「医師」とひと口に言っても、雇用されている「勤務医」なのか、個人事業主に当たる「開業医」※なのかで違いがあります。今回はその違いについてご紹介します。
※クリニックを医療法人にして、その法人に雇用されているという形態をとる開業医もあります。
「医師」とひと口に言っても、雇用されている「勤務医」なのか、個人事業主に当たる「開業医」※なのかで違いがあります。今回はその違いについてご紹介します。
※クリニックを医療法人にして、その法人に雇用されているという形態をとる開業医もあります。
勤務医の年収と開業医の年収の比較
まず最も気になる収入の差異を令和元年に公表された『厚生労働省』の「第22回 医療経済実態調査」で確認してみます。
病院勤務医 | 平均年収 1,328万円 |
開業医 | 平均年収 2,755万円 |
参照・引用元:『厚生労働省』「第22回 医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」
開業医の年収は病院勤務医の「約2.1倍」あります。ただし、これは勤務医の雇用主を「病院」という大きな枠で見たときの差異です。では、より小規模な診療所で比較するとどうなるでしょうか?
以下は厚生労働省のデータを参照し『クリニック開業ナビ』で制作した、一般診療所における「クリック院長」「医師」の年収の比較データです。
一般診療所(入院診療収益あり) | 院長 | 約3,455万円 |
---|---|---|
医師 | 約1,208万円 | |
一般診療所(入院診療収益なし) | 院長 | 約2,691万円 |
医師 | 約1,015万円 | |
一般診療所 全体 | 院長 | 約2,756万円 |
医師 | 約1,048万円 |
診療所の院長を個人事業主で「開業医」と見るなら、勤務医との収入の差はさらに拡大します。入院診療収益のある有床クリニックでは「約2.9倍」、無床クリニックでは「約2.7倍」になります。
つまり、勤務医と開業医の収入は総じて2倍の差があるのですが、小規模な無床のクリニックになると勤務医と開業医(院長)の差は約2.7倍に広がるのです。
年齢別医師の平均年収
さらに詳しく年齢階級別に収入を見てみましょう。『厚生労働省』の「令和元年賃金構造基本統計調査」から医師の平均年収のデータを抜き出してみました。以下になります。
年齢・性別毎の平均年収 | 男性医師 | 女性医師 |
---|---|---|
24歳 | 413.8万円 | 376.1万円 |
25~29歳 | 557.6万円 | 529.4万円 |
30~34歳 | 759万円 | 839.6万円 |
35~39歳 | 1062.3万円 | 935.7万円 |
40~44歳 | 1193.8万円 | 1135.7万円 |
45~49歳 | 1463.1万円 | 1224.6万円 |
50~54歳 | 1640.8万円 | 1637.2万円 |
55~59歳 | 1655万円 | 1424.9万円 |
60~64歳 | 1768.4万円 | 1190.6万円 |
65~69歳 | 1577.1万円 | 1399.9万円 |
70歳~ | 1492.3万円 | 990.4万円 |
医師は40歳を超えると男女共に年収が1,000万円を超えます。注目していただきたいのは、男女間の年収格差です。唯一、30~34歳の年齢階級でのみ女性医師の年収が男性医師を上回っていますが、それ以外では男性医師の方が年収は上です。各年齢階級の差を平均すると、女性医師は男性医師の「88.3%」の年収になっています。
参照・引用元:『厚生労働省』「令和元年賃金構造基本統計調査」
3人に1人は開業医へ
『厚生労働省』の「平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」では、総医師数、診療所の数は以下のようになります。
2018年度
総医師数 | 32万7,210人 |
診療所総数 | 10万2,105施設 |
やや強引な推測ではありますが、診療所の数だけ「医師・クリニック院長」がいるとすれば、「10万2,105人/32万7,210人」でほぼ3人に1人は開業医ということになります。
参照・引用元:『厚生労働省』「平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
参照・引用元:『厚生労働省』同上「統計表」
「勤務医」「開業医」のメリット・デメリット
収入は開業医の方が上ですが、勤務医には勤務医のいいところもあります。双方のメリット・デメリットはなんでしょうか。まずは勤務医です。
勤務医のメリット
- ・雇用の安定
- ・病気やけがで働けなくなった場合は保障が受けられる
勤務医のデメリット
- 開業医に対して収入が劣る
- 異動させられる可能性がある
勤務医の場合、雇用されていますので職業として安定しています。サラリーマンと同じく厚生年金、雇用保険など社会的なセーフティーネットの保障を受けることができます。ただし、サラリーマンと同じく異動を命じられることがあり、その場合には雇用者の指示に従わなければなりません。
勤務医の最大のデメリットは開業医に比べて収入が低いことです。ただし、これは開業医のようにクリニック全体の心配をしなくてもいいという、ある意味気楽な立場であることとのトレードオフであるともいえます。
次に開業医のメリット・デメリットです。
開業医のメリット
- 収入が約2倍に
- 自分の裁量で働ける
- 勤務医ではできない独自の診療スタイルを発揮できる
開業医のデメリット
- 集患・増患を自ら行わなければならない
- 経営者としての資金負担の発生
- 従業員の労務管理を行う
開業医は、いわば一国一城の主ですので何もかもを自分の裁量で実行できます。もうかっているなら給料も自分の好きなだけ取れますし、独自の診療スタイルを貫くことも可能です。しかし、開業医のデメリットもこの一国一城の主であることに尽きるのです。
開業医は、何もかもを自分で判断しなければなりません。医師として治療だけに専念することはできず、経営にも責任を持つ必要があります。例えば、集患・増患を行う、人を雇用して労務管理を行うといったことが全部自分の責任になるというわけです。面倒くさいことを全部引き受けるから収入が高いともいえるのです。
まとめ
勤務医と開業医を比較すると、年収では圧倒的に開業医の方が上です。また、開業医の場合には全てを自分の思うとおりに動かすことが可能です。しかし、勤務医なら仕事には入ってこない「経営」に関わる全部が両肩にずっしりとのしかかってきます。経営者と医師を兼ねるというのは大変な仕事です。しかし、今や医師の3人に1人が開業医の時代。10万人以上の医師・クリニック院長がこの一人二役をこなしながら日々医療の現場で戦っているのです。
特徴
対応業務
その他特徴
診療科目
この記事は、2021年3月時点の情報を元に作成しています。