患者が通っている病院・クリニックを「変えたい」と思うきっかけはいくつかあります。株式会社DONUTSが独自に実施したアンケートの結果、なかでも多い理由のひとつは、「受付やスタッフの態度に不満があった」であることがわかっています。具体的に、受付やスタッフのどのような言動が患者を病院・クリニックから遠のかせているのかを確認していきましょう。
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「受付・スタッフの態度」
まず、前述のアンケートは、株式会社DONUTSが2026年9月に実施したもので、「それまで通っていた医療機関への通院をやめた患者」を対象にしています。アンケート回答者は100人ですが、そのうち24人が「受付やスタッフの態度に不満があった」と回答しています。
具体的な声を紹介していきます。
不機嫌・愛想が悪い
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「発熱と強い倦怠感があったときに受診した際のことです。受付で体調の悪さを伝えたものの、スタッフの方には終始無表情で冷淡な対応をされて、非常に居心地が悪く感じました。また診察室に入っても、医師はこちらの顔を見ることもなくパソコンの画面ばかりを眺めていて、症状や不安に思っていることを説明しようとしても“ただの風邪ですね”と話を途中で遮られてしまいました。辛い体調の中で頼りにして受診したにもかかわらず、全く親身になってもらえず、不快感と大きな不信感だけが残る結果となりました」
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「初めてその病院に行ったときの話で、そのときは鼻風邪になっていてその症状を止めてほしいと思って受診しました。その病院ではインターネットを使って事前に予約できるようになっていて、いちいち家で待たなくていいのでこの病院を選びました。ただ、予約した後の動き方が書いていなかったので受付の看護師に聞いたら、すごく不機嫌な表情と声で案内された。会計のときもそんな感じだったのでこの病院はやめようと思いました」
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「虫歯の治療で歯科に通っていたのですが、そこに勤務している1人の歯科衛生士さんの態度が私にだけものすごく冷やかでした。話したこともない初めて会った衛生士さんで、私は何もしていないのに、受付では目も合わしてくれず、冷ややかな目と表情をされ、声のトーンも低く、話し方も冷たかったです。他の患者さんにもそうなのかと思い見ていましたが、他の患者さんにはとても愛想良くしていて、なんで?私何かしたかな?と思い、そこの歯科には行きたくなくなりました」
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「上の子(7歳)の鼻炎のため、かかりつけの耳鼻咽喉科を受診した。下の子(2歳)も鼻水が出ていたので、一緒に連れて行くしついでに受診してみた。患者さんが多いのはいつものことで、子どもたちも静かにしていたし気にならなかった。順番になり、上の子からベッドで診察、慣れていて問題なく終了した。下の子は初めてだったこともあり、泣きわめいたため、バスタオルで巻かれ診察となった。安全のために必要なことは理解していた。なんとか診察が終わり、まだ子どもも私もいるのに、看護師A“上の子はお利口なのに、下の子はすごいね~”と看護師Bに同意を求めた。 そしてその後、計算を待っていると、ソファにライターがあったため、拾って受付に届けた。“これ落ちてました”と伝えると、ライターを見つめ、ため息をつかれた。落とし物扱いにはしていたが、態度があり得なかった。 先生は説明もわかりやすく、信頼できるのに残念でしたが通うのをやめました」
→受付やスタッフの機嫌の悪さや冷たい態度に、イヤな気持ちにさせられたという声は多数ありました。スタッフ本人には悪気がないケースもあるかもしれませんが、医療機関で働いている以上、医療接遇を意識することはとても大切です。
喋り方や言葉がきつかった
- 「受付の人の説明がわかりづらくて、何度も聞き直していたからか、余計に言い方もきつくてすごく嫌な気持ちになった。 話し方も投げやりに聞こえたし、聞きたくてもとても聞ける雰囲気じゃなかった。 待ち時間もかなりかかったし、雰囲気も良くなかったので余計に疲れてしまった。 せめてもう少し話しやすい空気感じが欲しかった」
