完全予約制で年間150日間休めるミニマム開業を提唱!『らいむらクリニック』(來村昌紀院長)の生産性の高さの秘密

ここ数年、ドクター+事務1人程度の最低限の人数でクリニックを回す「ミニマム開業」という言葉を耳にする機会が増えています。人口減に伴い人口あたりの医師数が多くなってきていること、コロナの余波、働き方の多様化促進など理由はさまざまです。

そうした世の中の動きを見てミニマム開業に興味を持っているものの、「どんなふうに準備を進めたらいいのかわからない」という人もいるでしょう。また、既にミニマム開業しているけど、なかなか軌道に乗らずに悩んでいるドクターもいるかもしれません。

そうした人たちにとってのバイブルとして、いま注目を集めているのが、内科・外科・脳神経外科・漢方内科を標榜する『らいむらクリニック』の來村昌紀院長が著した『がんばらない小さなクリニックの経営戦略』(クロスメディア・パブリッシング)です。

そこで今回、同著を発売するに至った経緯や、そもそもなぜミニマム開業をすることになったのかについて、來村院長にお話を伺いました。

 

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複数人のスタッフが同時にインフルエンザにかかってしばらく休んだことで、夫婦ふたりでクリニックを回すコツを身につけた

――『らいむらクリニック』は、開業当時は6人体制だったとのことですが、どんなきっかけがあって奥様とふたりでの運営にシフトしたのでしょうか?

開業から1、2年は患者数も少なく時間を持て余していたこともあり、往診に出たり老人ホームの嘱託医を務めたりしながら、いかにして自院を大きくしていくかを考えていました。

ところが、3、4年経ってようやく忙しくなってきた矢先にスタッフの退職が続き、今いる人数で回していくために工夫する日々を送っていたのですが、あるとき、スタッフふたりが同時にインフルエンザにかかり、5日ほど、自分と家内とでクリニックを回すことになりました。

このとき、ふたりでも運営可能なことがわかったことで、休んでいたふたりが後々退職してからは、新しいスタッフを雇うことなく夫婦だけでやっていくことにしました。

完全予約制にしたことで、患者さんが自発的に次回の予約をとるようになったため、コンスタントに売上が立つようになった

――夫婦での運営にシフトしたことによるメリット、デメリットを教えてください。

まず、人件費が減ったことで利益が上がりました。それだけでなく、結果的に売り上げも上がりました

スタッフが何人かいたときは、基本予約制で当日来院した患者さんもその合間に診察していたのですが、ふたりしかいないとなると準備が間に合わないので、前日までの完全予約制にしたんです。

それによって、一人ひとりの話をゆっくり聴いてあげられるようになったし、患者さんの検査の希望にもその日に対応できるようになったことで単価が上がりました。

また、完全予約制になったことで、患者さんが会計時に自発的に次の予約を取ってくれるようになったので、コンスタントな売上が見込めるようになりました。

万が一自分が診療できない場合の対策を考えておくことは大切

――反対にデメリットはありましたか?

ふたりだと寂しさを感じることもあるのと、どちらかが体調を崩した際などに休診にしないといけないことです。

もちろん、休診にした場合、予約してくださっている患者さんに対しては、代わりの日にちを打診します。ちょうど昨日も神戸への出張の帰りに停電で新幹線が止まってしまい、今日の診療に間に合わないようなら患者さんに連絡を入れないといけないということで、新幹線が復旧するまでの間、家内と密に連絡を取り、日曜日の休診日への振り替えを打診しようと言っていたところでした。

結果的に復旧したから杞憂で終わったんですけどね。

かかりつけの患者さんの急な体調不良に備えて予備枠も用意

――完全予約制にして以降、飛び込み患者さんにはどう対応されていますか?

完全予約制であることをしっかり説明したうえで、別日に予約をとってもらうか、あるいは、僕は火曜日だけは予約不要の別の医療機関で外勤しているので、そちらにいらしてくださいと伝えています。

とはいえ、なかにはうちをかかりつけ医としている患者さんもいるので、かかりつけの患者さん向けに当日の予備枠も用意はしています。基本的には、午前中40人、午後40人の合計80人診ているので、全体としては「80人+α」になります。

完全予約制なら待ち時間が少なく感染の心配も不要

――完全予約制になったことに対する、かかりつけの患者さんの反応は?

