
「サブスク(サブスクリプション)」という言葉もずいぶん一般的になりました。ネット経由の動画配信サービスでは定額料金で見放題というプランが多いですね。
医療の現場では「定額制」という料金体系自体があまり見当たりません。しかし、定額制を導入して美容診療を行っているサービスは存在します。美容皮膚科『HADA LOUNGE(ハダラウンジ)クリニック』です。
『HADA LOUNGE クリニック』は美容診療に定額制を導入した草分けです。今回は『HADA LOUNGE クリニック』に取材し、定額制美容診療を開始した背景などについてお話を伺いました。
「定額制コース」とはどのようなものか?
『HADA LOUNGE クリニック』は定額制のスキンケアクリニックで、以下のような3コースの定額制プランで美容診療を提供しています。
開院時は1つのコースだけでしたが、患者さんの要望を取り入れながら調整した結果、現在の3コースになったとのこと。
『HADA LOUNGE クリニック』が定額サービスを始めた背景
定額サービスを始めた背景を、『HADA LOUNGE クリニック』の竹村昌敏院長と、同クリニックのプロデュースを行う『株式会社Neautech』の樫根久澄代表取締役に伺いました。
——『HADA LOUNGE クリニック』を始めたきっかけは何でしたか?
竹村院長 恐らくですが、美容診療の分野でサブスクモデルを始めたのは私たちが業界初だと思います。
定額制を選択した背景には「患者さんは美容医療に対する不安を抱いているのではないか」という考えがあります。
美容にすごく興味があって受けたいんだけれども、なんだか美容医療を受けるのが怖いとか、どれぐらいの金額になるか分からないとか、そんなふうに不安に感じている人が多いのではないかと思いました。
実際に聞いてみると、そういう不安を持つ患者さんはけっこう世の中にいらっしゃることが分かって、それを解決するための方法として、「定額の中であなたに合ったメニューを組みましょう」と提案するプランに思い至りました。これが現在の定額プランにつながっています。
——施術内容や金額への不安を感じる患者さんがいるのはなぜでしょうか。
竹村院長 例えば、美容医療を受けに行くと、本当はこの施術を受けたかったのに「いや、あなたにはこれじゃなくてもっと高いこっちの方が絶対合ってるよ」と言われて施術代がどんどん上がってしまうとか、そういうクリニックが存在するのも事実です。
こういった経験をした患者さんは美容医療に対する不信感を持つでしょう。そのような不信感を払拭して、安心して治療を受けていただけるのが定額制の美容医療です。
定額サービスは患者さんの不安を取り除くのに効果がある
——定額制の診療メニューについての反響はいかがでしたか?
竹村院長 美容医療に慣れていない方、美容医療を受けてみたいという方からすごく反響をいただきました。うちのプランって、正直言って……美容医療の中ではそんなに高くないんですよ。実はけっこう美容に慣れている方の中でも「このメニューでこの金額だったらすごく安くてお得なんじゃない?」と言って来てくださる方もいらっしゃいます。
——そういう効果もあるのですね。
竹村院長 はい。特に美容に慣れていない方には非常に安心して施術を受けていただけていると思います。またアップセルがありませんので、行ったからといって追加でお金が取られることもないです。「こういう施術もやりましょう」と言われて、どんどん施術代が上がっていくってことがないというのは、一つの安心感につながっていると思います。
クリニックに定額制を導入するメリットとは?
——クリニック側にとって定額制を導入するメリットは何でしょうか?
竹村院長 一つは、 利益の計算って言ったら変なんですけれども、売上の数字がすごく単純化できるっていうことでしょうか。普通のクリニックだと、診療メニューをどんどんカスタマイズして組み合わせ……といったことを行いますが、勧誘の人件費が掛かったりします。患者さんから頂くお金っていうのも、どんどんずれてくることによって、それが煩雑になります。これらが単純化されるというのは、クリニックにとって一つのメリットになるかもしれないですね。
樫根代表取締役 経営目線で見ると収益を安定化できるというのがポイントです。月額定額制というと、会員制という形に近しいので、翌月も翌々月も、基本的にはその患者さんが継続してくれるベースだったら収益が安定化できますね。これは大きいです。
あと、継続性という意味で言うと、私たちが専門としている肌の美容は継続的に診ていくものです。ショット、単発で診療を行ってちょっとよくなる、といったものではありません。継続的に患者さんとお付き合いさせていただくことによって、顧客満足度の向上につながります。この継続性が一つのメリットであると感じています。
——竹村院長が実際にクリニックを運営されている上で、また樫根さんがプロデュースをされる上で、定額制のメリット、プラスになるポイントは他にもありますか?