→機嫌が悪いだけでなく、言い方もきついとなると、患者は聞きたいことを聞くことすらできません。そうなると、たとえば薬の服用方法についてわからないことがあったとしても、疑問を解消できずに帰路につくということがあり得るため、症状が悪化してしまう可能性なども考えられます。そうした事態を防ぐためにも、患者が質問しやすいような空気感をつくることはとても大切です。
自分たちの非は謝ることなく、患者にはルールを守らせようとする
- 「予約時間に行ったのにも関わらず、2時間待たされて施術は5分。 痛かったら手をあげてと言われたので手を挙げたら、我慢できるから大丈夫だよー、と言われて患者のこと全く考えていないな、と思ったから。 また、次回の予約の際、受付の方が“遅刻したら、受付の最後になります”と言っていたのには驚いた。 やってることが矛盾しているのは、やはり信じられない」
→自院の非には目をつむる一方で、患者に対しては厳しくルールを強いてくるとなると、患者は納得して従うことができなくて当然です。
私語が目立つ
- 「肌荒れが気になって仕事帰りに通えるクリニックを探して行ったのですが、まず事前のWEB予約や問診票のシステムが一切なくて、紙の問診票をその場で書いてから一時間以上待たされました。やっと呼ばれて診察室に入ったのは良かったのですが、受付の方の私語が待合室まで聞こえてきたり、お会計のときの対応がぶっきらぼうで冷たい印象を受けたりして、すごく残念な気持ちになりました」
→スタッフ同士の私語を不愉快だと感じる患者はとても多いです。実際に話している内容に関わらず、「患者の個人情報について話しているのでは?」「患者についての不満を愚痴り合っているのでは?」などと勘繰られてしまうこともあり得るので、患者満足度が大きく低下してしまう可能性があります。
医療処置が不適切
- 「半年前でしょうか。歯に虫歯が出来ていて処置をほどこせないまでになっていて、抜糸をすることになったのですが、抜いた後『しばらく血が止まらないはずですから、ガーゼで押さえていて下さい』と歯科助手さんから言われ、お会計のときに、ガーゼで押さえながら『何分位押さえておけばいいですか?』と聞くと、15分位とのこと。帰宅してから既に15分以上経過しているのに、血はダラダラ。歯医者に電話しようにも、そのときは20時で診療時間外だったため繋がらず。ほぼ半日血が出た状態で困っていたのに、15分って本当だったの?と今でも疑問で不愉快な出来事です」
→看護師や理学療法士などのスタッフに関しては、処置が不適切という理由で、患者に不快感を抱かせてしまう可能性があります。ただし、患者の状態などによって、いつも通りの処置では問題が生じてしまったということはあり得るので、トラブルが起きた場合に適切に対応していくことを考えることも必要です。
」
記述から見えた4つのケース
続いて、「受付やスタッフの態度に不満があった」の回答を選択した人のコメントのなかでも、受付やスタッフが特に注意すべき点をピックアップしていきます。
ケース1: 挨拶がない・「お大事に」の一言がない
-
「受診した際、受付の対応に不快な印象を持ちました。受付では挨拶がなく、帰るときにも“お大事に”といった言葉がありませんでした。特別なサービスを求めていたわけではありませんが、基本的な声かけがないことで、冷たい対応だと感じました。病院では診察だけでなく、受付でのやり取りも安心感につながると思います。そのため、患者への気づかいが感じられなかった点が、特に気になりました」
-
「予約ができない近所の内科クリニックで、初診だったこともあり、体調が悪いなか、数時間、待たされました。受付の方は、挨拶もせず、分からないことを聞いても書類に書いてあるの一点張りで、嫌な印象を受けました。いざ診察になっても、医師がすでに疲れていて、どのような症状か、診断を出すこともできず、薬は処方されたものの、この薬で本当にいいのか、不安になりました」
→挨拶や「お大事に」の一言などの基本ができていないと、医療機関としての評価を下す以前に、「人として・社会人として信用できない」と判断されてしまいます。万が一、自院に、これらが不十分なスタッフがいる場合、すぐにでも態度を改めてもらうべきです。
ケース2: 忙しさがそのまま態度に出る
-