反応は良好です。“なんとなく調子が悪いから診てほしい”と気軽に受診できないデメリットはあるものの、待合室で咳をしている患者さんなどと鉢合わせることがないことは、大きな安心材料になっているようです。

しかも、待ち時間がないからストレスも溜まりにくいですよね。通常の診察は『らいむらクリニック』だけど、緊急時に診てほしいときは予約不要のクリニックに行く”などうまく使い分けていらっしゃる患者さんも多いです。

ITを駆使すると業務効率が著しくUPする

――完全予約制へとシフトするにあたって導入したツールはありますか?

もともと電話で予約を受け付けていたところ、Webで予約を受けられるシステムを導入しました。レジは手打ちタイプからバーコードを読むタイプに切り替えて、自動釣銭機も導入しました。ただし、患者さんが一から十まで操作するタイプではなく、受付で家内が操作するタイプです。

コロナワクチン接種受付をスタートしてからは、問い合わせや予約の電話が鳴りやまなくなったため、自動応答システムも導入しました。新しいシステムへの移行中の1~2か月は扱い方に慣れなかったり、飛び込みの患者さんに予約システムについて説明する必要があるために手間がかかることもありますが、完全に切り替わったら、“こんなに楽になるならもっと早くに導入すればよかったな”という感じです。

今後も、機械に切り替えることで楽になる部分はどんどん刷新していきたいです。

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利便性を追求するだけではなく、時には患者さんによって対応を変えることも必要

――現在、導入を検討しているシステムはありますか?

Web問診キャッシュレス決済です。

一方で、多くのクリニックが導入している自動血圧計に関しては、医師自ら血圧測定を行って患者さんと自然にコミュニケーションをとれる場だと思っているので、今後も手動でやっていきたいと思っています。

同じ理由で、本来なら電話も人が応答したほうがコミュニケーションをとりやすいのは事実ですが、ふたりしかいないので、ある程度割り切って自動化していくことは大切です。ただし、たとえば自動音声の電話が難しい高齢の患者さんには、直接つながる電話番号を教えるなどして、臨機応変に対応しています。

すべてを自院でやろうとせず、外注できるところは外注することで負担を軽減できるし、時間を有効に使える

――外注も積極的に利用されていますか?

検査をはじめ、大きな病院や専門の医療機関に任せられるところは任せるようにしています。

ホームページに関しても、文章や画像は自院で用意するけど更新は制作会社にお任せしているし、顧問税理士もいます。社労士さんへの依頼は、スタッフがゼロになったタイミングで必要なくなりました。

それ以外にも、開業コンサルタントの方はいらしてくださっています。といっても、コンサルタントの方は、こちらから依頼しているわけではなく、毎回、税理士の先生と一緒に訪ねてきてはお互いの近況を報告して、情報交換しています。良い刺激になってますね。

すべての業務を自院でやろうとせず、必要に応じて外注することで年間150日間の休日を確保できているので、休日を利用して新しいビジネスについて考えることもできるし、SNSで発信するための動画制作に時間を充てることもできています。

異業種交流も趣味も楽しむことでコラボレーションの機会やチャンスが訪れやすくなる

――サプリメント監修など、異業種の方とのコラボレーションも多いですが、普段から人付き合いを大切にされているからこそなのですね。

(監修している)頭痛軽減のサプリメントに関しては、うちのクリニックで、育毛や爪の強化に効果的とされるサプリメントを処方したところ、数人の患者さんから「これを飲み始めて頭痛が起きにくくなった」の声が上がったので、メーカーに電話して配合成分などを確認したのがきっかけです。

その結果、実際に頭痛緩和に役立つとされるビタミンやミネラルが豊富に含有されていることがわかり、先方の社長から「これをアレンジした、頭痛緩和目的のサプリメントを一緒に開発しませんか?」とお声掛けいただきました。

患者さんのなかには、あまり多くの薬を飲み続けたくないという方もいらっしゃるので、その代わりとしてサプリメントを摂取できるのはすごくいいと思い二つ返事でした。

それ以外にも、友だちに誘われてトライアスロンに参加したことをFacebookで発信したら、イグノーベル賞を受賞している新見正則先生から、先生が執筆されたトライアスロン本を寄贈いただいたうえ、先生の漢方のYouTubeチャンネルにゲストとして出演させていただくことになりました。

