クリニックも過当競争の時代に入り、集患をいかに行うのかがキーになってきました。その患者さんの「かかりつけ医」になってリピート率を向上させるというのが一つの解法です。しかし「待ち時間が長い」など患者さんに不満を持たれてしまうと、リピート率は上がりません。やはり患者さんへのホスピタリティーを上げることが重要です。
そこで今回は、「待ち時間を減らせる」「自身の医療・診療データを管理できる」といった機能で患者さんへのホスピタリティーを向上するアプリ『MyHospital(マイホスピタル)』をご紹介します。本アプリの提供元である『株式会社プラスメディ』MyHospital事業部長の栗田祐樹さんに取材しました。同社はSMBCグループの企業です。
『MyHospital』の開発経緯と背景
――『MyHospital』が生まれた経緯について教えてください。
クリニックの課題というのはさまざまあるのですが、弊社代表の永田幹広(代表取締役社長兼CEO)が持病を患っておりまして、今でも定期的に病院に通っています。病院に通う中で、待ち時間、具体的には診療待ち、会計待ちの時間が長く、それがとても気になりました。永田だけでなく、どの患者さんもそうだと思うのですが、やはり早く診てもらいたいですし、早く帰りたいものです。定期的に病院に通う患者さんならなおさらです。
「待ち時間が長いのをなんとかしたい」、また大きな病気を患っていますので「自分のデータを自分で管理できたらいいのに」と永田は思うようになりました。この気持ちが、そもそも『MyHospital』が生まれたきっかけです。
――なるほど、御社代表の思いから制作に至ったのですね。
きっかけは永田の個人的な思いであったかもしれませんが、そこは患者さんのニーズと一致していると思います。患者さんのニーズは「病院の課題」とも一致しているでしょう。どちらかといえば『MyHospital』は患者さま向けのアプリです。しかし、「待ち時間をできるだけ短くする」といった患者さんのニーズに応えることは、病院側のメリットにもなりますよね、という考えで作られています。
――永田代表がアプリ開発を始めるまでは、ITでそのような課題を解決しようというアプローチはあまりなかったということなのでしょうか。
はい。医療・建設・美容業界はIT化が非常に遅れているといわれます。これは全くそのとおりで、医療業界では電子カルテがようやく普及してきたぐらいです。電子カルテの普及率は全国でようやく40%を超えたぐらい※といわれています。
厚生労働省のオンライン資格確認の推進、コロナがあってオンライン診療の導入が進むなどが要因になって、やっとIT化が進んできたという感覚なのです。
――なるほど。いいきっかけとは決していえませんが、コロナ禍によって非接触が推奨されてIT化が進んだという面は確かにありますね。
弊社の設立は2016年ですが、その当時は「IT化は進めましょう」という話は出ているもののなんの土台もないといった状況でした。
――最近になってようやく予約システムの導入が進んでいますが、『MyHospital』は時代を先取りしていたのかもしれませんね。
そうですね。かつては待ち時間を短縮したり、患者さんの情報を開示したりといったことをアプリで行おうという発想はありませんでした。また、患者さんには高齢の方が多いので、ITリテラシーの問題もありました。
――アプリを使って患者さんとやりとりをするなんてことは考えられなかった時代だったのですね。
技術的な課題もありました。病院が持っているデータをその患者さんが見られるようにするには、病院が入れている電子カルテのシステムと連携しなければなりません。そもそも病院側にもデータを外と連携するという考え方がありませんでした。また、データは誰のものなのかという議論もあったのです。
――なるほど。
私たちは、「自分の健康についてのものなので、それは患者さんのものでしょう」という考え方の下に、アプリ開発を進めました。ただ、当時はそのような考え方をする人はほとんどいなかったですね。
――『MyHospital』のテスト運用開始が2017年とのこと。当時医療現場での課題だと考えられていたこと、待ち時間などですが、2022年の現在、解決の方向に向かっているでしょうか。
正直、一般的な医療現場での状況はまだまだだと思います。確かに他社さんでも後払い会計ができるなど、待ち時間短縮に役立つITサービスをリリースしており、それがだんだん広まってきてはいます。しかし感覚としては、ようやく予約や後払い決済などが利用されるようになってきたかな、というレベルでしょう。
さらに医師側の課題もあります。IT技術への漠然とした不安、本人のものであっても医療データを外に出したくないといった心理面での抵抗などです。若い医師の方々はITリテラシーも高いですから、世代交代が進んでいくにつれ徐々に解消されていくでしょう。ただ、私たちも日々営業する中で感じていますが、「まだまだ」というのが正直なところです。
