社労士監修・最新2022年|電子カルテ導入に役立つ補助金とその申請方法

電子カルテの導入を進めるうえで、ぜひ活用したいのが国の補助金制度です。
補助金を活用して、低価格で電子カルテを導入したいとお考えの開業医の先生も多くいるのではないでしょうか。

「補助金を利用することでどの程度安くなるのか知りたい」
「今からでも間に合う補助金を知りたい」
「そもそもどのように申請するの?条件は?」
などといった疑問をお持ちの方のために、この記事では、電子カルテ導入の際に活用できる「IT導入補助金2022」の概要申請方法、スケジュール、申請時に注意するポイントをご紹介します。

1.IT導入補助金について

IT導入補助金2022の目的は大まかに3つに分けられます。

通常型
 中小企業・小規模事業者等がITツールを導入する際の経費の一部を補助する

セキュリティ対策推進枠
 中小企業・小規模事業者へのサイバー攻撃回避に役立てる費用を補助し、リスク低減を実現する

デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
 中小企業・小規模事業者が使用する会計・決済・ECソフトなどの経費を補助することで、企業間取引のデジタル化を推進する
(参考:IT導入補助金2022「https://www.it-hojo.jp/overview/」)

ここでは、IT導入補助金について、概要にふれながら、対象となる経費や対象事業者、補助率について記載します。

(1)IT導入補助金の概要

国は、国内総生産(GDP)および従業員数の7割を占めるサービス産業の生産性を向上させるため、さまざまな施策を行っております。そのひとつとして、導入費用等が障壁となってIT化が進まず、効率化が実現しない中小企業や小規模事業者のためにIT導入補助金制度が作られました。2017年以降、助成を受けた事業者は増加傾向にあり、日々注目度も高まっています。

2020年から流行した新型コロナウィルス感染は、中小企業や小規模事業者等の経営に大きな影響を与えました。そのためIT導入補助金には2021年度から、新型コロナウィルス感染拡大防止に向け非対面化等への取り組みをサポートするための特別枠(低感染リスク型ビジネス枠)が設置され、通常枠よりも補助率が拡大されました。

2022年度には、サイバー攻撃への対策に関連する「セキュリティ対策推進枠」のほか、「デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)」も設置されました。

IT導入補助金の類型ポイント
● 通常枠(A・B類型)
→業務効率化や売り上げアップにつながるITツールの導入費用を補助

● セキュリティ対策推進枠
→近年起こっている、マルウェア感染やコンピュータへの不正アクセスなどのサイバーインシデントで起こる被害などのリスクを最小限に抑えるITツールの導入費用を補助

● デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
→企業のデジタル化を推進するため、会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトの経費の一部を補助

業務効率化、セキュリティ対策に貢献するITツールを安く導入できるIT導入補助金は、さまざまな業種や業態に対応しており、対象となる経費も数多くあります。

下記にて詳しく見ていきましょう。

(2)電子カルテも対象? IT導入補助対象経費とは

IT導入補助金の対象経費には、「ソフトウェア」、「オプション」、「役務」の3つのジャンルがあり、それらは7つのカテゴリーに分類されています(下図参照)。

(参考:IT導入補助金2022「公募要項」P.14)

さらに、通常枠(A・B類型)の場合、次の業務プロセス・汎用プロセス(下図参照)を保有するソフトウェア(大分類Ⅰ)が対象となります。

(参考:IT導入補助金2022「公募要項」P.15)

例えばA類型は、共P-01から各業種P-06のなかで1種類以上の業務プロセスを満たすツールであること、B類型は共P-01から汎P-07のうちの4種類以上の業務プロセスを満たすツールである必要があります。
セキュリティ対策推進枠とデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)には業務プロセスに関する要件はなく、代わりに機能要件があります。

セキュリティ対策推進枠の場合は、独立行政法人情報処理推進機構が出している「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービスが対象。
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)では、先程記載した大分類Ⅰ「ソフトウェア」のカテゴリー1に区分されるもので、①会計 ②受発注 ③決済 ④EC の機能のうち、必ず1種類以上含んでいる必要があります。


