クリニックでは、午前と午後の診察の間に昼休みを設けるのが一般的です。食事を取るなど休憩したり、雑務を片付けたりとクリニックを維持するために大切な時間です。しかし、最近は「昼休みなしで診察するクリニック」が増えています。昼休みの時間を診察時間に充てることで、より多くの患者さんと向き合えるといいますが、導入するのはそう簡単ではないでしょう。今回は、昼休みなしで診察を行う場合のポイントをまとめてみました。
患者さんのためにはなるものの
昼休みなしで診察を行うメリットは、やはり診察時間が増やせることです。例えば、午前の診察終了が12時で、午後の診療が14時半からという場合。昼休みをなくせば、診療時間は2時間半も延ばせます。延ばせばそれだけ診察する患者さんが多くなり、クリニックの収入が増える、患者さんも診てもらえる機会が増えるといいことばかりです。
また、昼休みなしで診察する場合、社会人が昼休憩の間に診てもらえるようになるのも大きいでしょう。平日は仕事前や仕事終わりに行くのが難しいという社会人は多く、これが原因で病院になかなか行けない(行かない)ケースは多々見られます。昼休みなしのクリニックであれば、昼休憩の時間に予約しておき、診察してもらうことも可能です。
ニーズ次第ではありますが、昼休みなしで診察することは集患に影響します。「あのクリニックは昼も診てもらえる」という口コミが広がり、これまで以上に患者さんが来院する可能性があります。
一方で、昼休みなしの診察はデメリットもあります。まずは疲労の問題です。中には院長一人で朝から夜まで昼休みなしで診察を続け、元日以外は休まないという驚異的なクリニックもありますが、誰もが同じようにできるわけではありません。患者さんの役に立つとはいえ、昼休みなしで朝から診察終了まで仕事を続けるのは厳しいものです。たとえ医師が「私一人でも患者さんを診続けられる」と言ってもいつかは限界が訪れます。
また、昼休みなしにする場合は、その時間をカバーするために受付や事務スタッフを増やす必要もあります。その分の人件費もネックでしょう。昼休みなしで診察するといっても、患者さんが来ないと意味がありません。体制構築のために医師やスタッフを増やしたのに患者さんが少ないとなれば、コストがかさむばかりです。ニーズをしっかり把握することが重要です。
無理なく診察を続ける工夫が必要
昼休みなしの診察を導入しているクリニックは実際にどのような工夫をしているのでしょうか? 規模の大きなクリニックでは、交代制にすることで医師の負担を減らしつつ、昼休みなしでの診察を実現しているところが多くあります。ただ、開業医の場合はいきなり多くの医師を雇い、大規模なローテーションを組むのは難しいものです。また、こうした規模の大きなチームをつくるのは、先述のように患者さんが少ない場合はデメリットになります。
開業したばかりなど、小規模のクリニックで多いのが「診察終了時間を早くする」という工夫です。昼休みを取らない分、診察終了時間を16時にするなど短くすることで負担を減らし、雑務を行う時間を確保します。夕方以降の遅い時間に診てもらいたい人は診察できなくなりますが、朝7時半や8時と早い時間から診察を始めて患者数をカバーするクリニックもあります。
また、「昼休みなしは月、火、水」など、常時昼休みなしで診察を行うのではなく、曜日を限定するのも一つの方法です。最初は限定的にスタートし、ニーズや体制が整うに従って昼休みなしで対応できる日を増やすという方法ならリスクも少ないでしょう。ほかにも、昼休みなしで診察を行う場合は予約管理が難しくなります。予約診察システムを導入して、管理をスムーズにするのも工夫の一つです。
昼休みなしでの診察は、患者さんにとっては診察機会の増加になり、クリニックにとっても収益の増加や他クリニックとの差別化が図れるなどメリットが多くあります。昼休みなしで診察を行うことを考えている開業医の皆さんは、診察時間を工夫するなど、無理のない体制を整えるよう意識してください。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2021年4月時点の情報を元に作成しています。