
看護師として働き始める際や、看護師としてキャリアを重ねていくなかで、「このまま一生看護師として働くしかないのかな?」と考える人は一定数いるでしょう。なかには、看護師として生きるしかないのだと思うと、気持ちが重たくなってしまうという人もいるかもしれませんが、実際は、結婚などをきっかけに仕事を辞める人もいれば、医療業界とは全然違う業界に転職する人もいます。さらに最近では、看護師の資格を活かして起業や副業をはじめる人も増えています。では、看護師の資格を活かした起業や副業とは、どんなものがあるのでしょうか? 詳しく紹介していきます。
看護師の資格とは?
まずは、看護師の資格にはどんなものがあるのかを改めて確認しましょう。
看護師として働くためには、試験に合格して免許を取得する必要があります。免許の種類は、「看護師」「准看護師」「保健師」「助産師」の4つですが、保健師および助産師の免許は、まず、看護師の免許を取得してからでないと、取得することができません。4種類の免許の概要と取得方法は以下の通りです。
看護師免許
看護師免許を取得すると、看護師として、医師のサポートおよび患者の看護をおこなうことができます。看護師免許を取得するためには、4年制大学、3年生の短大または専門学校のいずれかを卒業して、国家試験を受けて合格する必要があります。
准看護師免許
准看護士の資格は、看護師免許とは異なり国家資格ではありません。資格試験に合格すると、各都道府県知事から免許が与えられます。准看護師の資格試験は、中学卒業後、看護課程がある専門学校で、2年間、履修すれば得ることができます。看護師免許と比べると資格取得までに時間がかからないことから、早めに働き始めたい人にはうってつけのように思えますが、看護師免許がある場合と比べて給与額が低めに設定されています。
保健師免許
保健師免許があれば、地域住民の保健指導や健康管理、乳幼児健診をおこなうことができます。前述の通り、保健師免許を取得するためには、まず、看護師の資格を取得する必要があります。そのうえで、保健師の養成機関への1年間の通学を経て、保健師の国家試験を受けて合格する必要があります。
ちなみに、「保健師」ではなくて「保健士」では? と思った人もいるかもしれませんが、「保健士」の表記が使われていたのは2002年までのこと。それまでは、女性保健師は「保健婦」、男性保健師は「保健士」と区別されていましたが、1993年の法改正で男性も保健師として就業できるようになって以降、少しずつ数が増えた結果、「保健師」と名称が統一されることになりました 。
助産師免許
助産行為ができる助産師も、保健師同様、看護師の資格が必須です。保健師同様、看護師の資格を取得したうえで、専門学校でプラス1年、助産師の資格を取得するために学ぶか、もしくは4年制大学で看護師と助産師の資格取得のために学ぶ必要があります。
保健師とは異なる注意点としては、男性には受験資格がないということです。産婦人科医には性別の制限がないので、納得できないという人も多いかもしれません 。
看護師の資格を活かせる起業・副業は?
続いては、前述の資格を活かせる起業や副業について説明していきます。
訪問看護ステーション開業
訪問看護ステーションを立ち上げるために必要な資格はありませんが、訪問看護ステーションを継続的に運営していくためには、看護師などの有資格者を配置する必要がありま す。そのため、看護師自身が訪問看護ステーションを立ち上げるケースも多いです。
デイサービス開業
デイサービス(通所介護)を立ち上げるにあたっても、1人以上の看護師を配置するか、もしくはバイタルチェックなどの健康官営ができる状態を維持することが求められます。また、開設にあたっては通所介護指定も必須となるため、看護師資格があると開業しやすいといえます。
高齢者グループホーム(認知症対応型共同生活介護)、サービス付き高齢者向け住宅・有料老人ホーム開業
高齢者グループホームが医療連携体制加算を算定するためには、看護職員の配置が不可欠であるため、看護師の資格があれば、それを活かして開業するといいでしょう。サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームは、看護職員配置が不可欠ではありませんが、看護師常駐の特色を持たせることで、利用者からの信頼を得やすくなるというメリットがあります。また、看護職員の配置が不可欠な生活介護(障害福祉サービス)なども同様の選択肢といえます 。
助産院開業
助産師の資格があるなら、妊婦や赤ちゃんの産後ケアをおこなう「助産院」の開業も視野に入れることができます。ただし、助産師の資格があるだけでは開業することはできません。助産師としての5年以上の実務ケンケンと200件以上の分娩件数があれば、開業することが可能です。
医療分野のライターとして独立
看護師としての実務経験を武器に、ウェブサイトなどで執筆するライターとして独立すれば、自分が記事を書くことで、医療業界の現状や課題についてより多くの人に知ってもらうことができます。
ちなみに、副業OKの職場であれば、看護師の仕事は今まで通り続けながら、ライターとして副収入を得ることも可能です。ライターとして記事を書いてお金をもらうためには、文章の基礎を身に着けることが不可欠ですが、SNSで発信することが当たり前になっている今の時代は、物事を文章で説明したり、記事内容に合った写真を撮ったりが得意な人も多いので、副業としてはとっつきやすいといえるかもしれません。
看護師としての実務経験を活かせる起業は?