クリニックでは自動精算機やレセプトコンピュータ、電子カルテ等も対象経費となります。ただし、残念ながらハードウェアのみでは補助対象外です。

電子カルテは、患者情報や検査データなどの診療情報の共有、受付から会計業務にかかる時間の削減、地域連携のツールとしての活用が導入によって期待されています。
しかしここで注意しておきたいのは、IT導入支援事業者(カルテメーカーやベンダー)がITツールとして登録している電子カルテのみが補助対象となるので、導入を考えている電子カルテが対象になるかどうか、IT導入補助金公式サイト「IT導入支援事業者・ITツール検索 」で確認しておくと良いでしょう。

(3)クリニックを含む補助対象事業者とは

電子カルテはIT導入補助金の対象です。もちろんそれを利用するクリニックも補助の対象となりますが、申請には要件があります。

補助の対象となるクリニックの要件は以下のとおりです。

補助対象者となるための要件
● 医療法人、社会福祉法人
→常時使用する従業員の数が300人以下の者

● その他の業種
→資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員数300人以下の会社及び個人事業主
(参考:IT導入補助金2022「公募要項」P.6 2-2-1申請の対象となる事業者及び申請の要件)

つまり、残念ながらまだ開業していないクリニック、新規開業を予定しているクリニックは対象外です。

(4)クラウド型電子カルテは補助率が大きい

通常枠(A類型・B類型)とデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)はそれぞれの種類ごとに補助金と補助率が異なります。
電子カルテは、予約から、問診、受付、診察、会計まで無駄のない効率的な業務が行えるという特徴を持っており通常枠の申請が可能です(A・B類型)。

2022年に設けられたデジタル化基盤導入枠では、会計・受発注・決済・ECのうち1機能以上、補助額や補助率によっては2機能以上が求められています。
クラウド型電子カルテを導入する場合、さらにクラウド利用料が最大2年分補助されます。レセコンに関連する会計機能や、オンライン診療等に絡めた決済システムの費用も勘案すると、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)の申請が可能な場合も大いにありえるというわけです。

2.IT導入補助金を利用するためのステップ・必要書類

IT導入補助金を利用するためには、申請要件をすべて満たしている必要があります。

申請類型によって要件が異なるので、公式サイト(https://www.it-hojo.jp/)をよく読んで申請することをおすすめします。ここでは、IT導入補助金を利用するためのポイントを紹介します。

(1)交付申請の流れ

事業準備

交付申請の際に、まず実施することが、「IT導入支援事業者の選定」と「ITツールの選択」です。
基本的にIT導入支援事業者が事務局に登録したITツールのみが補助対象となるため、導入したい電子カルテやベンダーが補助対象であるか調べておくことが大切です。(参考:IT導入補助金2022「IT導入支援事業者・ITツール検索」)

IT導入支援事業者は、ITツール、つまり電子カルテの提案や導入、事業計画の策定など、補助金申請に必要な手続きを円滑に行えるよう全面的にサポートしてくれるパートナーになりますので慎重に選ぶようにしましょう。

交付申請で行うこと

導入したい電子カルテ(IT導入支援事業者)が決まると、商談を進め、交付申請に必要な事業計画を作成します。
そして、IT導入支援事業者から『申請マイページ』への招待を受け、招待メールに記載のあるURLから『申請マイページ』の開設を行います。

『申請マイページ』にログインする際にはGビズID(法人・個人事業主向け共通認証システム。取得すると、一つのID・パスワードで多くの行政サービスにログイン可能)が必要です。
GビズIDにはいくつかの種類がありますが、補助金の申請にはgビズIDプライムアカウントの取得が必要です。これは、「gビズID」ホームページで取得できます。

