訪問リハビリテーションとは、利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの国家資格を持つリハビリ専門員が、利用者の自宅を訪問してリハビリをおこなうことです。訪問看護とは内容が異なりますが、具体的にはどのようなことをするのでしょうか? また、訪問看護師がリハビリに関わることもあるのでしょうか? 詳しく解説していきます。
訪問リハビリテーションの対象者、サービス内容は?
訪問リハビリテーションは、要介護1以上で、主治医によって必要性が認められている場合に受けられるサービスです。具体的には、以下のようなサービスを受けられます。
また、日常生活においてこれらがうまくおこなえるようになるための工夫などを伝授することも含みます。
参照:公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「訪問リハビリステーションとは」
訪問リハビリテーションの仕事はしんどい?
訪問リハビリテーションの仕事は、「しんどい」とされることがありますが、具体的にどのようなことがしんどいと思われがちかというと、以下の通りです。
責任が大きい
訪問リハビリテーションは、原則、ひとりでおこないます。そのため、現場でなにか問題が起きた場合、ドクターに支持を仰ぐにしても、まずは自分ができることをおこなわなければなりません。その判断は自分です。たとえば、利用者がいつもとは違う状態だったり、リハビリ中に転倒させてしまったりといったことが考えられます。利用者は要介護状態なので、判断を誤れば容態が悪化することもあり得るので、常に知識や技術を磨き続けることも大切です。そのため、大きなプレッシャーを感じる人も多いでしょう。
訪問先を選べない
利用者はひとりで暮らしていることもあるため、訪問先によっては、掃除が行き届いておらず不衛生な環境でリハビリをおこなわなければならないこともあります。また、家族と暮らしていたとしても、家族がリハビリに非協力的だったり、家族から文句を言われたりする可能性もあります。さらには、家族に介助方法を指導しようとしても、キレられたり、やりたくないと言われたりする場合もあるでしょう。
体力を消耗する
体位交換や歩行訓練などに体力が必要であるのはもちろん、訪問先によっては、空調がきいていなくて汗が止まらないことなどもあります。また、病院やクリニックであれば患者が寝るときにはベッドを使用しますが、利用者宅を訪問するとなると、布団に寝ている利用者の体位を変えたり起き上がらせたりしなければならない場合もあります。布団の場合、膝をつくなどして体位交換などをおこなわなければならないぶん、体力的にしんどいといえます。
慣れないうちはスケジュール管理に時間がかかる
訪問リハビリテーションは原則ひとりでおこなうため、スケジュール管理が苦手な人は、しんどいと感じるかもしれません。慣れてくるとスムーズに仕事できるようになるにしても、最初のうちは気持ち的にも時間的にも余裕が持てないかもしれません。
手荒れ
訪問リハビリテーションにおいては、訪問先を移動するたびに、念入りに手洗いしてアルコール消毒することが必須です。そのため、肌が弱い人などは手荒れがひどくなる可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症の流行時のように、感染対策にいつも以上に力を入れなければならないときは、マスクのほかに、フェイスシールドやガウンなどを着用しなければならない場合があります。秋冬であればまだいいですが、真夏で、しかもエアコンがついていない訪問先などでこの状態で仕事するとなると、かなりしんどいことになるでしょう。
他職種との連携
訪問リハビリテーションを実施するうえでは、ドクターやケアマネージャー、福祉用具業者、ソーシャルワーカーなどと連携をとる必要があります。そのため、チームプレイが苦手な人にとってはしんどいと感じられることも多いでしょう。
訪問看護師が訪問リハビリテーションに関わることはある?
続いては、訪問看護師と訪問リハビリテーションの関係をみていきます。
訪問リハビリテーションのサービスを提供するのは原則、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などですが、少なくとも3か月に1回は、訪問看護師によるモニタリングが必要とされています。
具体的には、厚生労働省が公表している「平成30年度介護報酬改定に関するQ&A(vol.1)」に次のように記されています。
訪問看護サービスの「利用開始時」については、利用者の心身の状態等を評価する観点から、初回の訪問は理学療法士などの所属する訪問看護事業所の看護職員がおこなうことを原則とする。また、「定期的な看護職員による訪問」については、訪問看護指示書の有効期間が6か月以内であることを踏まえ、少なくとも概ね3か月に1回程度は当該事業所の看護職員による訪問によって、利用者の状態の適切な評価をおこなうものとする。なお、当該事業所の看護職員による訪問については、必ずしもケアプランに位置づけ訪問看護費の算定までを求めるものではないが、訪問看護費を算定しない場合には、訪問日、訪問内容等を記録すること
参照:厚生労働省「平成30年度介護報酬改定に関するQ&A(vol.1)」問21(答)
また、モニタリングを通してリハビリの内容が適切であるかどうかを判断できるよう、訪問リハビリテーションの内容についてもきちんと理解しておくことが不可欠です。
訪問看護師本人が訪問リハビリテーションをおこなうことはある?
前述の通り、訪問リハビリテーションにおける訪問看護師の役割は、基本的には3か月に1回のモニタリングということになりますが、場合によっては訪問看護師が訪問リハビリテーションをおこなわなければならないこともあります。具体的にはどういうときかというと、訪問看護指示書のリハビリ欄に「〇」がついている場合です。では、「〇」がついていた場合、具体的にどのようなリハビリをおこなうことになるのかというと以下の通りです。
基礎的な運動機能の改善および維持
関節の動きの改善を目的に、利用者の身体を動かします。関節がかたくなると身体が思うように動かなくなるので、その予防のために、関節可動域訓練や関節拘縮予防のトレーニングを実施します。また、筋力トレーニングやストレッチも取り入れていくといいでしょう。
日常生活動作の訓練
食事、排せつ、入浴や、歩行、外出などをできる限り自分でおこなえるよう、食事やトイレの動作の指導、歩行訓練、寝返りの訓練、坐位や立位をキープするための訓練などをおこないます。
指導とアドバイス
看護師などが訪問している時間以外にも、利用者が自分でリハビリできるよう、自主トレーニングメニューを作成してアドバイスをおこないます。また、利用者をサポートする家族に対しては、少ない負担で安全に介護するための工夫や、介護物品の情報などを提供します。
そのほか、利用者の住居に問題があるとみられる場合は、階段に手すりをつけることや、浴室やトイレの構造を含めた住宅改修のアドバイスをしたり、福祉用具の導入を提案したりすることも大切です。
訪問看護師も、訪問リハビリテーションについてよく理解することが大切
ここまでに述べてきたとおり、訪問リハビリテーションは、原則、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが提供するサービスですが、訪問看護師もその内容をよく理解しておくことが大切です。たとえ、訪問看護師はリハビリをおこなわないという方針の訪問看護ステーションに勤めている場合でも、3か月に1度のモニタリングをおこなうことは不可欠なので、内容についてもしっかりと理解しておくことが大切ですよ。
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この記事は、2024年5月時点の情報を元に作成しています。