開業医として独立するにあたっては、「勤務医時代より多く稼ぎたい」と高年収を目指して当然です。目標とする金額は人によって異なりますが、どうせなら、目標を高く持ち、大台の1億円突破を狙ってはいかがでしょうか? そこで今回は、年収1億円突破にはどんな対策が有効であるのかを解説していきます。
開業医の平均年収はいくらになるのか?
目標を達成するためにも、まずは現実に目を向けることは大切です。現実とはすなわち、実際のところ開業医はどのくらい稼げているのか? ということです。
厚生労働省が公表している「第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告―令和5年実施―」によると、開業医の平均年収は約2,600万円です。つまり、平均年収に達したとしても、1億円に到達するまでにはまだまだ遠い道のりを歩まねばならない可能性があるということになります。
参照:厚生労働省「第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告―令和5年実施―」
開業医が年収5,000万円以上年収1億円未満を目指すためにまずすべきこと
平均年収である2,600万円からいきなり1億円を目指すとなるとハードルが高いので、まずは目標として「5,000万円以上」を掲げましょう。
現状の年収が仮に2,600万円であれば、5,000万円を達成するには、今の2倍収益を上げればいいということになります。現状の2倍収益を上げるにはどんな方法があるかというと、まず考えられるのは、次のような方法です。
【本業の収入を増やしたい場合】
【本業以外で収入を増やしたい場合】
それぞれについて詳しく解説していきます。
本業の収入を増やしたい場合
集患・増患対策を講じる
現状より収益を上げたいなら、まず必要なのは集患・増患対策を講じることです。しかし、宣伝広告費をかけて集患・増患するとなると、出ていくお金も大きいため、すぐには年収UPにつながらない可能性が高いです。そのため、まずはお金をかけずにできる集患・増患対策を強化していくことが望ましいといえます。
具体的には、SNSを活用してこまめに情報を発信することや、LINE公式アカウントを運営して定期的に患者に役立つ情報を送ること、Googleビジネスプロフィールを充実させること、Googleの口コミに丁寧に返事をすることなどが、極力お金をかけずに今すぐできることとして挙げられます。このうち、LINE公式アカウントでの情報発信のみは有料ですが、それでも、月30,000通までは無料で送れるスタンダードプランで月額税別15,000円とさほど高い金額ではないので、課金してもほぼ元が取れるといえるでしょう。
参照:LINEヤフー for Business「LINE公式アカウント料金プラン」
診療時間を今より長くする、休診日を減らす
診療時間を延ばしたり、休診時間を減らしたりすると、そのぶん患者が増える可能性はあります。ただし、ニーズがない時間帯や曜日に診療すると、却ってロスが生まれる可能性があるので注意が必要です。また、診療時間や曜日を増やした結果、医師やスタッフに多大なストレスがかかっては元も子もありません。
オンライン診療を導入する
診療時間の延長より楽に実現できるのが、オンライン診療の導入です。なぜかというと、オンライン診療は医師の自宅などでもおこなうことができるため、診療が終わって帰宅してゆっくりした後の時間をオンライン診療の時間に充てるなどすれば、心身に過度な負担をかけずに、より多くの患者を診療することが叶います。土日などのオンライン診療対応も同様です。
訪問診療を導入する
訪問診療のニーズが高いエリアなら、訪問診療を導入することで収益が上がる可能性は十分にあるといえます。なぜなら、訪問診療をおこなった時間帯やケアの内容によっては加算点数が高くつくためです。ただし、訪問診療をおこなうとなると、医師がひとりの場合、その時間帯は外来診療をおこなうことができなくなるため、どのような体制を整えればいいのかなどをしっかり考えることが不可欠です。
診療報酬の査定(減点)、請求漏れを徹底的に回避する