しかし、ID発効までには一定時間がかかります。書類の不備等が無いよう、余裕を持って申請することをおすすめします。

◆GビズIDプライムアカウントの発行に関する注意点について◆
審査については、書類に問題がない場合は1週間程度でアカウントを発行しておりますが、
・書類に不備がある(印鑑証明書が同封されていない、申請書と印鑑証明書の印鑑が異なる等)
・既にアカウントをお持ちの方による重複申請
の場合には、その不備内容やアカウント保有状況確認のためお時間をいただく場合がございます。
申請の際は、必ず事前に申請方法やアカウント保有状況をご確認いただきますようお願いいたします。

引用元:gビズIDホームページ(https://gbiz-id.go.jp/top/

アカウントが発行されたら、IT導入支援事業者(電子カルテメーカー、ベンダー)から招待された『申請マイページ』にログインし、事業所名や住所、代表者氏名、設立年月日などの基本情報や財務・経営情報の入力、必要書類の添付等を行います。
必要情報の入力内容の不備により採択されない場合が多くあるので、間違いがないように注意しましょう。

この後は、IT導入支援事業者が申請に必要な作業を終了させれば、あとは申請者が再度申請マイページにログインし、交付申請情報の残りの必要項目への入力と最終確認を行います。

最後に、個人認証を強化するためのSMS認証で本人確認を行うことで、事務局での審査がはじまります。
(参考:令和4年(2022年)5月30日 改訂 令和元年度補正・令和3年度補正 サービス等生産性向上IT導入支援事業「交付申請の手引き」P.18 3-1交付申請の流れ)

事業実施に必要なこと

補助金が「交付決定」となった場合、事務局から、申請時に登録したメールアドレス宛に「交付決定通知」が送付されます。また、「交付決定通知書」は『申請マイページ』よりダウンロードし、大切に保管しておきます。
参考:サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)よくある質問「交付申請について」質問49

交付決定後に、電子カルテの契約と発注を行います。交付決定を受ける前に電子カルテの契約や一部費用の支払い等があった場合、補助金の交付を受けられませんので注意しましょう。

交付決定後補助事業を開始し事業完了後には、実績報告を行います。
補助事業に係る証憑類は事業実績報告時に提出するため、捨てずに大切に保管しておきましょう。
実績報告を行った後は事務局にて確定検査が行われます。

適切に事業が実施されていることが確認されると、事務局から補助金額確定の通知があり、補助金の交付を受けることができます。

(2)交付申請等期間について

IT導入補助金は交付申請期間が設けられており、IT導入補助金公式サイトで詳細なスケジュールを確認できます。

交付申請期間は、1年のうち複数回設けられており、2022年7月末時点で3次公募までは終了しており、4次公募(締切8月8日)、5次公募(締切9月5日)、6次公募(締切10月3日)が予定されています。

これまではおおよそ10次公募まで設定されていましたが、予算措置であるために、今年度は何次公募まで実施されるかは未定です。

(3)交付申請に必要な書類とは

交付申請に必要な書類には以下のものがあります。

法人:履歴事項全部証明書、法人税の納税証明書(その1またはその2)
個人事業主:運転免許証または運転経歴証明書または住民票、所得税の納税証明書、所得税確定申告書B

参考:令和4年(2022年)5月30日 改訂
令和元年度補正・令和3年度補正 サービス等生産性向上IT導入支援事業「交付申請の手引き」P.20 3-3 必要な添付書類

3.申請の際に気を付けるポイントとは

IT導入補助金の採択率は、40〜50%程度とそれほど高くはなく「IT導入補助金を申請したけど、不採択になってしまった」「採択されるのは難しい」といった声をよく耳にします。
審査項目についてはIT導入補助金の公募要領に詳しく記載されていますので事前に確認しておくことをおすすめします。

ポイント1:申請情報や提出書類の不備・不足

書類の不備については、住所の記載不足、役員の不一致、会社情報の間違いなどがあげられます。


それ以外にも、例えば法人が申請する場合、履歴事項全部証明書を発行日から3カ月以内のものを提出すべきところ、期間が過ぎていたり、全ページが揃っていなかったり、そもそも履歴事項全部証明書ではなかったりする場合もあります。
書類に不備や不足があっても内容の変更や差し替えには応じてもらえません。必要な書類をしっかり把握して、間違いのないよう提出するようにしましょう。