“トライアスロンと経営と漢方をテーマに対談したい”とのことだったのですが、この3つは意外と共通点も多いので、トークの内容を考えるのもおもしろかったですね。たとえば、トライアスロンも経営も時間管理が大事だし、漢方を処方しても一気に儲かることはないけど、患者さんが細く長く飲み続けることによって経営が安定するし、トライアスロンも漢方も、いいコーチや先生に巡り合えるかどうかで結果が大きく変わってくるところはある。

いろんなつながりを発見するのも、ちょっとおもしろいですよね。

1日に80人の診察を可能にするためには、診察の流れをスムーズにするための工夫が不可欠

――異業種交流を重ねることで、知名度が上がっている実感がありますか?

ありがたいことに、仕事やインタビューの話を持ち掛けてもらえることは増えました。また、私が書いた本を読んでくださったドクターが、診察を見学にいらしたこともありました。

彼いわく、「午前に40人、午後に40人だなんて本の中での絵空ごとかと思っていたけど、実際目の当たりにして本当だとわかった」とのことでしたが、うちは僕が診察終了ボタンを押した時点で、そのまま会計できるレベルまで入力していて、最後に家内がチェックするだけだから、診察の流れが極めてスムーズなんです。

しかも、ほとんどがかかりつけの患者さんで診察内容や流れが変わらないのも、スムーズに診察できる理由です。

SNSのターゲットはかかりつけの患者さん。患者さんにとって有効な情報を発信していきたい

――YouTubeやInstagramでの発信も、認知度UPにつながっていますか?

実は、SNSでの発信やYouTubeのコンテンツは、認知度UPや集患のためではなく、基本的にすべてかかりつけの患者さんの理解促進のためにやっています。

患者さんから質問されることって大体同じですが、一人ひとりにゆっくり説明する時間はなかなかとれません。それなら、YouTubeなどに動画をアップしておけば、患者さんの都合がいいときにゆっくり視聴してもらえるんじゃないかなと考えたのが、発信しはじめたきっかけです。

しかし、患者さんに来院のきっかけについてアンケートをとったところ、なかには、YouTubeでうちのことを知ってくれたという方もいらっしゃいました。

複数の診療科を標榜するか、自分の専門を追求するかはしっかり考えて決めることがおすすめ

――先生ははじめからミニマム開業を目指していたわけではないとのことですが、もし今からミニマム開業するとしたら、今のクリニックとはやり方を変えたい部分はありますか?

システムに関しては現状かなり理想的ですが、しいて言えば、標榜科を絞りたいです。

開業前はどれだけ患者さんが来てくれるかわからなかったこともあり、なるべくいろんな科を標榜したいと思ったけど、専門ではない科まで標榜したことで、得意とする領域の診察に集中できず、逆にストレスになっています。

ただし、地域によっては、総合診療のような形で、専門性を打ち出しすぎず、幅広い年齢の患者さんの不調に寄り添ってくれる、いわゆるファミリークリニックが必要とされることもあるので、患者さんのニーズも考えながら決めていくのがいいと思います。

ミニマム開業のノウハウを広めることで、日本各地のクリニックの存続を支えたい

――最後に、今後の目標について教えてください。

全国には、黒字だし患者さんにも親しまれてすごくいいクリニックだけど、後継者がいなくて閉めざるを得ないクリニックがたくさんあります。

そうしたクリニックがひとつでも減るよう、若手医師と承継したい医師のマッチング方法を模索中です。

そのファーストステップが、自分がこれまでやってきたクリニックを運営するノウハウや漢方に関する知識を後輩のドクターたちに教えていくことだし、ノウハウを詰め込んだ書籍を出版することです。

実は、『がんばらない小さなクリニックの経営戦略』を出版したきっかけも、うちの近所ですごくはやっていた耳鼻科兼小児科がコロナの影響で閉院したことでした。

いいクリニックが閉院することは地域にとっても大きな損害なので、僕みたいなやりかたで固定費を少なくして耐えしのぐ方法を広めたいと出版社の方に掛け合ったことで出版に至ったというわけです。