「1年ほど前に首から肩甲骨にかけてとても痛みを伴う経験をしました。夜も寝てられない状態になってしまったので急きょ病院に駆け込みました。閉院間近に入ったせいか、入った途端にスタッフの顔色がどんよりとしていました。少し雰囲気が悪いなとは思ったのですが、診察は滞りなく終わり会計を済ませて駐車場にいると、一人の看護婦さんが駆け寄ってきました。どうしたのかと思い窓を開けると、早く駐車場から出ろと文句を言われました。病人に文句を言ってまで早く帰りたいのかと思い唖然としました」
-
「婦人科の子宮頸がん検診が目的で近所の産婦人科に受診したが、病院受付と看護師の対応が不機嫌で非常に悪くて、不快な思いをしました。担当した医師からも検査に関する十分な説明がなく、不安だったし、大丈夫かなと終始不安だった。質問もしたかったが、忙しそうで看護師の態度も悪いのでこわくてできなかった。空いているのが納得だった」
-
「子供の体調が悪いときに受診したのですが、待合室のキッズスペースがおもちゃで散らかったままで少し気になってしまいました。さらに、予約をして行ったにもかかわらず二時間近く待たされ、ぐずる子供をなだめるのに本当に苦労しました。受付の方も終始お疲れの様子で、こちらが質問しても面倒そうに対応されてしまい、これ以上ここに通うのは少し厳しいなと感じて、別の綺麗な小児科に変えることにしました」
-
「目にものもらいのようなものができたので受診したときのこと。院内はたくさんの患者で混み合っており、受付スタッフは忙しさからイライラしている様子がうかがえた。受付をしようと診察券を出すと、スタッフは溜め息をついて面倒臭そうに診察券をひったくるように受け取った。忙しくて大変なのは分かるが、残念な気持ちになった」
→スタッフ一人あたりの業務量が多く、どんどん仕事をさばいていかないと残業時間が伸びてしまうという状況だと、ついつい患者に対しても冷たくなりがちです。業務中も眉間にしわが寄っていたり、話しかけられるとつっけんどんな態度を取ってしまったりということがあるかもしれませんが、そうすると院内の空気は悪くなるばかりです。自院がこうした状況にある場合、スタッフの人数を増やすことや、業務効率向上のための対策について考えたほうがいいかもしれません。
ケース3:患者の個人情報を待合室に聴こえる声で話す
- 「子どもを耳鼻科に連れて行ったときに、別姓で事実婚のため保険証の子どもの名前と被保険者の苗字が違うのに気づいた受付の人が、コソコソ他の人に話し始めた。その後待合室でも聞こえるくらいの声で、チラチラこちらを見ながら、“苗字別とか確認するの大変だよね…”などと、パソコンに情報を入力し終えるまで言われて見られ続けてすごく嫌だった。先生はよくても、その受付には関わりたくなくてもう行かない」
→患者の個人情報をほかの患者に聴こえる声で話すことは、もっともあってはならないことです。昨今は、個人情報保護に関する意識が高まっていることから、名前ではなく受付番号で呼び出す医療機関も増えているくらいです。名前を呼ぶこと自体は禁止されているわけではありませんが、名前を呼ばれることを望まない患者には、受付への申し出を案内している医療機関もあるので、自院でも同様の運用を検討するのも一手かもしれません。
ケース4:かかりつけ患者と初診患者で対応が違う
-
「風邪で受診したのだが、普段はかかりつけの患者が多いのか、かかりつけの人にはにこやかに対応しているのに、初診の私には冷たい対応だった。看護師の態度に驚いたし、とても嫌な気持ちになった。せめて営業スマイルくらいできないのかと思った。ただでさえ、体調悪くて来院しているのに、あまりに冷たい(笑顔もなく怖い顔)態度に気持ちも萎えたので、それ以来行っていない」
-
「朝、起床しようとしたところ腰痛が酷く起き上がれない状態で、仕事に行く事も出来ず自宅から一番近い距離にある整形外科の診療時間になるのを待ち夫に車で連れていってもらったのですが、診療開始時間前に到着していたにもかかわらず既に20人近い人の列が入り口にできていました。皆さんご高齢の方で顔見知りの方が多いのか話をしながら待っておられ入り口が開けられると診察券を受け付けに順番に出した後、まるで席が決まっているように座られ、腰が痛くて立つのもやっとだった私はそのまま待つのはとても無理だと思い、受付の方に初診の受付を済ませて車の中で待ちたい旨を話すととても怪訝な顔で“待合室でお待ちください”とだけ言うと他の患者さんと親し気に話し出しました。激痛に耐えながらこの日は何とか診察してもらいましたが次の診察は受けず違う整形外科に通うようになりました」
