
働き先になんらかの不満があって、早々に退職したいと考えている看護師は多いもの。しかし、勤務先の病院やクリニック、訪問看護ステーションなどが、なんとかして引き止めようとしてくることも……。
そこで今回は、看護師が退職を引き止められた場合の対処法や、なるべく円満に退職できるコツをお伝えします。
勤務先が退職を引き止めてくる理由は?
まずは、病院やクリニック、訪問看護ステーションなどの働き先が、退職しようとしている看護師を引き止めてくる理由を解説していきます。
人手が足りていないから
厚生労働省の公表によると、2022年度における看護師、准看護師の有効求人倍率は2.20です。これに対して、同年度のすべての職業における有効求人倍率は1.19なので、ほかの職業に比べて人手が足りていないことがわかります。
実際にギリギリの人数で経営している事業所も多く、誰かひとりが辞めると、残った看護師一人ひとりの負担が大きくなることなどから、働き先側は、どうにかして引き止めたいと考えてしまうのです。
参照: 厚生労働省「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」PDF p .7職業別有効求人倍率
後任が見つからないから
「人手が足りていないから辞めないでくれ」ではなく、「人手が足りていないから後任が見付かるまで待ってくれ」と言われることもあります。
とはいえ、募集をかけても働き手がすぐに見つかるとは限らないため、結果的に何か月も引き止められる場合があります。
事業所の評価を下げたくないから
退職者が多い病院やクリニック、訪問看護ステーションなどは、「これ以上退職者を出したくない」という理由で引き止めてくることもあるかもしれません。
働き手の退職が相次いでいることによって悪い口コミが増えれば、入職を希望する人がいなくなり、結果として人手不足になってしまうからです。
また、指導を担当した先輩看護士が原因で退職を希望している場合であれば、事業所そのものではなく、先輩看護士が引き止めてくることもあるでしょう。
就業規則に則っていないから
就業規則に「退職に関しては1か月前までにその意思を伝えること」と定められていた場合、この期間を過ぎているという理由で、退職届が受理されないことがあります。
法律では、退職の14日前までに退職の意思を伝えれば問題ないとされているものの、病気やケガなどののっぴきならない理由でなければ認められる可能性は低いです。
ただし、法律で認められている以上、裁判を起こすなどすれば基本的には訴えた側の言い分が認められます。しかし、それには時間もお金(裁判費用)もかかりますし、万が一、訴えた側に非がある場合は分が悪くなることもありえるので慎重に行動したいところです。
勤め先側で不満点を解消できると考えられるから
ここからは、勤め先が看護師のことを考えているからこその理由です。
勤め先が退職希望者の話を聞いたうえで、「不満点を解消することができる」と考えられることから、退職を引き止めてくることがあります。たとえば給与に不満があるなら年収UPを提案したり、休みがとれないことに不満を感じているなら働き方の改善を提案したりといった具合です。
退職することが本人にとってマイナスになると思われるから
退職は本人の自由ですが、どこに勤めてもすぐ辞めているようでは、早期退職の経歴が重なり、次回以降の転職に不利になってしまいます。
職場側に問題があることが重なるというケースも無きにしも非ずですが、実際にちょっとした不満があるとすぐ辞める性格であるなら、職場側が心配してくれているケースや、人間としての成長をサポートしようとしているケースも考えられます。
働いている看護師は、実際にどうやって引き止められた?
