
クリニックを開業するにあたって、どのくらいの予算を用意すればいいのか気になるという人は多いでしょう。
予算の総額相場は診療科や開業エリアによっても異なりますが、どの診療科、どのエリアであれ、坪単価を知ればおおよその目安が見えてきそうです。
そこで今回は、クリニックの坪単価相場や、診療科ごとに必要な広さを解説していきます。
クリニックの内装の坪単価は?
“内装の”坪単価とは、1坪(=約3.3平方メートル)あたりにかかる工事費用のことです。1坪がどのくらいなのかをイメージしやすいように説明すると、畳2枚分が約1坪なので、6畳の部屋は3坪ということになります。
では、クリニックの坪単価(=坪あたりの工事費)はどのくらいかかるかというと、30万円~50万円が目安といわれています。つまり、6畳に換算すると90万円~150万円です。
もちろん、クリニックを開業するには6畳では足りません。6畳1ルームの広さではおよそ診察は難しいことは想像に難くないでしょう。
また、30万円~50万円はあくまでも目安であって、機能性や高級感を重視した内装にこだわるとなると、さらにもっと高くなります。さらに、内装を手掛ける会社の価格設定や工期によっても費用が変動します。
診療科ごとに必要な広さは?
坪単価と併せて知りたいのが、診療科ごとに必要な広さです。この両方がわかれば、「坪単価×広さ」の計算方法で必要な資金の目安がわかります。
診療科ごとに必要な広さの目安は以下の表の通りです。
診療科 | 広さの 目安 | 備考 |
内科 | 30~50坪 | ・X線撮影装置 ・自動現像機またはCR ・超音波診断装置 ・心電計 などを 設置できる広さが必要 |
心療 内科 | 20~35坪 | 診療機器をほとんど 必要としないため 30坪前後でも十分 |
消化器 内科 | 40~60坪 | ・X線撮影装置 ・超音波診断装置 ・内視鏡検査システム ・内視鏡洗浄機器 などを 設置できる広さが必要 |
循環器 内科 | 30~40坪 | ・X線撮影装置 ・心電計 ・エコー ・CR ・PACS などを 設置できる広さが必要 |
小児科 | 30~45坪 | ・X線撮影装置 ・自動現像機またはCR ・超音波診断装置 ・心電計 ・顕微鏡 ・ネプライザー(吸引器) などを 設置できる広さが必要 |
耳鼻 咽喉科 | 25~45坪 | ・X線撮影装置 ・自動現像機またはCR ・聴力検査室 (オージオブース設置) ・ネブライザー(吸引器) ・経鼻内視 などを 設置できる広さが必要 |
眼科 | 30~60坪 | ・顕微鏡 ・眼圧計 ・視野測定機器 ・眼底撮影機器 ・視力検査機器 ・角膜測定機器 ・レンズキャビネット などを 設置できる広さが必要。 ※ レーシックや 白内障の手術を行う場合 より広いスペースが必要 |
整形 外科 | 50~70坪 | ・X線撮影装置 ・自動現像機またはCR ・電動サイクル等のリハビリ機器 などを設置できる広さが必要。 ※ リハビリ室として 45平米以上の確保が必要 |
脳神経 外科 | 50~70坪 | CRやMRIを導入する場合と、 導入せず検査は外注する場合で 必要な広さが異なる |
皮膚科 | 15~40坪 | 最低限、 顕微鏡やオートクレーブが あれば開業可能。ただし、 美容皮膚科で 大型の美容機器などを 導入する場合は それなりの広さが必要 |
婦人科 | 40~60坪 | ・X線撮影装置 ・内診台 ・診療用ベッド ・DICOM(ダイコム) 画像を見られる 高精細モニターとPACS ・超音波診断装置 ・コルポスコープ などを 設置できる広さが必要。 ※ ただし、院内でお産も行う 産婦人科の場合は さらに広いスペースが必要 |
泌尿器科 | 40~50坪 | 膀胱用 超音波画像診断装置や 尿流量測定装置、 尿分析装置などの装置を 設置できる広さが必要 |
物件の種類による坪単価の違いは?
クリニックの坪単価は、物件の種類によっても異なります。物件の種類とは、居抜き、スケルトン、新築などを指します。
このなかでもっとも坪単価が安いのは、基本的に前の借主が残した内装や設備をそのまま使うことになる居抜きです。居抜きの場合、当然ながら工事範囲が限られるため、費用相場は低くなる傾向にあります。坪単価の相場としては、10万円~30万円程度と思っておくとよいでしょう。
ただし、前の借主の内装が好みと異なる場合や、著しく劣化していて改修工事が必要な場合はそれより高くつきます。
反対に、もっとも坪単価が高いのは新築です。相場は40万円~60万円。たとえば25坪だとすると、1,000万円~1,500万円ということになります。
クリニックの内装費用の内訳は?
続いては、クリニックの内装費用の内訳をみていきます。
デザイン費・設計費
内装の最初の工程は、デザインおよび設計です。クリニックのイメージやコンセプトを具現化して、仕事しやすい環境を作るためには、まず、建築士やインテリアデザイナーにデザインや設計をおこなってもらう必要があります。
デザイン費・設計費は、どれくらい手の込んだデザインを希望するかなどによって変わりますが、相場としては内装費用の10~20%程度だとされています。
デザイン費・設計費を抑えるためには、どんなデザインにしたいかのイメージをしっかり思い描き、イメージに近い内装の写真資料などがあればそれを先方に提示することが役立つでしょう。
ぼんやりしたイメージしか伝えられず、先方が出してきたデザインに何度も修正依頼を出すと、そのぶん費用がかさんでしまいます。
内装・設備施工費
内装・設備施工費には、内装工事費だけでなく、床や壁、天井などの仕上げ材料費や、電気工事費、水道工事費も含まれます。
内装費用の60~80%程度と大きな割合を占めるので、できるだけ節約したいと考えるかもしれませんが、後から「もっとこうしておけばよかった」となっても簡単に改修できないので、なるべく妥協はしたくないところです。
備品・家具代
診察室から受付、待合室、スタッフルーム、トイレまで、備品や家具が必要な箇所はたくさんあります。
たとえば机や椅子、待合室のソファ、ゴミ箱などのベーシックなものから、クリニックによっては、患者にリラックスして過ごしてもらうためにアクアリウムなどを導入しているところもあります。
備品も家具もクリニックのイメージを司る大切な要素なので、妥協することはよくありません。ただし、不要なものまで購入しているとあっという間に予算オーバーしてしまいます。
備品や家具は後から買い替えたり買い足したりすることもできるので、開業時においては、購入を迷ったものはいったん保留にしてもいいかもしれません。
坪単価の計算方法は業者によって異なる!
クリニックの内装を依頼する業者を選ぶ際、坪単価を判断材料のひとつとする人は多いかもしれません。坪単価によって総予算が変わってくるので当たり前のことですが、数字だけみて判断するのは大変危険です。
なぜなら、業者によって坪単価に含む費用が異なるからです。
たとえば、内装工事費のみを「坪単価」として提示している業者もあれば、設計費も坪単価に含めている業者もあります。そのため、比較検討する際には、どこまでを坪単価としているのかをよく確認することが大切なので、頭の片隅においておいてくださいね!
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2023年9月時点の情報を元に作成しています。