慢性的な人手不足に陥っているクリニックも多く、できるだけマンパワーを割かずに効率よく運営できるようにするのが重要です。また、医療従事者の「働き方改革」が2024年に迫っており、クリニックの業務効率化はいずれ手をつけざるを得なくなる課題です。
このような背景の下、クリニックで利用できるマンパワー省力化アイテムが注目を浴びています。今回は、クリニックにおける自動化サービスを総合的に提供している『株式会社インテクア』に取材。提供サービスの内容、効果などについて聞きました。
自動化ソリューションとは?
『株式会社インテクア』では、以下のようなサービスを提供しています。
診療予約・受付システム「Reserve Manager V4(リザーブマネージャーV4)」
診療予約システムは、患者さんの受付や予約をネットまたは窓口に設置したパソコンで行うシステムです。予約診療管理を自動化し、患者さんへのサービスの向上と職員負担の軽減を実現できます。
自動受付機(再来受付)システム「Auto Lite(オートライト)」
自動受付(再来受付)システムは、省スペース、低コスト、スマート設計をコンセプトにクリニック向けに開発された製品です。受付を自動化することで、対面業務の軽減、受付業務の整理・効率化、患者さんへの接遇サービスの充実など、よりスムーズな運用を実現できます。
番号案内表示システム「No.Call(ナンバーコール)」
診察待ちや会計待ちの患者さんの受付番号を大型モニターを使って表示するシステムです。また、診察室に受付番号を用いて呼び出し案内表示ができます。
自動精算機「SMASEL(スマセル)」シリーズ
患者さんのタイミングで自ら精算機でお会計してもらうシステム。受付が会計待ちで混雑することがなくなり、患者さんを待たせることもありません。事務職員の金銭授受のストレスやトラブルもなく、セキュリティ面も安心です。患者さんの待ちストレスを軽減しています。
番号発券システム 「No.Call Lite(ナンバーコールライト)」
『ナンバーコールライト』は、クリニックで利用可能な番号を発券するシステムです。追加オプションにより、番号表示や呼出、管理と併用でき、来院時の混雑解消や動線管理も可能です。
このように、『株式会社インテクア』では、クリニックの業務における、予約、来院しての受付(再来院の受付)の自動化、患者さんへの順番の可視化、精算の自動化(患者さんによるセルフ化)を行えるソリューションをそろえています。会計にマンパワーを注ぐ必要がなくなり、金銭管理は機械に任せることができます。
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連携運用が可能なトータルソリューションである
上掲のサービスは個別導入も可能ですが、組み合わせで患者導線をスムーズにすることもできます。
例えば、予約して来院した患者さんは、自動受付機でチェックインします。このチェックインと同時に医師側の電子カルテでも受付がされます。
患者さんはチェックイン時に自動受付機で受付票を受け取りますが、その受付票にはQRコードが印刷されており、それが自動精算機での診療費の支払いの際に個人識別コードとして使用されるという具合です。
また、クリニックに番号案内表示を設置すれば、患者さんがチェックインすると受付票に記載された番号がモニターに表示されます。患者さんは自分が受付されたのを確認でき、同時にどのくらい待つのかをイメージすることができます。
この受付票の番号にも工夫がされています。診療科目によって番号を分けることができるのです。例えば、内科は1番から、外科は100番からなどとしておけば、スタッフも番号を見るだけでその患者さんが何科にかかるのかがすぐに分かります。
他にも受付機に「初診ボタン」があります。初診の場合には、患者さんに問診を行ったりしなければなりません。しかし、「初診ボタン」を使えば初診で来院した患者さんだと受付で認識できるので、スタッフの手が空き次第、初診の方の対応をすることができます
患者さんが行う予約についても、単科でも規模の大きな複数科の病院でも対応できるようになっています。曜日ごとに受診可能な診療科を設定したり、午前午後で変更がある場合も対応可能です。
業務自動化のメリットと効果とは?