→顔なじみの患者と親しく言葉を交わすこと自体は問題ありませんが、一方で初診の患者などに対しては笑顔を見せることなく淡々と要件を伝えるのみだと、えこひいきだと感じる患者もいます。「この病院ではかかりつけ患者しかやさしくしないんだな」と疎外感を覚えたことで、通院先を変える患者も出てくることが考えられるため、注意が必要です。
院長には見えない場所で起きている
病院・クリニックの受付やスタッフのマナーの悪さ、感じの悪い対応は、院長が見ていない場所や、直接確認しにくい場面で発現していることがあります。
なぜかというと、院長が診察や経営管理に集中している間も、受付やスタッフは患者と接しているためです。
たとえば、次のような場面が挙げられます。
-
受付カウンターの裏側: 患者の質問に対して、面倒そうな態度や冷たい返答をする
-
待合室: 患者が困っていても声をかけず、スタッフ同士の会話を優先する
-
電話対応: 院長が聞いていない場面で、患者に対してぶっきらぼうな応対をする
-
スタッフ同士の会話: 患者に聞こえる場所で、患者への不満や否定的な発言をする
-
混雑時: 忙しさを理由に、説明を省略したり、患者を急かしたりする
こうした対応は、院長の前では見られない一方で、患者にとっては病院・クリニックの印象を左右する重要な接点になります。
しかも、患者がスタッフの対応に不満を感じても、必ずしも院長に直接伝えるとは限りません。
「忙しそうだから言いにくい」「クレームを言うのは気が引ける」と感じ、そのまま受診をやめたり、別の医療機関を選んだりする可能性もあります。
そのため、院長が「特に苦情はない」「スタッフは問題なく対応している」と認識していても、実際の患者体験との間にギャップが生じている可能性があります。
患者が実際にどのような対応を受けているのかを把握する仕組み作りが大切
接遇の改善には、院長がスタッフを一方的に疑うのではなく、患者の声や現場の状況を多面的に把握することが大切です。
たとえば、次のような取り組みが考えられます。
-
患者アンケートや意見箱の活用
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受付・会計・電話対応に関する定期的な確認
-
患者から寄せられた苦情や意見の共有
-
スタッフ同士で接遇を振り返る機会の設定
-
院長や管理者による現場観察
医療接遇に問題がないスタッフを見極めることも大切
もう一つ重視したいのは、採用段階で医療接遇に対する意識や行動特性を見極めることです。具体的な方法は次の通りです。
面接で「患者への接し方」に関する質問をする
一般的な面接では、経歴やスキル、志望動機などを確認します。しかし、医療接遇を重視するなら、患者への対応に関する質問を取り入れることが大切です。
たとえば、次のような質問が考えられます。
-
質問例①「患者さんから、待ち時間が長いと強い口調で苦情を言われた場合、どのように対応しますか?」
-
質問例②「忙しい時間帯に、患者さんから何度も質問された場合はどうしますか?」
-
質問例③「自分の対応が患者さんに不快な思いをさせたと指摘された場合、どのように受け止めますか?」
これらの質問を通じて、応募者が患者の立場を考えられるか、感情的な状況でも冷静に対応できるか、指摘を受け入れて改善しようとする姿勢があるかなどを確認できます。
ただし、面接での回答だけでは実際の行動を完全に判断できません。ほかの選考方法と組み合わせることが重要です。
ロールプレイで実際の対応を確認する
面接で「患者に丁寧に対応します」と答えていても、実際の接遇能力が十分とは限りません。そこで、患者対応を想定したロールプレイを実施します。
(ロールプレイの例)
| 想定場面 | 確認するポイント |
|---|---|
| 待ち時間への苦情 | 傾聴する姿勢、言葉遣い、説明の仕方 |
| 予約のない患者の来院 | 状況確認、丁寧な案内 |
| 高齢患者からの繰り返し質問 | 忍耐強さ、わかりやすい説明 |
| 怒っている患者への対応 | 冷静さ、相手の話を遮らない姿勢 |
| 院内ルールへの不満 | 一方的に否定せず、代替案や相談先を案内する力 |
ロールプレイでは、言葉遣いだけでなく、相手の話を聞く姿勢や、困っている患者に配慮する行動が見られるかを確認します。
