けていないため、本日は全額をお支払いいただきます。様式第7号で労働基準監督署に請求すると、あとから払い戻しを受けられます」という順序です。

金額が大きくなりやすいため、先に概算を伝えてから会計に進むと会計窓口でのトラブルが減ります。継続して通院する見込みがあるなら、次回以降は近隣の労災指定医療機関へ転医する選択肢も案内できます。転医の際は様式第6号(通勤災害なら様式第16号の4)を使います。

事業主が証明を拒む場合

事業主の証明が得られない旨を記載して請求できます。労災に該当するかどうかを判断するのは労働基準監督署であり、事業主ではありません。

医療機関は自院の証明欄だけを埋めて返します。労災か否かの判断や、事業主との交渉には関与しません。「事業主が認めてくれないから請求できない」と患者が誤解している場合は、労働基準監督署に相談できることだけ伝えれば十分です。

用紙を持たずに来院したとき

様式第7号(1)は厚生労働省のサイトからダウンロードできます。用紙が手元になくても会計と診療は通常どおり進め、後日、証明欄の記入のために持参してもらう形で問題ありません。院内に白紙を数枚置いておくと、案内が早く済みます。

第三者行為災害のとき

自動車にはねられたなど第三者の行為による災害の場合、様式第7号とは別に「第三者行為災害届」の提出が要ります。医療機関側の記入事項ではありませんが、受診理由が第三者の行為によるものと分かった時点で患者に伝えておくと、あとからの追加提出を避けられます。

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よくある質問

様式第7号は毎月出すのですか。

療養が続く限り、原則として1か月ごとに請求します。用紙には「同一傷病分」「第○回」の欄があり、回を重ねて提出する前提の設計です。医療機関の証明も請求のたびに必要になります。

労災の点数は健康保険と同じですか。

点数表は健康保険に準拠しますが、単価と一部の項目が異なります。単価は1点12円(課税医療機関)、初診料3,850円・再診料1,430円は点数ではなく金額で算定します。労災独自の加算もあるため、厚生労働省の労災診療費算定マニュアルで確認するのが確実です。

様式第7号と様式第8号は同時に出せますか。

別々の請求として同時に提出できます。様式第7号は医療費、様式第8号は休業4日目以降の所得補償で、目的が違います。医療機関が証明する内容も、7号は療養の内訳、8号は労務不能と認められた期間と別物です。

労災指定を受けるにはどうすればよいですか。

都道府県労働局長への指定申請が必要です。指定を受けると、患者の窓口負担なし(様式第5号)で受け入れられるようになり、費用の請求先も労働基準監督署ではなく都道府県労働局になります。労災の受診が定期的に発生する立地であれば、検討する価値があります。

診療実日数と療養の期間を同じにしてもよいですか。

別の数字です。療養の期間は初日から末日までの期間、診療実日数は実際に受診した日数です。ここが一致していると照会の対象になりやすくなります。

まとめ

  • 様式第7号は、労災指定を受けていない医療機関で受診したときの費用請求書です。指定を受けていれば様式第5号を使います
  • 枝番は(1)病院・診療所、(2)薬局、(3)柔道整復師、(4)はり・きゅう・あん摩マッサージ、(5)訪問看護事業者。院外処方なら薬局分の(2)が別に要ります
  • 通勤災害では様式第16号の5に変わります。受付で業務災害か通勤災害かを先に確認します
  • 医療機関が証明するのは(イ)から(ニ)まで。事業主は⑦・(ヌ)・(ヲ)、(チ)療養の給付を受けなかった理由は患者本人が書きます
  • 窓口で受け取る額は労災の算定基準で計算します。1点12円、初診料3,850円、再診料1,430円。健康保険の10円で計算した差額は戻りません
  • 療養の給付請求書取扱料2,200円は様式第7号では算定できません
  • 提出先は事業場の所在地を管轄する労働基準監督署。領収書を添付し、時効は費用を支出した日の翌日から2年です
  • 労災に健康保険は使えません。受付での一言確認が最も確実な予防になります

参考

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提供形態

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診療科目

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