医師の収入は「年収いくら」で語られることが多いが、実際に手元に入る月の額は、賞与の比率と当直・オンコールの扱いで大きく変わる。
この記事では、統計上の月収を確認したうえで、その内訳がどう組み立てられているかを分解する。
クラウド型電子カルテ「CLIUS」
クラウド型電子カルテ「CLIUS」は、予約・問診・オンライン診療・経営分析まで一元化できる機能を備えています。効率化を徹底追求し、直感的にサクサク操作できる「圧倒的な使いやすさ」が、カルテ入力業務のストレスから解放します。
詳しい内容を知りたい方は下記フォームからお問い合わせください。
統計上の月収は約116万円
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査では、医師の「きまって支給する現金給与額」(時間外手当などの各種手当込み)の平均は月約116万円である。年間賞与(約116万円)を足した年収はおよそ1,512万円となる。
| 区分 | 月額(手当込み) | うち所定内給与 | 年間賞与 | 年収(月額×12+賞与) |
|---|---|---|---|---|
| 医師全体(平均45.7歳) | 約116.3万円 | 約102.8万円 | 約116.4万円 | 約1,512万円 |
| 男性 | 約122.5万円 | 約107.7万円 | 約123.7万円 | 約1,594万円 |
| 女性 | 約98.3万円 | 約88.5万円 | 約95.3万円 | 約1,275万円 |
| 30〜34歳 | 約86.8万円 | 約69.8万円 | 約45.3万円 | 約1,086万円 |
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(企業規模10人以上・一般労働者)。年収は月額×12+年間賞与で算出した値。
ここで注意したいのは、この116万円には時間外・当直などの超過労働分が含まれていることである。所定内給与は約103万円で、残りの約13万円が超過労働分にあたる。
- 所定内給与は月約103万円
- 時間外・当直などの超過労働分が約13万円上乗せされている
- したがって、当直回数が減れば月収も落ちる
「月収が高い=基本給が高い」ではない。この構造を把握しないまま転職すると、基本給が同じでも、当直が減った分だけ年収が下がる。
勤務先で月収の構造が変わる
同じ医師でも、勤務先の種類によって収入の組み立て方が違う。
| 勤務先 | 特徴 |
|---|---|
| 大学病院 | 本給が低く抑えられ、外勤(アルバイト)で補う構造。国立大学の助教の年間給与は700万円台(令和7年度・全学の教員平均) |
| 国公立・公的病院 | 給与表に沿って上がる。給料+賞与で国立約1,290万円・公立約1,551万円 |
| 医療法人(民間病院) | 交渉余地が大きく、上振れしやすい。給料+賞与で約1,577万円だが、賞与は約47万円と少ない |
| 開業 | 収入は診療報酬から経費を引いた残り。月ごとの変動が大きい |
大学病院の低さは、外勤とセットで設計されているためである。多くの医局では週1日程度の外勤に出る慣行があり、それを前提に本給が見られているので、本給だけを他院と比べても意味がない。
月額に直すと:勤務先・立場別の実額
中央社会保険医療協議会の第25回医療経済実態調査(令和7年11月公表)から、常勤医師1人あたりの給料年額を12で割って月額にした。月額だけで比べると、賞与の多い国公立が不利に見える点に注意する。
| 勤務先・立場 | 月額(給料年額÷12) | 賞与(年) | 給料+賞与(年) |
|---|---|---|---|
| 一般病院の医師(国立) | 約90.4万円 | 約205万円 | 約1,290万円 |
| 一般病院の医師(公立) | 約109.3万円 | 約239万円 | 約1,551万円 |
| 一般病院の医師(公的) | 約99.1万円 | 約193万円 | 約1,383万円 |
| 一般病院の医師(医療法人) | 約127.5万円 | 約47万円 | 約1,577万円 |
| 無床診療所の院長(医療法人) | 約237.5万円 | 約22万円 | 約2,872万円 |
医療法人の病院は月額が国立より約37万円高いが、賞与を足した年額の差は約287万円に縮む。求人票の「月給」を比べるときは、賞与の比率を必ず確認する。なお、この「給料」には時間外勤務手当・役付手当などが含まれ、一般病院の集計に特定機能病院(大学病院本院の多く)は入っていない。
院長の賞与は年20万円前後で、報酬のほとんどが月額に寄せられている。勤務医とは報酬の組み立て方が違う。
年代でどう上がるか
30〜34歳でおよそ1,086万円というのが統計上の水準である(令和7年賃金構造基本統計調査から算出)。ここから40代にかけて上がり、役職と外勤の量で個人差が開いていく。
- 20代後半(初期研修〜専攻医)——初期研修医はアルバイト診療が禁止されており、この時期がもっとも低い
- 30代——専門医取得と外勤の解禁で一段上がる
- 40代以降——役職手当と外勤の積み上げで差が開く
上がり方は年齢そのものより、外勤に出られる立場かどうかで決まる。研修中に収入が低いのは、制度上そうなっているためである。
クラウド型電子カルテ「CLIUS」
クラウド型電子カルテ「CLIUS」は、予約・問診・オンライン診療・経営分析まで一元化できる機能を備えています。効率化を徹底追求し、直感的にサクサク操作できる「圧倒的な使いやすさ」が、カルテ入力業務のストレスから解放します。
詳しい内容を知りたい方は下記フォームからお問い合わせください。