診療報酬の査定(減点)や請求漏れが多いことが原因で、本来なら取れる点数を取れていないケースがあります。査定額に関しては、月1,000万円を超える医療機関も存在するので、自院がそれに該当していた場合は、診療報酬請求の体制を強化するだけで年収が大きく変わる可能性があります。ただし、診療報酬の算定を担当しているスタッフに「注意深く作業してね」と伝えただけでは自体が変わらない可能性が高いといえます。なぜかというと、「これで間違いないだろう」と思い込んでいる人が見直しをしたところで、間違いを見落とす可能性がとても大きいからです。そのため、診療したぶんの点数をきちんと取るためにも、電子レセプトをアップロードすると、算定漏れや有利な算定項目が見つかるレセプト算定支援クラウドサービス「レセスタ」などの導入を検討するといいかもしれません。
患者の単価を上げる
患者の単価を上げる一番簡単な方法は、自由診療を導入することです。ただし、診療科によっては自由診療のメニュー導入が難しい場合もあるでしょう。
美容皮膚科や美容外科ならそもそも自由診療メニューがほとんどですが、そうではない一般内科などは、たとえば漢方治療を取り入れることなどが関の山かもしれません。
本業以外で収入を増やしたい場合
副業する
本業の売上が伸び悩んでいるなら、副業を検討するのも一手です。たとえば、本を執筆したり、雑誌やウェブの記事の監修者として内容チェックに協力したり、または週末のみ他の病院に勤務したりといったことが考えられます。
もしくは、イベントやメディアに出演してコメンテーターとして活躍したり、YouTubeなどのコンテンツで収益を上げたりといった選択肢もあります。コメンテーターとして出演するにはそれなりに知名度が必要ですが、そのためにも、まずはYouTubeやtiktokなどでバズることを狙ってみてもいいかもしれません。もしくは、タレント的な活動ができる医師を募集している事務所などに、売り込みもしくは登録することを考えてみるのも一手です。
投資する
不動産や株をはじめとする投資も、収入を大幅にアップさせるための手段にカウントできます。しかし、投資に関してはリスクも大きいので、却って資産が少なくなる可能性もあることをお忘れなく!
開業医が年収1億円に到達するための4つの戦略とは?
上記対策などを練ることで年収5,000万円以上1億円未満を達成したら、次に狙うのはもちろん年収1億円以上です。年収1億円を狙うためには、経営の根本から見直すことが大切です。また、まだ開業前であるなら、年収1億円超え達成を見据えて開業プランを立てることがなにより重要です。では、具体的にどんな戦略を立てればいいかというと次の通りです。
【まだ開業していない場合】
【既に開業している場合】
それぞれについて詳しく解説していきます。
【開業前】好立地で開業する
どんなに腕が立つ医者であっても、条件の悪い土地での開業であれば、思うような収入を得ることは難しいでしょう。車での来院が主となる立地であれば駐車場の広さや主要道路からの侵入しやすさが肝になりますし、都心であれば駅からの距離が近いほど条件がいいということになります。また、ターゲットとなる患者が利用しやすいエリアを選定することも大事です。
【開業後】業務効率化を追求する
業務効率化を追求することなしには、患者数を増やすことは難しいといえます。たとえば、予約システムを導入していなければ、待ち時間が長いことから患者に選ばれづらくなりますし、電話の自動応答システムを導入していなければ、患者からの問い合わせを取りこぼすことがあります。また、電子カルテの未導入はもってのほかですし、バリアフリー設計がなされていなければ、サポートが必要な患者が移動するたびにスタッフの人手が必要になります。
また、最小限のスタッフで回せるような仕組み作りができていれば、スタッフ数を押さえることができるので、人件費削減にもつながります。
【開業後】優秀な人材の獲得、人材の育成に努める
仕事ができないスタッフを採用すれば、業務に支障が出る可能性が高いですし、スタッフ同士が足を引っ張り合うようなことがあれば、院内の空気が悪くなって患者からも敬遠されます。それを防ぐためにも、優秀な人材の獲得に努めることは極めて大事です。
【開業後】法人化や分院展開を視野に入れる
法人化や分院展開など、経営規模を拡大していくことは非常に有効な手段といえます。
儲からない開業医の7つの特徴とは?
