
4月から導入されたリフィル処方箋。
2022年の診療報酬改定を機に導入されましたが、ドクターたちからはどんな声が上がっているのでしょうか?メリットやデメリットについても、今一度確認していきましょう。
リフィル処方箋とは
リフィル処方箋とは、1枚の処方箋を繰り返し使って薬を補充できる処方箋です。
「リフィル」とは英語で「補充」を意味しており、リフィル処方箋とはつまり、リフィル(補充)ができる処方箋という意味になるのです。
なぜこのようなシステムを導入するに至ったかというと、薬をもらうためだけに受診する患者の通院負担および窓口負担を減らすことで、医療費を抑制するため。
たとえば、90日分の薬を調剤するとして、リフィル処方箋を利用すれば、30日分の処方箋に「利用可能回数:3回」と記載して発行すればいいので、そのぶん患者の負担も窓口の負担も少なくなります。
アメリカをはじめとする海外の国々のなかには、日本よりだいぶ昔からリフィル処方箋を認可している国もありますが、それらの国においても、一部の薬剤に関してはリフィル処方箋の対象外となっています。
リフィル処方箋の認知度は?
2022年4月の導入前は、リフィル処方箋の認知度は医療従事者の間でもとても低いという結果が出ていました。
日本最大級の医療従事者専用サイト『m3.com』が2021年12月22日~27日に行った調査の結果、リフィル処方箋について「仕組みまで詳しく知っている」と回答した医師はたったの7.2%。「言葉自体知らない」と答えた医師は43.4%にも上りました。
また、「聞いたことはある」は24.3%、「なんとなく知っている」は25.2%とそれぞれ20%以上で、ほとんどの医師がよくはわかっていないことが判明しています。
そのため、「リフィル処方箋導入についてどう思いますか?」の質問には59.5%の医師が「わからない」と回答。20.4%の医師は「反対」と答えていました。
リフィル処方箋導入のメリットは?
そんなリフィル処方箋ですが、導入によって一体どんなメリットがあるのでしょうか?
患者側・医療機関側に分けて、そのメリットを見ていきましょう。
患者側のメリット
まずは患者に与えるメリットについてです。
通院の負担が減る
薬を処方してもらうためだけの通院は患者にとって大きな負担。たとえば、これまで毎月1回通院していたところ、3か月に1度の通院でいいとなると負担が軽くなるはず。
医療費を抑制できる
通院の頻度が高いとそのぶん医療費もかかりますが、リフィル処方箋を利用すれば比較的安く抑えられます。
残薬に悩まされにくい
リフィル処方箋導入前は、処方箋をもらうためだけの通院の負担を減らしてあげようと病院側もまとめて薬を処方しがちでした。
しかし、このことが原因で「残薬」に悩まされる患者も少なくありませんでした。リフィル処方箋が浸透すれば、この残薬問題も解消が期待できます。
感染リスクを減らせる
新型コロナウイルスの感染予防のためにも、できるだけ人との接触を避けたいと考えている人はまだまだ多いはず。リフィル処方箋を活用して通院回数を減らすことで、そのぶん感染リスクも減らせます。
医療機関側のメリット
次に、医療機関に与えるメリットを見ていきましょう。
労力削減につながる
月に1回発行していた処方箋を3か月に1回しか発行しなくてよくなるため、空いた時間を他の業務に充てられます。
「月に1回から3か月に1回に減るのはたいした削減ではない」と思うかもしれませんが、100人分、200人分ともなればレセプトの処理も大変です。
紙を削減できる
1枚の処方箋を3回使えることになるので、そのぶんペーパーレス。こちらも、一見、些細な変化に思えるかもしれませんが、ちりも積もれば山となります。
ドクター、薬剤師の連携が強化される
適切な処方のためにも、ドクターと薬剤師の連携を強化することが不可欠となるため、これをきっかけに日ごろからなにかあったときに相談しやすくなる場合もあるかもしれません。
リフィル処方箋導入のデメリットは?
続いて、リフィル処方箋導入のデメリットについてです。
こちらもメリット同様に、患者側・医療機関側に分けてのご紹介です。
患者側のデメリット
まずは患者側のデメリットです。
医師に病状の変化に気づいてもらいづらい
診療の間隔が空くことから、些細な変化を見落としす可能性が高まります。
患者自身はいつもと何ら変わらないと思っていても、医者には病気の兆候が見受けられる場合もあるものなので注意が必要です。
医師とコミュニケーションをとる機会が減る
高齢の患者や精神科の患者などはとくに、病状を診てもらうこと同様に、話を聞いてもらうことを必要としている場合があります。
そうした患者にとって、コミュニケーションの機会が減ることは大きな打撃となり得ます。
医療機関側のデメリット
つぎに、医療機関側へのデメリットを見ていきましょう。
収入低下
リフィル処方箋導入のデメリットとしてまず挙げられるのは、医療機関の収入低下です。
患者にとってはメリットとなりうることですが、医療機関側にとっては、マイナスになった分を何で補てんするのかは大きな課題となるでしょう。
医療事故のリスクUP
さらに、従来の処方箋は医師と薬剤師によってダブルチェックが行われていましたが、リフィル処方箋をチェックするのは薬剤師のみになるため、これまで以上に医療事故にも気を付ける必要があります。
薬剤師との間でトラブルが起きる原因となり得る
医薬連携が十分でない場合、万が一のことが起きた場合にお互いに責任を転嫁し合う可能性もまったくないとはいえません。
患者との間に信頼関係を構築しづらい
患者と十分にコミュニケーションをとれないぶん、信頼関係を構築しづらいといえます。
国も対応策を考えるべきデメリット(課題)
また、医薬品の転売に悪用されることも考えられるので、リスクを回避するための対策を練っていくことが求められるでしょう。
リフィル処方箋導入に対する医療従事者の意見は?
メリット・デメリットを踏まえたうえで、続いてはリフィル処方箋導入に対する医療従事者の見解をみていきましょう。
リフィル処方箋が導入されたのは今年の4月ですが、導入されたものの「リフィル処方箋を発行したことがない」という医師は大半を占めているようです。
理由のほとんどが「患者の病状が確認できなくなる」で、なかには「患者が毎月薬局に通う必要が出るためかえって経済的負担が大きくなることが心配」という声もあります。
また、「処方期間の長短はリフィル処方箋導入以前から患者ごとに適切に判断しているので、リフィル処方箋によって一律に延長しようとすることが理解できない」との声も。
この医師の回答に当てはめて考えると、たとえば「病状が安定していて定期的な診察が必要とは見受けられない患者」に対してのみは、リフィル処方箋を発行するなどの方法もありかもしれませんね。
リフィル処方箋に関しての今後の課題は?
リフィル処方箋を定着させるためには、医療従事者から上がっている一つひとつの声に対応していくことが大切だと考えられます。
リフィル処方箋が一般的になったことで医療機関側の経営を圧迫されたり、患者が健康状態を維持できなくなったりしては本末転倒。
これらの問題に国がどう対処していくかを見守りながらも、クリニックごとに対策を考えていくことも必要になりそうですね。
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提供形態
診療科目
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この記事は、2022年2月時点の情報を元に作成しています。