――患者さんへのホスピタリティーを向上させる目的のアプリですが、普及にも課題が多いのですね。
そうですね。『人々の生活を豊かにしていきたい』という理念から生まれたアプリなのでぜひ使っていただければと思います。
※厚生労働省のデータによれば、2017年(平成29年)段階で「一般病院:46.7%」「一般診療所:41.6%」となっている。400床以上の病院では「85.4%」と普及率は高いが、200床未満の病院では「37.0%」まで下がる。これは一般診療所よりも低い数字である。つまり、病院の場合規模が大きいほど電子カルテが普及しているということになる。
参照・引用元:『厚生労働省』公式サイト「電子カルテシステム等の普及状況の推移」
『MyHospital』の特徴と機能
『MyHospital』は、「待ち時間の短縮」「処方の情報、検査結果などのデータを閲覧できる」というメリットを患者さんにもたらすツールです。
これによって、患者さんのクリニックに対する好感度を高めるというメリットが得られます。つまり、『MyHospital』は現在盛んにいわれる「かかりつけ医」になるための機能を持っており、リピーターを増やしてくれる「クリニックの集患に役立つツール」というわけです。
具体的には、『MyHospital』は以下の機能を備えています。
①「受付」機能
アプリ上に診察券を表示し、これを対応可能な再来受付機にかざすことで受付が行えます。
②「後払い会計」機能
後で診療費を決済可能(クレジットカード決済)なので患者さんは診療後すぐに帰れます。外来・入院患者さんにも対応可能です。
③「処方情報の取得」機能
処方せんをFAXで薬局に送ることができます。
④「待合順番」機能
アプリに待合の順番を表示可能です。患者さんは院内で待っている必要がなくなります。
⑤「お薬情報」機能
処方された薬の情報をアプリに記録できます。薬局でもらう調剤明細書に記載されているQRコードをスマホのカメラでスキャンすると、その情報がアプリに記録されます。
⑥「PHR※」機能
自身の検査、検診の結果、画像をスマホで確認できます。
このように、①~④で患者さんの待ち時間を減らします。これは「院内混雑の解消」とイコールです。⑤⑥によって患者さんが自身の健康状態・医療情報を管理することを支援します。「自分に役立つアプリが使えるからあのクリニックにかかろう!」と思ってもらえるわけです。
※PHRは「Personal Health Record」の略。患者自らが医療・健康情報を収集して一元的に保存する仕組みのことを指します。
電子カルテとの連携
『MyHospital』は電子カルテの情報を引用して患者さんに提示します。そのため、電子カルテとの連携が必須です。
『MyHospital』導入の準備
『MyHospital』は電子カルテや医事システムなど病院システムと連携して動作するアプリですので、クリニックには電子カルテなどが必要です。基本的にはどのシステムとも連携が可能です。ただしサービス提供元『株式会社プラスメディ』、電子カルテベンダーなどと要相談になります。
『MyHospital』の導入にかかる時間
『株式会社プラスメディ』によれば『MyHospital』の導入には「6カ月ほどを見ていただきたい」とのこと。これは電子カルテとの連携が完了するのにそれぐらいの時間を要することがあるためです。例えば、『CLIUS』のようにすでに連携が確認できている電子カルテであれば、作業も早く終わるとのことです。
『MyHospital』の導入費用
『MyHospital』の導入・利用料は以下になります。
初期費用:0円
※ただし電子カルテベンダーとのシステム改修費がかかる場合もあります。
月額費用:諸条件により異なりますのでサービス提供元の『株式会社プラスメディ』までお問い合わせください。
『MyHospital』のサポート
『MyHospital』では電話サポートとメールサポートを行っています。
電話サポート:09:00~18:00(年末年始は休み)
メールサポート:24時間365日(返信は適時)
まとめ
『MyHospital』は患者さんへのホスピタリティーを向上させるコンシェルジュのようなアプリです。待ち時間を減らし、患者さんに自身の医療データを提供することでクリニックへの好感度を上げるという効果をもたらします。
『株式会社プラスメディ』の栗田さんの話によれば、導入したクリニックからは「確かに待ち時間は減少した」という声が上がっており、クリニックの業務効率の向上に一役買っているとのこと。患者さんの好感度を高めたい、リピート率を上げたいと考えている医師・クリニック院長の皆さんは『MyHospital』に注目してみてはいかがでしょうか。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2022年4月時点の情報を元に作成しています。