続いては、看護師として働いた経験を活かせる起業をピックアップしていきます。
美容サロン開業
美容サロンの開業には、必ずしも看護師の資格が必要というわけではありませんが、特に美容クリニックなどで働いた経験がある場合は、顧客の悩みに合わせた施術を提案するスキルなども磨かれているため、固定客がつきやすいといえるでしょう。
コミュニティカフェ・地域の相談センターの開業
健康相談ができるコミュニティカフェや地域の相談センダーは、少子高齢化が進むにつれてニーズが高まっています。在宅医療を受けている人なども気軽に集まれるコミュニティカフェであれば、日常的に摂取できる健康食品の情報などを知りたいというお客も多いので、ビジネスの幅が広がる可能性も高いといえます。
副業がOKの職場で働いているなら、まずは週末のみオープンのカフェを開くのも一手 。健康増進に役立つメニューをそろえるなどしながら、どんなふうにビジネスを展開できるのかを考えてみるのも楽しいでしょう。
コンサルタント・カウンセラーとして独立
人の話を聴くことに自信があるなら、コンサルタントやカウンセラーとして独立するのも一手です。地域密着型のクリニックで高齢者と話す機会が多かった看護師や、訪問看護を通して患者の家族とも関わることが多かった看護師などは特に向いているかもしれません。
フリーランスの看護師として独立
医療従事者のなかでフリーランスとして働ける職種といえば、麻酔科医などが一番に思い浮かぶものですが、実はフリーランスの看護師も存在します。フリーランスの看護師は、毎日決まった職場に勤めるのではなく、学校や企業の定期健診で医師のサポートを担当したり、旅行やツアーイベントでナースを務めたりすることになります。
また、助産師、保健師も同様に、フリーランスとして活躍することが可能です。助産師の資格がある場合、前述の通り、助産院を開設するという独立方法もありますが、フリーランスの助産師になれば、事業所を設けなくても、新生児訪問などを1件ごとに請け負うこともできます 。保健師の資格がある場合は、保健所や事業所などから仕事を受注する働き方もあれば、コミュニティカフェなどを自分で立ち上げるという選択肢も考えられます 。
起業や副業は、「個人事業主」または「法人」としておこなうことになる
起業や副業で収入を得るためには、開業届を出して個人事業主になるか、もしくは法人を設立する必要があります。
どんなビジネスをおこなうにしても、個人事業主になるか法人を設立するかは自分で決められますが、起業にしても副業にしても、すぐに大きな収入を得られるとは限らないので、まずは個人事業主としてスモールスタートするほうがリスクを抑えられます。また、法人化するためには、開業資金の用意や定款の作成が必要なため、手続きの煩雑さを考えても、最初のうちは個人事業主として実績を重ねていくのが賢明といえるでしょう。
ビジネスが軌道に乗り始めたら、法人化してさらに規模を大きくしていくことを考えるのもいいかもしれません。
看護師が起業する際に利用できる融資制度は?
訪問看護ステーション開業など、起業に際してある程度の資金が必要な場合は、下記のような融資制度を利用するのも一手です。
創業時支援
新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金として使うための資金を支援してもらえます。融資限度額は7,200万円で、そのうち4,800万円が運転資金とされています。設備資金の返済期間は20年以内(うち据置期間は5年以内)、運転資金の返済期間は10年以内(うち据置期間は5年以内)です。
挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)
こちらは、地域経済活性化にかかる事業の新規開業時に活用できる特別貸付です。そのため、ライターとして独立したい場合などは条件を満たすことができませんが、訪問看護ステーションを立ち上げたい場合などは、融資してもらえる可能性が高いでしょう。
参照:日本政策金融公庫「挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)」
既存の事業にとらわれる必要はない!
近年、働き方改革に注目が集まっていることもあり、起業や副業のスタイルは千差万別です。そのため、この記事で紹介した起業アイディアにとらわれず、新しいことにチャレンジする人もますます増えていくことが予想されます。また、必要な資金の集め方についても、融資を活用する方法のほかに、クラウドファンディングをはじめさまざまな方法が考えられるので、柔軟な発想で自分らしい働き方を見付けられるといいですね!
特徴
対象規模
オプション機能
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診療科目
この記事は、2024年5月時点の情報を元に作成しています。