ポイント2:書類内容が現実的でない場合

申請情報や提出書類に不足がなくても、審査項目に照らし合わせて書類内容が現実的でない場合は不採択になる可能性があります。

例えば、事業展望が見えない、根拠が乏しい、利益の増加が不自然、成果目標と計画がマッチしていない等の場合です。

4.まずは何から始めればよいのか

これまでさまざまな角度からIT導入補助金について説明してきましたが、さらに情報収集を続けたい場合、IT導入補助金の公式サイトにある、事業概要やスケジュール、申請手続き方法などについてまとめた動画を確認してみても良いでしょう。15分程度で全体像を把握できます。

具体的な申請準備に取り掛かりたい場合は、導入したい電子カルテと、IT導入支援事業者(ベンダー)を選定・確認するためにIT導入補助金公式ページの「IT導入支援事業者・ITツール検索」で検索してみましょう。

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 ・補助金申請の大まかな流れ
 ・チャート/自身が導入するツールは何類型?
 ・電子カルテCLIUSを導入した場合の、具体的補助金額の例

5.IT導入補助金の活用でクリニックの課題を解決

この記事では、IT導入補助金の概要や申請方法とポイントを解説しました。

採択されるためには十分な準備が必要ですが、IT導入補助金を活用できれば導入したいシステムを低価格で購入できることはもちろん、クリニックの課題を整理するきっかけとなり、さらにはシステム活用で業務の効率性、生産性を高めるなど多くのメリットを得ることができます。

これから電子カルテを導入される方は、IT導入補助金をぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

監修者:社会保険労務士法人レガリア 代表社員 社会保険労務士  中島 丈博より
システム導入によってクリニックの勤怠管理、労務管理、給与計算の業務効率化やコスト削減をしたい方には、厚生労働省の助成金「働き方改革推進支援助成金」が活用できます。
IT導入補助金と合わせて、、助成金申請を検討してみても良いでしょう。交付申請期限は2022年11月30日です。
なお、勤怠管理、労務管理、給与計算などを管理できるシステムとして、人事労務管理システム「ジョブカン」等をご案内しています。補助金の申請も含め、業務効率化等のご相談があればぜひご連絡ください。

Mac・Windows・iPadで自由に操作、マニュア ルいらずで最短クリック数で診療効率アップ

特徴

1.使いやすさを追求したUI・UX ・ゲーム事業で培って来た視認性・操作性を追求したシンプルな画面設計 ・必要な情報のみ瞬時に呼び出すことが出来るため、診療中のストレスを軽減 2.診療中の工数削減 ・AIによる自動学習機能、セット作成機能、クイック登録機能等 ・カルテ入力時間の大幅削減による患者様と向き合う時間を増加 3.予約機能・グループ医院管理機能による経営サポート ・電子カルテ内の予約システムとの連動、グループ医院管理機能を活用することにより経営サポート実現 ・さらにオンライン診療の搭載による効率的・効果的な診療体制実現

対象規模

無床クリニック向け 在宅向け

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オンライン診療 予約システム モバイル端末 タブレット対応 WEB予約

提供形態

サービス クラウド SaaS 分離型

診療科目

内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、、循環器科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、肛門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、気管食道科、放射線科、麻酔科、心療内科、アレルギー科、リウマチ科、リハビリテーション科、、、、

中島 丈博

監修 社会保険労務士法人レガリア 代表社員 社会保険労務士 | 中島 丈博

信州大学経済学部卒業後、国の公益法人総務部に勤務。資格取得後、NTS総合コンサルティンググループ内、NTS丸の内社会保険労務士法人代表社員を経て、2021年3月に「社会保険労務士法人レガリア」を開業。人事労務管理クラウドシステムの導入を基本に、クリニックを含め多くのクライアントの業務効率化及びコスト削減を達成。
「産業廃棄物処理業における人事労務管理」第一法規出版共著

Youtube:
https://www.youtube.com/channel/UCuBpqGBIBtJs1XZWQ-AQ1Fg


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執筆 CLIUS(クリアス )

クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。


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