クリニック開業にあたって電子カルテを探している人のなかには、選択肢が多くてひとつに絞るのが難しいと感じている人もいるでしょう。そこで今回は、電子カルテを選ぶときにチェックすべきポイントを説明していきます。
新規開業クリニックにおける電子カルテ導入率は95%
まずは、クリニック開業時には必ず電子カルテを導入したほうがいいのかどうかを考えていきましょう。「矢野経済研究所」が2019年に実施した「新規開業クリニックにおける医療機器・サービス利用状況等に関する法人アンケート調査」によると、電子カルテや予約システム、心電計などの主要医療機器のうち、もっとも導入率が高い医療機器が電子カルテで、全体の95%を占めているという結果が出ています。
≪主要医療機器の導入率≫
電子カルテ | 95% |
予約システム | 62% |
web問診システム | 9% |
X線撮影装置 | 58% |
超音波画像診断装置 | 60% |
心電計 | 65% |
電子内視鏡システム | 22% |
血球計数装置 | 30% |
インフルエンザ迅速検査キット | 68% |
参照:株式会社矢野経済研究所「新規開業クリニックに関する法人アンケート調査を実施(2019年)」
一方、厚生労働省の発表によると、令和2年における一般診療所の電子カルテシステム等の普及率は49.4%とされていますが、これは、紙カルテの時代に開業したクリニックもたくさんあることを考えると当然でしょう。
クラウド型・オンプレミス型とは?
ここからは、電子カルテの概要について詳しくみていきましょう。電子カルテは、クラウド型とオンプレミス型の大きく2種類に分けることができます。クラウド型は、電子カルテのデータをクラウドに保存して管理するため、インターネットに接続した端末さえあれば場所を問わず使用でいます。一方、オンプレミス型は院内に専用のサーバーを設置して、ローカルネットワークに接続することでデータを保存・管理するため、院内でしか使うことができません。そのぶん、セキュリティレベルが高いなどのメリットがありますが、訪問診療などのニーズが増えてきている昨今の主流はクラウド型。また、初期費用や月額費用が安くて済むという点からもクラウド型の人気が高まっているので、今回は、クラウド型に絞ってチェックポイントを説明していきます。
クラウド型電子カルテの選定ポイント
では早速、クラウド型電子カルテの選定ポイントを説明していきます。
レセコン分離型/レセコン一体型
クリニックの運営には、診療報酬を請求するためのレセプトを作成するコンピューターシステムである「レセコン」が不可欠です。レセプトコンピュータがレセプト用として独立している場合、電子カルテと連携させて使うことになります。これを「レセコン分離型」といいます。一方、レセコン一体型(レセコン内蔵型)のコンピュータであれば、設置スペースが一台分しか必要ありません。ただし、下記のようにデメリットも存在します。
メリット | デメリット | |
レセコン分離型 | ・電子カルテまたはレセコンのどちらか一方に問題が起きた場合、もう一方は使うことができる ・電子カルテを別のメーカーのものに乗り換えてもレセコンは引き続き使用可能 |
・電子カルテとレセコンの2つの操作が必要なぶん、入力に時間がかかる ・2台の端末を設置するスペースが必要 ・障害が発生してどちらが原因かわからない場合、電子カルテメーカーにもレセコンメーカーにも問い合わせが必要 |
レセコン一体型 | ・ひとつの端末で電子カルテもレセコンも操作できる ・トラブル発生時に問い合わせ窓口がひとつに集約されている ・インターフェイスが統一されていて使いやすい |
・電子カルテまたはレセコンのどちらか一方に問題が起きたとしても、両方のシステムが停止となる ・乗り換えの際、2つのシステムの費用が同時に発生する |
メリット・デメリットを比較すると、作業効率を優先するなら一体型、トラブル発生時のことを考えたら分離型とも考える人も多いかもしれません。また、初期費用に関しては、一体型は2つのシステムの機能を有していることから分離型より高くつきますが、言わずもがな分離型であれば2つのシステムの初期費用が必要ということになるので、どちらがお得かに関しては具体的にほしいメーカーのものの価格で比較するのが賢明です。
医療機器やシステムとの連携が可能かどうか
医療機器やweb問診システム、画像ファリングシステム、予約システムなどと連携可能かどうかも大事なポイントです。電子カルテによっては、同じ会社の製品としか連携できないものもあります。その点、たとえば電子カルテ「CLIUS」は60社・120種類以上の医療機器やシステム、外注検査会社などとの連携が可能です。連携の範囲を確認する際は、自院に導入予定の医療機器やシステムをリストアップしておくことが役立つでしょう。
対応デバイスおよび対応OS
クラウド型電子カルテのなかには、MacまたはWindowsしか使用できないものもあれば、OSのバージョンが限られているものもあります。また、タブレット端末などでも利用可能かどうかは、訪問診療を考えているクリニックにとっては重要なチェックポイントでしょう。
業務を効率化してくれる機能を備えているかどうか
AIが自動学習して、よく使う処方やセット、SOAPをランキング形式で表示してくれるようになる機能や、専用のペンとiPadを使うことで手書きのように自在にシェーマを描ける機能などが備わっていれば、業務効率はぐっと向上します。
サポート体制の充実度
電子カルテ使用中に不明点が出てきたりトラブルが発生したりした場合、患者には焦っている姿を見せられないとしても、心のなかではパニックになっていて当然です。そうした場合に一刻も早く解決できるよう、サポート体制が整っているかどうかは大きな問題。土日に診療しているクリニックであれば、土日のサポートの有無についても確認したいところです。
安定性
クラウド型とオンプレミス型を比べたとき、クラウド型のほうに不安な点があるとすれば、そのひとつは安定性でしょう。なぜかというと、診療報酬改定時などに、複数のクリニックが同時にアクセスすることで、サーバーが不安定になることがあったからです。ただし、そうした事象を受けて各メーカーも改善に改善を重ねているため、現在では安定性に関しての不安は少なくなっているといえます。とはいえ、導入時には安定性に関する評判も気になって当然。メーカーのホームページなどでは、安定性に関してマイナスな印象を持たれるようなことはあまり発信してはいませんが、先に電子カルテを導入している先輩医師らの使用に関する感想を聞くのは、安定性を確認するひとつの方法です。
気になる電子カルテは実際に試用してみよう!
以上の点を踏まえて選んだとしても、実際に触ってみたら「思っていた使用感と違う!」ということはあり得ます。電子カルテは毎日使うものなので、使用感に満足できるかどうかはとても大事なポイント。しかし、使用感の満足度は、一人ひとりの好みによって大きく異なるので、記事を参照するより実際に触って確認することが賢明。そのため、ほとんどのメーカーは試用期間を設けてくれているので、気になる電子カルテがある人は、まずは試用を申し込むところからスタートしてくださいね!
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2023年2月時点の情報を元に作成しています。