「開業医の妻」「院長夫人」と聞くと思い浮かぶのはどんな女性像でしょうか? 多くの人は「裕福な生活をしていそう」などのプラスのイメージを描くと思いますが、実際のところはどうなのか気になるところです。そこで今回は、開業医の妻の生活や、求められる役割などについて考察していきたいと思います。
開業医の妻は、個人事業主である夫を支える役割を担っている
日本医師会が2009(平成21)年に実施した「開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査」では、医師が開業した年齢は平均して41.3歳との結果が出ています。医師が開業する前から結婚していたとすると、平均年齢で考えた場合、40代に入る前には、夫婦で一緒に今後のキャリアについて考えていた可能性が高いでしょう。開業するということは個人事業主になるということなので、初めてでわからないことや不安なことだらけなはず。そんなとき、そばで開業医をしっかりとサポートする役目を担っているのが、院長夫人なのです。
参照:日本医師会「開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査」4枚目、5枚目より抜粋
医療関係者じゃないからこそできること
とはいえ、開業医の妻が医療関係者ではない場合、医療そのものについてアドバイスできることや相談に乗れることは少ないかもしれません。しかし、だからこそ患者目線での客観的な意見を伝えることは可能です。「こんなクリニックだと安心できる」など自分なりの考えを伝えながら、夫を鼓舞していくことはひとつの大切な仕事でしょう。
現場に出てサポートしたいならどうすればいい?
最前線で働く夫を現場でもサポートしたいと考えるなら、医療事務の資格を取ることがおすすめです。結婚したあとに一から勉強して医者や看護師を目指すのは至難の業ですが、医療事務の資格なら、実際、大人になってから取得を目指す人も多く、初心者でも2~6か月程度での合格を目指せると言われています。医療事務の資格を取得して、夫が開業したクリニック内で働くことにすれば、慣れていくうちに金銭的なことについてはアドバイスしたり一緒に考えていったりすることができるはず。また、職場内の人間関係も周知することができるので、人間関係を円滑にするための策を講じることもできるでしょう。
クリニック内の人間関係を円滑にするためにできることは?
では、人間関係を円滑にするためにできることはどんなことでしょうか? スタッフ間をギスギスさせないためにキーワードとなるのはまず「平等」。つまり、ひいきしないということです。誰かを特別扱いすることで他の誰かにイヤな思いをさせないようにするだけでなく、「そんなつもりはないのにそう感じている人がいた」ということにならないよう、個人面談の仕組みを作るなど、定期的に一人ひとりの声に耳を傾けることを心がけるといいでしょう。
そしてもうひとつのキーワードは「ストレスフリー」。人間関係にストレスを感じている人がいるようなら、個別に話を聴いてあげられる機会を持つといいでしょう。
また、そもそも採用の時点で、クリニック内の雰囲気をよくしてくれるスタッフであるかどうかを見極めることも大事です。看護師などの採用に関しては技術的なことも採用条件であることは間違いありませんが、どんなに腕があっても、チームワークを乱す一面があると、他のスタッフにも悪い影響を及ぼしてしまいます。
一緒に働くことは節税につながる?
開業の妻が現場に出て一緒に働くことは、節税対策にもなります。具体的にどうすれば節税できるのか、個人事業主として開業した場合と、医療法人として開業した場合でみていきましょう。
個人事業主として開業した場合
個人事業主として開業した医師が妻に給与を支払う場合、条件によって、「青色事業専従者給与」もしくは「概算経費の特例」のいずれかが有利となることがあります。
具体的には、青色事業専従者給与計上前の実額経費が概算経費の特例の経費を上回っている場合、青色事業専従者給与を計上すると、実額経費が有利になります。また、青色事業専従者給与計上前の実額経費と青色事業専従者給与を合計した金額が概算経費の特例の経費を上回っている場合は、実際にそれぞれの金額を計算して、有利になる方を選択することが望ましいでしょう。実額経費と青色事業専従者給与を合計しても概算経費の特例の経費を下回る場合は、青色事業専従者給与に対する税額が上乗せとなるため、実額経費は不利ということになります。
医療法人として開業した場合
医療法人として開業している場合、妻だけでなくその他親族なども役員にして非常勤役員報酬を支払うことによって、所得の分散による節税が可能となります。
開業医の妻に、家庭において求められることは?
続いては、開業医の妻が家庭で求められる役割について考察します。開業医の妻が現場に一緒に出ていた場合、妻も仕事で忙しいことはもちろんですが、開業医である夫自身は、医師としての仕事以外に経営者としての仕事に対しても責任があるため、妻の家事や育児の負担が大きくなる場合があります。特に育児に関してはワンオペに近い状態になることが考えられるため、場合によってはどちらかの家族などにサポートをお願いするのも得策かもしれません。
人付き合いにおいて気を付けたいことは?
開業医の妻として仕事と家庭の両立を目指そうと思ったら、それなりのマナーや教養を身に着けることが大切です。開業医である夫は、職業柄、学会関係者が参加する食事会に呼ばれることもしばしば。妻として同席して恥ずかしくない振る舞いをするためには、食事のマナーや言葉遣いに加え、最先端の知識を身に着けていくことも望ましいといえるでしょう。
妻としての責任を果たすことだけでなく、夫婦関係を良好に保つことにも意識を向けることが大切
「開業医の妻に求められること」はたくさんありますが、すべてそつなくこなそうと思ったら、労力もストレスもかなりのものでしょう。あくまでも理想は理想としてとらえ、自分にできる範囲のサポートをおこなうことが、夫婦関係を良好に保つ秘訣でもあることをお忘れなく。
特徴
対応業務
診療科目
特徴
対応業務
診療科目
この記事は、2021年8月時点の情報を元に作成しています。