新規開業で看護師を雇いたいとき、もしくは看護師を増やしたいと考えているとき、雇用形態を限定すべきかどうかを悩むことがあるかもしれません。
ベストな雇用形態を選択するためには、それぞれの雇用契約のメリットやデメリットについて知っておく必要があります。そこで今回は、看護師の正社員とパートの違いについて解説していきます。
看護師の正社員とパートの違いは?
正社員 | パート | |
法定労働時間 | 最大週40時間 | 週40時間以内 |
雇用期間 | 無期雇用 | 有期雇用 |
給与体系 | 月給制 | 時給制・日給制 |
ボーナス・退職金 | 制度がある場合は対象 | 制度があっても対象外の場合が多い |
昇格 | 対象 | 基本的に対象外 |
残業 | 発生する場合がある | 発生しにくい |
法定福利厚生 | 対象 | 要件によっては対象外 |
法定外福利厚生 | 対象 | 勤務先による |
法定労働時間/残業
正社員の看護師は、最大で週40時間のフルタイムで勤務します。一方、パートの看護師の勤務時間は週40時間以内と決められています。
法定労働時間(労働基準法で定められた労働時間)に関しては、労働時間が1日6時間を超える場合は45分以上、1日8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけないことと、毎週1日の休日かもしくは4週間を通して4日以上の休日を与えなければいけないことも決められています。
また、残業に関しては、「パートに残業させてはいけない」という決まりはありませんが、法定労働時間に上限があることから、必然的にパートは残業が発生しにくい傾向にあります。
参照:
厚生労働省「36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針」
雇用期間
雇用期間に関しては、正社員の看護師は定年まで働ける無期雇用が一般的であるのに対して、パートの看護師は基本的に有期雇用となります。
そのため、定めた期間を過ぎても働いてもらいたい場合、契約期間が切れる前に、雇用主とパートの双方が合意したうえで契約更新の必要があります。契約を更新したくない場合はもちろん、定めた期間までの雇用として構いません。
ちなみに、有期雇用であっても、契約更新によって通算5年を超える契約を結んだ場合、働き手から雇用主に対して無期雇用への切り替えを申し込むことができます。無期雇用への切り替えを申し込まれた場合、これを拒否することはできませんが、雇用形態に関しては各職場で決めることができます。
給与体系/ボーナス・退職金/昇格
給与体系に関しては、正社員の看護師は月給制で、パートの看護師は時給制もしくは日給制が基本となります。
ボーナスや退職金、昇格に関する考えはクリニックによって異なるため、パートの看護師を制度の対象にするかどうかはクリニック次第ということになります。
ただし、ボーナスや退職金に関してはそもそも制度を用意していないクリニックもありますし、昇格に関しては、看護師数が1人かもしくは極少数のクリニックにとっては無縁のものであると考えられます。
法定福利厚生
法定福利厚生には、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険、介護保険(40歳以上)の5つの社会保険と、そのほかに子ども・子育て拠出金などがあります。
5つの社会保険は、正社員の看護師は必ず加入する必要がありますが、パートの看護師に関しては、労働日数や労働時間の要件を満たしていない場合は加入させられないことがあります。
しかし、要件を満たしている場合は、必ず加入させることが必要です。ただし、労災保険に関しては、勤務形態を問わず対象となります。
5つの社会保険の加入用件は以下の通りです。
健康保険 | 以下2つの条件のいずれかを満たしていること ①年収約106万円以上 1.勤務先の従業員数が101人以上(厚生年金の被保険者数) 2.週の労働時間が20時間以上 3.月に8万8,000円以上の収入がある(年収105.6万円以上) 4.雇用期間が2ヵ月を超える(見込みも含む)パート 5.学生でない(夜間学生や定時制の学生などは加入対象となるケースあり) ②勤務日数と時間が正社員の3/4以上 |
厚生年金保険 | 以下2つの条件のいずれかを満たしていること ①年収約106万円以上 1.勤務先の従業員数が101人以上(厚生年金の被保険者数) 2.週の労働時間が20時間以上 3.月に8万8,000円以上の収入がある(年収105.6万円以上) 4.雇用期間が2ヵ月を超える(見込みも含む)パート 5.学生でない(夜間学生や定時制の学生などは加入対象となるケースあり) ②勤務日数と時間が正社員の3/4以上 |
雇用保険 | 以下2つの条件をいずれも満たしていること ・1週間の所定労働時間が20時間以上であること ・31日以上の雇用見込があること |
労災保険 | ★労働者として雇用されている場合、労災保険に加入することが必須★ |
介護保険 | 40歳以上の対象者が、健康保険と一緒に納める保険です ①第1号被保険者65歳以上。 第1号被保険者になると、原因を問わずに要介護認定や要支援認定を受けた際、 介護保険を使って介護サービスを受けられます。 65歳以上の年金受給者になると、介護保険料は健康保険とは切り離され、原則として年金から天引きになります。 ②第2号被保険者40~64歳までの公的医療保険加入者。 第2号被保険者は、特定疾病が原因で要介護や要支援認定を受けた場合に限り、 介護サービスを受けることができます。 介護保険料は、職場の健康保険に加入している場合、給与や賞与から控除となります。 ※つまり、クリニックで働く看護師で介護保険の被保険者は、基本的には第2号被保険者になります |
法定外福利厚生
法定外福利厚生は、それぞれの事業者の判断で導入を決めるものです。具体的には、住宅手当や通勤交通費、社宅や寮、社員旅行などが挙げられます。
正社員の看護師に関してはすべてこの対象となりますが、パートの看護師も対象とするかどうかは各事業所の判断となります。
正社員の看護師を雇うメリット、デメリットは?