男女差は約320万円ある
男性医師が約1,594万円、女性医師が約1,275万円で、年収ベースで320万円ほどの差がある。
差には、年齢構成(平均年齢は男性47.2歳・女性41.5歳)、勤務時間、診療科の分布が重なっている。当直・オンコールの回数が収入に直結する構造のため、時間制約のある働き方を選ぶと、同じ能力でも収入が下がる。
これは医療機関側の設計課題でもある。手当中心の給与構造は、時間を出せる人ほど有利になる。定着を考えるなら、時間外の量に依存しない評価軸を給与に組み込めるかが問われる。
開業した場合の「月収」の考え方
開業医の場合、月収という概念が勤務医とは別物になる。
- 医療法人化していれば、役員報酬が「月収」になる
- 個人開業なら、収入から経費を引いた残りが所得であり、毎月一定ではない
- 設備投資・借入返済・スタッフ人件費が先に出ていく
「開業すれば月収が上がる」は、返済が終わった後の話である。開業直後は、勤務医時代より手元が薄くなる期間が普通にある。役員報酬をいくらに設定するかは、資金繰りと税負担の両面から決める。
この数字をそのまま自分に当てはめないほうがいい理由
上の表は、次の点で「あなたの手取り」とは違う。
1. 個人立の開業医は、この数字に出てこない
医療経済実態調査では、個人立の病院・診療所について、開設者の報酬は「給与費」に含まれない。表の「院長」は主に医療法人の理事長等に支払われた給与である。
個人開業の場合、実質的な収入は「損益差額」から見る必要がある。法人化しているかどうかで、同じ経営実態でも数字の見え方が変わる。
2. 診療科・地域・規模が均されている
平均値なので、診療科ごとの差は消えている。自由診療の比率が高い科と、保険診療だけの科では前提が違う。
3. 開業医の収入は「借入返済前」
開業時の設備投資(内装・医療機器・電子カルテ)は借入で賄うのが一般的である。院長報酬から返済原資を出している間は、可処分所得は表の数字より小さくなる。
4. 退職金・年金の扱いが違う
勤務医には退職金制度がある勤務先が多く、厚生年金にも加入している。開業医は自分で用意する必要がある。年収の比較だけでは、生涯の差は測れない。
勤務医のままか、開業か — 判断の境界線
順位はつけない。条件で分かれる。
勤務医を続けたほうがいい人
- 収入の安定と、業務外の負担が無いことを優先する — 経営・労務・資金繰りは付いてこない
- 専門性を深めたい — 症例数と設備は大規模病院のほうが確保しやすい
- 転居・異動を許容できる、あるいは動きたくない — どちらにせよ、自分で立地を決める必要がない
- 借入を負いたくない — 開業には数千万円規模の初期投資が伴うのが一般的
開業を検討していい人
- 診療の内容と時間配分を自分で決めたい
- 地域で継続的に同じ患者を診たい
- 経営の判断(採用・設備投資・広告)を自分で下すことに抵抗がない
- 数年分の生活費と、想定を下回ったときの資金を確保できる
そもそも今は動かないほうがいい人
- 「勤務先の不満」が主な動機 — 開業しても不満の種類が変わるだけのことが多い
- 借入の返済計画を数字で立てていない — 年収の比較だけで判断すると、返済期間中の可処分所得を見誤る
- 診療圏調査をしていない — 立地の判断は、開業後にやり直せない
よくある質問
Q. 医療経済実態調査の数字は信頼できますか?
中央社会保険医療協議会が実施する公的調査で、診療報酬改定の基礎資料になっている。全国の医療機関から無作為に抽出した施設の回答を集計したもので、推計値ではない。ただし平均値なので、個別の状況とは差がある。
Q. 個人開業医の年収はどこで分かりますか?
「院長の給与」としては出てこない。個人立では開設者の報酬が給与費に含まれない扱いのため、医業収益から医業費用を引いた「損益差額」を見る必要がある。同じ報告書の損益状況の項目で確認できる。
Q. 診療科別の年収は載っていますか?
勤務医の給料は診療科別に出ていない。一般診療所の損益差額は、同じ報告書で主たる診療科別に出ている。
Q. 開業に必要な初期費用はどのくらいですか?
診療科・立地・規模で大きく変わるため、一律の目安は示せない。内装・医療機器・電子カルテ・運転資金の4つを分けて見積もり、開業後6か月分の運転資金を別枠で確保するのが実務的な進め方である。
まとめ
- 医師の月給の統計平均は約116万円(令和7年)。ただし手当込みの数字
- 月額で比べると医療法人の病院が高いが、賞与を足すと国公立との差は縮む
- 個人立の開業医の収入は医療経済実態調査の「院長給与」には出てこない。損益差額で見る
- 大学病院は本給が低く、外勤とセットで年収が組まれている
- 年代による上昇は、外勤に出られる立場かどうかで説明できる
- 男女差320万円の主因は診療科分布と時間制約
- 開業医の月収は役員報酬の設定次第で、開業直後は薄くなる
収入の額そのものより、その額がどの手当で構成されているかを見たほうが、働き方を変えたときの影響を正しく読める。
参考
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」
- 中央社会保険医療協議会「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」(令和7年11月)
- 文部科学省掲載 各国立大学法人「役職員の報酬・給与等について」(令和7年度)
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2026年8月時点の情報を元に作成しています。