『株式会社インテクア』の石原剛代表に自動化ソリューションについて伺いました。
——クリニック業務を自動化することのメリットについて教えてください。
まずクリニック側の視点で申し上げます。これまでは来院する患者さんの人数に応じて、受付の職員さんを配置しておかなければいけませんでした。しかし、フロント作業を機械化することによって、受付は最小限の人数で回すことができるようになります。
昨今の人材不足、離職率の高い中、煩雑な業務を少しでもシンプルなものにし、新しいスタッフでもすぐに覚えてもらえる仕組みができます。また事務処理が機械化されることにより、生じた時間でよりよい接遇サービスや重要な業務へシフトしてもらえることも大きなメリットです。忙しすぎて疲弊し、ついには退職してしまうといったリスクも軽減されます。また、機械化することによって生じた時間を人にしかできない重要な仕事に充てることによって、スタッフの皆さんの負担を軽減できます。
患者さんからすると、例えば受付でいうとポイントは「見える化」です。自分の番号がモニターに出ていれば「受付は済んでいるんだな」「自分は○人目だな」と分かりますし、待合室で「受付は済んでいるのかしら」などと不安に思うことはありません。
クリニックにとっては効率化ができ同時に、患者さんにはより良いサービスを提供することができます。例えば、最近は回転寿司でも受付で番号が書かれた紙を引きますよね。あれがないと、ただただ「ずっと待ってなきゃいけない」じゃないですか。同じ原理だと思います。
——クリニック側としては管理のしやすさというのが大きなメリットになりますか。
はい。例えば、朝の受付で患者さんが100人ぐらい来られるところであれば、職員さんが一人で運営するのはやっぱり厳しいわけですよ。朝の開院前は忙しいし、そこをなんとか少しの人数で対応できないかと思うわけです。自動化ができて、機械が一人前の仕事をするとなれば非常に助かりますよね。業務の自動化というのは、診療を「見える化」してあげることで、クリニックも患者さんも自然と流れを理解して人を介さなくても診察が進む、明確化できるのが一番のメリットになると思います。
——御社の自動化ソリューションサービスを導入しているクリニックからの反響はいかがですか。
実際に慣れるまでは、どうしても移行期間的なものが発生しますが、導入して、2カ月も経つと職員さんも患者さんもすっかり慣れて、非常に便利になった、効率的になったというお声をいただいております。受付の数を減らしても大丈夫そうなので、他の業務にマンパワーを回せたというケースもあります。
来院数が多いクリニックさんですと1日に200人も患者さんが来られるわけです。そこで今まで必ず3人受付のところにいたのが、1人で済むようになったとか、そういうケースもあります。
自動化の要望は受付と精算に多い
——クリニックからの要望が多い自動化ソリューションとは何になりますか。
職員の方が時間を取られるのはやはり精算のところですね。あとは初診の方、初めて来られた方への対応、この二点だと思います。ですから、受付、精算の自動化への要望は高いですね。
診療科目にもよりますが、例えば整形外科さんの場合、半分ぐらいの患者さんがリハビリを受けます。1日当たり、200人以上の患者さんが来院されるところもありますが。そうすると、自動受付と自動精算機を入れることによって、本当に機械が2人分の仕事をしちゃいますから、効果は大きいです。クリニックさんにとって、機械がなくてはならないスタッフの一員になるわけです。
——クリニックが導入する場合ですが、予約から自動精算機まで1セットで入れることが多いのでしょうか?
セットで導入されることは多いですね。自動受付機と自動精算機とか、会計案内表示と自動精算機とかはよくセットで導入を希望される方が多いです。もちろん、まずは精算機から、など単体で導入する方もいらっしゃいます。予約に関しては、どうしても予約システムと受付業務は紐付けになってしまうので、既存の予約システムによっては、そこはそのまま他社さんを使ってくださいというケースもあります。
人間が行っていることをそのまま横移動はできない!
——業務を自動化することを考える際に肝となるポイントはなんでしょうか?