なお、ロールプレイの結果だけで採否を決めるのではなく、評価基準を統一して、複数の選考情報を総合して判断します。
過去の接遇経験を具体的に聞く
応募者が過去にどのような患者対応を経験して、どのように行動したのかを確認します。
たとえば、次のような質問を投げかけることが有効です。
-
「これまで患者さんから感謝された対応を教えてください」
-
「患者さんとのコミュニケーションで難しかった経験はありますか?」
-
「患者さんから苦情を受けたとき、どのように対応しましたか?」
-
「接遇について、これまで改善した経験はありますか?」
ここでは、単に「患者さんに優しく接しています」という回答を求めるのではなく、実際の経験・行動・結果を具体的に説明できるかを確認します。
過去の経験を聞く面接手法は、行動面接(コンピテンシー面接)の考え方を取り入れたものです。ただし、過去の行動が将来の接遇を完全に保証するわけではありません。
採用時に「医療接遇の基準」を明確に伝える
採用後に「思っていたより接遇が悪い」という問題を防ぐには、採用段階で医療機関が求める接遇の基準を明確に伝えることが大切です。
たとえば、次のような行動基準を共有します。
-
患者の話を最後まで聞く
-
患者に対して威圧的・高圧的な態度を取らない
-
忙しいときでも、患者を無視したり急かしたりしない
-
患者の個人情報やプライバシーに配慮する
-
わからないことを自己判断せず、適切な担当者に確認する
-
接遇上の問題を指摘された場合、改善に取り組む
ただし、接遇の基準は抽象的な精神論だけでなく、具体的な行動として定義することが重要です。
「患者に優しくする」だけでなく、「患者から質問されたら、作業を中断できない場合でも、まず声をかけて対応の見通しを伝える」といった形にすると、スタッフも実践しやすくなります。
採用担当者だけでなく、複数の職員で面接する
院長一人の印象だけで採否を判断すると、評価に偏りが生じる可能性があります。そこで、院長・事務長・現場責任者など、複数の担当者が面接に参加する方法を検討したいところです。それぞれの担当者が異なる視点で応募者を確認することで、評価の偏りを抑えやすくなります。
たとえば、次のような役割分担が考えられます。
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院長:医療機関の方針との適合性
-
事務長:勤務姿勢や組織への適応
-
現場責任者:患者対応や業務上のコミュニケーション
ただし、複数人で評価しても主観的な判断は残るため、あらかじめ評価項目や基準を設定しておくことが大切です。
採用後の試用期間で接遇を確認する
面接やロールプレイだけで、スタッフの普段の対応を完全に把握することは困難です。そのため、採用後の試用期間中に、実際の業務における接遇を確認します。
具体的には、次のような方法があります。
-
指導担当者による接遇の観察
-
患者から寄せられた意見の確認
-
スタッフ本人との定期的な面談
-
接遇に関する研修と振り返り
-
試用期間中の評価基準の明確化
ここで重要なのは、採用した後も接遇を育て、改善できる仕組みを整えることです。接遇能力は採用時点ですべて決まるものではなく、職場の教育や管理体制によっても変わります。
採用時に避けたい判断
医療接遇を重視するあまり、次のような判断に偏らないよう注意が必要です。
| 避けたい判断 | 理由 |
|---|---|
| 笑顔が多いから接遇が優れていると判断する | 表情だけでは実際の対応力はわからない |
| 話し方が丁寧だから問題ないと判断する | 患者への傾聴や配慮は別途確認が必要 |
| 経歴が長いから接遇も優れていると判断する | 経験年数だけでは接遇能力を保証できない |
| 面接で印象がよかったから採用する | 面接時と業務中の行動が異なる可能性がある |
| 接遇に関する苦情をすべて本人の性格の問題と捉える | 教育や業務負担、職場環境などの要因も確認が必要 |
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朝礼で配りたいチェックリスト
患者への声掛けや言葉遣い、対応は、忙しいときなどには無意識に雑になってしまうことがあります。それを防ぐためにも、毎日の朝礼などで、スタッフ全員に「医療接遇チェックリスト」を配布して、自らの接遇についてチェックしてもらうといいでしょう。