確実に儲けを出すためには、儲けを出せない人の特徴を知っておくことも大切です。
儲からない開業医には次の7つの特徴があります。
それぞれについて詳しく解説していきます。
経営方針が定まっていない
クリニックの経営方針やビジョンが定まっていないと、志の高いスタッフが集まりません。なぜかというと、優秀な人材ほど、募集企業の理念をきちんとチェックして、その企業で自分はどのように社会に還元できるのか、どのように成長していけるのか、どんな仲間と一緒に働くことができるのかを考えるからです。
そのため、クリニックの理念やビジョンをきちんと言語化できていなければ、通勤距離や給与などの条件のみで応募してくる人材ばかりになる可能性が高く、その結果として、医療チームとしてみんなで成長していくことができません。つまり、集患や増患も見込めない可能性が高いということです。
経営スキル不足
個人事業主としてクリニックを運営していくには、経営スキルが不可欠です。損益表などをきちんと読み解き、各機材の購入費やレンタル代、人件費などをいくら以内に収めなければならないのかなどを理解する力がなくてはならないのはもちろん、時代の流れを読み解く力なども常に磨いていく必要があります。
ワンマン経営である
クリニックとしてのビジョンが明確であっても、その実現のためにスタッフをコマのように使っていては、やがて誰もついてこなくなります。経営者として従業員を雇ううえでは、従業員に気持ちよく働いてもらうにはどうすればいいか? を考えることが不可欠です。なぜかというと、「これ以上ここで働き続けるのは難しい」と辞める人が続出すると、辞めたスタッフを補てんするために採用や教育に再びお金をかけなくてはならなくなるためです。しかも、一から教えていくことを繰り返していると、クリニックとして成長することが難しいでしょう。
また、院長によるパワハラなどはもってのほかですし、スタッフ同士がうまくいっていないことに気づけなかったり放置したりも、チーム医療を阻害することとなります。
患者のニーズを把握できていない
開業エリアの医療ニーズ、自院の診療科を必要とする患者のニーズを把握できていなければ、集患・増患につながる施策を打つことが難しいため、収入アップが見込めません。
地域のニーズの実態を知るためには、近隣の医療機関や行政と連携をとることが大切ですし、通ってくれている患者の真のニーズを知るためには、Googleの口コミなどをチェックして、不満や要望に向き合っていくことも大切です。
固定費用が高すぎる
患者数が十分であっても、固定費用が高すぎると結果的に儲けが少なくなります。そのため、賃料やレンタル料、電気光熱費、人件費、保険料などの固定費用のうち、減らせるものがあるかどうかを考えて実践することも大切です。
時代の変化についていくのが苦手
時代の変化にスピーディについていけるかどうかも、クリニックとしての成功に関わってきます。特に今の時代は医療DXが重視されているので、IoTや地域医療への知識を常に吸収し続けることは肝となります。基本的なことでいえば、紙カルテから電子カルテへの乗り換えが済んでいなければ、近隣医療機関とスムーズに情報を共有し合うことができませんし、開業エリアの地域医療体制の動向を把握できていなければ、そのなかで自院がどう立ち回ればいいのかもわからないはずです。
また、美容外科および美容皮膚科に関しては、患者側もトレンドを追い続けているので、新しい機器、新しいメニューの導入やSNSでの定期的な発信なくしては成功しづらいといえるでしょう。
目先の利益しか考えていない
収益を上げることばかりを考えて、たとえば自由診療メニューを増やしたり、必要ないメニューを患者に進めたりしているようでは、次第に患者から選ばれなくなるだけでなく、スタッフも離れていくことが考えられます。
開業医の年収についてよくある疑問と回答
続いては、開業医の年収に関するよくある質問をピックアップして回答していきます。
Q. 開業医の年収は地域によって差はありますか?
A. 開業医の年収は、首都圏より地方のほうが高い傾向にあるとされています。なぜかというと、首都圏には設備の整った大規模な病院の数も多く、また、クリニックの数自体も多いことから、患者が分散しがちだからです。ただしもちろん、「地方で開業すれば必ず儲かる」というわけではありません。その地域の患者のニーズをしっかり把握して、それに応えていく努力することなしには成功しづらいといえます。
また、都市部と違って医療機関の少ない地方では、開業医はかかりつけ医としての役目を果たすこともとても大切なので、患者とのコミュニケーションをしっかりとっていくことも求められます。
Q. クリニックの開業費はどのくらいかかりますか?
A. クリニックの開業費は、開業エリアや診療科によって異なります。土地代や建物代は、開業を希望するエリアの相場を確認するとおおよその必要予算が見えてきます。2023年4月時点の公示地価が高い土地上位5つ、公示地価が安い土地上位5つは以下の記事で確認できます。診療科ごとの開業費目安についても紹介しているので、併せてご確認ください。
参照:クリニックの開業資金の目安は? 診療科別、地域別、自己資金割合も解説
まとめ
年収1億円を達成するには、医師としての腕や人脈、運などすべての要素を兼ね備えていないと難しいのでは? と考える人もいるかもしれませんが、この記事で解説した通り、工夫次第で年収1億円を超えられる可能性は十分あるので、できることから一つずつ実践していってみてはいかがでしょうか?
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対象規模
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診療科目
この記事は、2024年12月時点の情報を元に作成しています。