人間が担当している業務をすっかりそのまま機械に横移動できる、と考えないことです。現場の方々からすれば、 今、手作業でやっているものを全部機械化できると考えがちです。しかし、単純に人間がやっている作業をそっくりそのまま機械にさせようとしても、やっぱりそれは無理なのです。
機械に何ができるのかを理解した上で、「機械ができる範囲はしっかり横移動して機械にやってもらう」と考えるべきなのです。そうすると、残りの業務が見えてきます。その残りの部分を人間が補おうと考えると結構うまくいきます。
つまり、ツールを入れるだけではなく、業務フローの再構築、最適化を行わなければいけません。
——なるほど。
クリニックで行っている作業が本当に必要なのかを一度精査して、なぜこれを手作業でやっているのか、手作業でやることが必要かどうかイメージします。そこをしっかり精査してみると意外と手作業は減ります。この精査をしないと、業務の効率化は厳しいです。
ただ、クリニックにはそれぞれ積み上げてきているものがありますから、今までずっとこうやってきたとか、そういったものを減らす作業ですから意外と難しいわけです。外から言うのは簡単ですけれど、実際は現場の反対などもあります。
うまくいく例としては、事務長クラスの方が鶴の一声といいますか、「今までやってきたことをとりあえずいったん置いて。これを入れて、これを軸に考えてみてください」と舵を切っていただく方がいるとガラッと変わります。
そうすると、作業を機械に横移動するのではなく、足し算引き算の考え方が出てくるのでうまくいきますね。事務長さんがいない場合は、院長先生がしっかり統率を取っていただくと大概うまくいきます。
——なるほど。ただただ導入すればよいというものではないのですね。
95%ぐらいは受け入れていただいて……機械化という考えを現場の方々にもスイッチングしてもらいつつ、残り3〜5%のところは現場で調整しながらカバーしてもらうということはよくあります。
機械化のタイミングは、どうしても人でないとできないからと、ずっとそのやり方でやり続けていく中で、来院数がどんどん増えていった場合ですね。あとはスタッフの手は多くて分業化されているところは、実は効率化の余地はまだまだあって、導入のメリットも大きい場合があります。人で補えるから機械化の必要性を見いだせないこともありますが、入れたらすごく楽になったというケースもあります。
——なるほど。しかし、そのようなクリニックもいつまでも手が足りている状態でいけるかどうかは分かりませんね。
それはそうです。ですからやはり自動化のソリューションを導入するにしても適材適所を考えないとうまくはいかない、ということになります。
機械にできることは機械にやらせた方がお得!
——自動化ソリューションを導入しようと考えているクリニック院長にアドバイスをお願いします。
クリニックに限らず新規開業の店舗や事業を展開される方もみんな同じだと思うのですが、人の問題というのは意外と深刻なものです。例えば、新規開業のクリニックの場合、システムの導入、運用も一段落し、1年後くらいに我々が伺うと、ガラッと職員さんが変わっているケースも少なくはないのです。
正直、機械にできることは機械に任せておける環境を作っておけば、仮に人が変わっても業務に支障がない体制を維持することができるのです。そうしておけば、人材で業務フローが振り回されるといったことがなくなります。人手の必要な部分をなるべく減らしておくというのは、長い目で見ると必要な投資になるのではないでしょうか。そういった面も視野に入れて、クリニックのシステムを構築されるとよいかと思います。
——ありがとうございました。
適正人材の不足や働き方改革によって、クリニック院長は、スタッフ、自身の省力化に取り組まざるを得なくなります。そのときには、今回紹介したような自動化サービスが力になってくれるでしょう。機械ができることは機械にやってもらい、できないところを人間が補う——そのように考えるのがIT化であり、機械に振り回されるのではなく、機械を使いこなす、それが自動化に成功する秘訣のようです。
特徴
決済
システム提携
機能
タイプ
種別
診療科目
この記事は、2022年10月時点の情報を元に作成しています。