続いては、実際に病院やクリニック、訪問看護ステーションなどで働いている看護師が、勤務先からどんな風に引き止められた経験があるのかをみていきます。
また、「引き止められる可能性を考えると退職の意思表示がなかなかできなかった」「引き止められなかったものの、有給消化などができなかった」といったケースについても具体例を紹介します。
以下は、株式会社Donutsが独自に行ったアンケート調査への回答です。
院長・上司・同僚などから引き止められた
「退職の意向を伝えたところ、“もう1年だけがんばってほしい”と引き止められたのがストレスでした」(40代)
「退職の意思を上司に伝えたところ、1か月に渡って仕事中や仕事終わりに毎日1時間を超える面接が設定されて引き止められて、精神的に追い詰められました。
『教育してきたこちらの労力はどうなるんだ』『同僚や先輩に負担がかかると思わないのか』なども言われました。有給休暇の消化はナシ、という条件のもとでようやく合意しましたが大変でした」(40代)
「辞めたい看護師が多い状況だったので、辞めたいと師長に話しても先延ばしにされたり、人事部との面談という名目での引き止めが続いて、すぐには辞めることができませんでした」(30代)
「退職を決めたとき、院長、看護部長、病棟師長から引き止められました。かわりの人員を見つけてくれとまで言われました」(40代)
「辞めたいと伝えたのに、人手不足を理由にあと1~2か月いてほしいと言われました。労基に相談して、退職をLINEで伝えて退職届を郵送して、相手方に届いたことを確認しました」(20代)
退職の意思表示がなかなかできなかった
「いざ退職を決めても、師長との関係が悪かったため、すぐには相談できませんでした。最終的には心配した両親が新幹線できてくれて一緒に総務課に行って退職の意思を伝えました」(30代)
「私より上司のほうが管理者との関係性が深いため、パワハラなどの実態についてもなかなか相談が報告をすることができませんでした」(30代)
有給休暇の消化など福利厚生が使えなかった
「退職する月も通常通り、夜勤回数の上限まで勤務しました。翌月からは次の転職先で働いたため、体力的には辛かったです」(30代)
「有給を捨てるのが慣例になっていました。私が退職するときは勇気をだしてすべて消化できるように意思表示して、結果的には受理されましたが、『有休をすべて消化するなら退職日を延期してほしい』と言われてストレスでした」(40代)
アンケートの結果をみても、実際に引き止められるケースが多いことや、引き止められるかもしれないことを考えると、できるだけ下手に出ることでなんとか退職するしかないという現実がみえてきます。
退職を引き止められた場合の有効な対策は?
続いては、退職を引き止められた場合の有効な対策をみていきます。
労働基準監督署や弁護士に相談する
具体例として前述した通り、働き先が真摯に対応してくれない場合、労働基準監督署に相談するのは得策です。相談するためには、職場に対してどんなふうに申し出てどんなふうに拒否されたかを明らかにしておく必要があるので、これまでの経緯などをきちんとメモしておくことが大切です。
また、先方が非難や脅しともとれるような言動で引き止めてきた場合、弁護士に相談することも視野に入れたほうがいいかもしれません。
ただし、労働基準監督署への相談とは異なり、弁護士を雇うとなるとお金がかかるので、その点は注意が必要です。
退職代行サービスに相談する
仕事を辞めたい本人に代わって、代行業者が退職手続きを進めてくれる「退職代行サービス」を利用すれば、労働基準監督署や弁護士に相談する場合とは異なり、たんたんと物事を進めてもらえます。
しかも、代行業者が退職手続きを進めてくれている間に、本人は転職活動などを進めることができます。ただし、弁護士を雇う場合同様、費用がかかるのが難点です。
退職届を内容証明で郵送する
これも前述の通りです。この方法は、「なんとしても退職したい」という場合には効果的ですが、先方からよい印象を持たれないため、円満退職を望む場合は決しておすすめはできません。
引き続き働くための条件を提示する
給与や待遇、人間関係などが原因で退職したい場合で、それらが改善されるなら働き続けてもいいと考えている場合は、どう改善されたら働き続けてもいいのかを、先方にしっかりと伝えることが大切です。
その条件をすべて飲んでもらえるなら退職を撤回というのも一案ですし、場合によっては、先方から条件を提示されてお互いが合意すれば退職を撤回ということでもいいでしょう。
転職先を決めてしまう
転職先および転職先での始業日が決まってしまえば、いくら引き止められても退職せざるを得ません。
引き止められであるけど転職したい旨を、転職エージェントに事前に相談しておくと、どのように手続きを進めるのが得策であるのかについてアドバイスをもらえるため、スムーズに物事が進みやすいでしょう。
転職エージェントへの相談は基本的に無料なので、お金をかけずに、トラブルなく退職できる方法を知りたい人にはおすすめです。
退職は「相談」ではなく「決定事項」として上司に伝えることも大切
退職を引き止められた場合にとるべき対策は上記に紹介した通りですが、それ以前に、「誰がなんといおうと私は退職します!」という強い意志を上司や院長に示すこともとても大切です。
「退職したいと考えているのですが可能でしょうか?」などと、気持ちが固まっていないような曖昧な言葉で「相談」として持ち掛けているようでは、引き止められて当然です。
「私は退職することを決定しました!異論は認めません!」と毅然とした態度で退職の意思を示すことで、引き止められる確率はぐっと低くなるので、退職を希望する際にはぜひ実践してみてくださいね。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年4月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
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