竹村院長 やはり、何より患者さんの安心感です。患者さんが安心して治療を受けていただければ、それ以上のことはないと思っています。そこが一番重要ですね。クリニックの経営者としてはもちろん利益とか、そういう面ではまた別なんですけれども、一番大事なのはそこです。
——定額制によって良い医療が提供できていると実感していらっしゃるのですね。
竹村院長 はい。
定額制導入の課題とは?
——定額制を導入して運営して行く中で、課題や難しさを感じる点はありますか?
竹村院長 先ほど樫根が申し上げたように、美容医療の中でも特に美容皮膚科なんですが、その治療というのは継続性が非常に重要になります。美しい肌を求めるというのは、単発で一つ何かやるというわけではなくてですね。長い道のりをずっと一緒に歩んでいくことになります。
もともとうちに来てくださる患者さんは、その辺りの概念をすごく理解してくださっているのですが、美容医療に慣れていらっしゃらない場合は、例えば「ずっと続けなければいけないの?」といった疑問を持たれることがあります。継続性についての説明を十分に行い、理解していただくという点で少し難しさを感じることはありますね。
——なるほど。定額制というのは患者さんにとっては安心感を与えるものですが、診療科によってはハマらないということがありそうですね。
竹村院長 美容外科などは、もしかしたら定額制には向いていないのかもしれないですね。美容皮膚科は基本的に「終わりがない」って言うと変なんですけれども、「ここで治療はもう完了しました、これ以上治療することはありません」ということは基本的にないものです。
人間は、時間が経てば加齢現象が起こりますし、生きていれば紫外線の影響を受けて肌にダメージが蓄積されます。基本的には美容皮膚科は終わりがないものです。ですので、十分に患者さんに理解していただいて、クリニックを経営する者としてもその辺りを理解した上でやっていかないと、定額医療を導入しようという考えには至らないかもしれないです。
継続性をいかに担保するのかが重要
——美容皮膚科は定額制に向いてはいるものの、医師・クリニック院長にも十分な理解が求められるわけですね。
竹村院長 そうですね。基本的にはやはり「終わりなきもの」って言ったら変なんですけれども、治療の継続性が非常に重要なもの、例えばですが……アメリカでは慢性疾患に対するサブスクリプションの治療モデルがすでに確立されています。
糖尿病、高血圧の治療は、サブスクリプションの中で治療薬の選定などをドクターと一緒に行い、そこでやっていくというモデルが確立されています。
やはり基本的には、急性期の一発何かやって治るというものよりは、慢性期の患者さんとずっとお付き合いして、状態を継続的に診させていただくというものには非常に向いているのかな、と思います。
樫根代表取締役 私たちは継続性を重視しています。つまり、患者さんと寄り添うこと、一緒に走ること、伴走ですね、これが重要です。また患者さんに提案することも大事にしています。診療を受けていただいて、その結果を見て、では次はこの診療を行いましょう、といったサブスクリプションならではのお付き合いの方法ができます。そのため、例えば「患者さんの皮膚を長期に渡って治療していきたい」といった思いのある先生なら、向いているのではないでしょうか。
——これから開業しようとする医師に向けて何かアドバイスをいただけますか。
竹村院長 定額制というのは、患者さんに寄り添ってずっと一緒にやっていくという意味では、すごくやりやすいモデルだと思います。そういう医療を目指したい先生には向いていると思うので、定額制モデルを検討されてもいいのではないでしょうか。
——ありがとうございました。
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『株式会社Neautech』によると、「『HADA LOUNGE クリニック』は、現在東京都内に4店舗、関西に1店舗展開する定額制美容皮膚FCです。運営サポートを受けることができ、自院で集客やシステム開発を行う必要はありません。開院〜運営にあたっての成功ノウハウも提供されるので、個人で開業するのに比べて初期費用を回収するまでの期間も短縮できます」とのことです。
いち早く定額制のメニューを導入した美容皮膚科『HADA LOUNGE クリニック』に取材をしましたが、いかがだったでしょうか。美容医療に不安を持つ患者さんにとっては安心感を与えられる一方で、継続性をいかに担保するのかが重要とのことでした。全ての診療科目に定額制が向くわけではありませんが、アメリカのようにサブスクモデルが向く診療もきっとあるでしょう。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2022年10月時点の情報を元に作成しています。