
将来的に自院を医療法人化したいと考えているなら、早い段階から、必要な手続きやスケジュール、費用などについて知っておくと、いざそのタイミングが訪れたときにスムーズに準備を進めることができます。そのなかから今回、医療法人化の手続きを進める前に決めておくことが必要な「社員」「理事」「監事」の役割について説明していきます。
医療法人化の要件とは?
クリニックを医療法人化するにあたっては、満たすべき要件がいくつかあります。そのうちのひとつとして、「社員」「理事」「幹事」を必要人数そろえることが挙げられますが、まずは医療法人が満たすべき要件の概要を説明します。
人的要件
医療法人は原則として下記の人的要件を満たす必要があることが定められています。
※ただし、医療法第46条の5の1項によって、理事については都道府県知事の認可を受けた場合は、1人または2人の理事を置けば足りるとされています
施設・設備要件
医療法人としての法人業務をおこなうために必要な施設・設備を有している必要があります。具体的にどのような施設・設備が必要かというと以下の通りです。
施設に関して
1か所以上の病院・診療所・介護老人施設があること
設備に関して
医療行為に必要な設備・器具があること
資産要件
資産要件に関しては以下について満たす必要があります。
そのほかの要件
そのほかに以下の要件も満たしておく必要があります。
医療法人における理事、幹事、社員の役割とは?
続いては、人的要件の構成要素について詳しく説明していきます。医療法人における理事、幹事、社員の役割は、大まかに説明すると以下の通りです。
理事: 理事会にて意思決定する権限があり、事実上の職務執行淵源を持つ
監事: 医療法人の業務監査などをおこなう
社員: 社員総会において重要事項を決議する権限を持つ
それぞれについてさらに詳しく説明していきましょう。
医療法人における理事とは?
医療法人における理事は株式会社でいう「取締役」、理事長が「代表取締役」のような存在です。医療法第46条の6では、理事および理事長に関して以下のように定められています。
では、理事はどのようにして決定するかというと、社員の総意によって選出します。ちなみに、ここでいう「社員」とは、いわゆる企業の一社員とは異なる、“医療法人における”社員のことです。社員について詳しくは後述します。
また、小規模の医療法人などでは、社員が理事を兼任するケースもあります 。
医療法人における監事とは?
医療法人における監事の職務は、医療法第46条の8項によって以下のように定められています。
上記の内容からもわかる通り、医療法人の監事は、中立な立場からの目線が求められます。そのため、医療法人の社員や理事およびその親族は、医療法人の監事を務めることはできません。
ちなみに、医療法人の業務や財産の状況を監査して、監査報告書を作成するなどといった業務内容から、顧問税理士を選任したいと考える理事長もいるかもしれませんが、顧問税理士は理事長と利害関係にあると判断されて、就任が認められない場合があります。これに関しては自治体によって異なる ので、詳しくは自院の管轄となる自治体に確認することで確かな答えを得られます。
医療法人における社員とは?
医療法人における「社員」とは、わかりやすく表現すると、株式会社における「株主」です。それゆえ、前述した通り、社員総会において重要事項を決議する権限を持つのです。医療法人の社員には、ドクターの身内にもそれ以外の人にも任せられますが、社員総会での決議によっては理事長が解任となることもあるため、それを防ぐためには過半数を身内などで固めておくことが望ましいでしょう。ただし、身内だからといって必ずしもドクターを支持するとは限らないので、場合によっては身内以外の人を社員に選任したほうがいいこともあります。
医療法人化手続きをスムーズに進めるためにも、社員、理事、監事の候補は早めに考えておこう
自院の医療法人化を希望しているものの、今はまだそのタイミングではないという場合も、社員、理事、監事の候補は早めに考えておくことが得策です。自分の頭のなかだけでも候補を決めておけば、日々の業務のなかで、それぞれの人材が本当に社員や理事、監事にふさわしいのかどうかを見極めることもできるので、これを機会にぜひ一度候補の人材について考えてみてはいかがでしょうか。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年1月時点の情報を元に作成しています。