医療事務がカルテについて知っておくべきこととは? カルテの定義や基本をおさらい

電子カルテは、医師だけでなく医療事務も使うものです。そのため、医療事務を雇用する際には、電子カルテを正しく使えるかどうかをチェックして、問題があるようなら、電子カルテについて正しく知ってもらうことが大切です。そのためにもまず、医師自身がカルテについて正しく理解しておきましょう。

目次
  1. カルテを書く目的とは?
    1. 法律で定められているため
    2. 治療方針などを決めるうえで必要であるため
    3. 保険請求の根拠となるため
    4. 医学教育に貢献するため
  2. カルテの必須記録事項、カルテの書式とは?
    1. 一般的なカルテに含まれる情報とは?
    2. カルテの書式とは?
      1. 様式第一号(一)の1への記録内容
      2. 様式第一号(一)の2への記録内容
      3. 様式第一号(一)の3への記録内容
  3. 問題指向型医療記録「POMR」とは?
    1. POS(Problem Oriented System)
    2. POMR(Problem Oriented Medical Record)
      1. 基本データ
      2. 問題リスト
      3. 初期計画
      4. 経過記録
  4. カルテ開示請求を受けた場合の正しい対応方法は?
  5. カルテ開示の重要性とは
  6. カルテ開示のメリットとは?
  7. まとめ

カルテを書く目的とは?

まずは、カルテを書く目的から確認していきます。「カルテ(karte)」とは、“診療記録のカード”という意味のドイツ語で、日本でも「カルテ」の呼び名が浸透していますが、日本語表記にすると「診療録」となります。では、なぜ診療録をつける必要があるかというと、以下の4つの理由があります。

①法律で定められているため
②治療方針などを決めるうえで必要であるため
③保険請求の根拠となるため
④医学教育に貢献するため

それぞれ詳しくみていきましょう。

法律で定められているため

カルテの作成は、医師法第24条1項において、「医師は、診察をしたときは、遅延なく診察に関する事項を診療録に記載しなければならない」と定められています。なお、医師法第24条2項において、「病院または診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院または診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、5年間これを保存しなければならない」と、記録したデータの5年間の保存も義務付けられています。

参照:医師法

医療事故や医療過誤が疑われる場合、一般的に、医療機関に対してカルテの開示請求がおこなわれることになるため、万が一に備えて、正しい情報を記録して保管しておくことも大切なのです。

治療方針などを決めるうえで必要であるため

現段階にいたるまでの患者の状態や、それに対して提供されてきた医療行為や薬、提供するに至った医師の考えなどが時系列で記録されているカルテは、その後の治療方針などを決めるうえでも無くてはならないものです。

保険請求の根拠となるため

保険の診療報酬の根拠となるものはカルテです。カルテに記載していないことを請求すると、不当請求あるいは不正請求となる可能性があります。そのため、保険請求のためには、診療事実に基づいてカルテに必要事項を適切に記載する必要があります。

医学教育に貢献するため

カルテは、臨床参加型実習の資料として使われることもあります。実際の診察においてどのようにカルテを記載するのかを学ぶ必要があるためです。また、カルテの記載内容を時系列で追っていくことで、それぞれの治療や処方がどのような結果をもたらすのかを理解することもできます。

カルテの必須記録事項、カルテの書式とは?

続いては、カルテに必ず記録しなければならないことがいくつかあります。また、書式に関しても決まりがあります。

一般的なカルテに含まれる情報とは?

まずは、カルテに記録しなければならないことを説明します。カルテに必ず記録しなければならないことは以下の4項目です。

①患者の氏名・性別・年齢・住所
②病名および主な症状
③治療方法
④診療をおこなった年月日

ただし、2つめの「病名」に関しては、診断がつかない場合は記すことができないので、診断がつかないということ自体を記すことになります。

また、上記4つの項目以外にも、既往歴や家族歴、社会歴、嗜好(1日のアルコール摂取量や喫煙・禁煙など)、アレルギーの有無、身体所見、検査結果、経過、治療方針などを記すのが一般的です。

このうち、①の患者の氏名・性別・年齢・住所および健康保険証情報などは、後述する「様式第一号(一)の1」に記載します。

上記の②③は、後述する「様式第一号(一)の2」に記載します。

カルテの書式とは?

カルテの書式に関しては、「保険医療機関及び保険医療養担当規則」において決められています。具体的には、「様式第一号(一)の1」「様式第一号(一)の2」「様式第一号(一)の3」の3つの様式があり、同規則をまとめたウェブページにもテンプレートがアップされています。

参照:保険医療機関及び保険医療養担当規則

様式第一号(一)の1への記録内容

「様式第一号(一)の1」は、紙カルテにおいて、カルテの表紙となる部分です。この部分に、前述した“必須記載項目”患者の氏名・性別・年齢・住所および健康保険証情報などを記載します。

参照:様式第一号(一)の1

様式第一号(一)の2への記録内容

「▲様式第一号(一)の2」は、下記参照ページにある通り、 「既往症・原因・主要症状・経過等」「処方・手術・処置等」の2項目を記す欄があります。

参照:様式第一号(一)の2

いずれの項目も、「SOAP(ソープ)」と呼ばれる方法で記載するのが一般的です。「SOAP」は、それぞれのアルファベットを頭文字とする単語から成る言葉で、「S」「O」「A」「P」のすべてを埋めます。4項目の概要は以下の通りです。

  • Subject:患者様の主訴などから得られた主観的なデータ
  • Object:検査などから得られたデータ
  • Assessment:主観・客観的なデータに対する分析・考察・評価など
  • Plan:診療計画、実際におこなう診療行為
  • 様式第一号(一)の3への記録内容

    「様式第一号(一)の3」は、診療報酬を算定・請求するために必要な点数を計算するためのものです。紙カルテにおいて、このページは「会計カード」とも呼ばれていました。ただし、近年はレセプトコンピューターで点数計算がおこなわれるのが一般的です。

    参照:様式第一号(一)の3

    問題指向型医療記録「POMR」とは?

