医者の休みが多い診療科は?効果的に休みを増やす方法

医師の働き方改革が求められる中、医師の勤務時間の短縮や休みを確保することは非常に重要な課題です。休みが多い診療科について理解することや休みを取りやすくすることは、就労環境の改善に役立ちます。
本コラムでは、医者の休みが多い診療科や効果的に休みを増やす方法について解説し、医師が直面するお悩みの解決を目指しています。

目次
  1. 医師が休みを多く取れる診療科とは?
    1. データから見る休みを取りやすい診療科
      1. 調査結果の概要
      2. その他の調査結果の概要
      3. 休みが多い診療科の特徴
  2. 医師の休みを多くするための方法論と実体験
    1. タスクシフトとは
    2. タスクシェアとは
    3. 若草第一病院におけるタスクシフト・タスクシェアの好事例
      1. タスクシフト事例:医師事務作業補助者の配置
      2. タスクシェア事例:特定行為研修修了看護師の活用
  3. 医師が休みを取りやすい勤務先とは?
    1. 無床クリニック
    2. 産業医や公衆衛生医
    3. 外来や健診がメインの医療機関
  4. 医師自身が休みを増やすために
    1. 開業による自由な時間の確保
      1. 開業のメリットとデメリット
      2. 成功した開業医の事例
  5. まとめ

医師が休みを多く取れる診療科とは?

データから見る休みを取りやすい診療科

独立行政法人労働政策研究・研修機構の
「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によれば、医師の勤務環境や休暇取得状況には診療科によって大きな差が見られます。前提とし、この調査は「病院(医療施設)と雇用関係にある勤務医」に対して実施され、「自ら病院を営んでいる経営者」(開業医など)は対象外とされています。
また、この調査では、産科・婦人科や精神科は比較的休みが多い一方で、救急科は労働時間が長く休みが少ない傾向がありますが、産科・婦人科は勤務医か開業医かによって休みの取りやすさは大きく異なりますのでご留意ください。
医師がどの診療科で働くかを選ぶ際の参考になりますので、概要をご紹介いたします。

調査結果の概要

この調査によると、年次有給休暇の取得日数が多い「7 日以上」の割合を診療科別に見ると、「産科・婦人科」と「精神科」が35.4%と最も割合が高く、次に「麻酔科」が33.4%、「放射線科」が29.9%、「眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科」が28.8%となっています。

参考|独立行政法人労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」

また、当直(日直、宿直)に関しても調査されており、1か月間の平均的な「日直なし」の割合を診療科別に見ると「放射線科」が最も高く60.5%、「眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科」は47.8%、「麻酔科」は46.4%と高くなっています。「宿直なし」の割合は、「放射線科」が最も高く59.6%、「麻酔科」は43.1%、「眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科」は41.2%と高くなっています。一方で「救急科」については、1か月の内1回以上「当直がある」可能性が高いことが読み取れます。

参考|独立行政法人労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」

その他の調査結果の概要

休みの取りやすさは、有休休暇取得日数や当直数だけでなく勤務時間の影響も受けます。厚生労働省の第9回 医師の働き方改革の推進に関する検討会の

「医師の勤務実態について」によると、週当たり労働時間では「外科」が最も多く61時間54分、次に「脳神経外科」で61時間52分、「救急科」で60時間57分となっています。一方で最も少ないのは「精神科」で47時間50分、次に「リハビリテーション科」で50時間24分、「眼科」で50時間28分となっています。

参考|独立行政法人労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」

休みが多い診療科の特徴

休みが多い診療科には共通の特徴があります。一般に、外来のみを担当する診療科や手術の頻度が少ない診療科は、労働時間が短くなる傾向があります。また、これらの診療科では当直やオンコールの頻度も低いため、医師がプライベートの時間を確保しやすい環境にあります。こういった要素により、医師が休みを取りやすくなっています。

医師の休みを多くするための方法論と実体験

医師の働き方改革を踏まえて、労働時間を短縮するため、休みを多くするために、タスク・シフト/シェアが重要とされ、厚生労働省ではタスク・シフト/シェアが推進されています。以下にタスク・シフト/シェアの考え方や実際の医療機関での事例を紹介します。

タスクシフトとは

タスクシフトは、医師から他の医療職種へ業務を移管することをいいます。医師が行っていた事務作業や一部の医療処置を、専門のスタッフに移行することで医師の負担を軽減します。タスクシフトにより、医師はより専門的な診療や治療に専念できる時間が増え、質の高い医療提供が可能になります。また、医師の負担が軽減されることで、休暇取得の機会も増え、働きやすい環境が整います。

タスクシェアとは

タスクシェアは、医師同士が業務を分担することや、他の医療職種と業務を分担することをいいます。こちらも医師の負担を軽減し、休みを増やすための効果的な方法です。医師同士が協力して業務を分担することで、一人の医師に過度な負担がかかるのを防ぐことができます。さらに、看護師や薬剤師など他の医療職種との連携を強化することも重要です。タスクシェアにより、医師が直接関与しなくても良い業務を他職種に任せることで、医師の負担を軽減し、休暇を取りやすくなります。

若草第一病院におけるタスクシフト・タスクシェアの好事例

タスク・シフト/シェアに関しては厚生労働省が運営する「いきいき働く医療機関サポートWeb(通称:いきサポ)」にて好事例が共有されています。本コラムでは若草第一病院における事例を紹介します。