医療接遇チェックリスト(例)
~患者さんに選ばれ、信頼される医療機関を目指して~
日付:__年__月__日
部署:________
氏名:________
【チェック方法】
毎朝、自分の行動を振り返り、今日意識する項目にチェックを入れましょう。
□:できている・意識している
△:改善が必要
○:今日、特に意識する
挨拶・表情・第一印象
| チェック項目 | □ |
|---|---|
| 1. 患者に自分から明るくあいさつをしている | □ |
| 2. 患者と目を合わせ、相手に伝わる声量で話している | □ |
| 3. 忙しいときでも、患者を無視したり、放置したりしていない | □ |
| 4. 不機嫌そうな表情や、面倒そうな態度を出していない | □ |
| 5. 患者が話しかけやすい雰囲気をつくっている | □ |
言葉遣い・コミュニケーション
| チェック項目 | □ |
|---|---|
| 6. 患者に対して、丁寧でわかりやすい言葉を使っている | □ |
| 7. 患者の話を途中で遮らず、最後まで聞いている | □ |
| 8. 専門用語や院内用語をそのまま使わず、わかりやすく説明している | □ |
| 9. 患者の年齢や状況に配慮した話し方をしている | □ |
| 10. 患者の不安や困りごとを軽視していない | □ |
待ち時間・混雑時の対応
| チェック項目 | □ |
|---|---|
| 11. 待ち時間が長い患者に、状況を確認して声をかけている | □ |
| 12. 忙しさを理由に、患者への説明や対応を省略していない | □ |
| 13. 苦情を受けた際、感情的にならず冷静に話を聞いている | □ |
| 14. 自分だけで解決できない問題は、適切な責任者に相談している | □ |
| 15. 患者を急かすような言動をしていない | □ |
院長の見えない場所での接遇
| チェック項目 | □ |
|---|---|
| 16. 院長や上司が見ていない場面でも、丁寧な対応を続けている | □ |
| 17. 患者の前で、不満や否定的な発言をしていない | □ |
| 18. スタッフ同士の会話が患者に不快感を与えないよう配慮している | □ |
| 19. 患者からの質問や依頼を、面倒そうに扱っていない | □ |
| 20. すべての患者に対して、分け隔てなく接している | □ |
プライバシー・患者への配慮
| チェック項目 | □ |
|---|---|
| 21. 患者の個人情報を、周囲に配慮せず話していない | □ |
| 22. 待合室や受付での会話が、ほかの患者に聞こえないよう配慮している | □ |
| 23. 患者の身体的・精神的な状況を考慮した対応をしている | □ |
| 24. 患者を年齢や病状、外見などで判断していない | □ |
| 25. 患者の尊厳を守る姿勢を持っている | □ |
チェックリストを運用する際の注意点
チェックリストは、スタッフを監視したり、減点したりするためだけのものではありません。目的は、スタッフ自身が日々の接遇を振り返り、患者への対応を改善することです。
そのため、次のような運用がおすすめです。
-
毎朝、1~2分程度で確認する
-
毎日すべての項目を細かく評価しすぎない
-
週ごとに重点テーマを設定する
-
接遇に関する気づきをスタッフ間で共有する
-
改善が必要な場合は、具体的な行動を伝える
-
患者からの意見や苦情も、改善の材料として活用する
なお、自己評価だけでは実際の患者対応を十分に把握できないため、管理者による観察や患者アンケートなども組み合わせると、より多面的な確認につながります。
よくある質問
続いては、医療接遇に関連する、よくある質問とその答えをみていきます。
Q. 患者から苦情がなければ、接遇に問題はないと考えてよいですか?
いいえ。苦情がないことと、患者が満足していることは同じではありません。不満があっても、スタッフに直接伝えることをためらったり、「言っても改善されない」と諦めたりする患者もいます。そのまま何も言わずに別の医療機関へ移るケースも考えられます。
アンケートや意見箱などを活用して、患者の声を積極的に確認することが大切です。
Q. 患者アンケートでは、どのような質問をすればよいですか?
患者が回答しやすいように、具体的な質問を設定します。
-
受付スタッフの対応はいかがでしたか?
