クリニックスタッフが退職する際には、いくつかの手続きを踏む必要があります。具体的にどのような手続きが必要であるのかを解説していきます。
スタッフの退職前に必要な手続き
まずは、スタッフが退職する前に必要な手続きをみていきます。
退職願、退職届の受け取り
退職願、退職届をきちんと提出してもらうことで、後々、「不当解雇である」などと主張されてトラブルに発展することを防ぐことができます。
そのため、退職願に関しては、書類ではなく口頭でもOKとされていますが、2通とも受け取っておくことをおすすめします。なお、退職願と退職届の違いは以下の通りです。
退職願
勤務先に退職を願い出る書類で、退職届を提出する前の段階に提出します。ただし、退職の意思表示は口頭でも可とされているため、退職願を提出していなくても退職することは可能です。
退職届
退職することを勤務先が認めた後、働き手が提出する書類です。退職願が「退職したい」と願い出るものであるのに対して、退職届は「退職します」という最終的な意思を表示するものとなります。退職届が受理されると、基本的には退職を撤回することができません。
退職届は、スタッフの退職希望日から14日以上前までの提出が必要です。就業規則によって、14日以上前、たとえば2か月前までに退職届を提出することが必要とされているとしても、民法で定められた「14日以上前」が優先されることとなります。
退職届の提出に法的な義務はありません。しかし、退職の意思は「退職希望日から14日以上前に伝えること」が民法で定められているため、万が一14日前を過ぎた段階でスタッフから退職の意思を伝えられた場合は、クリニック側はこれを認めないことが可能です。
いずれにしても、トラブル防止のためにも、就業規則によって退職願と退職届の提出期限を定めておくのが得策といえるでしょう。
有給休暇の使用について確認する
退職を決めた後、残っている有給休暇をまとめて消化しようとするスタッフは一定数います。有給休暇を取得すること自体は問題がないため止めることはできません。
しかし、「退職直前にまとめて消化する」という前例ができると、場合によっては同じことをするスタッフが後を絶たなくなる可能性があって困る可能性もあります。それを避けるには、有給休暇を買い取るという選択肢もあります。
とはいえ実際のところ、有給休暇すべてを消化することなく退職するスタッフも少なくないようです。いずれにしても、退職時の有給休暇の使用に関しては、スタッフと早めに話し合っておくと揉めにくいでしょう。
(規定がある場合)退職金の支払い
退職金の支払いを規定に盛り込んでいる場合は、退職金を支払います。ただし、「〇年以上勤務の場合は」などの条件をつけている場合、それに満たないケースについては支払う必要はありません。
そもそも、退職金は必ず払わなくてはならないものではありませんし、「退職金を用意するかわりにスタッフの終身保険を積み立てて、退職時に保険契約を現物支給することにしている」というクリニックもあります。
守秘義務誓約書の取得
クリニックの機密情報を外部に漏らしたり、根拠のないうわさを流されたりするのを防ぐために、そうした行為をしないという誓約書にサインしてもらうクリニックも多いです。ただし、退職時ではなく入職時に提出してもらう場合もあるので、その場合は、退職前に改めてサインをもらう必要はありません。
貸与物の回収
制服やシューズ、健康保険証、PC、ロッカーやデスクの鍵などの貸与物を回収します。
貸与物の回収は、退職日もしくは最終出勤日までに行います。有給消化の日程によっては、退職日当日に出勤しないことがあるので注意しましょう。
また、回収漏れがあった場合、退職後に郵送するか持参してもらう必要がありますが、後日の回収となった場合、それまでの間ずっと私物化されたり、PCから機密情報が漏洩したりする可能性があるため大変厄介です。
スタッフの退職後に必要な手続き
続いては、スタッフの退職後に必要な手続きです。
【退職日から5日以内】社会保険の資格喪失手続き
健康保険、厚生年金の資格喪失手続きは、退職日から5日以内に行います。手続きの際には、健康保険組合および管轄の年金事務所に下記を提出します。
- 健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届(提出先:年金事務所)
- 本人・扶養親族分の健康保険証(年金事務所あるいは健康保険組合)
- 健康保険組合所定の資格喪失届(協会けんぽは不要)
保険料に関しては、月の途中で退職する際は、退職付きの前月分の保険料までをクリニックが負担する必要があります。月末に退職する場合は、退職月までの保険料を負担することになります。
【退職日から10日以内】雇用保険の資格喪失手続き
雇用保険の資格喪失手続きを行うにあたっては、雇用保険被保険者喪失届を管轄のハローワークに提出する必要があります。退職するスタッフから離職票を希望された場合は、追加で以下も提出します。
- 離職証明書
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 出勤簿またはタイムカード
- 離職理由の確認ができる書類のコピー(退職届など)
【退職日の翌月10日まで】住民税の切替手続き
住民税の切替手続きは、退職するスタッフが移住している市区町村によって異なる場合があります。一般的な流れとしては、退職するスタッフの次の就職先が決まっている場合は、「特別徴収の継続手続き」が必要となるため、再就職先に「異動届出書」を提出します。
次の就職先が決まっていない場合は、1~6月の退職であれば手続きが不要で、未納分を最終給与にて一括徴収します。次の就職先が決まっておらず、7~12月に退職する場合は、特別徴収から「普通徴収」に切り替える必要があるため、管轄の市区町村に「異動届出書」を提出します。
【退職日から1か月以内】源泉徴収票、離職票(希望者のみ)
退職者の当年1月1日から最終支給給与までの金額に対する源泉徴収票を発行します。離職票に関しては、希望者に対してのみの発行で構いません。
このほか、退職者が希望する場合に後日送付するものとしては、「退職証明書」「在籍期間証明書」などがあります。
退職時の手続き一覧はチェック表にしておくと便利
スタッフの退職時に必要な手続きに関しては、新たにスタッフが退職するたびに慌てて手続きすることにならないよう、チェック表としてまとめておくと便利です。
スタッフの退職が相次ぐような事態は喜ばしいことではないので、「そんなものは作りたくない!」と思うこともあるでしょう。
しかし、家族の転勤や妊娠、介護などによる退職もあり得るので、それまでがんばってくれたスタッフをスムーズかつ快く送り出してあげるためにも、いざというときの準備を今のうちに進めておいたほうがいいかもしれません。
ほうがいいかもしれません。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年4月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
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