タスクシフト事例:医師事務作業補助者の配置

若草第一病院では、医師の事務作業を医師事務作業補助者にタスクシフトすることで、医師の業務負担を軽減しました。具体的には、電子カルテの代行入力、診断書などの医療文書作成、診療データの登録・報告などを医師事務作業補助者に移管しました。これにより、医師は患者ケアに集中でき、医療の質が向上し、患者との時間が増えました。また、医師事務作業補助者に対する教育・研修体制も整備されており、職務のやりがい向上に繋がっています。

参考|厚生労働省:いきサポ「医師業務をタスクシフト/タスクシェアした事例(若草第一病院)」

タスクシェア事例:特定行為研修修了看護師の活用

若草第一病院では、特定行為研修修了看護師を活用して医師の業務をタスクシェアしました。特定行為研修を修了した看護師が、創傷管理、褥瘡処置、PICC(末梢挿入型中心静脈カテーテル)挿入などの医師業務を分担し、医師の業務負担を軽減しています。これにより、医師は専門性の高い業務に専念でき、看護師もその専門知識を活かして患者に迅速かつ適切なケアを提供できるようになりました。この取組は、患者の「医師待ち」状態を解消し、より効率的な医療提供を可能にしています。
参考|厚生労働省:いきサポ「医師業務をタスクシフト/タスクシェアした事例(若草第一病院)」

医師が休みを取りやすい勤務先とは?

医師が休みを取りやすい勤務先を選ぶことも重要です。以下に、比較的休みがとりやすい勤務先の例を挙げますのでご確認ください。

無床クリニック

無床クリニックは、入院患者を持たないため、医師の労働時間が比較的短く、休みを取りやすい環境です。外来診療のみを行うことで、緊急対応や夜間の呼び出しが少なくなります。これにより、医師が計画的に休暇を取得しやすくなります。

産業医や公衆衛生医

産業医や公衆衛生医は、勤務時間が安定しており、定期的な休暇を取りやすい職種です。企業内の健康管理や地域の公衆衛生活動に従事することで、医師の負担を軽減し、プライベートの時間を確保しやすくなります。

外来や健診がメインの医療機関

外来や健診がメインの医療機関も、休みを取りやすい環境を提供します。これらの施設では、手術や入院管理がないため、医師の労働時間が短くなります。また、勤務時間が規則的であるため、計画的な休暇取得が可能です。

医師自身が休みを増やすために

医師自身が休みを増やすためには、休みの多い診療科に転科するという方法もありますが、開業による自由な時間の確保も一つの方法です。

開業による自由な時間の確保

開業することで、勤務時間を自分で管理できるため、自由な時間を確保しやすくなります。開業のメリットとデメリットを理解し、成功事例を参考にしてください。

開業のメリットとデメリット

開業のメリットとしては、勤務地や勤務時間や診療スタイルを自分で決められることが挙げられます。これにより、プライベートの時間を確保しやすくなります。一方、デメリットとしては、経営や集患に関する責任が増えることがあります。しかし、このデメリットは適切なサポートを受けながら開業することで、軽減することができます。

成功した開業医の事例

成功した開業医の事例を見ると、強力なサポート体制が重要であることが分かります。開業時には事業計画の策定、土地や物件の選定、資金調達、内装設計、医療機器選定、スタッフの募集と採用、Webサイト作成、行政機関への各種届出といった、多くの対応をする必要があります。早期に信頼できる専門家を見つけることが成功の鍵です。ホームページを検索したり、オンラインセミナーに参加したり、開業医の先輩医師に相談してみたり、情報収集の方法は多種多様です。ご自身に合う専門家を探しましょう。

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まとめ

本コラムでは、「医者の休みが多い診療科は?効果的に休みを増やす方法」というテーマで詳しく解説しました。データから読み取れる診療科の特徴やタスク・シフト/シェアの好事例から開業による自由な時間の確保など、様々なアプローチがあります。これらの知識をご活用いただき、より良い労働環境になれば幸いです。次回は、労基署に通報されてしまった場合の対応や法令違反となってしまう対応について掲載いたします。是非ご確認ください。

診療や経営に専念できる環境づくり、労務管理のプロとして経営を徹底サポート

特徴

わたしたちはドクターの皆様の声に耳を傾け、人に関する法律のスペシャリストとして 「職員の労働トラブルに関するアドバイス」、「院内ルール作成」等を得意とする社会保険労務士事務所です。 人事労務に関する相談サポートにより、診療や経営に専念して頂く事が可能です。 診療所特有の人事労務相談は専門家でなければ適切なアドバイスはできません。弊社はこれまでの実績により的確なアドバイスを行い、労務管理をサポートします。

対応業務

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診療科目

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高橋友恵

執筆 社会保険労務士法人アミック人事サポート代表社員/社会保険労務士/医療労務コンサルタント | 高橋友恵

2004年アミック労務管理事務所を開設。2010年に株式会社日本医業総研にて人財コンサルティング部マネージャーとして人事コンサルティング・接遇講師・院内業務改善コンサルティング等を実施後、2016年に社会保険労務士法人アミック人事サポートを設立。医療機関特有の人事労務に精通し、これまで350件の関与実績がある。


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