-
スタッフの説明はわかりやすかったですか?
-
待ち時間について説明がありましたか?
-
不安や疑問を相談しやすい雰囲気でしたか?
-
スタッフの言葉遣いや態度に不満はありませんでしたか?
-
今後も当院を利用したいと思いますか?
-
改善してほしい点はありますか?
また、匿名で回答できる仕組みにすると、率直な意見を集めやすくなります。
Q. 接遇の悪いスタッフを指導すれば、患者離れは防げますか?
指導は重要ですが、個人への注意だけでは改善しない場合があります。
接遇の悪さの背景に、次のような組織上の問題が隠れていることもあります。
-
慢性的な人手不足
-
業務量の偏り
-
待ち時間の長さ
-
接遇ルールの不明確さ
-
スタッフ間の連携不足
-
管理者によるフォロー不足
個人の態度だけを責めるのではなく、働く環境や業務の仕組みも確認することが大切です。
Q. 患者が離れていることを、どのように把握できますか?
次のようなデータや情報を確認します。
ただし、患者数の減少には、診療内容、立地、競合医療機関、季節要因なども影響します。接遇だけが原因だと決めつけず、複数の要因を確認することが重要です。
Q. 患者が離れない医療機関にするため、院長が最初に取り組むべきことは何ですか?
まずは、院長が現場の実態を把握することです。
院長が考える「問題のない接遇」と、患者が実際に受けている対応には、差があるかもしれません。
患者の声を集め、受付や待合室の様子を観察して、スタッフからも意見を聞きましょう。そのうえで、接遇の基準を具体的に示して、朝礼やチェックリストを活用して継続的に改善します。
Q. 患者から何度も同じ質問をされたら、どう対応すればよいですか?
A. 面倒そうな態度を見せず、患者が理解できるように説明することが大切です。
患者が同じ質問を繰り返す背景には、「説明が十分に理解できていない」「不安を感じている」「聴力や認知機能などに配慮が必要である」などの要因が潜んでいる可能性があります。
「先ほども説明しました」と突き放すのではなく、必要に応じて説明方法を変えたり、担当者に確認したりすることが大切です。
Q. 患者からの苦情には、いかなる場合も謝罪すべきですか?
A. まずは患者の話を落ち着いて聞き、状況を確認することが大切です。
苦情を受けた際に、すぐに反論したり、責任を否定したりすると、患者の不満がさらに強まる可能性があります。まずは話を遮らずに聞き、必要に応じて「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」と気持ちに配慮した言葉をかけます。
そのうえで、事実関係を確認して、スタッフが自分だけで判断できない場合は責任者に相談するという流れを、スタッフ全員で共有しておくことが大切です。
Q. 患者に対して、いつも笑顔で接する必要がありますか?
A. 笑顔は大切ですが、常に笑顔であることだけがよい接遇ではありません。
患者が痛みや不安を抱えているときなど、明るすぎる対応が適切でない場合もあります。
大切なのは、患者の状況に合わせた表情や声のトーン、言葉遣いです。「丁寧に話を聞く」「相手の気持ちに配慮する」「必要な情報をわかりやすく伝える」といった行動も、重要な接遇の一部です。
受付やスタッフの医療接遇の改善・強化は継続的に取り組むことが大切
医療接遇の悪さは、患者の不満や不信感につながり、通院中断や他院への変更を招く可能性があります。しかし、患者が離れている原因は、苦情や患者数だけでは判断できません。院長の目が届きにくい場面も含めて現場を確認して、アンケートやヒアリングを通じて患者の本音を把握することが大切です。接遇改善では、スタッフ個人の指導だけでなく、待ち時間や業務量、情報共有などの環境面も見直して、継続的に取り組みましょう。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
