看護師の主な仕事は「医師のサポート」と「患者の看護」ですが、看護をおこなううえでは患者とコミュニケーションをとることが欠かせません。さらに、入院中の患者や、訪問看護を利用している患者に看護をおこなうとなると、患者本人だけでなく、患者の家族とコミュニケーションをとることも大切です。また、外来においても、保護者同伴の子どもの患者、ひとりでの来院が困難な状態で家族が付き添っている患者などが多いなら、まったく同じことがいえます。そこで今回は、看護師が、患者の家族との関わりについて考えるべきことを解説していきます。
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患者の家族との関わりについて考えることがなぜ大事?
医療を提供するうえでは、患者のみならず、患者の家族とも信頼関係を築くことがとても大切です。その理由について、『日本看護協会』は以下のように説明しています。
「看護職と患者・家族が相互に信頼する関係を構築することは、看護を提供する前提である。また、信頼関係に基づいた患者・家族の協力が不可欠であり、より質の高い保健・医療・福祉を作り上げることにつながる」
つまり、患者ともその家族とも良好な関係を築き、治療に協力してもらうことによって、より質の高い医療を提供できることが最たる理由ということになります。
参照:公益社団法人 日本看護協会「患者・家族との信頼関係と倫理」
患者の家族と良好な関係を築くために必要なことは?
続いては、外来、入院、在宅ケアのすべてにおいて、患者の家族と良好な関係を築くために必要なことをみていきましょう。
傾聴の姿勢を大切にする
看護の現場では、傾聴の姿勢がとても大切だとされています。傾聴とは、相手の話を聴くときに、相手の気持ちに寄り添いながら聴くことですが、こうした姿勢をみせることで、相手からの信頼を得やすく、言いにくいことも話してもらいやすくなります。そのため、患者と接するうえでも、傾聴の姿勢を意識することはとても大切ですが、患者の家族と接するにあたっても同じことがいえます。
きちんとあいさつする
信頼関係を築くうえで、丁寧なあいさつは基本中の基本です。その際、きちんと相手の目をみることもとても大切です。また、「おはようございます」「こんにちは」などの声かけとともに簡単な会話を交わすようにすると、先方から「話しやすくて感じがいい人だな」と思ってもらいやすいでしょう。ただし、患者の病状が思わしくない場合や、周囲に体調の悪い患者がいる場合などは、笑顔を浮かべたり、あいさつ以外の会話を交わしたりは好ましくないので注意が必要です。
患者に関する情報を交換する
患者が入院中であれば、家族は「毎日よく眠れているだろうか?」「病院で辛い思いをしていないだろうか?」と気がかりなものです。そのため、家族と離れている間の様子について伝えてあげることで、家族に安心してもらいやすいといえます 。
患者が通院中、もしくは在宅で治療中であれば、家族は、家での様子や異変を感じたことなどについて、医師や看護師に聞いてほしいと思っている場合が多いです。そのため、看護師のほうから、「なにか変わったことや困っていることはありませんか?」と声をかけてあげると、家族も話を切り出しやすいでしょう。
患者の家族との関わるうえで特に慎重であるべき3つのケース
患者の家族とのコミュニケーションが特に重要なケースとしては、「患者が訪問看護を利用している」「患者が精神疾患を患っている」「患者が小さな子どもである」の3つのケースが挙げられます。これらのケースにおいては、適切な治療のためにも家族の協力が不可欠なので、日ごろから患者の家族としっかりコミュニケーションをとることによって、信頼してもらっておくことが大切です。また、患者のみならず、日常的に看護をおこなっている家族も心身ともに疲弊している場合が多いため、精神的にセンシティブになっている可能性を念頭においたうえでコミュニケーションをとることを心がけましょう。
訪問看護利用者の家族と関わるうえでのポイントは?
訪問看護をおこなううえでは、利用者本人の看護ではなく、「家族看護」を意識および実践することが大切だとされています。家族看護とはなにかというと、訪問看護の利用者を支える家族を“利用者の看護をおこなうチーム”ととらえて、チームのパフォーマンスが最大となるよう働きかけて、家族のセルフケア機能を高めていくことです。
では、どうすればチームのパフォーマンスを最大化できるかというと、利用者本人のみならず、家族一人ひとりの健康状態や日々の生活にも目を配り、家族の関係性を良好に保てるよう、生活上のアドバイスをおこなうと同時に、家族に対しては、利用者が必要なサポートや症状の理解を促していくことです。
ただし、利用者やその家族によっては、看護師のアドバイスを素直に受け入れることがないどころか、看護師に対して反発的な態度をとったり、ハラスメント行為をおこなったりすることも考えられます。
その場合は、理想の看護のかたちがわかっていても、なかなかその通りにはいかないので、根気強く対応していくことが求められます。しかし、看護師が一人で奮闘してもうまくいかず、ますます関係性が悪化するケースも多いので、早い段階で、訪問看護ステーションや主治医などに相談することが望ましいといえます。
精神疾患患者の家族と関わるうえでのポイントは?