続いては、正社員の看護師を雇うメリット、デメリットをみていきます。
正社員の看護師を雇うメリット
- 長く働いてもらえる可能性が高い
- 残業を頼みやすい
まず、メリットとしては、正社員として入職してくる看護師は、何度も転職を繰り返したくないと考えているものなので、長く働いてもらえる可能性が高いといえます。また、労働基準法で決められた範囲内なら残業を頼んでも問題ない点もメリットといえます。
ただし、あまりにも残業が多い場合などは、それを理由に退職される可能性もあるので注意が必要です。
正社員の看護師を雇うデメリット
- 社会保険料を支払い続ける必要がある
- 辞めてもらいたいのに辞めてもらえない場合がある
デメリットとしては、正社員の場合、社会保険料に必ず加入させる必要があるため、毎月出ていく金額がそのぶん高くなります。また、無期雇用であるため、万が一、知識やスキルなどに不満があって辞めてもらいたいと思っても、簡単に辞めさせることができません。
パートの看護師を雇うメリット、デメリットは?
続いては、パートの看護師を雇うメリット、デメリット
パートの看護師を雇うメリット
- 時給制もしくは日給制のため、働いてもらったぶんだけ給与を支払えばいい
- 社会保険料を安く抑えられる場合がある
- 辞めてもらいたいときは雇用契約を更新しなければいいので揉めにくい
パートの看護師を雇うメリットは、主に金銭面にあります。時給制もしくは日給制のため、働いてもらったぶんだけ給与を支払えばいいですし、場合によっては社会保険料を支払う必要がありません。逆にいうと、社会保険料を支払いたくない場合、社会保険に加入しなければいけない条件に満たないよう、働いてもらう日数などを少なくすればいいということです。
また、有期雇用であるため、万が一自院と合わないと判断した場合、期限が切れた時点で雇用契約を更新しなければ、すんなり辞めてもらえます。
パートの看護師を雇うデメリット
- 残業を頼みにくい
- 責任を持って仕事してもらえない可能性がある
デメリットとしては、まず、残業を頼みにくいことが挙げられます。前述の通り、週あたりの労働時間が多ければ、残業してもらうと法定労働時間を超えてしまう場合があるためです。
それに付随したデメリットとしては、時間になったら帰れるという意識から、日々の仕事を最後まで責任を持ってやり遂げてもらえない可能性も考えられます。
自院のニーズとうまく合致する雇用形態を見極めよう
看護師の採用活動を進めるにあたっては、正社員の看護師、パートの看護師それぞれのメリット、デメリットを理解したうえで、そのときどきの自院のニーズに合致する雇用形態を考えることが大切です。
たとえば、有能な正社員が退職してしまったことで、新しくクリニックを牽引してくれる看護師を採用したいということなら正社員を選びたいところですし、週に3日程度働いてくれたらちょうどいいと考えているなら、断然パートのほうが適任でしょう。
ただし、昨今は働き手の考えも多様化しているため、お互いに相手が望む条件に耳を傾けながら条件を調整したほうがスムーズに採用が決まり、気持ちよく働いてもらえる可能性が高いので、「絶対にこの条件にマッチしないとだめ」ではなく、柔軟に対応できるといいかもしれませんね。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年8月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
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