クリニック開院とともに「医師会」に入るかどうか悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「医師会」は任意加入団体であるため、入会するかどうかは医師の意思次第です。入会しなくても特に問題はないかもしれませんが、入会することによるメリットもあります。
今回は、医師会に入会するメリット・デメリットについてご紹介します。
「医師会」とは?
「医師会」は、医師であれば入会可能な職能団体で、「医道の高揚、医学及び医術の発達並びに公衆衛生の向上を図り、社会福祉を増進すること」を目的にしています(『日本医師会』の「目的」より)。
また、医師同士の親睦を深めて連携、情報共有を可能とするとともに、行政からの指導などを医師に周知する役割を果たしています。
ただし、任意加入団体であるので医師だから必ず入らなければならないということはありません。この点が、弁護士なら必ず加入しなければならない「日本弁護士連合会」といった強制加入団体との違いです。任意加入であるため、「医師会」に加入している医師は医師総数の6割程度といわれています。
「医師会」は三層構造になっており、「医師会」には地域ごとに設立されている「郡市区医師会」、都道府県別の「都道府県医師会」、さらに『日本医師会』があります。
この3つは異なる団体ですが、『日本医師会』に入会するには「都道府県医師会」の会員でなければならず、「都道府県医師会」に入会するためには「地区医師会」の会員でなければなりません。
そのため、医師会への入会についてはまず「郡市区医師会」に入る必要があります。しかし、やはり中には医師会に加入しない医師がいることも事実。
その理由については、以下のようなものがあるようです。
医師に聞いた「医師会」に入会しない理由
医師が医師会に入会しない理由としては以下のようなことが挙げられます。
メリットがない
医師会に入会してもしなくても患者数や年収が変わらないことが予想されるなら、メリットがないと感じてしまうこともあるかもしれません。
また、十分に集患できていたり、年収が予想されていたりするなら、「入会しなくても困ることはない」と思うようです。
入会金・会費が高い
医師会の年会費については後述しますが、クリニックの開設者であればそれなりに年会費がかかります。また、入会金は医師会によって異なりますが、新規開業時の入会であれば、おおむね数10万~100万円単位です。
自院のエリアの医師会入会金が100万円を超えるとなると、躊躇してしまう場合もあるでしょう。
医師会の活動内容がわからない
医師会の会員になったところで、どんなことをすることになるのかがわからないという人も多いでしょう。
もちろん、なんとなくは知っていて当然ですが、自院が立地しているエリアの医師会の活動方針に関しては把握していない場合も珍しくなく、かつ調べる時間も惜しいなどが原因にはありそうです。
人間関係が煩わしくなるのがイヤ
医師会に入会すると、付き合わなければいけない人が増えます。人づきあいが苦手なドクターなら、そのことを一番のネックと感じる場合もあるでしょう。
また、医師会によっては、人間関係がよくないところもあるかもしれません。
自院のことで手一杯で余裕がない
開業に向けての準備をはじめ、自院のことで手一杯だと、人間関係のことだけでなく、他のことを考える余裕がない場合もあるでしょう。
……と、このように、入会しない理由をご紹介しましたが、医師会に入会することには以下のようなメリットがあるのです。
「医師会」に入会するメリット
予防接種や各種検診・健診の受託が可能
「郡市区医師会」は最も地域に密着した医師会で、予防接種や検診などを受託しています。
そのため、医師会に入会していると、行政から受託したそれらの業務を自院に振り分けてもらい、実施することが可能です。これはクリニックの経営を助けます。
宣伝のチャンスが増える
検診や予防接種の会場で、医療を受けた人やその家族と親睦を深めることで、自院を知ってもらうことができます。
また、その際に「いい先生だな」と思ってもらえたら、集患・増患につながる可能性も高いでしょう。
医療関係の情報を入手しやすい
行政からの医療情報、厚生労働省の通知、保健所からの食中毒・感染症の発生情報などは医師会を通じて周知されます。
そのため、上記のような事態になったとき、早い段階での対応が可能(≒地域の助けになれる、集患にもつながる)です。
そのほか、医師会に入っていると地域の他院の医師とのつながりを持つことができます。医師・クリニック院長というのは孤独な仕事ですので、このつながりは非常に有用といえます。
「医師賠償責任保険制度」と「医師年金制度」が利用できる
また、「医師会」の会員になれば「日本医師会医師賠償責任保険制度」が利用できます。これは、医療事故などの訴訟リスクに備えるものとして、クリニック院長にとってのメリットといえるでしょう。
対象となる事故
医療行為によって生じた身体の障害につき損害賠償を請求され、その請求額が100万円を超えるもの
支払限度額
損害賠償金の年間総支払限度額(最高限度額)は、1事故1億円、保険期間中3億円
免責金額
1事故 100万円(同一医療行為について)
参照・引用元:『日本医師会』「日本医師会医師賠償責任保険制度」
日本医師会が会員の訴訟リスクに備えて事業として行っており、個別加入は不要です。
「医師会」の会費にはこの保険料が含まれています。加入していればいざというときに「医師会」の専門スタッフ、弁護士の支援が仰げます。
また、『日本医師会』は「医師年金制度」を運営しており、これに加入できることもメリットの1つに挙げられます。
参照・引用元:『日本医師会』「日本医師会について」
医師会に加入するデメリットとは?
クリニック院長にとってはメリットも大きい「医師会」ですが、デメリットとしては以下のような点が挙げられます。
h3 入会金・年会費が必要
まず挙げられるのは、入会金・年会費がかかることです。
「郡市区医師会」「都道府県医師会」など、各地区・都道府県によって会費は異なりますが、『日本医師会』の会費は以下のように定められています。(平成30年度から改定)
参照・引用元:『日本医師会』「日医医賠責保険料引き下げに伴う日本医師会会費の改定について」
クリニック院長の場合には「診療所の開設者、管理者およびそれに準ずる会員」に当たるので、上記でいえば「A①」となり、年額「12万6,000円」です(このうち6万6,000円が「医師賠償責任保険」の保険料)。
三層構造になっている全ての「医師会」に入会するとかなりの出費になります。
また、先に述べた通り、入会金は数10万円〜数100万円であることが多いようです。
金銭的な理由で入会を躊躇しているなら、まずは「入会金+年会費以上の価値があるのか」を考えるために、予防接種や検診の仕事を受けたとして、いくらの年収がプラスされるのかをおおまかな数字で計算してみてもいいかもしれません。
自院の業務の差支えとなる場合がある
「医師会」に入会すると、輪番制で当番医として稼働したり、講演会運営などを手伝わされたりすることがあります。その時間は自院の仕事はできません。
医師会のメリット・デメリットを比較して選択しよう
恐らく、新しく開院するクリニックの院長にとって最大のネックは入会金・会費でしょう。
ただ、「予防接種や各種の健診・検診の受託」というクリニックの経営にとって大変助かるメリットは入会しなければ得られません。コストとメリットをてんびんにかけて入会を判断するといいかもしれませんね。
ただし、新しくクリニックを開院したら「郡市区医師会」には、入会する意思の有無にかかわらずあいさつに出向くことをおすすめします。後になって入会したくなってから行くと驚かれたりすることもあるようですので……!
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
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対応業務
その他の業務
診療科目
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その他の業務
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診療科目
この記事は、2021年4月時点の情報を元に作成しています。