インターネットで何でも買える時代になり、海外からもさまざまなものが購入できるようになりました。例えば、個人の場合は、特定の条件下であれば薬の購入(輸入)も可能です。ただし、薬の個人輸入はトラブルも多いため、購入前にクリニックに相談するケースも少なくありません。そこで今回は、相談を受けた際の参考になるよう、医薬品の個人輸入に関する規約をまとめてみました。
個人輸入可能なケース
営業を目的に、医薬品や医薬部外品、医療機器などを海外から輸入するには、厚生労働大臣の承認・許可が必要です。自らが利用するために個人輸入する場合でも、地方厚生局に必要書類を提出し、「営業のための輸入でないことの証明」を受けることが原則必要となります。
しかし、以下の条件を満たす医薬品・医薬部外品は、地方厚生局に書類を提出する必要はなく、税関の確認を受けた上で個人輸入することが可能です。
- 外用剤(毒薬、劇薬及び処方箋薬を除く。):標準サイズで1品目24個以内
- 毒薬、劇薬または処方箋薬:用法用量からみて1カ月分以内
- 上記以外の医薬品・医薬部外品:用法用量からみて2カ月分以内
医薬品の中には「数量に関わらず厚生労働省の確認が必要」なものもあり、該当する薬品は、上記の用量内であっても個人輸入はできません。
数量に関わらず厚生労働省の確認が必要な医薬品は、以下のページでまとめられています。
厚生労働省「数量に関わらず厚生労働省の確認を必要とするもの」
輸入可能な数量は?
コンタクトレンズを海外から購入している人も多くいますが、コンタクトレンズも医療機器に該当するため、個人輸入には制限がかけられています。例えば、コンタクトレンズは「使い捨て医療機器」として扱われ、2カ月分以内の場合のみ、税関の確認を受けた上で個人輸入することが可能。これ以上の数量である場合は届け出が必要になります。同様に体外用診断薬も2カ月分が上限となっています。
2カ月分というのは、箱数ではなく内容量で算出しており、算出方法について、厚生労働省では以下のような例を挙げています。
1.1日3回2錠服用する錠剤の2カ月分数量
(2錠×3回)×30日×2カ月=360錠まで2カ月分の用量とみなします
2.2日間使用可能な使い捨てコンタクトレンズの2カ月分数量
(30日×2カ月)÷2日分=30ペアまで2カ月分の個数とみなします
個人輸入は、あくまでも購入者自身が個人的に使用することが目的である場合に認められます。そのため、個人輸入したものを転売したり、譲渡したりするのはNG。代表者となって、ほかの人が希望する分を一緒に購入するのも禁止となっています。また、医療用であっても、向精神薬や医薬品覚醒剤原料は、当然ですが一般人が個人輸入することは禁じられています。
個人輸入のリスクを患者さんに理解してもらう
医薬品の個人輸入で怖いのが「偽の医薬品が販売されている」ことです。また、パッケージに記載された成分量を大きく超える薬剤が含まれているケースも少なくありません。薬を飲んで体調が悪くなったという患者さんの話をよく聞くと、海外から輸入した薬を服用していたというケースもあります。個人輸入はあくまで自己責任のため、「医薬品副作用被害救済制度」も利用できませんので、個人輸入のリスクを患者さんに周知することも、医師としては必要だといえます。
※医薬品副作用被害救済制度
医療機関や薬局で処方された薬を定められた用法で使用した上で健康被害が発生した場合に、医療費や年金が給付される制度。海外から個人輸入した国内未認可の薬は対象外。
「医薬品の個人輸入規約」をご紹介しました。個人輸入薬で健康被害が出たという患者さんを診察する場合、どんな薬を飲んだのかを特定することは治療する上でも重要です。もしもの場合に備え、医薬品の輸入規約だけでなく、どんな種類の医薬品が海外から多く輸入されているのかを把握しておくといいでしょう。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2021年5月時点の情報を元に作成しています。