    先に解説した、カルテの書式を理解するうえで大切な「SOAP」は、問題指向型診療録「POMR」において、経過記録を記述するための記法のことです 。また、「POMR」は、患者の抱えている問題を基軸にして、その問題の解決を目指して診療することを意味する「POS」の実践のために編み出された診療記録方法とされています。

    一つひとつの言葉の意味をより詳しく説明します。

    POS(Problem Oriented System)

    患者にとっての問題を中心として物事を考え、その問題解決を目指して診療すること。Disease(病気)、Doctor(医師)の2つの意味を持つDの頭文字を用いた「D-Oriented System(疾患中心主義)」と対極にある考え方です。

    POMR(Problem Oriented Medical Record)

    POSを実践するための医療記録方法。日本語にすると「問題志向型診療録」となります。POMRは、以下の4つのステップから成り立ちます。

    ①基本データ
    ②問題リスト
    ③初期計画
    ④経過記録

    それぞれについて具体的に説明します。

    基本データ

    診療の前提とすべき情報です。主訴、現在の状態、既往歴、生活歴、家族歴などがこれに含まれます。

    問題リスト

    基本データをもとにして、患者が抱えている問題をリストアップします。診断が確定している場合は病名も記しますが、病名が確定していない場合は、問題をそのまま列挙します。具体的に困っている症状だけでなく、社会的な問題や心理的問題も列挙します。

    初期計画

    問題解決のための計画を、問題ごとに立案します。「計画」には、「治療計画」のほかに、診断を確定させるための「診断計画」、患者に説明したり必要な指導をおこなったりする「教育計画」も含まれます。

    経過記録

    解決すべき問題ごとに、SOAP形式で治療の経過を記録します。また、具体的な治療行為や指導内容、患者に対しておこなった説明の内容も記録します。

    カルテ開示請求を受けた場合の正しい対応方法は?

    続いては、カルテの開示請求を受けた場合の対応方法を説明していきます。

    医療機関は、患者からカルテの開示を請求された場合には、原則としてカルテを開示しなければなりません。なぜかというと、「個人情報の保護に関する法律」第28条において、「本人は、個人情報取扱事業者に対し、当該本人が識別される保有個人データの開示を請求することができる。個人情報取扱事業者は、この規定による請求を受けたときは、本人に対し、政令で定める方法により、遅滞なく、当該保有個人データを開示しなければならない」と定められているためです。

    ただし例外として、患者本人または第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害する恐れがあると判断される場合には、開示しないこともできます。

    このことは、前述の「個人情報の保護に関する法律」第28条に但し書きとして明記されています。

    参照:個人情報の保護に関する法律

    開示請求を受けた場合、健康保険証や免許証などで本人を確認したうえで、開示対象範囲を確認します。なお、開示請求の目的や理由を尋ねることは、患者を委縮させて開示請求を阻害する恐れがあるとされるため、開示請求書には、開示の目的や理由を記載する欄を設けないのが基本です。

    開示請求書を受け取ったら、前述の但し書きの内容に該当する可能性がないかどうかを考慮したうえで、開示しても問題ないと考えられる場合は、診療情報のコピーを患者に提供しま す。

    カルテ開示の重要性とは

    カルテ開示は、患者の権利とされていますし、前述の通り、医療機関側は例外を除いてこれを拒否することができません。

    患者および医療機関は、カルテ開示を通して信頼関係を構築したり、医療過誤などの原因を確認したりすることができるため、患者がカルテ開示の権利を有していることはとても大切なことなのです。

    カルテ開示のメリットとは?

    前述の通り、カルテ開示を通して、患者と医療機関がお互いを信頼したり、医療過誤などの原因を確認したりできることはメリットの一つですが、それ以外にも、カルテを開示することで得られるメリットはあります。

    患者目線だと、自身の疾病や診療内容をより深く理解できることが大きなメリットとなりますが、医療機関目線で見た場合のメリットはなにかというと、患者の医療参加を促進できることが挙げられます。つまり、患者に自信の疾病や診療内容を正しく理解してもらうことで、きちんと治療を受けようと思ってもらいやすいということです。

    まとめ

    カルテについて知っておくべき基本は、紙カルテであっても電子カルテであっても同じです。入力方法や保存方法は違っても、カルテを扱ううえでの心構えなどは変わることはないので、医師だけでなく、スタッフ一同にも同じ心構えも持ってもらえるよう、スタッフ教育にも力をいれられるといいですね。

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    特徴

    1.使いやすさを追求したUI・UX ・ゲーム事業で培って来た視認性・操作性を追求したシンプルな画面設計 ・必要な情報のみ瞬時に呼び出すことが出来るため、診療中のストレスを軽減 2.診療中の工数削減 ・AIによる自動学習機能、セット作成機能、クイック登録機能等 ・カルテ入力時間の大幅削減による患者様と向き合う時間を増加 3.予約機能・グループ医院管理機能による経営サポート ・電子カルテ内の予約システムとの連動、グループ医院管理機能を活用することにより経営サポート実現 ・さらにオンライン診療の搭載による効率的・効果的な診療体制実現

    対象規模

    無床クリニック向け 在宅向け

    オプション機能

    オンライン診療 予約システム モバイル端末 タブレット対応 WEB予約

    提供形態

    サービス クラウド SaaS 分離型

    診療科目

    内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、、循環器科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、肛門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、気管食道科、放射線科、麻酔科、心療内科、アレルギー科、リウマチ科、リハビリテーション科、、、、