マッチングや漢方の知識伝授に関しては、志のある先生たちが自然と集まってくる場を作りたいと、「春桜会(しゅんおうかい)」の名でコミュニティをはじめたばかり。

現状は、月に一回の勉強会を開催しているレベルですが、この会も大きく育てていきたい思いがあるし、これからの働き方に関することをはじめ、医療業界で働くみなさんにとって少しでも役立つことを発信していけたらと思っています。

日本初のオンライン診療・オンライン服薬指導・処方薬宅配のワンストップ・プラットフォームを提供

特徴

1.患者さん会員登録による最寄りの医療機関を紹介する集患機能 2.予約からオンライン診療・服薬指導・処方薬宅配迄、ワンストップで提供 3.初期費用・月額費用が0円 4.処方薬は全国配送体制実現(大都市圏は即日配送対応)

システム提携

電子カルテ レセコン CTIシステム 会計システム

オンライン診療機能

診療予約 ビデオチャット受信 クレジットカード決済 メモ 診察メニュー管理 診察時間設定 決済管理 ファイル共有 オンライン問診 スタッフ管理 宛名ラベル印刷 患者招待 処方箋送信

診療科目

内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、、循環器科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、肛門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、気管食道科、放射線科、麻酔科、心療内科、アレルギー科、リウマチ科、リハビリテーション科、、、、
Mac・Windows・iPadで自由に操作、マニュア ルいらずで最短クリック数で診療効率アップ

特徴

1.使いやすさを追求したUI・UX ・ゲーム事業で培って来た視認性・操作性を追求したシンプルな画面設計 ・必要な情報のみ瞬時に呼び出すことが出来るため、診療中のストレスを軽減 2.診療中の工数削減 ・AIによる自動学習機能、セット作成機能、クイック登録機能等 ・カルテ入力時間の大幅削減による患者様と向き合う時間を増加 3.予約機能・グループ医院管理機能による経営サポート ・電子カルテ内の予約システムとの連動、グループ医院管理機能を活用することにより経営サポート実現 ・さらにオンライン診療の搭載による効率的・効果的な診療体制実現

オプション機能

オンライン診療 予約システム モバイル端末 タブレット対応 WEB予約

対象規模

無床クリニック向け 在宅向け

提供形態

サービス クラウド SaaS 分離型

診療科目

内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、、循環器科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、肛門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、気管食道科、放射線科、麻酔科、心療内科、アレルギー科、リウマチ科、リハビリテーション科、、、、
QR決済機能搭載セミセルフレジ

特徴

・キャッシュレス・QR 決済機能が充実し標準搭載 ・締め作業では遺失金ゼロ! ・残業時間の軽減、スタッフ様の業務も軽減されます ・バーコード付き領収書を印刷し、スキャナーで読み取るだけの従来通りの導線を確保できます ・両画面タッチパネルなので患者様と同じ画面を対面で操作できお会計のサポートが可能です

種別

レジスター POSレジ

決済

現金 クレジット 電子マネー

機能

会計機能 精算機能

システム提携

電子カルテ レセコン

タイプ

セミセルフ

診療科目

内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、、循環器科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、肛門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、気管食道科、放射線科、麻酔科、心療内科、アレルギー科、リウマチ科、リハビリテーション科、、、、

取材協力 医師 來村昌紀(らいむら・まさき)

らいむらクリニック院長。和歌山県立医科大学卒業後、和歌山県立医科大学附属病院にて一般内科、脳神経外科などを研修後、日本赤十字社和歌山医療センターを経て和歌山県立医科大学附属病院紀北分院脳神経外科助教に。漢方を学ぶために千葉大学先端和漢診療学講座で漢方専門医を取得後、あきば伝統医学クリニック、証クリニック東京、千葉中央メディカルセンター脳神経外科を経て、2014年12月にらいむらクリニックを開設。「東洋医学と西洋医学を融合し、みんなを美しく、元気で、笑顔に!!」を理念にクリニックの診療以外にもYouTube、Instagram、stand.fm、17LIVEなどでも情報を発信中。医薬学博士、日本脳神経外科学会脳神経外科専門医、国立病院機構認定臨床研修指導医、日本頭痛学会頭痛専門医・指導医、国際頭痛学会認定HeadacheMaster、日本東洋医学会漢方専門医・指導医、千葉大学臨床教授。


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