日本は、全ての国民が健康的な生活を送れるよう「国民皆保険制度」を取っています。しかし、医師が近くにいないために社会保険診療を受けられないとすれば、公平とはいえません。そのため『厚生労働省』では、医師のいない「無医地区」、歯科医のいない「無歯科医地区」についての調査を行っています。
日本でどのくらい「無医地区」「無歯科医地区」があるのかご存じでしょうか?
「へき地医療」を考える上での基礎資料
『厚生労働省』は「無医地区」を以下のように定義しています。
- 中心的な場所からだいたい半径4km圏内に50人以上が居住している地区
- かつ、容易に医療機関を利用できない地区
この場合の医療機関は病院および一般診療所を指します。
ただし、診療日の多少にかかわらず定期的に診療が行われていれば「無医地区」にはなりません。診療所があっても休診届けが出されている場合は「無医地区」になります。
参照・引用元:『厚生労働省』「無医地区等調査:調査の概要」
『厚生労働省』がこの「無医地区」「無歯科医地区」の調査を3周期で行っている理由は、へき地医療を考えるための基礎資料とするためです。
「無医地区」「無歯科医地区」は激減した
『厚生労働省』は、2019年に行った最新の調査の結果を2020年5月29日に出しています。
まず、以下が「無医地区」のデータです。
※人口は左に目盛り、地区数は右の目盛り
1978年の「地区数:1,750」「人口:50万4,819人」から、2019年の「地区数:601」「人口:12万8,392人」まで、「無医地区」が減少しました。ただし、前回調査の2014年から地区数は減少したものの、人口は増加しています(3.4%増加)。
次に「無歯科医地区」のデータです。
※人口は左に目盛り、地区数は右の目盛り
1978年の「地区数:2,795」「人口:114万2,004人」から、2019年の「地区数:775」「人口:17万7,176人」まで、「無歯科医地区」は激減しました。
ただし、地域によってこの減少にも差異があります。都道府県別に見ると、「無医地区」「無歯科医地区」が増加したところもあるのです。
「無医地区」の増加した都道府県Top5
1位 | 鹿児島県 | 383.3% |
---|---|---|
2位 | 岐阜県 | 160.0% |
3位 | 秋田県 | 133.3% |
4位 | 島根県 | 119.0% |
5位 | 静岡県 | 115.4% |
※「%」は前回調査(2014年)からの増加を示す(今回調査数/前回調査 × 100%):以下同
「無歯科医地区」の増加した都道府県Top5
1位 | 奈良県 | 169.2% |
---|---|---|
2位 | 三重県 | 166.7% |
3位 | 兵庫県 | 135.7% |
4位 | 群馬県 | 133.3% |
5位 | 静岡県 | 131.3% |
「無歯科医地区」増加のTop3は、なぜか奈良・三重・兵庫と近畿の県で占められました。この「無医地区」「無歯科医地区」が増加している地域には人口の減少と面積、地形が影響しているものと考えられます。例えば、急峻な地形で診療所のある地域と途絶している、人口減少によって採算が合わず交通機関が使えなくなったなどの原因で「無医地区」「無歯科医地区」になることがあり得ます。
特に人口の減少への対応は大きな課題です。
2015年と2020年の都道府県別人口を比較すると、人口が増加しているのは「東京都」「神奈川県」「埼玉県」「千葉県」「愛知県」「福岡県」「沖縄県」だけです(同じ10月1日での比較)。
2019年までは「無医地区」「無歯科医地区」は減少を続けてこられましたが、この先また増加に転じないとも限りません。識者からは「コンパクトシティ」建設などが提唱されていますが、医療の現場でも「医療の質の公平性」を担保するためになんらかの施策が求められるかもしれません。
参照・引用元:『厚生労働省』「令和元年度無医地区等及び無歯科医地区等調査の結果を公表します」
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2021年4月時点の情報を元に作成しています。