続いては、精神疾患患者の家族と関わるうえでの大切なポイントを説明していきます。
精神疾患患者の家族と関わるにあたっては、そうではない患者の家族と関わる場合とは異なる壁にぶち当たることがあります。具体的にどういうことかというと、患者の精神状態が不安定であることの影響から、家族も精神面に問題を抱えているケースが多く、そのケアが一筋縄ではいかない場合があります。また、患者の精神疾患の原因が家族にある可能性もゼロではないため 、たとえば、「そんなふうにお子さんを叱ったらますますひきこもってしまいますよ!」などと家族を責めたくなるケースもあり得ます。
しかし、家族と接していてそのように感じられて、実際にそうであったとしても、決して家族を責めてはいけません。前半で説明した通り、傾聴の姿勢をキープして、まずは家族の「辛い気持ち」に寄り添うことが大切です。もしも看護師に傾聴の姿勢がみられなければ、家族がイライラを溜め込み、それによって患者が精神的に追い詰められ、ますます症状が悪化するという悪循環も考えられるからです。
しかし、患者もその家族も精神状態に問題があるとなると、看護師がひとりで対応するのは難しい場合が多々あります。場合によっては、家族間で喧嘩が始まったり、刃物を向けられたりすることもあり得るので、医療チーム全体で患者とその家族に対する認識を高め、みんなでサポートしていくことが大切です。
小児患者の家族と関わるうえでのポイントは?
続いては、子どもに尽きそう家族と関わるうえで大切なポイントを説明していきます。
風邪や腹痛で外来受診している子どもに付き添っている家族に対しては、「しっかり治療していきましょうね」程度の声掛けでも十分ですが、患者が小児がんをはじめとする命に関わる病気で入院中の場合、家族との関わりが非常に重要になってきます。なぜかというと、家族は医師から辛い現実を伝えられることもあるため、混乱したり、感情的になったりすることが考えられるため、看護師にもよりしっかりサポートしていくことが求められるからです。
そのなかでも特に大切なことは、子どもにとってよりよい方法を家族と相談しながら、一緒に実践していくことです。子どもへの説明や服薬などの責任をすべて家族に負わせてしまうと、親子ともども精神的に参ってしまうことが考えられます。それを防ぐためにも、子どもとその家族が大事にしていることや、どうしたいと思っているのかなどを確認して、その気持ちを理解して受け止めることが大切です。また、時には、家族の希望などを医師に伝えることも必要となってきます。
参照:特定非営利活動法人 日本小児がん看護学会「小児がん看護ケアガイドライン2018」
患者の家族との信頼関係の築き方の参考になる書籍もある
上記に述べた通り、訪問看護利用者、もしくは通院による治療中、入院中の患者などを支えている家族をサポートすることはとても大切なことです。しかし、家族のサポートは決して簡単なことではありません。実際、多くの看護師が、患者の家族との関わりについて悩んでいます。そのため、患者の家族とのコミュニケーションのコツについてまとめた書籍などのツールを、コミュニケーション力を高めるために役立てている看護師も多いです。
参照:『エビデンスからわかる 患者と家族に届く緩和ケア』(医学書院)
参照:ようこそ緩和ケアの森 患者・家族とのコミュニケーション (南江堂)
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「家族支援専門看護師」の認定を目指して勉強するのもアリ!
また、2008年には、『日本看護協会』によって、患者を含む家族によるセルフケア機能を高め、主体的に問題解決できるよう、身体的・精神的・社会的にサポートして、水準の高い看護を提供できる「家族支援専門看護師」となるための認定審査が制定されているので、患者の家族との関わりを追求していきたい人は、審査合格を目指して学ぶことを検討してもいいかもしれませんね!
参照:一般社団法人 日本専門看護師協議会「家族支援専門看護師」
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年6月時点の情報を元に作成しています。